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すみません、少し訂正+加筆しましたm--m
すっかり岸田の存在を忘れてました←書き手なのに
「おい、餌にもならないななし。さっさと下の奴ら連れて外周いって来い」
声と共に飛んできたタオルを後頭部で受けて、それを握りしめながら後ろを向いた。
そこには他校の部長と一緒に立っている、佐々木の姿。
その表情は、物凄く見下している目。
「佐々木、てめぇ」
「アオさんの手料理食えると思ったのに、何が悲しくて高一男子が作った飯を毎食食わねばならん!」
「なら、てめぇが作れ! 高三男子!」
「女の子がいい女の子が。食うなら女子の作ったごはんーっ」
「……女子が作ってんじゃねーか。岸田が中心になって作ってるんだろ? 顧問も手伝ってるみたいだし」
俺の言葉に佐々木は両手を上げて、肩を竦めた。
「お前馬鹿だろ。八人中女子が一人のメシなんざ、女子のメシとはいえん!」
「一度脳味噌入れ替えて来い」
佐々木の言葉に呆れ何も言えなくなった俺は、タオルを肩にひっかけて合宿所を出た。
合宿に来てすでに三日目。
初日の勢いがだんだんと疲れに変わっていく時期。
合宿所のそばにはグラウンドが整備されていて、そこに部員が集まっていた。
三年生は井上だけ。
辻は顧問と買い出しに行っているし、佐々木は言わずもがな。
残りの三年は、俺と井上だけだ。
井上は俺を見つけると、軽く片手を上げた。
「筋トレ終わった」
「じゃー、外周行くか」
三年は少ないなりにやる事が多く、役を持っていない井上と俺で下級生の面倒を見る事になっていた。
別個に筋トレと準備運動を終えていた俺は、下級生を連れてグラウンドの外周を走りはじめる。
別に陸上部ではないから、速さを競う為に走るわけじゃない。
どれだけ持久力をつけられるか、だ。
バレーボールと言えばそんなに走り回ったりしないイメージがあるかもしれないけれど、かなり体力を使うのだ。
基礎体力は、一番重要。
リズムを崩さず、淡々と外周をこなしていく。
すると頭の中は暇になって、余計な事を考え始める。
今日も、快晴。
普段より標高の高い場所にいるせいか、空も青々と綺麗に感じる。
アオも、この空を見ているんだろうか。
見せた空の画像を、くい入る様に見つめていたアオ。
その姿を見て、嬉しくてたまらなかった。
自分が一番好きなものを、綺麗と言ってもらえたただそれだけのことに。
自宅に戻るのは、来週。
会えない期間は、あと七日。
寂しいとそう思えてしまうのは、本心だ。
アオが合宿への誘いを断ると、あの時実は思えなかった。
うぬぼれじゃなく、アオは俺に少しは関心があると思ってたから。
会えない事を、寂しいと思ってもらえるものだと考えてしまった。
実際は、そうじゃなかったけど。
結構、がっくりきたけど。
俺が思うほど、アオにとって俺の存在は大きくないってところか。
“ななしくん!”
アオの笑顔が、脳裏を掠める。
ふわりとわらう、優しい笑顔。
くるくると変わる、素直な表情。
けれど何かを隠して、何かを探しているその目。
「……」
自分の考えに、自分で照れてどうする。
顔が赤くなっている事を自覚しながら、それでもアオを想う事をやめられない。
乙女で悪かったな。
思わず、自分自身に悪態をついた。
なんで、あんな面倒な女を好きだと思ってしまったのかと思うけど、今更だ。
早く帰りたいと、そう思う。
七日後、ここから帰れる。
そうしたら、その足でアオに会いに行こう。
たくさんの、色を持って。
原田視点終了です。
次話からアオ視点。
アオターンは文字数が少なくなりますが、よろしくお願いします。




