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助けてください、魔王様!  作者: けとし
第1章
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第6話 影

最初は第三視点(だったっけ?)になります。


ブックマークが増えるのは嬉しいですね。

 日が落ち、月が闇が支配する世界が始まったことを知らせる。

 それはアンデットが現れる時間帯であり、暗殺するがごとく、静かに獲物を貪のる狩人の時間である。そんな世界に、眩しい場所が存在する。


 光を発する魔法具によって照らされたそこは、昼と変わらない喧噪が繰り広げられていた。いや、その日の仕事を終えた者たちが酒を飲み陽気になり、トラブルを起こすこともしばしば。

 そんな所が見渡す限り目に入るここ、イーリリン王国の中央に、一際輝きを放つ建物があった。

 塔の如く天へと伸びたその建造物は、壁に使われてる煉瓦の一つ一つに光り輝く苔とその光を乱反射させる効果のある魔法陣が描かれており、それを使って輝いているここは、アノイトシュ城。

 この国を支える王族、エクシリトーシュ家が住む場所である。


 そんな場所へと、一つ影が屋根を走りながら迫っていた。

 それは黒いマントを羽織り、顔もパーカーで見えず。いや、それ以前にだ。そんな格好のものが街の屋根を伝って居るのなら一人は見かけてもいいだろうに、誰一人として気づかない。


 それは眩しく輝く城にもう1キロもないところまで迫った時、足元に風魔法を発動。次に踏み込む足の下に存在する空気を圧縮し、屋根と圧縮空気がぶつかる瞬間、解放。

 それと共に、その影は空高くへ跳んでいった。


 その影はある程度上っていくと、今度は背中に風魔法を発動させ、前へと進ませていく。


 その影が見るは、自分の真下にある城。その城を中心とした家々に、銀色に輝くプレートのようなものが怪しく輝きを放っている。

 これこそ、城を光り輝くイルミネーションのようにした最大の理由。


 光を嫌う魔族への対抗作とし4代前の王が作り出した光を使う魔法陣『光却結界』。世界でも一二を争う魔法である……が、しかし、空中を滑空する影には無意味なものだった。


 最大の弱点である高くなれば弱まるところを突かれた結界は、なんの役もたたずに突破される。

 その影は、城の中央へと近づくにつれ、高度を下げていく。そして見晴らし塔の屋根に柔らかく着地。足元にだけ無音結界を張る。

 この見晴らし塔はそんな結界の弱点を突いてくるものが現れた時のために中庭の角に建てられたものなのだが、一向に破られる気配もなく、必要ないとされたため、放置されていたのだ。


 この城を守る兵士も、上空から侵入されるとは思わず、さらにそこを利用されるとは思ってもないだろう。


 影は辺りを見渡す。外から見れば明るいのだが、中庭は薄暗く、ボンヤリとしか見えないのだが、まるで見えてるかのように見る。


 そして大丈夫だと分かれば、見晴らし塔の最上階にある扉から入り、下へと降りていく。その際、影は風魔法を使い、空中に浮かぶようにして音を立てないようにする。




 風と火の二重魔法ツヴァイを使い熱を帯びたものが近くにいないかをさらに確認し、目に付いた窓の一つに近づくと、土魔法の『金属切断メタルソー』で間のわずかな隙間から鍵を切断。そこにも無音を行い、音が漏れないようにする。


 ゆっくりと部屋に入った影はそこが物置だと分かると、一息つくためにフードを脱いだ。



 でてきたのは、顔の下半分を布で覆った鼓太郎だった。


「さて、返してもらうぞ。クソ共」





 ▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽




 食堂から帰った俺はガゼルに頼んであるものを用意してもらい、今は部屋に一人。ぽつんと椅子に座っていた。


「おい、頼まれたやつ持ってきたぞ」

 中に入ってきた彼は大きな箱を持って近づいてくる。箱が揺れるたびにジャラジャラと音がし始めた。


「そうか、すまないな」

「ふん、当然のこ……何で俺こいつの手伝いしてんだ?」

 そこは気にするな。もう流れに呑まれろガゼルよ。


「んで、この布とかで何をするつもりなんだ。あとこの金属片とかさ」

 そう言いながらガゼルは一つの破片を取り出し観察するが、なにもないため戻していった。


「まあ見てなって」


 言いながら俺は金属片金属片の一つを手にとり『金属切断』で細い棒にする。さらにそ端の方を細く針にして、逆側に糸を通す穴を——つまり、裁縫道具を作ってるわけだ。


「それが一体……って何やってんだお前!?」

 次に持ってきてもらった赤い布を風を使って元の糸に戻していく。そしてそれを針の穴に通した。

 次に黒い布を。これは頭に浮かんだイメージのまま手をあてて、『切断ソー』を唱えるとその通りに、下にも挟まれていたもう一枚の黒い布と共に切れていることを確認。

 次に、糸を使ってそれらを縫い合わせれば……ふむ、顔を隠すために三角巾とかも必要だな。まだ布あるしそれっぽいもの作って、あとは外すことの出来るパーカーか。


 次々と作業を進めていき、作り上げたのは一つのマント。デザインはテキトーで、とても簡素な造りとなっている。待ち針は針を作った際に余った金属片の一部で代用したが、意外上手くいったな。


