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ちょい短いです^^;
再会を果たした二人を、静寂が包み込む。
――なーんて書いたらなんかいい雰囲気っぽいけど、それ、全く違う。
「……」
原田は固まっているアオを見下ろして、ゆっくりと口端を引き上げた。
それは笑おうとしたわけではなく、無意識に上がってしまったのだ。
感情とは裏腹に。
それでもその表情にほっとしたアオは、一瞬の後、大声で怒鳴りつけられてびくりと背筋を伸ばした。
「お前の本名、ほぼそのまんまじゃねぇか!! 何が素敵だ、何が偽名だ!」
「ふぁっ!?」
びしりと原田が指差したネームプレートに刻印されている、名前。
――高坂あおい
あおい。
アオ。
「ふざけんなよ、マジで! 本名なら本名と言え!」
「へっ? ご、ごめ……」
「ごめんで許されるか、この年齢詐欺!」
「ねっ……年齢詐欺?」
うろたえる様に原田の怒鳴り声を聞いていたアオが、その言葉にぎっと睨み上げてきた。
「年齢詐欺なんてしてないよ! ちゃんと言った、ななしくんより年上って!」
「だから、それが詐欺なんだよ! 俺よりおっさねー顔して年上とか言われて、あーそうなんだーおねーさーん、とか納得できるか阿呆!」
「おっ……、それいうならななしくんこそ制服詐欺じゃない! その顔で制服着てるとか、全高校生に謝りなよ!」
「んだとこら。俺が全高校生に謝るなら、あんたは全大学生に謝れ!」
「だったら、全未成年に謝って!」
「じゃあ、あんたは全人類に謝ってこい!!」
意味の解らない怒鳴り合いが、阿呆だとわかっていても止められない。
ずっと抑え込んでいた感情が、くだらない言葉で発散されていく。
「ぜっ、全人類とか、そこまで言う? 年上に向って!」
「自分の名前も名のれない奴を、年上とはみなさない」
そう言うと、アオはぐっと押し黙った後、吐き捨てる様に呟いた。
「名前なんて、どーでもいいじゃない」
「……んあ?」
思わず凄んだ原田に、アオはびくりと動きを止めた。
どーでもいい?
名前なんて、どーでもいい?
何か理由があって、名前を言いたくなかったんじゃないのか。
じゃぁ、俺が悩んでもやもやしたこの時間と気持ちは?
湧き上がってくるむかつき感に、原田は感情のまま叫んだ。
「本名でいいなら、初めからちゃんと名乗れ!! どんだけ俺が、あんたの名前知りたかっ……っ」
そしてがばっと、原田は自分の口を覆う。
……言うに事欠いて、俺、何口走った。
アオは、きょとんとした表情で原田を見上げている。
さっきまでの勢いやらむかむかやらが急速にしぼんでいき、動揺を隠そうとして反対に失敗する。
「……あ、いや。その、なんだ」
視線をあちこちに彷徨わせながら、なんとか言い繕おうと脳味噌を働かせてみるけれど、上手い言葉が出てこない。
名前知りたかったとか、もの凄い恥ずかしい会話じゃね?
これ、好意がある事、普通にばらしてるよな……
動揺しながらも、あわよくば自分の気持ちが伝わらないかと若干の期待を込めて、アオに視線を戻せば。
「……名前、知りたかったの?」
きょとっとした質問が返ってきました。
……好意をぶった切って熨斗つけて返された気分です。
思わず絶句したままアオを見下ろしていたら、きょとんとした表情のまま口を開いた。
「ななしくんも、名前、知りたかったの?」
……ななしくん「も」?
なにそれ、俺以外にもアオの名前を知りたい奴がいたって事?
アオは固まっている原田のシャツをもう一度固く握りしめると、あのね、と口を開いた。
やっと名前出せたー(笑
1年以上越し




