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31日目に君の手を。  作者: 篠宮 楓
番外編

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97/118

ななしくんの頭のねじを飛ばしてみました ばーい佐々木

注。


書き手は昭和生まれです。

人生の大半は平成ですが、基本的には昭和に浸かって生きてきてます。

今の高校生がどんな恋愛してるのか、よく知らんとですよ!

なので。

ななしくんは昭和仕様です!!(笑




アオと付き合い始めて、三ヶ月くらいあと。





原田視点




「もー、ちゅーしたの?」



それは、佐々木の一言から始まった。


原田は一瞬動きを止めた後、油が切れたブリキのおもちゃの様に首をぎこぎこと音でもなりそうなくらいぎこちなく横に向けた。

そこには斜め後ろに席があるはずの佐々木が、机の横にしゃがみ込んで原田を見上げていた。

机の端に両手を置いて原田を見上げる佐々木は、何やら興味津々で。

佐々木は原田と目があって、素朴な疑問……という風にもう一度疑問を口にした。

「アオさんと、ちゅーした?」

「は……?」

ほとんど同じ質問に、原田は間抜けな声で問い直す。

いや、問い直しているわけではなく、ただ単に呆気にとられてそれしか出てこなかっただけなんだけど。

佐々木はとりあえず意味は通じただろうと、机に顎をのせて原田を上目づかいに見上げる。


「だってさー。お前とアオさんが付き合い始めて、もう三ヶ月だろー。そしたらもーちゅーくらいしてんだろーなーって思ったら、なんかむかついた」

「……お前がむかつく意味が解らん」

そしてクラス中が静かになってるのも、分からん。


HRが終わった後の教室は、さっきまでざわざわと煩かったはず。

なんで、こんなに静かなんだよ。


いたって普通の音量で話しているはずなのに、教室に響いている佐々木と自分の声。

佐々木はそんな事何も気にならないのか、むくれた顔のまま原田を見ている。

「いいなーいいなー、彼女いてー。年上だし、向こうからしてくれるのかなー」

「リアルな想像してんじゃねぇよ」

「えっ、じゃあやっぱアオさんからしてくれんの? あのちっこさでどーやって?」

「アオに出来るか、そんなこ……っ」

思わず叫んでしまって、慌てて口を塞ぐ。

佐々木の口八丁にのせられるところだった、あぶねぇあぶねぇ。


佐々木は何か納得した様に、うんうんと頷くとそーだよなーと呟いた。


「年上でもあのアオさんだもんなぁ。女子大生の括りにあの人がいること自体、何かの間違いだろ」

……それは若干の同意。

「お前が男子高校生の括りにいるのも、何か間違ってるけどな」

「余計なお世話だ」

鞄に教科書を仕舞い込みながら、佐々木の言葉に即反応する。


そうなのだ。

私服で外で会うと(と言っても、まだ数回しかあってないけど)、確実に自分の方が年上にみられる。

まるで女子高生をかどわかした大学生の様に。

どっちが……っていうわけじゃなく、どっちも年齢相応じゃない見てくれというのは決定事項だろう。



「てことは、やっぱお前から行くのか。へたれっぽいから出来なさそうなくせに、お前からか」

「はぁ?」

なんでそんな事を言わんといけない。

「ってか、そんなのお前に関係ないだろうよ」

「えー、楽しみの少ない受験生&非リアに潤いをおくれよー。いいよなー、付き合いたてー、やらしー」

これ以上付き合ってると脳味噌腐りそうなので、脱出する。

鞄を持って立ち上がると、手をひらひらさせて佐々木を追い払う。

「いい加減、やめろその話題。俺帰るから、じゃぁな」

一気に言い放つと、佐々木の返事を待つまでもなく歩き出した。

今日は早く帰りたいんだ。

佐々木なんぞと話してる暇はない。


――が。


「なんだよ、アオさんと会えるからってさー」


……っ


驚いて、振り返る。

「おま、なんで……知って……」


ばれると乱入されそうだから、言ってなかったのに……!



