第32話 そのステータスは……(2)
遅れてしまい、もうわけない……これ毎回言ってるな。
大変お待たせしました。最新話です。ただし、前回より少なめになっております。
また、前話の最後を改訂いたしまして、ガゼルのステータスを追加しています。
翌日、俺は自分の持っている知識だけじゃ打開できないと感じ、地下にある図書館に向かうことにした。
その道すがら、横を通り過ぎる人たちに向かって昨日フーに教えてもらった魔法、情報看破を発動してみたところ、驚きの事実を知ることになった。
ガゼルが持っていたスキル、優しき抱擁をほとんどの男性魔族たちが所持していたのだ。
真面目そうなモノクルつけたにーちゃんも、顔に傷のあるいかついおっさんも。はては幼い子供までそのスキルを所持していたのだから驚きだ。
そこから俺は、『家の事ができて子供に優しい、母性のようなものがある人たち』はこのスキルを持っているのではないかと考えた。
その考えが的を射ていると確証することができたのは、その後だった。
「あら、こんな難しい本を読むのね。はい、ボウヤ
「無理して高い所の物を取ろうとしないように、ね?」
目的の書物を見つけることができたのは良いものの、地味に棚の高い所にあったためどうしようかと考えていた時、今目の前にスカートを履いたゴリラが取ってくれたのだが。
「ありがとお兄ちゃん」
「ノンノン、お・ね・え・さ・ん」
腰をクネクネとしながら人差し指で鼻を突かれた俺は、苦笑いを浮かべながらその場から逃げる。
ちなみに。おにい……おねえさんのステータスを確認したところ、こんなスキルがあった。
男の禁忌
俺の情報看破は、スキルの詳細を出してくれないのだが、そこはチートなフー先生に頼みこんで、そのスキルについて説明していただいた。
優しき抱擁の昇華スキルで、男限定らしい。つまり、彼は正真正銘のオカマだったということだ。
内容は家事全般がこなすことができ、裁縫したものに特典スキルを、料理にはステータス補正がつくようになるという、俺の予想の範疇を超えたバカげたチートスキルだった。
敵に回してはいろんな意味でいけない部類としてこのスキル保持者はマークしておこう。
ちなみに優しき抱擁はそんなチート能力があるわけではなく、代わりとして幼い子供との接し方が自然と分かると言ったものらしい。保育園でも建ててやろうかな?
さて、目的の書物を手に入れた俺は、早速自分の部屋で、読もうと図書館を後にしようとしたのだが、出入り口前で警備してる人に止められ外へ持ち出す事は出来ない本であると教えられた。
そこまで危険なものなのか? なら何故ここに置いてんだよ。と思っていたら、顔に出ていたのか、訳を話してくれた。
「この図書館には今君が持っている本の他にも、読んではいいけど持ち出しとメモするのを禁止されているものがあるんだ。確か……なんだっけ、そうそうグレーゾーンっていうんだっけ? 曖昧な立場にあるものをそう呼ぶんだけどね、状況によっては危険視されるというだけで、そうなる過程が長く険しいことから、館内でなら読んでも良いということになったらしいんだよ」
さらりと『グレーゾーン』という、この世界の言葉ではないものが出てきた。歴代勇者の中に魔族と有効関係を築こうとしたやつがいるのかもしれないな。もしかしてこの図書館も?
というか記憶力のあるやつやそういったスキルの保持者がいたらどうするんだよと言いたいが、このルールの内容からして、実際に大事を起こしたものはいないのだろう。
警備していた人に分かったと伝え、中に戻ると読書するためのブースで空いている席に座り本のタイトルを確認する。
【ノアの方舟〜魔皇帝の封印〜】
これは昔、国に背き自由に世界を回った異世界の勇者達と旅をしていた変わり者の魔族の吟遊詩人、ノア・D・フューショナーが描いた、ノンフィクションシリーズの一つ。俺はこれとは別の、【和む食卓】を読んだことがあるが、中々面白かったのを覚えている。
泊まっていた宿で騎士夫婦が喧嘩をして別れそうになったとき、妻の方に勇者達が身分を隠して料理を教え夫との溝を埋めるという話は良かったと思う。曖昧な記憶で悪かったな。
「さてと、それじゃあ読みますか」
ペラリとページをめくっていく。
この本に書かれている内容は、ディラクという昔の大国が行っていた非道や行いに我慢ができなくなった勇者達が、他国と協力してこの国の悪の根元である魔皇帝『ヘルモーズ・ディラク』を倒すため奮闘する物語。
この物語に出てくる勇者達はみな異世界出身で、聖剣は国に残ることにしたもう一人の勇者がもっているため最低限のチートしか使えない状況で、徐々に追い込まれるも逆転するというものだ。
