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31日目に君の手を。  作者: 篠宮 楓
14日目~20日目 原田視点

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42/118

その日の練習を終えて片づけを終えた後、佐々木は岸田と二年の次期部長を交えて今後のマネージャー仕事の分担を決めていた。


夏が終われば、三年である俺らは引退。

本来なら岸田も引退だけれど、そうするとマネージャーが一人もいなくなるという状況に陥る為、もう少し残る事になっている。

まぁ、俺らも手伝うが、中心は岸田だろう。

新しくマネージャーが入らないと、一年生が引き継ぐようになるんだろうな。

部室の前に掛かっているホワイトボードに分担を書き込みながら、珍しく真面目に佐々木が他の二人と話し合っていた。




部室の中からその話し合いを眺めていたら、なんとなく朝、辻に言われた言葉を思い出してしまった。


“鈍いのは、お前だよ原田”


笑っているのに笑っていない、そんな表情で。

実際問題、なんで鈍いって言われたのかよくわからない。


「おい、原田。お前、聞いてんのかよ」

「あ? あぁ。わり」


つい佐々木たちの方を気にして意識を向けていたのに、気が付かれたようだ。

井上は面倒くさそうにボールペンで頭を掻いて、溜息をついた。

「なんで俺らが合宿メニューとか作んなきゃなんねーんだよ。これって、部長か副部の仕事じゃんか」

ぼやく井上の手元の紙を覗き込むと、真白なメニュー表。

「仕方ないだろ、部長の引き継ぎも一緒にするとか言ってんだから。辻は顧問のとこに行ってんだし。つか、お前何も進んでないじゃないか」

合宿の練習メニューを決めるために、後半のチーム連を外れてたくせに。

思わず眉間に皺を寄せると、井上が背筋を丸めてボールペンを動かし始めた。

「もうさ、あれだよ! 夏の練習そのまま入れればいいんだよ!」

「あぁ!? んなわけないだろ!」

慌てて怒鳴ると、井上はぴたりと動きを止めた。


「……どうした?」


そのおかしな行動に、脳でも腐ったかと思って頭に手を載せた途端、弾かれた様に席を立った。

ガタンッと大きな音が部室内に響く。

そのまま荷物をスポーツバッグに放り込み始めた。

「おい、井上? おい、どうした、大丈夫か?」


よくわからない衝動的とも思えるその行動を、思わず一歩引いて見てしまう。

なんか、ネジでも飛んだのか……?


ざばざばと荷物をまとめると、井上は部室から駆け出した。


「例のあの場所で、麦茶飲みながら作るぜ佐々木!」


そう言うと、飛び出しざまに佐々木の肩を叩いた。


佐々木はふぃっと顔を上げると、俺の方にちらりと視線を向けてにやりと笑った。

「俺も後から行くわ」

「おうっ!」

なんだか意思疎通がなったようで、ぽかんと成り行きを見守っていた部員をしり目に井上は駐輪場の方へと走って行った。

「どうしたんだ、あいつ」

佐々木に近づいて声を掛けると、そりゃお前、と当たり前のように笑った。


「土手の前の麦茶が出る日本家屋に行ったに、決まってんじゃないか」



ドテノマエノムギチャガデルニホンカオク……???



佐々木の言葉を脳内で繰り返して、一瞬、動きが止まる。



「あいつは、バス通のはず」

その日本家屋に行くには、自転車が……

佐々木はもっていたマーカーでホワイトボードに何かを書きながら、小さく頷いた。

「今日は遅くなる予定だったから、チャリ」

「は!?」

「ついでに、俺も辻もチャリ」



……



「お前ら、くんなよ!」



それだけ叫ぶと、俺は荷物を手に井上の後を追いかけた。





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