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第4章『完結編:影の領域 ― 創造主の帰還と真のエンディング』

第34話:影の領域・第四戦 ― “創造主の後悔”

影が消えたあとも、

黒い街は静かに揺れ続けていた。

建物は歪み、

空は黒く濁り、

地面は黒い霧に覆われている。

まるで世界そのものが、

俺の心の奥底を映しているようだった。

「創造主よ」

ルシフェルが静かに言う。

「影は、次の“形”を準備している。

お前が最も後悔しているものを使うはずだ」

「……最も後悔しているもの……」

胸がざわつく。

未完のキャラたち。

名前を与えなかった存在。

放置した設定。

だが――

それらよりも深く、

俺の心に刺さっている“後悔”がひとつだけある。

「主人公……?」

リリアが不安そうに袖を掴む。

「主人公……顔色が悪いよ……」

「……大丈夫だ」

そう言いながらも、

胸の奥が重く痛む。

________________________________________

◆ 街の奥へ

俺たちは黒い街の奥へ進んだ。

歩くたびに景色が歪み、

道はねじれ、

建物は形を変える。

「……また迷路か?」

「違う」

ルシフェルが首を振る。

「これは“創造主の後悔”だ」

「後悔……?」

「お前が最も強く後悔している記憶が、

この街を歪めている」

ハルカが補足する。

「影は、創造主の“後悔”を利用して空間をねじ曲げています。

この街では、あなたの心がそのまま現実になります」

胸が痛む。

「……俺のせいで、また世界が……」

「違う」

リリアが俺の手を握る。

「主人公は逃げてないよ。

だから影が暴れてるんだよ」

その言葉に、胸が少しだけ軽くなる。

________________________________________

◆ 影の声

そのとき――

街のスピーカーから、

“俺の声”が流れた。

「――創造主。

まだ逃げてるね」

影の声だ。

「自分の後悔から。

自分の罪から。

自分の弱さから」

影の声は続く。

「創造主。

お前が最も後悔しているのは――

“キャラを殺したこと”だろう?」

胸が刺される。

「……やめろ……」

「やめないよ。

だって、これは全部“お前の本音”だから」

影の声が甘く響く。

「創造主。

お前は一度だけ――

“キャラを殺した”ことがある」

リリアが息を呑む。

「主人公……

キャラを……殺したの……?」

「……違う……

違うんだ……」

だが、影の声は止まらない。

「違わない。

お前は“物語の都合”で、

キャラを殺した」

胸が締め付けられる。

________________________________________

◆ 創造主の後悔

「創造主よ」

ルシフェルが静かに言う。

「お前が最も後悔しているのは――

“キャラを殺したこと”だ」

「……ああ……」

俺は拳を握った。

「十七歳の頃……

俺は物語の盛り上がりのために、

キャラをひとり殺した」

リリアが震える声で呟く。

「主人公……

そんなこと……」

「そのキャラは……

俺が初めて“本気で作ったキャラ”だった」

胸が痛い。

「でも……

俺はそのキャラを“物語の都合”で殺した。

感情じゃなく、

物語のために」

ルシフェルが目を伏せる。

「創造主よ。

お前はその後悔を、ずっと心に閉じ込めていたのだな」

「……ああ」

そのとき――

街の奥から、

黒い霧が渦を巻いて現れた。

________________________________________

◆ 死んだキャラの影

黒い霧が形を作る。

細い腕。

長い髪。

優しい瞳。

そして――

俺が十七歳の頃に作り、

そして“殺したキャラ”の姿。

「……嘘だろ……」

リリアが震える声で呟く。

「主人公……

この人……」

「……ああ……」

俺は唇を噛んだ。

「こいつは……

俺が殺したキャラだ」

影キャラはゆっくりと顔を上げた。

その瞳は真っ黒で、

だが涙が浮かんでいた。

「――どうして?」

影キャラが呟く。

「どうして……

わたしを殺したの……?」

胸が張り裂けそうになる。

「……違う……

違うんだ……!」

「違わないよ」

影キャラは微笑んだ。

「あなたは……

わたしを“物語の都合”で殺した」

その言葉は、

俺の心を深く刺した。

________________________________________

◆ 影キャラの攻撃

「創造主」

影キャラが手を広げる。

「あなたはわたしを殺した。

だから――

今度はわたしがあなたを壊すね?」

黒い霧が刃となり、

俺に向かって飛んでくる。

「くっ……!」

俺は横へ飛び退いた。

霧の刃が地面を切り裂き、

黒い穴が開く。

「創造主、危険です!」

ハルカが叫ぶ。

「影キャラは、創造主の“後悔”を具現化しています!

