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31日目に君の手を。  作者: 篠宮 楓
番外編

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98/118

ななしくんの頭の何かが飛んだみたいです ばーいアオ

ちょっとR15入ります≧▽≦

……アオ視点……



ななしくんとお付き合いというものを始めて、三ヶ月。

ななしくんが、おかしな人になってます。







学祭も終わり本格的に後期授業が始まった大学は、お祭り気分も払しょくされて通常運転に戻っていた。

私はといえば、冬にあるアマチュアメインの美術コンクールに向けて講義の合間は絵に没頭していた。

ななしくんのおかげで取り戻す事の出来た私の色たちは、以前よりもその深みを増していて。

正直絵を描くのが楽しかった。


ななしくんはといえば本格的な受験シーズンに突入して、あの学祭以来、会ったのは片手で数える程度。

私の住むこの街からななしくんの住む場所は、電車を乗り継がなきゃいけないほどの少し遠い距離。

だから要さんが旅行に行くから留守番お願いしていいかって連絡来た時、二つ返事で頷いた。

連絡したらななしくんも来てくれるって言われて、嬉しくて、久しぶりに夕飯作ろうってわくわくして。

何にしようか考えて……


なのに。



「ななしくん?」



なんでななしくんは、縁側に座ったまま挙動不審者になっているのでしょうか。






きっと学校が終わってすぐに来てくれただろうななしくんを出迎えたのは、ついさっき。

まだ陽射しの暖かい午後、うっすらと汗をかいている姿が嬉しかった。

だって、頑張って急いできてくれたからでしょ?

かわいいなぁって、思う。

ななしくんに言ったら怒られそうだけど、可愛いな。

弟って、こういう感じなのかもって。

……あ、おかんから弟になった。


「ななしくん、お茶飲む?」

庭先に自転車を止めてこちらに歩いてきたななしくんに笑いかけると、なにやらぎくしゃくとした動きで頷いた。

……学校で何かあったのかな……?

嘘のつけないある意味損していそうな性格のななしくんは、結構表情に感情が現れる。

って言ったら、怒られるね。

とりあえず作っておいた冷茶をななしくん専用湯呑に注いで、ついでに自分のグラスも持ってななしくんの横に腰かける。


「……っ」


……なんでそこでびくつくの。


肩をはねさせたななしくんを不思議そうに見ていると、なぜか顔を赤くさせて視線が泳いでる。


……なにごと。


冷静なななしくんが珍しい。


私はそんなななしくんを眺めながら、いたって普通にグラスに口をつけた。

はー、冷茶美味しいわー。

のどを通っていく冷たさに、思わず息をつく。

とりあえずななしくんが面白いから、突込み入れずに遊んどこうかな。


「ねーねー、ななしくん」

「……っ、なっ何っ!」


呼びかけると、あまりの動揺さ加減に声が裏返ったよこの人。


それまで目も合わせてくれなかったのに、がばっと音が聞こえるほど大きな動きで私を見る。

……なんなの、ホント。

「浮気でもした?」

「してない!」

あまりの挙動不審さ加減に、冗談で言ってみたら物凄い勢いで怒鳴られました。

そしてそのまま、そっぽを向かれてしまった。

えー。

もう少しななしくんで遊んで見ようかどうしようか悩んだけれど、なんだか怒りを助長させそうなのでやめておこう。


「ななしくん、どうかしたの? 悩み事?」

「……別に」

いや、別にっていう割におかしいんだけど態度。

「おねーさんに話して御覧? 前よりはしっかりしてると思うよ」

夏休みの間の、自分を見失っていたあの頃の私よりは。

「少しは変わったでしょう?」

もしかしたら変わってきてしまっている(本当は本来の自分の性格が出てきているだけなんだけど)私を嫌になるかなって思ったりもしたけれど、ななしくんの態度は少しも変わらなかった。

むしろ、もっとしっかりしてるのが年齢的に当たり前っていう雰囲気を流されてしまう私って……。


「……お前の場合は、何が変わっても根本がアオだろ」


こんな言葉一つで、聖ちゃんに絵を褒められるよりも嬉しくなるなんて……ななしくん分からないんだろうなぁ。

だから、私は自分のペースでななしくんと一緒にいたいんだ。


「ななしくん、久しぶりだね。会いたかったよ」


ぎゅっとその手に自分の手を重ねて、そっぽ向いているななしくんの意識を惹いてみる。

せっかく一緒にいるんだから、私を見ようよ。

後頭部見てたって、面白く……えーっとそれはそれで楽しいけど、つまんないよ。


「うぁっ……た……あ……っ」


ななしくんはびくりと肩を揺らして、意味不明な言葉を吐きだした。

「……」

なんだかななしくん、今日一番の挙動不審状態になってるんだけど、ホントどうしたのこの子。

思わず私が年下扱いしたくなるくらい……実際年下なんだけど……、凄い動揺加減……。



「……ホントに浮気……」

「してねぇっ」


即答。

うーん、嘘つけない性格なのはわかってるけど、……じゃぁ何?


