66. 復活
「お、完全復活?」
そんな声に、鷹緒は顔を上げて微笑んだ。
「ああ」
それを聞いて、すぐ横に広樹が座る。
ここはWIZM企画の社内で、広い会議室では、鷹緒が一人でカメラの手入れをしているのがわかる。
「大事にしてんなあ」
広樹の言葉に、鷹緒は照れるようにしながらも優しく微笑み、手入れするその手を止めない。
「まあ、ね」
目の前には古い一眼レフのカメラがある。かつて師匠だったカメラマンの三崎から譲り受けたものだ。
「何年もの? 三崎さんが使ってる時も、古いなあとは思ってたんだけど」
「どうだったかな……でもこれは俺が最初に手にしたちゃんとしたカメラだから……まだまだ使えるし。最新式にはない味が出る」
「でもしばらく使ってなかったじゃん」
「メンテに出してたんだよ。パーツがないっていうから時間かかったけど。まあ、充電期間ってとこだな。これからバッチリ」
「そう。安心した」
話をしている間に手入れを終えた鷹緒は、大事そうにカメラケースにしまうと、ちょうど鷹緒の携帯電話が鳴った。
「おう。おつかれ」
液晶画面に出た名前から、電話に出るなり鷹緒がそう言うと、可愛らしい声が聞こえる。
『おつかれさまです。沙織です』
そう言われて、鷹緒は思わず笑った。
「知ってる。そっち終わったの?」
『うん。今スタジオ出たところ。提出物あるから、今から事務所に行くよ』
「そうか。俺も戻ってるから。待ってる」
電話を切った鷹緒は、にんまりと笑う広樹を見つめる。
「なんだよ……」
「彼女か」
「……言われなくても彼女だよ。中坊か、おまえは。満面の笑み零しやがって……」
呆れるように口を曲げる鷹緒に、広樹は笑いながら立ち上がった。
「いやあ、幸せ分けてもらいたいからさあ」
「んなこと言ってないで、おまえも遊びでいいから見つければ?」
「遊べる時間もないけどね」
「それより、今日は暇なんだろ。事務所早く閉めて、みんなでどっか行こうぜ」
鷹緒の言葉に、広樹はまたも嬉しそうに笑った。
「いいね! いや、いいの? デートなんだろ」
「デートねえ……たまには外でゆっくりメシでも食いたいじゃん」
「カモフラージュかよ」
「純粋に、俺は社員も大事ですけど?」
「ははっ。まあ、いいね。たまにはみんなで」
「おう」
先に会議室から出ていく広樹の後ろで、鷹緒はカメラケースに軽く触れた。
「これからも頼むぞ」
商売道具である相棒にそう呟いて立ち上がる。
「おつかれさまでーす!」
事務所の方から沙織の声が聞こえて、鷹緒はそっと微笑み、歩き出した。
一年間のお休みをいただきまして申し訳ありませんでした。
この話を機に、ぼちぼち活動を再開させていただきたいと思います。
今後とも、どうかよろしくお願い申し上げます。