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31日目に君の手を。  作者: 篠宮 楓
21日目~25日目 アオ視点

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「……はい、それでは一日の午前中……、はい。お願いします」

見えていないというのに、電話でも頭を下げてしまうのは私が小心者故だろうか。

相手の挨拶を待って通話を切る。

携帯を座卓に置いて、麦茶で口を湿らせた。



顔を上げれば、見慣れた風景。

土手と木々と草むら、そして空のコントラスト。


アースカラーは、優しさと穏やかさを与えてくれる。


どこかでこの空を、ななしくんは見ているのかな。

私にとっての、アースカラー(自然の綾なす色)は、ななしくんの存在そのものだ。


くすりと、笑う。



聖ちゃんの時もそうだけど、唐突に気づいてその気持ちにのめり込むのは、私の悪い癖なんだろうね。

極端すぎる自分の感情に、戸惑うよりも笑い呆れる。



ななしくんが合宿に行って、もう一週間以上。

ずっと、その姿を見ていない。

寂しいし、切ない。

けれど、キャンバスに向かっている間は無心で。

無心で、描き続けていた。


心に灯る淡い感情を、色に変えて。

寂しい気持ちを、色にのせて。

幸せな想いを、色に込めて。



ななしくんを思い描きながら、私はその世界に浸りきっていた。


だから、切ないと感じる時はきっと少なかったけれど。


ふと、気づくと。

傍にいない事に心が痛む。


……まぁ、いたらいたで怒られてたと思うけどね……。


その字の通り寝食を忘れて取り掛かったキャンバスは、私の色を描き出してくれたけれど。

様子を見に来た村山先生&看護婦さん達に、幾度となく怒られてしまった。

要さんにも連絡が行ったみたいだけれど、『自己責任』と一刀両断されたらしく、村山先生はななしくんの帰宅を心待ちにしているらしい。

私を怒ってもらうために。


……私、どんだけの人(笑)



描き終えたキャンバスを置いてある、続きの部屋に視線を向ける。

昨日終えたそれを運び込んで、ぴっちりと閉めてある引き戸。




思うまま描いたその色を次に見るのは、三十日と決めてある。

ほぼ一週間……厳密に言えば五日間、私はそれを見ないと決めた。




思うまま色を描いた。

余計な事を何も考えず、思うままに筆を動かした。


聖ちゃんの言葉はない。

聖ちゃんの視線もない。


私の描きたいものを、描きたいだけ詰め込んだキャンバス。


次にそれを見た時。



私はそこに、私を見つけられるかもしれない――


アオターン終了です。

次話から原田ターンになります。

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