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31日目に君の手を。  作者: 篠宮 楓
14日目~20日目 原田視点

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44/118

幕間 辻くん

本編ではありませんが、なんでいきなり辻が台頭してきたのか(笑

決してやさしさじゃないんだよ...な、裏話です。

横道ですので、お読みにならなくても本編は繋がります^^

辻のイメージを崩したくない方は、読まれない事をお勧めいたしますm--m

「おー、辻。原田、もう行ったか?」

アオさんの元へと自転車で駆けて行った原田を見送ってから、一人部室棟へと向かった僕は、その目の前で時期部長とマネージャーである岸田さんと話し合っていた佐々木に声を掛けられて頷いた。

「うん、行ったよ。でも、顧問に捕まったから井上に追いつくことはできないんじゃないかな」

すでに諦めてたし、そう続けると佐々木は面白そうに笑う。

「かなり焦って駆け出したから、顧問とか無視していくかと思ったけど。あいつ、ホント真面目だよな」

怖いお顔の原田くんは、たいそう真面目で面倒見がいい。

それは、原田と面識のある人ならば知っている彼の性格。




「で、そっちは終わったの?」


先ほどからじっと見られていることに僕は気づいているけれど、決して表情には出さない。

佐々木はそんな僕の態度に苦笑しながらも、持っていたマーカーのふたを閉めた。

「まぁ、大体。岸田、こんなもんで分担わけはいいな?」

「……」

佐々木が問いかけた相手からの返答はなく、彼女はぼうっとした表情で僕を見ている。

それに困ったように笑いながら、佐々木は手に持っているマーカーで岸田さんの腕をつついた。

「きーしーだ。聞いてるか?」

「え!? あ……」

さすがに直接的な刺激で声を掛けられていることに気が付いた岸田は、一瞬視線を彷徨わせた後、何? と佐々木に問い返した。

「何って。だから仕事の分担は、こんな感じでよろしーでしょーか? マネージャーさま」

ふざけたその言葉遣いに、強張っていた岸田さんの雰囲気が微かに和らぐ。

こんな風に気持ちを和らげられるのは、佐々木の人柄。

決して、僕ではこうはいかない。

岸田さんはまだ引きつったような顔のまま、小さく頷いた。


「えぇ、これで大体。佐々木くんたちも手伝ってくれるわけだし、冬前までなら大丈夫。ただ、その後になると受験とか……」

「だよなー。マネージャー、誰か入ってくんないかねぇ。お前、なんか伝手ないの?」

肩を竦めた佐々木は、横でホワイトボードの内容を板書していた時期部長に唐突に話を振った。

けれど驚く事無く次期部長……二年の柿崎……は、ノートから目を離さないまま否定の言葉を口にする。

「無理ですね。その伝手使って、あれでしたから」

「……あれか」

はぁぁ。

思わずという風に、佐々木が大きく溜息をついた。

岸田さんは何か考え込むように、口元に手を当てて目を伏せている。


“あれ”


それは、突然辞めた一年のマネージャー。

あの子は、柿崎の中学の後輩だった。

バレー部のマネージャーをやっていたというだけあって岸田さんには負けるけれどそれでも手際が良く、それはそれは皆で安堵したものだ。


それが、先月突然辞めると言い出して、そのまま本当に部活に来なくなってしまったのだ。

判然としない辞める理由は、岸田さんが根気よく聞きだしたところによれば。


“憧れの先輩に彼女がいるのを、入部してから知りました。傍にいるのが辛いんです”


へー。


それを聞いた時、怒りよりも呆れの方が先に立った。

そんな理由で、辞めてしまうくだらなさ。

内面ギャップというよくわからない陰口を叩かれている僕は、その通りに、困った笑顔を晒しながらも内心ものすごく冷たい風が吹き抜けた気がしたのは間違いない。


けれど。

“少し、分かるかな。まぁ、辞めはしないけれどね”

そう言った岸田さんの言葉に、どくりと鼓動が大きく跳ねた。



――確かに、君には分かるんだろうね


そう、呟く



岸田さんが原田の事を好きなのは、周知の事実だから。

知らぬは本人ばかりなり……ってね。

それでも辞めないのは、彼女なりにマネージャー仕事に責任を持っているから。



横目で岸田さんを見れば、やっぱり考え込んだままの姿。

きっと、今朝の事でも考えているんだろう。


僕は内心の黒さを隠してどんよりした空気を払しょくするように、ぽん、と岸田さんの肩を叩いた。

「岸田さん、疲れたでしょう? 後片付けは僕達でやるから、上がっていいよ? 合宿の準備もあるだろうし」

そう言って促すと、岸田さんはまっすぐに僕を見上げた。



その目は、違う事を聞きたがっている事は分かっている。

それでも、僕は言わない。



笑んだまま見下ろす僕に諦めたのか、岸田さんは微かに口端を上げて笑顔を作ると挨拶をして校舎へと走って行った。

心持ち、駆け足で。

その後ろ姿を見送っていた僕に、佐々木と柿崎の溜息が重なる。



「お前、なんかしたのか? 今日の岸田、ずっと上の空だったぞ」

「確か、朝、原田先輩と辻先輩が一番に来てましたよね?」

疑問ではなく“何かした”事、前提というところがさすが一緒に部活をやっている仲間だといえようか。

笑みを崩さないまま振り返って、まぁね、と呟く。


「これでも、彼女にいいと思う事をしてるつもりなんだけど?」

その言葉に、男二人のドン引いた視線が向けられた。

「辻先輩って、容赦ないっすよね。絶対、岸田先輩が気になる様に仕向けたんですよ」

「普通、相手には優しくなるよな」


「え? 優しいと思うけど?」


だって、先の見込みがない想いなら早めに知るべきだろう?

そう続ければ、二人は何か恐ろしい物でも見るように眉間に皺が寄る。

「……本気で容赦ない」

「それを優しいと思うあたり、本気で怖ぇ」

「そうかな?」



でも、僕も結構我慢してると思うんだよね。



“憧れの先輩に彼女がいるのを、入部してから知りました。傍にいるのが辛いんです”



それを、分かるといった岸田さん。

僕も、少しなら理解できるかな。



「辻先輩が岸田先輩を好きな事も、周知の事実ですからねぇ。岸田先輩の好きな人が原田先輩だってくらい……」



ずっと我慢してきたんだよね、もしかしたら君の片思いが叶うかもしれないしと思って。

でもさ。原田が特別な人を見つけたんだから、君の気持ちを僕に向けても……


「……いいと思わない?」

そう告げる僕に、佐々木と柿崎はぶんぶんと頭を振った。

「「思わない」」



んー、……そうかな???



崩れちゃいました?(笑

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