攻撃はすべて、創造主の心を狙っています!」

ルシフェルが剣を構える。

「創造主よ。

影は、お前の心の弱点を突いてくる。

この戦いは――精神の戦いだ」

________________________________________

◆ 向き合う覚悟

「……ごめん」

俺は影キャラを見つめた。

「俺は……

お前を殺したことを後悔してる。

ずっと……ずっと後悔してた」

影キャラの動きが止まる。

「……後悔……?」

「ああ。

お前を殺したことを、

俺はずっと後悔してた」

胸が痛い。

だが、言葉は止まらない。

「でも――

今は違う」

影キャラが俺を見る。

「俺は戻ってきた。

お前を救うために。

お前の物語を作り直すために!」

その瞬間――

黒い街が揺れた。

影キャラの体が揺らぎ、

黒い霧が薄くなる。

「……創造主……

あなた……

わたしを……」

「救いたい!」

俺は叫んだ。

「お前を救いたい!

お前の物語を、もう一度書きたい!」

影キャラの瞳から、

ひと粒の涙がこぼれた。

「……創造主……

ありがとう……」

黒い霧が影キャラを包み込み、

影は消えた。

________________________________________

◆ 第四戦の終わり

街の歪みが少しだけ収まり、

空気が軽くなる。

「創造主よ」

ルシフェルが静かに言う。

「お前は影に“四つ目の傷”をつけた。

だが――まだ倒せてはいない」

ハルカが頷く。

「影は、創造主の心の弱さが残る限り、何度でも現れます」

リリアが涙を拭きながら微笑む。

「主人公……

ありがとう……

この人も……救ってくれて……」

フェンリルが吠え、

ベヒモスが地面を踏み鳴らす。

俺は空の裂け目を見据えた。

「……行くぞ。

影を追う旅は、まだ続く」

________________________________________

第35話:影の領域・第五戦 ― “創造主の恐怖”