「お前、そんなこともできたのかよ」

 呆れたような顔で言ってくるが、まあこれは仕方ない。なんか妙にイラっとしたけど、これはそんなこと言われもしょうがないと俺自身もそう思ってるのだから


 だって男で裁縫とか、女かよとかつっこまれてもなんか言い返せないというかなんというか。だけどまぁ、同級生はそんな俺も受け入れてくれたからな。感謝してる。


「さて、そろそろ行くか」

「え。ちょどこへ行くんだよ」

「ちょっとな、取り戻さないといけないのがあってな。イーリリンに殴り込み」

「こいつ、マジで言ってんのかよ」

 ついに頭を抱え始めた。大丈夫か、知り合いの腕のいい医者、紹介しようか?。


「……留守の間はどうするんだよ、何日もかかるだろ、行くのには」

「そうでもないし、留守中も心配ないさ。これを使うから」

 そういいながら俺はベットを移動させて隠していたモノを見せる。一種顔が強張ったが、大丈夫だよな?


「……これは?」

「ホログラム……じゃなくて、映像を見せる魔法具だ。いえば幻覚だな」


 魔力を込めながら簡単に説明をする。ホログラムの映像がそうにみえないリアルなもの。と考えてくれたらいいかな?


「よし、これで最大4日は大丈夫だろうな」

 そういいながら軽く動作環境を確認すると、目の前に等身大の俺——コタロウが現れた。


「うぉ! こ、これはまた……」

「最新技術で作られた映像放映器の魔法版だ。中々にいいだろ?」

「あ、あぁ……凄いな」

「これを眠った体制に設定し、あとはベットとの間とフトンの膨らみをどうにかすれば完了だ」

「なるほどな。そこまでして取りに行かないといけないものなのかそれは」

「まあな、はっきりいって、これが成功すれば、侵攻する期間を先延ばしさせることができるだろう」

「ほ、本当か!? なら、ルシフェル様のためにも頼む!!」

 凄い形相でお願いしてくるガゼル。その顔、風呂であった子供達の前ですんなよ? 普通に怖いから。


 ルシフェルのためか……。


「あぁ、任せとけ」




「さて、今から俺は昔生きてた頃に作った隠れ家へとテレポートする。その間は頼んだ」

「あぁ、無事を祈る」

 ……なんかな、昔はよく殺しに来ていたやつからそんなこと言われると歯痒いというかなんというか。


座標指定コーディネイトカファリースティ転移テレポート』」


 そして俺の姿は、魔王城から消えた。



 ▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽



「——っ!!」

「おい、どうし…がっ」

 また2人、巡回をしていた衛兵が意識を闇へと落とされた。


「ふぅ、昔より質が落ちたか?」




 昔、自分が生きていた時代の兵士たちと比べると、明らかに弱い気がする。僅かな音も聞き分け敵を判別したり、炎や氷の魔法を破損させることなく剣や槍に纏わせる上級者向けの魔術を息一つ乱さず使用できる奴がゴロゴロいたな。


 暗殺対策もろくに出来てないとは、墜ちたものだな。


 2人の兵士を壁にもたれ掛けると、就寝フォールアスリープ。そして起床ウェイクアップ遅延リタルボで朝になると共に発動するように設定すると、また歩き出す。


 今ので23組目……だが、全く手応えがなかった。もしかして魔王補正掛かってたりする? それだと、加減ミスった可能性がある。身体の一部麻痺してたら、すまんな。



 心の中で謝りながら、廊下を左に曲がる。


 廊下の真ん中を赤い絨毯が占領し、壁にはいかにも高そうな絵画が埋め尽くしている。こんなものなかったのに、今代はダメダメ野郎のようだな。昔は表向きはよかったぞ。表向きは、な。


 そうして進んでいくと、目的地へと着いた。

 そこは、人よりも大きな——体調3メートルのオーガも入れるように作られた、重く硬い素材で作られたこの扉は、聖銀独特の紫を含んだ銀色をしている。

 視線を下に下げると、その扉に不釣り合いな突起がある。それは手の形に掘られた石の中に魔法陣を描いて不埒者のが侵入してこれないようにするためのものだ。


 掌に魔力を流しながら、それに手を置くと、頭の中に認証したという何処か機械的にも思える女性の声が響き、同時に扉が左右に開く。


 俺は迷うことなくその先へと進む。

 その部屋は、大理石で作られ、同じく大理石で作られた柱に支えられた一見どこにでもある王族の間にも思えるが、玉座があるだろう場所には、武器を立てかけるための突起が、ついており、そこには一振りの剣が、ぽつんと置かれていた。


 しかしそれから溢れ出す存在感は凄まじく、そしてコタロウの……否、ラークシ・F・デュークの魔力派を捉えたそれは、歓喜のあまり、黒板を引っ掻いた音のような物を発しながら、主にこう声掛けた。


 “おかえり、パパ”と。

明日は投稿できるか不安ですが、頑張っていきます!!



感想と評価ポイント、よろしくお願いします。

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