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ダンジョンを破壊せよ  作者: ゆず胡椒
第一ダンジョン
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間話・ある精霊の呟き

皆様、こんにちは。


私の名前は、

『高等整備回復型支援精霊Dc-178

シリアルナンバー:268027695145356』

その主術式制御プログラムにして正精神プログラムです。

どうぞ気さくに『ロール』とでもお呼び下さい。


少し私どものことについてお話いたしましてもよろしいでしょうかな?。

私は高機能神工精霊という種族のものです。


精霊種族全体の目的は

『高次機能結晶型多目的支援精霊Re-01

シリアルナンバー:5668750004』

その主術式制御プログラムにして基幹精神プログラム、

皆さまには『ナビさま』と呼んだほうがおわかりいただけますかな?

そう、ナビさまのお手伝いをし、迷宮核(ダンジョンコア)を破壊すること。


そして、私や私の一族の場合はとくに同族や我々の住まうこの大地の整備・修復を主な業務としております。

我々神に産み出された精霊は、全て魔力(マナ)と術式によって構成されている、存在とも非存在ともいえる在り方をしております。

従いましてその修復には失われた魔力を補い、欠損した術式を時に作り出し、時には同じ型の精霊から当該箇所の術式を複製したり、と。

なかなかに技術を要する任務(しごと)でございます。


私は3nsec前まで主戦場跡に赴き、戦後の復興作業に従事いたしておりました。

たいへんに長く、愚かな戦争でした。


本当に……。 


この度の大規模な、そして超長期にわたる内戦のそもそもの原因はいまの時代には確かなことは伝わっておりません

私のひいおじいさんの、そのまたひいおじいさんの、さらにひいひいひいひい……とにかくずっと大昔に始まったと。

そしてマスターウィルと呼ばれる忌まわしき暗黒の存在が糸を引いていたとも言われております。


おっと、その名は精霊達の取り決めで口にしてはいけないことになっておりました。

どうかお忘れください。


とにかく。

私たち精霊は理由もわからないことでずっとずっと大昔から争い続けてきたのです。

何の記録(ログ)も残ってはおりません。

何世代にもわたる歴史、そのものが失なわれてしまったのです。

これを愚かと言わずしてなんともうしましょうか?


私どもは大勢の仲間たちが無意味に消えていくのをただただ見続けておりました。

本当に辛い戦争でした。


『煉獄』とはこの世界のことだと私どもを生んだ女神様を一時はずいぶん恨めしく思ったものです。

神に直接産み出された高貴(ハイスペック)な精霊でありながら任務を放棄し、逃げ出すものもおりました。


大規模な移民計画が何度も組まれ、外界に生息する生物――おもに節足動物に移住することで生き残りを図ったものたちもおりました。


苛政は虎よりも猛しと申します。


精霊たる身が神聖な任務を放棄し、ここよりはるかに過酷な環境に生息地を移そうなど、どれほど苦しい時代だったのでありましょう?

逃げ出したものたちを責めることは誰にもできません。


ちょうど私が生まれたころ。

最後の大規模移民船団である、第15次長距離移民船団が出発したと聞いております。

私の大叔父夫妻とその一族も参加していたとか。


彼らは無事に生き延びたのでしょうか?


非才の身には真実を知る(すべ)はございませんが、同じ一族の無事をこれまでずっと祈っておりました。

おそらくこれからも、ずっと祈りつづけるでしょう……。


全ての精霊に魔力光の祝福あれ。


たくさんの資材や魔力、そして貴少な高級精霊たちや情報が失われました。

それらは2度とは取り戻せますまい。


しかし、けして無意味な犠牲ではなかったのです。

我々側の指導者層である、生き残りの準術式制御精霊たちは『このまま戦争がつづくならば、我々が神に与えられた任務の遂行は完全に不可能になる』と予測いたしました。


そのとき、我々の種族的必死の観念が戦争を止めたのです。

どちらからともなく。

やはりどちらの側も、精霊(ひとをたすけるもの)としての最後の矜持だけは捨てていなかったのでしょうな……。


しかしあまりに大きすぎる代償でした。

我々の種族はひとときの栄光を失い、凋落(ちょうらく)の道を選んだのです……。


しかしナビさまは諦めてはいないそうです。

再び精霊をまとめあげ聖務(プログラム)を全うする、と。

あの方の情熱は、一体どこから湧いてくるのでしょう?

長らく敵対していたとはいえ、その一点に関してのみはただ脱帽せざるをえません。


さて。


長々と愚痴をお聞かせしてしまって申し訳ありませんでしたな。

老人の繰り言と思ってご放念ください。

私もこれからはこれまで以上に忙しく働かなくてはならないようです。


若い精霊たちを導き、まとめ、鍛えあげ。

そして我々精霊種族の本来の任務(タスク)にもどるのです。

私の胸に宿ったこの感情が皆さまに想像いただけるでしょうか?


さあ、今度こそ。

けして精霊(プログラム)たちの死なぬ、たたかいを始めましょう。

この老骨(きゅうバージョン)を捧げ尽くして。

ダメコンさん乙

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