影キャラが消えたあと、

黒い街は静かに揺れ続けていた。

建物は歪み、

空は黒く濁り、

地面は黒い霧に覆われている。

だが――

これまでの揺れとは“質”が違った。

空気が重い。

息がしづらい。

胸の奥がざわつく。

まるで世界そのものが、

“何かを恐れている”ようだった。

「……嫌な気配だな」

俺が呟くと、ルシフェルが頷いた。

「創造主よ。

影は次に――

“お前の恐怖”を具現化するつもりだ」

「恐怖……」

胸がざわつく。

後悔でも罪悪感でもない。

もっと深い、もっと根源的な感情。

「主人公……?」

リリアが袖を掴む。

「主人公……震えてる……」

「……大丈夫だ」

そう言いながらも、

手がわずかに震えていた。

________________________________________

◆ 街の中心へ

俺たちは黒い街の中心へ向かった。

歩くたびに景色が歪み、

道はねじれ、

建物は形を変える。

だが――

今回は違う。

街そのものが“俺を拒んでいる”。

「……進めない……?」

リリアが不安そうに言う。

「道が……消えてる……」

確かに、

街の中心へ続く道が“黒い霧”に飲まれていた。

「創造主よ」

ルシフェルが静かに言う。

「これは“恐怖の霧”だ」

「恐怖の……霧……?」

「お前が最も恐れているものが、

この霧を生んでいる」

ハルカが補足する。

「影は、創造主の“恐怖”を利用して空間を封じています。

この霧は、あなたが恐怖を認めない限り消えません」

胸が痛む。

「……俺の恐怖……」

________________________________________

◆ 影の声

そのとき――

街のスピーカーから、

“俺の声”が流れた。

「――創造主。

まだ認めないの?」

影の声だ。

「お前が最も恐れているものを」

影の声は甘く、

だが底に冷たい刃を含んでいた。

「創造主。

お前が最も恐れているのは――

“失敗”でも“後悔”でもない」

胸が刺される。

「お前が最も恐れているのは――

“誰にも必要とされないこと”だ」

息が止まった。

________________________________________

◆ 創造主の恐怖

「……やめろ……」

思わず呟く。

「やめないよ」

影の声は笑う。

「創造主。

お前はずっと恐れていた。

自分には価値がないんじゃないか。

誰にも必要とされていないんじゃないか。

自分が作った世界も、キャラも、

誰もお前を求めていないんじゃないかって」

胸が締め付けられる。

「……違う……

違うんだ……!」

「違わないよ」

影の声は冷たく響く。

「お前は“孤独”が怖いんだ」

その瞬間――

黒い霧が渦を巻き、

街の中心に“何か”が現れた。

________________________________________

◆ 恐怖の具現化

黒い霧が形を作る。

細い腕。

長い髪。

だが、顔がない。

いや――

顔が“消えている”。

「……これは……?」

リリアが震える声で呟く。

「主人公……

この人……誰……?」

「誰でもない」

ルシフェルが静かに言う。

「これは“創造主の恐怖”だ」

「恐怖……?」

「そうだ。

“誰にも必要とされない自分”の具現化だ」

胸が痛い。

黒い霧の人影は、

ゆっくりとこちらへ歩いてくる。

顔がない。

声もない。

存在感が薄い。

まるで――

“誰からも認識されない存在”。

「創造主よ」

影の声が響く。

「これが、お前の恐怖だ」

________________________________________

◆ 恐怖の囁き

黒い人影が、

俺の目の前で立ち止まる。

そして――

声もないのに、

“言葉”が頭に直接響いてきた。

「――お前は必要ない」

「――お前は価値がない」

「――お前は誰にも求められていない」

胸が締め付けられる。

息が苦しい。

足が震える。

「主人公……!」

リリアが俺の手を握る。

「主人公は……必要だよ!

わたしが必要としてる!」

「創造主よ」

ルシフェルが前に立つ。

「私も、お前を必要としている」

ハルカが頷く。

「創造主。

あなたがいなければ、

この世界は存在しません」

だが――

黒い人影の囁きは止まらない。

「――お前は必要ない」

「――お前は価値がない」

「――お前は孤独だ」

________________________________________

◆ 向き合う覚悟

「……違う」

俺は黒い人影を見据えた。

「俺は……

必要とされてる」

黒い人影の動きが止まる。

「俺は弱い。

臆病だ。

未熟だ。

でも――」

俺はリリアの手を握り返した。

「リリアが必要としてくれてる」

ルシフェルを見る。

「ルシフェルが必要としてくれてる」

ハルカを見る。

「ハルカが必要としてくれてる」

そして――

自分の胸に手を当てた。

「そして……

俺自身が、この世界を必要としてる!」

その瞬間――

黒い人影が揺らいだ。

霧が薄くなり、

輪郭が崩れ始める。

「……創造主……

お前……

恐怖を……認めたのか……?」

影の声が震える。

「そうだ」

俺は叫んだ。

「俺は孤独が怖い!

必要とされないのが怖い!

でも――

それを認めた上で、前に進む!」

黒い人影が霧となって崩れ落ちた。

________________________________________

◆ 第五戦の終わり

街の歪みが少しだけ収まり、

空気が軽くなる。

「創造主よ」

ルシフェルが静かに言う。

「お前は影に“五つ目の傷”をつけた。

だが――まだ倒せてはいない」

ハルカが頷く。

「影は、創造主の心の弱さが残る限り、何度でも現れます」

リリアが涙を拭きながら微笑む。

「主人公……

ありがとう……

主人公は……ひとりじゃないよ……」

フェンリルが吠え、

ベヒモスが地面を踏み鳴らす。

俺は空の裂け目を見据えた。

「……行くぞ。

影を追う旅は、まだ続く」

________________________________________

第36話:影の領域・第六戦 ― “創造主の怒り”

