第一のダンジョンへ・9
レベルが1上がったのは嬉しい。
しかしこの結果には納得がいかない。
やり直しを要求する。
【名前】ウィル 【性別】男 【LV】2
【種族】人間 【年齢】15
【職業】無職 【SP】2
【筋力】10 【耐久力】11
【知力】7 【魔力】14
【敏捷】9 【運】50
【HP】32 【MP】13/35
【固有スキル】ステータスリライト《2/2》
【汎用スキル】調理3 近接戦闘2 回避2
必殺1
【職業スキル】―
【魔法】火魔法1 風魔法1 回復魔法1
【装備】皮の鎧《0》
なぜ知力だけ上がらないのだ。
おかしいだろ!
最初の日はキャンプ地まで半日くらい走ってたから敏捷と耐久は鍛えられた。
戦闘中にそこそこ使った筋力と魔力も上がった。
ゴブリンたちとの戦闘ではきちんと戦術を立てて戦い、予定通り勝った。
なのになぜ知力だけ上がらん?
「いやいや、ウィル。行き当たりばったりに戦ってたやん。逆になんで上がると思ったん?」
「期待してたんだよおおお!」
「それにな、さっき色々挙げてたけどあれ関係ないで?」
え。
普通に関係あると思う。
「うん、確かに筋力とか耐久とか体、使っとる人は上がりやすい傾向はあるで。けど週単位で、集中してやっとる場合な。1日2日で目に見えて変わるわけないやん、ましてちょっと戦ったくらいで」
「そ、そうなの?」
「当たり前やん。人生そんな甘ないで!」
「ぐぬぬ……」
「まあ普通レベルアップしてもどれか1、2箇所上がるかあがらないかやから確かに運はいいみたいやな……。」
「そうか」
鍛えれば上がるはずのものがすぐ上がるのは運がいいから?
なんか納得いかない……。
知力が上がらないのも納得いかない……。
「ちなみに上がるのって1点ずつなの?」
「普通はそうやで」
俺TUEEEEは遠いなー。
ん?
待てよ。
「普通はってことは普通じゃない手段もあるのか?」
「勿論あるで」
「話せ」
はよ。
知力が上がる話はよ。
「んっとな、レベルアップするとき成長加速の効果がついた魔道具を身につけとると」
「100倍成長するのか!」
「んなわけないやろ!せいぜい3倍までや。普通は二倍まででそれかて簡単に手に入るもんやないで?」
「しかし入手の可能性はゼロじゃないんだな?」
「ん、まあ」
うん、まずその魔道具入手を最優先しよう。
世界最高の頭脳とまではいかなくてもこのまま人間社会に入るのは危険だ。
俺のプライド的に。
「あとは能力値を直接底上げする魔道具やな。どっちも大半は指輪型らしいけど」
「直接?……ああ眼鏡をかけると賢く見えるってやつな」
「それは違う」
とにかく知力をあげる手段はまだありそうだな。
希望はある。
そのうち勝手にメリメリ上がるかもしれないし。
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それはそれとして俺達はゴブリンの装備品を奪い、コボルトたちを簡単に埋葬し、SPを使って新たな魔法を身につけた。
生活魔法というやつだ。
実は最初気がつかなかったのだがあまりに体が汚れたので気になってナビに綺麗になるスキルはないか尋ねたところ、教えてくれたのだ。
「浄火とか点化ってやつな」
「つっこまないでー」
お前はそれでも関西人か。
もっと自分の仕事にプライドをもて。
『浄化』は自分や物品の汚れを綺麗にしてくれる魔法。
『点火』は火をつけるのに使う着火マンみたいな魔法だ。
さすがにゴブリンの股間と直接ふれあっていた腰布をそのまま身につけるのはためらわれたので『浄化』はとくにありがたかった。
あいつらウ○コしたあとケツふく習慣もなかったみたいだし
いやゴブリンのケツ(*)を確かめてたんじゃないよ?
腰布に少し残ってたんだよ。
もう綺麗にしたけどね!
そして腰布を身につけると皮の鎧の表示は消えた。
これやっぱり素肌を皮の鎧っていってるだろ。
変なシステム。
ゴブリンからは魔石ってのもとれた。
最低クラスのやつだけど。
ナビにとっておけと言われたのだ。
魔物の体内には例外なく魔石が入っている。
こいつは魔力の結晶体で魔法を使うときにMPを肩代わりさせたり魔道具を作るとき核になる素材だそうだ。
ゴブリンの解体とかどう考えても気持ち悪いが無心になって胸部をを切り裂き心臓の表面に張りついている赤黒い石を剥がした。
これが魔石だ。
ナビによるとゴブリンからはMPに換算して2~3点ほどの魔石しか取れないらしい。
コボルトからはとらないのかって?
さすがに、ねぇ……。
残り2体も同様に処理して自分に浄化をかけた。
ふぅ。
何か、かえってMPにダメージを負った気がする。
そしてなによりナビの機能が一部回復したのが大きい。
俺のレベルアップと重なったのは偶然なんだろうか?
今回使えるようになったのは『収納』ってやつだ。
自分が持てるより遥かに大量の物資を格納して持ち歩ける能力。
しかも、収納している間は時間が経たないらしい。
味噌汁の覚めない距離とか関係なくなってしまうな。
最もまだバッグ一つ分くらいしか入らないが、これは機能が回復するにつれて容量も増えていくらしい。
例の果物と水竹、と呼んでいる植物をそれぞれ10ずつ収納してもらっていっぱいになったのでこれで出発することにした。
植生がすっかり変わってきてるようなのでこれが命綱になるかもしれない。
魔石は石斧をばらして紐をとり腰布の一枚を袋がわりにして紐でしばって持っていくことにした。
弓ゴブの装備は弓も腰布も半分くらい炭になっていたのでダガーナイフだけもらっていく。
ないよりはましだろう。
メインウェポンはゴブリン剣だ。
錆びが浮いてガタついてるけど。
この剣よくみると紋章みたいのが入ってるのな。
案外近くに街があるのかもしれない。
知力が上がるまではうっかり近づかないよう気をつけなくては。
主人公の文明レベルが1上がった!
知力が相対的に1下がった!