「ななしくん、どうしたの?」

「……どうしたのとは」

こっちを向いてはいるけれど、やっぱり視線は泳いだままのななしくん。

どう見てもおかしいんだけど。


なんとなく心にもやもやが生まれる。

やっと会えたのに、凄く楽しみにしていたのに。

ななしくんは、うわの空。

楽しみにしてたの、私だけ?


「ななしくん」


少し強めの声音で、呼びかける。

私の雰囲気が変わったのに気が付いたのか、泳いでいた視線が私に向いた。


「アオ?」


私を、見てよ。


「ななしくん」


もう一度名前を呼んで、ななしくん唇に自分のそれを軽く寄せた。

軽く触れた唇は、すぐに離れる。


目の前には、目をまん丸く見開いたななしくんの顔。

その目に映るのは、私。


そのことに少しもやもやが消えて、思わず笑みを浮かべた。


「うわの空のななしくんに、ショック療法」


そう言えば、一気に顔が真っ赤になるななしくん。

私までつられて赤くなってるのが、頬の熱さで分かる。


「……っ」


恥ずかしい事した!


誤魔化す様に笑いながら、私は立ち上がった。

「和菓子買っておいたんだ、おやつ食べよ」

恥ずかしかったけど、ななしくんがこっちを見てくれたから満足なんだ!

うんそうだそうだ!


居間に移動しながらそう自分を納得させるように何度も心の中で言い聞かせていた私は、いきなり後ろから腕を掴まれてびくりと体を震わせた。

「うぇっ?」

けれど何も考える暇もなく、視界が反転、振り向かされた目の前にはななしくんの顔。

「え、ちょっ、なな……っ」

続く言葉は、ななしくんの口の中に吸い込まれた。


ぎゅっと押し付けられる唇は、さっき触れたかさついたそれ。

目を瞑る事さえ思いつかず、目の前で伏せられているななしくんの睫毛を見つめた。


うわの空から覚醒したら、いきなりこれですか!


内心動揺していたけれど、それでも体に回された腕の強さとふれる温かみに安心感が広がっていく。

何があったかはわからないけれど、でも、きっと私にとって悲しい事じゃないよね。

それなら、いいんだ。


安心をくれるななしくんが、ドキドキをくれるななしくんが、私はだいすき……え……?

驚いてななしくんのシャツを掴んだだけだった手をゆっくりと離して、その背中に回……そうとして動きを止めた。


ぬるりと唇を這ったそれは……、え!?


離したばかりの手が、再びななしくんのシャツを掴む。

何かを確かめるように一度這わされた生暖かいそれが、驚いて緩んだ隙間から口の中に入り込んでくる。

「ん、ぅんーっ?」

よもやまさかそこまでされるとは思っていなかった私は、ななしくんのシャツを思いっきり引っ張った。


は、初めてなんです!!

ななしくん、ななしくんとちゅーするのも初めてだけど、ちゅー自体も初めてなんです!!

いやいや、さっき確かにしたけどあれは不意打ちにちょっと触れたくら……っ。

いっ、いきなりこれは予想も想像もはるかに超えててててて……っ

「うっ、むーっ! んっ」

声を上げようとしても、それはななしくんの口の中に消えていくだけ。

くぐもった呻き声ともつかない声が、漏れるだけ。

いつの間にか壁に背を押し付けられて、身動きが取れない。


ななしくんご乱心!

ななしくんご乱心!!

であえであえっていうか、誰かきてーっ!


「ふ、やぁ……っ」


頭の中は、しょうもない事ばっか叫んでる。

どうしたらいいのか分からないまま、微かに開いた口の隙間から漏れた自分の声に羞恥心が膨れ上がる。


ななしくんの事は好きだけど、好きなんだけどこれは急すぎるよ……っ!


シャツを掴んでいた手に力が込められた、その時。




「なーなーしー! アオさん襲ってないだろーなー!」




その声に、びくりとななしくんの体が飛び上がった。






--------------------佐々木か井上か辻のどれか視点に続く予定。



書くのが楽しいとかね。

やっと正統派R15(べろちゅー)かけたとかね。

ななしくんがおかしなことになってるとかね。


……愛のある無理やりは大好物です(๑ÒωÓ๑)


ていうか、この二人のこういう場面かくの、めっさ恥ずかしかった!///

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