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「はぁ……」
図書館では当たり前と言えば当たり前だったが、少女が行方不明と言う記事の詳しい情報なんてなかった。
図書館のパソコンを借りて更に詳しい情報をと思ったが、少女の行方不明者なんてたくさんいて、この町の行方不明者の記事を扱ってるサイトなんてなかった。
あれから時間があれば、お姉さんの家を覗いたりお姉さんが居ないかと町内をさ迷ったりしてる。
けれど、直接お姉さんの家に向う事はまだしてない。
それは、現実を受け入れるのが、もしかしたら、怖いのかもしれないから。
もし、あの人がお姉さんじゃなかったら今までお姉さんが生きていたと思っていたのに、違ったらと思ったらもう立ち直れないかもしれないから。
だから、俺はあの家に行ってお姉さんですか?と確認出来ない。
(――子どもじみた妄想だけど、やっぱり確認するのは怖い)
「あ、ねえ!お隣の」
「○☆□△!?」
「……凄い反応だね」
「お姉さん!あ、いや、ほのかさん!」
ヤバい。びっくりし過ぎてついお姉さんって言ってしまった。幸いおね……ほのかさんは気にした様子も見せずに佇んでる。
これが、お姉さんだったらものすごいポーカーフェイスだ。
「あ、あの、それで、俺に何の用ですか?」
まだ驚いて吃ってる俺をくすくすと笑っていたほのかさんはそうだったと呟くと本題に入った。
「変な事聞くけど、この辺りに光る卵ってある?この前から探してるんだけど、全然なくて」
「ゲームですか?それともおもちゃ?」
今そんなの流行ってたっけな?ああ、でも、意外だな。流行りの物やゲームなんて興味なさそうだと思ってたのにそういった物をやるんだ。
「おもちゃ屋か雑貨屋なんかで売ってないんですか?ストラップとかなら他にどっか……」
「わたしが探してるのはおもちゃじゃなくて……ええっと、どう説明したら……」
《ほの、見つかった?山の方行ってみたけどなかったよ。もっと、都会の……あれ?》
この間ほのかさんの足元に居た猫だ。
あれ?今
「今、猫が……」
「ええっと、腹話術……?」
《ニ、ニャーン……》
猫の表情までは分からないものの焦ったようなせわしない動きをしている。ほのかさんを見ればこちらは視線をさ迷わせたりしていてかなり怪しい感じだ。
「……腹話術……ですか」
「そ、そうなの」
《頑張ったニャン》
「――いや、今明らかに下からでしたよね!」
猫を持ち上げていたらまだ誤魔化されていたかもしれないけど、猫、お前、その位置は無理があったぞ。
俺の視線に気付いたのか、お姉さんが猫を睨みつけると猫は居心地が悪そうに後ずさりした。
《ほ、ほの、ごめんね……》
「……………」
《ほら、あの、こうなったら協力してもらえば良いんじゃないかな?なーんて……ダメ?》
首を傾げている猫に無言を決め込むほのかさん。
場所は家のすぐ近くにある公園。
猫が喋った事を認めて、ほのかさんに謝ってる途中でほのかさんに俺まで引っ張って連れてこられた。
そういえば、この公園で昔、ここでお姉さんに遊んでもらったなと感慨に耽ってるとほのかさんがようやく重たい口を開いた。
「あの、この猫の事なんだけど」
「はい」
《それより卵探し手伝ってもらった方が良くない?僕はほのの使い魔のトトよろしくね》
「えっ、は、はい……」
「トトは黙ってて」
《えーっ、僕毎日頑張ってるのにほのの言い方酷いよね》
「泣き真似しない」
話についてけない俺を放っておいてほのかさんとトト?はぽんぽんと言い合ってる。いや、そろそろ説明をしてください。
「あのー」
「ああ、ごめんなさい」
《つい、忘れてたね》
「この猫、使い魔?ファンタジー?……いやいや、まさか、そんな」
《そうそう、ほのがそんな事良く言ってたね!》
あっさりファンタジーでしかお目にかかれないような存在に肯定されてしまい二の句が継げなくなってしまった。
一縷の望みを掛けて、ほのかさんを見ればそうだと言うように頷いている。
「わたしたち違う世界から来たの」