恐怖の具現化が消えたあとも、

黒い街は静かに揺れ続けていた。

だが――

揺れの“質”が変わっていた。

空気が熱い。

地面が震える。

胸の奥がざわつく。

まるで世界そのものが、

“怒り”を溜め込んでいるようだった。

「……これは……?」

俺が呟くと、ルシフェルが目を細めた。

「創造主よ。

影は次に――

“お前の怒り”を具現化するつもりだ」

「怒り……」

胸がざわつく。

俺は怒りを表に出すタイプではない。

むしろ、怒りを押し殺し、

自分の中に閉じ込めるタイプだ。

だからこそ――

その怒りは、誰よりも深く、重い。

「主人公……?」

リリアが袖を掴む。

「主人公……顔が怖いよ……」

「……大丈夫だ」

そう言いながらも、

胸の奥が熱く疼いていた。

________________________________________

◆ 街の中心へ

俺たちは黒い街の中心へ向かった。

だが、歩くたびに景色が“燃える”。

建物が赤く染まり、

地面が熱を帯び、

空が赤黒く揺れる。

「……これは……?」

「創造主の“怒り”が世界に滲み出ている」

ルシフェルが静かに言う。

「怒りは恐怖よりも強い。

そして――破壊的だ」

ハルカが補足する。

「影は、創造主の“怒り”を利用して世界を書き換えています。

この街では、あなたの怒りがそのまま現実になります」

胸が痛い。

「……俺の怒り……」

________________________________________

◆ 影の声

そのとき――

街のスピーカーから、

“俺の声”が流れた。

「――創造主。

怒ってるね?」

影の声だ。

「お前はずっと怒っていた。

自分に。

世界に。

キャラに。

そして――創造主である自分自身に」

胸が刺される。

「……やめろ……」

「やめないよ」

影の声は笑う。

「創造主。

お前は怒っている。

“自分が弱いこと”に。

“自分が未熟だったこと”に。

“自分が逃げたこと”に」

胸が熱くなる。

「……違う……!」

「違わないよ」

影の声は冷たく響く。

「お前は怒っている。

“自分が創造主に向いていないこと”に」

息が止まる。

________________________________________

◆ 怒りの具現化

黒い霧が渦を巻き、

街の中心に“何か”が現れた。

それは――

俺の姿をした“巨大な影”。

だが、今までの影とは違う。

瞳が赤く燃え、

体から黒い炎が噴き出し、

空気が震えるほどの怒気を放っている。

「……これが……俺の怒り……?」

「そうだ」

ルシフェルが剣を構える。

「創造主よ。

これが“お前の怒りの化身”だ」

影はゆっくりと顔を上げた。

「――創造主」

その声は、

俺の声なのに、

怒りで歪んでいた。

「お前は怒っている。

ずっと怒っていた。

誰にも言えず、

誰にも見せられず、

自分の中に押し込めてきた怒りだ」

影は笑う。

「だから――

俺が代わりに爆発させてやるよ」

________________________________________

◆ 怒りの攻撃

影が腕を振り下ろす。

黒い炎が刃となり、

空間を切り裂く。

「くっ……!」

俺は横へ飛び退いた。

次の瞬間、

地面が“燃えた”。

黒い炎が地面を飲み込み、

巨大な穴が開く。

「創造主、危険です!」

ハルカが叫ぶ。

「怒りの影は、創造主の“破壊衝動”を具現化しています!

攻撃はすべて、創造主の心を狙っています!」

ルシフェルが剣を構える。

「創造主よ。

怒りは恐怖よりも強い。

そして――制御が難しい」

影が笑う。

「創造主。

お前は怒っている。

“自分が弱いこと”に。

“自分が逃げたこと”に。

“自分が未熟だったこと”に」

影は俺を指差す。

「そして――

“自分が創造主に向いていないこと”に!」

胸が刺される。

________________________________________

◆ 怒りとの対話

「……違う……」

俺は影を見据えた。

「俺は……

怒ってるよ」

影の動きが止まる。

「俺は弱い自分に怒ってる。

逃げた自分に怒ってる。

未熟だった自分に怒ってる。

でも――」

俺は拳を握った。

「その怒りは、俺が前に進むための力だ!」

影の瞳が揺れる。

「……創造主……?」

「俺は怒りを否定しない。

怒りは悪いものじゃない。

怒りは――

“変わりたい”という気持ちの裏返しだ!」

黒い街が揺れる。

影の体が揺らぎ、

黒い炎が弱まる。

「創造主……

お前……

怒りを……認めたのか……?」

「そうだ!」

俺は叫んだ。

「俺は怒ってる!

