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31日目に君の手を。  作者: 篠宮 楓
26日目~28日目 原田視点

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51/118

ななしターン開始。

アオで日数を使ったので、すでにななしは合宿終了前夜になってます(笑



「だりぃ……」

もわっ、と何かが漂っていそうな部屋の中、井上がぼんやりと呟いた。

「……だな」

その隣で板の間につっぷしたまま、佐々木が応える。

合宿に来て九日目の夜。

明日、家に帰るけれど。


さすがに疲れた。

がっつり疲れた。

そこかしこが筋肉痛。

筋肉痛が売れるなら、きっと俺は大金持ちになれるだろうこと間違いない。

「……駄目だ、相当頭が狂ってきてる」

自分の思考がおかしなことになっている事は、物凄く理解した。


「原田の脳が狂って来たなら、俺が腐ってもおかしくねーな」

「阿呆か、俺を基準にすんじゃねーての」

井上の言葉に答えながら、原田は畳に寝転がっていた体勢から上半身を起こした。

部屋を見渡せば寝転がる井上と佐々木、んで俺。

そして――


「こんな状況でおかしくならないなんて、人としてどうかと思うけどね」


短パンTシャツの三人の中で、唯一ジャージと半袖ポロシャツを着ている辻。

なぜ、お前は汗をかいていない。

おかしいのか? 熱中症的な感じで汗が出てないのか?

「……ものすごく涼やかに見えるが、お前も暑いのか?」

「当たり前じゃない」


見えねぇ……


残り三名、どう考えても心の声は斉唱だっただろ。

「こんなに暑いんだから、ねぇ?」

「でもお前、汗かいてねぇし」

いつの間にか起き上がった井上が、辻の横から顔を覗き込みながらぼそりと呟く。

辻は薄く笑いながら、腕を振り上げて井上を押しのけた。

「寄るな井上、暑苦しい」

ばっさり一刀両断して、辻はテーブルの冷茶を口に含む。

そんなに力は入っていなかっただろうけれど、しゃがみこんでいたままの体勢だったからか、ころんと後ろに転がる井上。

そのまま近くに寝転がっていた佐々木の足に顔が激突して、瞬時に飛びのいた。


「てめ、いてーしくせぇっ!」

「くさくねぇよ、気の所為だよ、風呂入ってねーよ」


一瞬の、間。


「「「……」」」


……風呂、入って、ねぇよ?



「ちょ、待て! 風呂まだ入ってないのか!?」

焦った声で井上が問いかけるのを、固唾をのんで見つめる。

佐々木は何驚いてるんだとでもいう様に首を傾げると、少し上げていた頭を床に戻した。

「だって寝るまでに汗かきそうじゃんか。どうせなら寝る前に入るよ」


……。


今日、一日練習してたよな。


思わず佐々木から遠のきたくなるのは、人として間違ってないだろう。

辻はそんな状況にため息をつくと、立ち上がって部屋のクローゼットを開けた。

そこには、各人の荷物が詰め込まれている。

と言っても、明日は帰るわけだしほとんどまとめられているんだけれど。

唯一纏まってない、男。それは。


「佐々木」


辻はぐちゃぐちゃのままの荷物からバスタオルと着替えを取り出すと、ばさりと仰向けに寝転がっている佐々木の上に放り投げた。


「今すぐ入ってきなよ」


佐々木は被せられたタオルを右手で持ち上げると、何か言おうと顔を上げた。

「俺の勝っ手だ……」

けれど不自然な箇所で、佐々木の言葉が止まる。

その表情は、固まっていて。

視線の先の辻は、薄く笑ったまま口端を上げた。



「……へぇ?」



「「「……」」」



ひやりとした。

比喩じゃなくて。

一気に体感温度下がった。


「行ってきます!」


なぜか佐々木につられるようにして、井上と原田も部屋を飛び出した。


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