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アオ視点開始です
いくつものを、心を描いた。
この場所に来てから、……そしてななしくんに会ってから。
その欠片が、部屋の隅々に散らばる。
色に囲まれたこの場所に、ひときわ目立つ真っ白なキャンバス。
水彩用のキャンバスは、何にも染まらない色で、私を見つめている。
ななしくんから貰った色
小さな欠片が、いつの間にか溢れるように、心を染め上げていく。
それに伴うのは、幸せという名の感情。
そして、ほんの少しの切なさ。
ななしくんが合宿に行って、今日で四日目。
ななしくんと会ってからこんなに顔を見ない日はなかったから、余計寂しさが募る。
聖ちゃんに抱いていた気持ちとは、違う。
常に前を行く聖ちゃんを追いかけて、置いて行かれないように息もつけないほど駆けていたあの頃。
でも、ななしくんは。
私を見て、私の傍らにいてくれて。
ほんの少し、半歩前を歩いて……
手を差し伸べてくれる。
穏やかで、優しい想い。
目を瞑って、息を吐き出す。
浮かぶのは、一面の空。
ななしくんの優しさの込められた、色。
思わず笑みが零れる。
「ななしくん効果、だね」
目を開けて、筆を執る。
「ね、ななしくん」
幸せな気持ちも、切ない気持ちも。
君がくれた心を、私は捕まえていたいんだよ――
……いつでも君に、会えるように。