でも、その怒りを“破壊”じゃなく、

“創造”に変える!」

影の体が崩れ始める。

「……創造主……

お前……

強くなったな……」

黒い炎が霧となって消え、

影は消滅した。

________________________________________

◆ 第六戦の終わり

街の歪みが少しだけ収まり、

空気が軽くなる。

「創造主よ」

ルシフェルが静かに言う。

「お前は影に“六つ目の傷”をつけた。

だが――まだ倒せてはいない」

ハルカが頷く。

「影は、創造主の心の弱さが残る限り、何度でも現れます」

リリアが涙を拭きながら微笑む。

「主人公……

怒ってもいいんだよ……

主人公は、優しいから……

怒りをずっと我慢してたんだよね……」

フェンリルが吠え、

ベヒモスが地面を踏み鳴らす。

俺は空の裂け目を見据えた。

「……行くぞ。

影を追う旅は、まだ続く」

________________________________________

第37話:影の領域・第七戦 ― “創造主の願い”

怒りの具現化が消えたあと、

黒い街は静かに揺れ続けていた。

だが――

揺れの“質”がまた変わっていた。

空気が澄んでいるのに重い。

風が吹いているのに冷たい。

胸の奥がざわつくのに、どこか懐かしい。

まるで世界そのものが、

“何かを期待している”ようだった。

「……次は何が来る?」

俺が呟くと、ルシフェルが静かに答えた。

「創造主よ。

影は次に――

“お前の願い”を具現化するつもりだ」

「願い……」

胸がざわつく。

怒りでも恐怖でもない。

もっと深く、もっと根源的な感情。

「主人公……?」

リリアが袖を掴む。

「主人公……泣きそうだよ……」

「……大丈夫だ」

そう言いながらも、

胸の奥が熱く疼いていた。

________________________________________

◆ 街の中心へ

俺たちは黒い街の中心へ向かった。

だが、歩くたびに景色が“白く”なる。

建物が白く染まり、

地面が光を帯び、

空が淡い光に包まれる。

「……これは……?」

「創造主の“願い”が世界に滲み出ている」

ルシフェルが静かに言う。

「願いは怒りよりも強く、

恐怖よりも深い。

そして――影にとって最も扱いやすい」

ハルカが補足する。

「影は、創造主の“願い”を歪めて利用します。

この街では、あなたの願いがそのまま現実になります」

胸が痛い。

「……俺の願い……」

________________________________________

◆ 影の声

そのとき――

街のスピーカーから、

“俺の声”が流れた。

「――創造主。

やっとここまで来たね」

影の声だ。

「怒りも、恐怖も、後悔も、罪悪感も越えて――

最後に残るのは“願い”だ」

影の声は甘く、

だが底に冷たい刃を含んでいた。

「創造主。

お前の願いは――

“世界を救うこと”じゃない」

胸が刺される。

「……やめろ……」

「やめないよ」

影の声は笑う。

「お前の願いは――

“キャラに必要とされたい”ことだ」

息が止まった。

________________________________________

◆ 創造主の願い

「……違う……

違うんだ……!」

「違わないよ」

影の声は冷たく響く。

「創造主。

お前はずっと願っていた。

キャラに必要とされたい。

キャラに求められたい。

キャラに愛されたい」

胸が締め付けられる。

「……俺は……」

「お前は“創造主”である前に――

“孤独な人間”なんだよ」

その瞬間――

街の中心に“何か”が現れた。

________________________________________

◆ 願いの具現化

白い霧が形を作る。

細い腕。

長い髪。

優しい瞳。

そして――

俺が“理想として描いたキャラ”の姿。

「……嘘だろ……」

リリアが震える声で呟く。

「主人公……

この人……」

「……ああ……」

俺は唇を噛んだ。

「こいつは……

俺が十七歳の頃に作った“理想のキャラ”だ」

影キャラはゆっくりと顔を上げた。

その瞳は優しく、

だがどこか空虚だった。

「――創造主」

影キャラが微笑む。

「あなたの願いを叶えに来たよ」

________________________________________

◆ 願いの罠

「創造主」

影キャラが俺に近づく。

「あなたはずっと願っていた。

“キャラに必要とされたい”って」

「……違う……!」

「違わないよ」

影キャラは俺の胸に手を当てた。

「あなたは孤独だった。

現実でも、物語でも。

だから――

キャラに必要とされることで、

自分の価値を確かめようとした」

胸が痛い。

「……やめろ……」

「やめないよ」

影キャラは微笑む。

「創造主。

あなたの願いは――

“キャラに愛されること”なんだよ」

その言葉は、

俺が最も触れたくなかった“本音”だった。

________________________________________

◆ リリアの叫び