そして終盤。追い込まれたヘルモーズは、ドラゴンシードと呼ばれるものを喰らい、禁忌である龍化を行い、邪なる龍となり大陸を消そうとした。
勇者達は、自分の持てる力を振り絞って戦い、そして封印に成功したのだという。
俺がこれに目をつけたのは、先ほど出てきた【和む食卓】にて、龍について触れる部分があったからだ。そして俺は、この魔皇帝——つまりディバイオスドラゴンを手に入れるため、その場所が載っているかもしれないという、思いから読んでみたはいいのだが……読み始めて3時間が経過しても、それらしいものは見当たらなかった。
ただ、ディバイオスドラゴンが暴れた場所が大国ディラクのあった所で、現在ベルフィーニ平原と呼ばれているということだけが分かった。
俺は亜空間から一つのA4サイズを二つ重ねたぐらいの大きさのあるものを取り出す。
これは昨日の帰りに、ちよいと混色騎士団のある所までよって、エリカとクーラムバインに頼み込んで手に入れた、この大陸の地図である。
ベルフィーニ平原がある場所はここから南西に馬車で4日といった所。
ここファンムーゲンよりも広大で、生息している魔物の中には勇者のような力をもってしても苦戦をしてしまう魔物がいる、厄介な土地であるとノアの書物には書いていたが……相応の準備は必要になるかもしれないな。
溜め息を一つその机に残すと、俺は図書館を後にし、螺旋階段を降りていった。
この図書館の下には、さらにもう一階あり、降りていくうちに、下の方に光がわずかに見えてきた。
階段を降りきった先にあったのは一見重厚そうにみえる扉。
しかし、俺からすればワンパンチで吹き飛んでしまいそうな脆いものにしか見えなかった。
その扉の前に近づくと、誰かの視線を感じた。
周りを見渡すが、もちろん、誰一人いない。なら残った選択肢は一つ、上だ。
そこにいたのは、一体のトラ模様の蜘蛛。恐らくアラクネの雄だろう。
「おー、こんな可愛い子供が、倉庫に何のようじゃ?」
芝居がかったようなジジ言葉で話しかけてくるそいつは、くるくると回転しながら、俺の前に着地する。暗闇でうっすらとしか見えなかったトラ模様の蜘蛛だが、彼の尻はさらに特徴的だった。
その模様は、まるで人が死ぬ寸前に断末魔をあげているようにも見える、不気味なものだ。
「はは、こわいかの? まあ仕方無かろう。こんな尻を見せられては、な。……あぁ、大丈夫じゃよ人間の子よ。大人でもない限り、とって食ったりせんわ」
こっちゃこいと前の右足二本でちょいちょいとこちらに来るよう促してから、左の壁に向かうアラクネの雄。
一見、普通の壁にしかみえないのだが。アラクネはそのまま壁に近づき——すり抜けた。
驚き、眼を見張りながら近づくが、目で見ても一見普通の壁にしかみえない……ならばと魔力を探知してみる。
しかし、それも無意味だった。
この倉庫前の壁全体に、魔力が、均等に張り巡らされていたのだ。先ほどのアラクネも探知できていない。
現象……とでも呼べばいいのか。それはともかく、こんなの聞いたことがない。
どういうことだと疑問に思っていると、目の前の壁からニュルッと、アラクネが8つある緑色の瞳をこちらに向けていた。
「ほれほれ、そんな怖がらんでも……美味しいお菓子があるぞ?」
うん、分かったと返事をして近づいて行く。左手でゆっくりと壁に触れる。
ほわん……と、波紋が広がったのが見えた。
そのまま、ゆっくりと進んでいく。まるで何かに誘われるかのように。
いや、実際アラクネに誘われているのだが。
壁の向こうへと進んでいくと、視界に入ったのは木々の隙間から、ほんの僅か陽の光らしきものが入ってくるだけの、ギリギリ最低限視界が確保できるような暗い森だった。
そしてそんな森の中央にポツンと、一軒の木造建築がありその手間、草が生い茂った場所に、アラクネの横には、アラクネの、それも雌の姿があり、俺を連れてきたそいつと話をしていた。
「なあ、頼むよ。人間と言っても雄の、それも小さな子供なんじゃよ。しかも魔王の城の子なら、信用できるぞ?」
「バカねあんた。人間をこんな場所に連れてくるなんて、気でも触れたのかい。さぁ、とっとと返してくるんだな」
「ぐっ……じゃが、お菓子があるっていったら付いてくるようなこなんじゃよ? 害があるとは思えんのじゃ。それに、人間ならしってるあの技を知らないとなると」
「……あー、なるほどね。確かに。だけど、それとこれとは」
「……今日は、いっぱい張り切ってやるから」
「よぉうし、そこの坊や! こっちに来な。美味い菓子を食わせてやっから」
……この距離なら、聞こえてないと思ってくれるだろう。
頑張れ、アラクネの雄の方よ。
さて、作者は話をどう持って行きたいのか。それは神のみぞし(ry
ゲフン。
次回は、なるべく早く更新いたしますので、お楽しみに下さい。