自宅アパートに戻ったアオが、久しぶりに要さんちに遊びに来てるのだ。

当の要さんは、今日明日と自治会の慰労会で温泉旅行なのだが。

要するに、留守番要員。



佐々木はしゃがんだままにんまり笑って、ちちっと人差し指を顔の前で揺らした。

「情報網を侮っちゃいけないよ」

「三和か。辻経由で三和からか」

「ぴんぽーん」


脳裏に浮かぶは、人をおちょくる事にだけは長けている姉の姿。

アオと直接連絡を取り合っているから三和には伝わっているとは思っていたけれど、三和自身は大学が忙しくてこっちにいない。

それもあって、邪魔されないと思っていたのに。


「絶対来るなよ」


睨みつけながら威圧感バシバシにそう告げると、佐々木が立ち上がる。


「えー、俺達もアオさんに会いたいのにー。二人っきりで何するのー。ちゅーばっかしてると脳味噌溶けるよ」

んなわけねぇだろ。

「いいから来るな」

来たら煩い。こっちだって久しぶりに会うんだから、邪魔されたくない。

念を押す様に低い声で言い放つと、佐々木はにやりと笑って目を細めた。


「二人っきりで何期待してんのー。やーらし、原田。ちゅーから先に進んじゃうの?」

「ちゅーもしたことないわ!」



……



教室の静けさが、なぜか痛かった。










教室の異様な雰囲気を何も言わずに振り切って、原田はアオのいる要さんちへと自転車をこぎ始める。

何かの時のためにと、要さんが中古の自転車を近所の人から貰ったらしい。

用がある時は使っていいと言われていて、今朝借りてきたのだ。

もう要さんは出発した後だったらしく、誰もいなかったけれど。



自転車で住宅街を通り抜け、見慣れた土手へと上がっていく。

秋も深まってきた今日この頃、気持ちいい風が吹き抜けていて。

残暑も鳴りを潜めてきている。



――アオさんと、ちゅーした?



佐々木の言葉がよみがえって、思わず顔が熱くなる。

ちゅー……きす……。

繰り返す、脳内。


し、したい。

正直言えば、してみたい。



――ちゅーから先に進んじゃうの?



す、進めるもんなら……すすみた……



「だぁぁぁぁっ」


思わず変な方向に暴走し始めようとした妄想を、声を上げて発散する。


あいつが余計な事言うから……っ。

明日佐々木をぼこる、と心に決めて、ぎゅっとグリップを握る手に力を入れる。



付き合って三ヶ月。

未だ、何回かしか会ってないから。

手を繋ぐ、ここで止まっている。


俺も一応男の端くれでありまして。

どんくらい経ったとか、その、時間とか期間とかの問題ではなくてですね。



――二人っきりで何期待してんのー



きょ、今日こそは……!




今まで何回か撃沈している目標を胸に掲げ、原田はペダルを踏む足に力を込めた。






---------------------アオ視点に続く。

原田が出て行った後の、教室。

「お前、あんまり遊ぶなよ原田で」

いつの間にか教室内にいた井上が、溜息をつきながら佐々木の側へと歩いてきた。

その後ろには、面白そうに目を細める辻。

クラスメイト達が辻を見て若干顔を引きつらせているのは、……顔を赤らめているのは前に爆弾発言をしたからだろう。


佐々木はにやーっと笑って、原田の机に腰を掛けた。


「だって面白いんだもん、あいつ。朝から何やら決意を秘めたお顔をしてさー」

「まぁ、あいつ生真面目だからなぁ。中々、手出せないんじゃないの。あまり煽ってやるなよ」

「煽られでもしないと、先に進めなさそうだけどね」

「辻……」




--------------------


アオ視点は、出来れば今週中に更新します。

が、予定は未定です(๑ÒωÓ๑)キリッ

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