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流血描写がありますm(_ _)m
途中から三人称に切り替わりますm(_ _)m
「トト」
《あ、ほの、変な気配がするよ》
「っ!どこ!?」
あの子をわたしたちの都合に巻き込んで良かったのかと言おうとすると話をそらされたが、それよりも注意するべき事を言われて立ち上がる。
《んーと、今から行くの?》
夜も遅いよと言うが、そんなの関係ない。
「その気配が卵だったらどうすんのよ!」
《えぇー!僕眠いのに……》
確かに時計の針は深夜を差しているが、それよりもと、ぶちぶち文句を言うトトをせきたてると上着を羽織り外へ飛び出す。
「ほのかさん?」
意外な事にあの子はまだ起きていた。というか、もうすぐ日付も変わろうかというこんな時間に何故外に?
「あの、俺、湖に行くのが日課になってて」
「そうなの。ごめんね、急ぐから」
怪訝な顔でもしていたのか、聞いてもないのに言い訳のように出掛けていた理由を説明してくれた。
「あの、どこに?」
《変な気配がするから見に行くんだよ。……ええっと、少年》
「光太郎よ」
《光太郎は早く帰りなよ》
「って、えっ?!」
トトが帰宅を促せば、あの子も付いて来ると言う。
「もし、ほのかさんに何かあったら俺、それに、聞きたい事もありますし。あの、……俺が居たら邪魔ですか……?」
「それは……」
《良いじゃんほの。ここで押し問答してる方が時間の無駄だよ》
「……分かった。怪我しても知らないからね!」
「ありがとうございます!」
―――
深い森の中、静寂をやぶるように男たちが騒いでいた。
「おい!早くしろ!」
「うっせぇ!静かにしろ!」
「お前の方がうるせえわ!」
「んだと!」
「おい、やめろ!見つかるぞ!」
《もう見つかってるよー》
「な……っ」
言い争ってる男たちに呆れたように声を掛ければ、男たちは大げさともとれる程に身をすくませ、声のした方を振り返った。
《こんなところ僕でも探さないってのに、何こいつら素人?》
「んな訳ないでしょ」
「素人とかあるんですか?」
「さあ?」
「んな訳あるか!つか、誰だテメーらは!」
呆れがふんだんに込められたやりとりに密猟者らしき男たちは気色ばむようにそれぞれの得物を抜いた。
「え……銃刀法違反……」
「そんなのあいつらに関係ないでしょ」
《来るよ》
「【旋風】」
「うわっ!」
「葉っぱが……」
「くそっ!前が見えねえ!」
ほのかが指を振れば、木の葉が不自然に舞い上がり視界が塞がった。
密猟者たちはそれをまともに喰らったのかうるさく騒ぎ出し、更にトトに呆れられてしまう程のうろたえっぷりだ。
《なんなのこいつら……》
「馬鹿なんでしょ。さっさと捕まえて終わりにしましょ。【捕縛】」
ほのかの指先から不自然な光の輪が生まれ密猟者たちを捕まえていく。
「トト後よろしく」
《ん。あれ?光太郎は?》
「え?」
「動くな!そいつらを解放しろ」
ほのかとトトが声に反応して振り返れば、光太郎を後ろから抱き込むように密猟者が立っていた。そいつの右手には密猟者の得物の大ぶりのナイフが光太郎の首に添えられている。
「もう一度だけ言う。そいつらを解放しろ」
「あ、兄貴!」
「うるせえ!ったく、ヘマばっかこきやがって!お前ら一体何度俺に迷惑掛けたら気が済むんだ!」
「ほのかさん……すみません」
「さっさとしな!」
ほのかがチラリとトトに視線を向けるとトトは心得たとばかりに頷き密猟者たちに気付かれないように姿を消した。
「おい、聞いてんのか?!こいつの命が惜しかったらさっさとそいつらを解放するんだ!」
「ほのかさん、俺の事は気にしないで……!」
「黙ってろ!」
「ぐっ!」
「!」
光太郎が殴られ一瞬反応したが、ほのかが動こうものならば、あの刃は光太郎の首に食い込むだろう。今もうっすらとだが光太郎の首から血が出ている。
ほのかは歯を食いしばると捕まえた密猟者たちの方に振り返った。
兄貴と呼ばれていたボス的な密猟者はようやくほのかが動いた事に安堵するように身じろぎする。
「分かれば良いんだよ。分かればな。そうだ、俺たちが逃げるまでは大人しくしといてもらわねえといけねえな……いや、ヤっちまうか?」
「……ゲス」
「はっ!ゲスじゃなかったらこんな事してないさ。ほら、どうした?」
光太郎の首が絞まったのか、苦しそうな唸り声が上がりボスの密猟者の男はニヤニヤと笑いながらほのかを煽るように光太郎の前で刃をブラブラさせる。
「お嬢ちゃんがあんまり遅いとうっかり手元が狂ってこいつの首切っちまうかもしれないが、そうなっても俺を恨んでくれるなよ?お嬢ちゃんが遅かったのが悪いんだから」
ほのかはそれに答えずに嫌々ながら捕まえた方の密猟者たちに近づいた。
「【解除】」
「「「兄貴!」」」
「こっちくんな!先にその女……っぎゃ!!」
《ほの早く》
「【捕縛】」
後ろからトトが光太郎を捕まえていたボスの密猟者に爪で襲いかかっていた。
トトの爪は1メートルぐらいに鋭く、硬く伸びており、その爪で切られたボスの密猟者はぼたぼたと血を垂らしトトを血走った目で睨んでた。
「くそがっくそがっくそがっ……!」
《光太郎下がってて》
「「「兄貴!」」」
光太郎はトトに言われた通りに頭を庇うようにもしながらボスから離れるとほのかが怪我してないかと不安に駆られた。
「ほのかさん怪我は?!」
「自分の心配してなさい。トト!」
《はいはい。あの危ない奴片付けたら休み頂戴ね》
「出来たらね【蔦よ絡まれ】」
土の中から長い蔦が生まれてボスを狙う。
それを見た捕まった方の密猟者たちはボスを助けようと思ったのか、一斉に立ち上がるとぶつかったのか、何なのかは分からないが、間抜けにも団子状に転がってしまい本当にこいつら何しに来たんだろうと思えるくらいどんくさかった。
「んなもんにっ!」
ボスは怪我を負ってるのをものともせずに蔦を切り落とそうと躍起になってる。
《光太郎。目、閉じて》
「あ、トト?」
《良いから早く。さっさと終わらせるから》
「う、うん」
光太郎が目を閉じるとトトがほのかに合図を出す。
「【光球】」
「うわっ!」
「【捕縛】」
ボスの近くでいくつもの眩い光が一斉に光り、昼間のような明るさにボスの目が眩んだ隙に捕縛魔法を掛けてボスをようやく捕まえた。
《じゃあ、僕こいつら連れてくね。ほのはそろそろ話してあげた方がいいよ》
「えっ、どこに?」
《もちろん異世界にだよ。僕たちの方の犯罪者だからあっちで裁くの》
じゃあねと言ってどうやったのかは知らないが、密猟者ごと姿を消してしまった。
呆気に取られた光太郎だったが、ほのかが近付くと我に返ってほのかに怪我の有無を尋ねる。
「わたしは怪我してないよ。わたしの心配より自分の心配しなさい【治癒】」
ほのかが首に出来たうっすらとした怪我を治すと光太郎の怪我は瞬く間に消え去った。
「すげー」
「とりあえず今日は帰りましょ。話はまた今度ね」