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31日目に君の手を。  作者: 篠宮 楓


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原田の+α 12日目・2

ちょい長くなったので、2話分に分けました。

ちょっと分け方が不自然だったかも;;

すみませんm--m

始業式の日から学校に置きっぱなしだった駐輪場の隅にやられていた自転車を引っ張り出して、原田はペダルを踏み込んだ。


要さんにアオが自宅に戻ったと聞いて落ち込んだ原田は、その日の帰りからバス通に戻していたのだ。

自転車だとどうしてもあの土手を通るのが近道で、避けていくというのも納得しかねた。

夏休み前の通学スタイルに戻しただけだけれど、自転車を自宅に乗って帰る事……夏休み前の終業式の朝と終わった後の始業式の帰りは毎年自転車で家まで帰る……をせず、そのまま学校に放置していた。



二週間近く通っていなかった、アオの……要さんちへと向かう道を自転車で走る。

夏休みが明けたからといって暑さは終わってくれるわけもなく、まだまだ元気に鳴く蝉の声を聞きながら土手に続く道を上がっていった。



住宅街の一角から土手にあがる事の出来るこの道を抜けると、一気に視界がひらける。

幅のある川の流れに、陽射しが乱反射してきらきらと輝いて。

土手には青々とした草が風に揺られ、土手は道幅も広くアスファルトで覆われているわけではないけれどそれなりに綺麗にされている。

近所の人が散歩に訪れ設置されているベンチに座って、のんびり話している姿もよくみられる程には。


元々は体力作りのために高一の夏休みから始めた習慣だったけれど、朝、川風に吹かれながら自転車で走るのが楽しみになった。

今年も同じような日々だと思っていた最中(さなか )、アオに出会った。

一日中、ベンチに座っていた、アオ。

なくした何かを探す様に、日がな一日、ぼうっと過ごしていた。

涙を流しながら、それに気づかないほど。


でも。

笑っても泣きそうな表情を消すことが無かったのに、いつの間にか表情が増えた。

泣きそうな表情が、少しずつ消えた。


泣きそうだったわけも。

泣かなくなったわけも。


どっちも聞こうとしなかった俺が、いけなかったのか。

何も言わなかったアオが、いけないのか。


とりあえず、恋愛感情云々を置いといたとしても――



「この仕打ちはねぇよな」



思わず口にして、目を細めながら自分を落ち着けるように息を吐き出す。

だめだ、やっぱり最後はイラつきが勝つ……!!



なんかちょっと少女漫画チックに脳内ナレーションして気を落ち着かせてみようとか、過去を振り返ってみたけど無理だったっつーのっ!

あぁぁ、しかも辻と三和とか……すげ面倒くせぇ。

腹黒二人がくっついたら、俺に未来はない――






そんな事をぶつぶつ考えていたら、いつのまにか要さんちについていたらしい。

見慣れた日本家屋の前で、いつも通り自転車を停める。

そして、はたと気づいた。

……つっか、アオがいないんだから玄関に回った方がいいんじゃ……?

アオがいたから庭先から上がってたけど、目上に人相手にそれはまずいよな……。


垣根の手前でどうしようかと悩んでいた原田は、ふと足元に影が差したことに気付いて顔を上げた。

「……っ」

顔を上げて、驚いて一歩下がる。


そこには――


「何をしてるんだい、高校生」


――要さんが立っていた。








「すみません、庭先から……」

玄関に回る前に要さんに見つかるとか、すげぇどんくさい。

要さんに言われるままにいつも通り庭先に自転車を止めて、縁側に腰を掛けた。

そこに和菓子がのったお盆が差し出される。

「……」

その和菓子は、多分。

ふと思い出すのは、アオに初めて会った日。

お礼にと渡された、プラスティックケースに入っていた和菓子。

差し出されたそれはあの時と違って小皿に出されていたけれど、なんとなく懐かしくて手に取った。

「若い子には洋菓子の方がいいんだろうが、生憎和菓子しかなくてね」

お盆の向かいに座布団を持ってきて座った要さんの言葉に、いえ……と首を振る。

「和菓子、好きなんで」

和菓子の置かれている小皿を見ながら、原田は口端を上げた。

「お茶と和菓子は、あいますよね」

そう言って、黒文字を手に取る。


アオと和菓子を食べた時は、手づかみだったな。



アオの居場所を聞き出したいと意気込んできたけれど、流れで縁側に座ってしまうとどんなタイミングで聞けばいいのか少し躊躇してしまう。

そんな中に出てきた和菓子は、なんだか少し気持ちを落ち着かせてくれた。

全ての考えがアオに行きつくのが、脳内乙女と言われるゆえんなんだろうけどさ。


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