103. 告知①
ある日、沙織は地下スタジオで携帯電話を見つめていた。
目の前にはパソコンに向かう鷹緒の後ろ姿がある。今日は撮影帰りにここで合流する約束だったが、鷹緒の仕事が一向に終わらないため、ここですでに一時間ほど待っている。
「よし、終わり」
やがて鷹緒がそう言って、沙織は顔を上げた。
「終わり?」
「ああ。待たせたな」
「ううん。でももうちょっと待って」
散々待たせた沙織がそう言ったので、鷹緒は首を傾げて沙織に近付く。沙織が持っていたスマートフォンには、縦書きの活字が並んでいた。
「小説?」
「うん。今いいとこなんだ。もうちょっとで章が終わるから待って」
「へえ……電子書籍か。おまえが本読むとか知らなかった」
「失礼な。これでも情報バラエティ番組の準レギュラーですし。前より読むようにはなったかな」
そう言いながら、沙織は画面上でページをめくっていく。
鷹緒は沙織の頭を撫でるように軽く叩くと、自らの支度を始めた。
「わあ……続き気になる」
それから少しして、沙織はそう言いながら携帯をしまう。
「そんなに面白いんだ?」
支度を終えた鷹緒に尋ねられ、沙織も立ち上がった。
「うん! なんかすごい感情移入しちゃうんだ。きっとハマるよ。鷹緒さんも読んでみる?」
「俺が? 小説なんて久しく読んでねえな……」
「カメラマンと高校生の恋物語なんだよ。なんか私たちのことみたいに思えちゃって」
「……FLASH?」
本のタイトルを見せつけられ、鷹緒はそのままそれを読んだ。
「そう、FLASH」
「へえ。そんなに面白いなら読んでみようかな」
「本当? おすすめだよ」
「ま、気が向いたらな……そろそろ出るぞ」
「はーい」
そんな会話を交わしながら、二人はスタジオを後にした。
「そんなこんなで、新たに某大手サイトからも電子書籍発売中です」
振り向きざまに言った沙織に、鷹緒は苦笑する。
「誰に言ってんだよ、沙織」
「えへへ。いつも読んでくれてる皆さんに」
「早くしないとおいてくぞ」
「あ、はーい」
今度こそ、二人はスタジオを出ていった。
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これからもFLASHシリーズをよろしくお願いいたします。
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