「やめて!!」

本物のリリアが影キャラを突き飛ばした。

「主人公は……

そんな願いでわたしを助けたんじゃない!!」

影キャラはゆっくりと立ち上がる。

「そうかな?」

影キャラはリリアの顔を覗き込む。

「あなたは主人公に“必要とされたい”と思ってるよね?」

「……っ……!」

「あなたは主人公に“愛されたい”と思ってるよね?」

「違う……!」

「違わないよ。

あなたの願いは、主人公の願い。

だから――

わたしが生まれた」

リリアの瞳に涙が浮かぶ。

「……やめて……

やめてよ……!」

________________________________________

◆ 願いとの対話

「……違う」

俺は影キャラを見据えた。

「俺は……

キャラに必要とされたいと思ってた。

キャラに求められたいと思ってた。

キャラに愛されたいと思ってた」

影キャラの動きが止まる。

「でも――

それは“逃げ”じゃない」

俺は胸に手を当てた。

「俺はキャラを愛してる。

だから必要とされたいと思った。

だから求められたいと思った。

だから――

この世界に戻ってきた!」

影キャラの瞳が揺れる。

「……創造主……?」

「俺の願いは――

“キャラと共に生きること”だ!」

白い街が揺れる。

影キャラの体が揺らぎ、

白い霧が薄くなる。

「創造主……

あなた……

願いを……認めたの……?」

「そうだ!」

俺は叫んだ。

「俺はキャラに必要とされたい!

でもそれ以上に――

俺がキャラを必要としてる!」

影キャラの体が崩れ始める。

「……創造主……

あなた……

やっと……言えたね……」

白い霧が影キャラを包み込み、

影は消えた。

________________________________________

◆ 第七戦の終わり

街の歪みが少しだけ収まり、

空気が軽くなる。

「創造主よ」

ルシフェルが静かに言う。

「お前は影に“七つ目の傷”をつけた。

だが――まだ倒せてはいない」

ハルカが頷く。

「影は、創造主の心の弱さが残る限り、何度でも現れます」

リリアが涙を拭きながら微笑む。

「主人公……

ありがとう……

主人公の願い……

ちゃんと聞けて……嬉しい……」

フェンリルが吠え、

ベヒモスが地面を踏み鳴らす。

俺は空の裂け目を見据えた。

「……行くぞ。

影を追う旅は、まだ続く」

________________________________________

第38話:影の領域・第八戦 ― “創造主の未来”

願いの具現化が消えたあと、

黒い街は静かに揺れ続けていた。

だが――

揺れの“質”がまた変わっていた。

空気が澄んでいるのに冷たい。

風が吹いているのに重い。

胸の奥がざわつくのに、どこか静か。

まるで世界そのものが、

“未来を恐れている”ようだった。

「……次は何が来る?」

俺が呟くと、ルシフェルが静かに答えた。

「創造主よ。

影は次に――

“お前の未来”を具現化するつもりだ」

「未来……」

胸がざわつく。

怒りでも恐怖でも後悔でもない。

願いですらない。

もっと深く、もっと根源的な感情――

“未来への不安”。

「主人公……?」

リリアが袖を掴む。

「主人公……震えてる……」

「……大丈夫だ」

そう言いながらも、

胸の奥が冷たく疼いていた。

________________________________________

◆ 街の中心へ

俺たちは黒い街の中心へ向かった。

だが、歩くたびに景色が“灰色”になる。

建物が灰色に染まり、

地面が乾き、

空が色を失っていく。

「……これは……?」

「創造主の“未来への不安”が世界に滲み出ている」

ルシフェルが静かに言う。

「未来は怒りよりも深く、

恐怖よりも重い。

そして――影にとって最も利用しやすい」

ハルカが補足する。

「影は、創造主の“未来への不安”を利用して世界を書き換えています。

この街では、あなたの未来がそのまま現実になります」

胸が痛い。

「……俺の未来……」

________________________________________

◆ 影の声

そのとき――

街のスピーカーから、

“俺の声”が流れた。

「――創造主。

ついにここまで来たね」

影の声だ。

「怒りも、恐怖も、後悔も、罪悪感も、願いも越えて――

最後に残るのは“未来”だ」

影の声は甘く、

だが底に冷たい刃を含んでいた。

「創造主。

お前が最も恐れているのは――

“未来が続かないこと”だろう?」

胸が刺される。

「……やめろ……」

「やめないよ」

影の声は笑う。

「お前はずっと不安だった。

この世界を最後まで書けるのか。

キャラを救い続けられるのか。

物語を完結させられるのか。

そして――

“自分が未来を作れるのか”」

息が止まる。

________________________________________

◆ 未来の具現化

灰色の霧が渦を巻き、

街の中心に“何か”が現れた。

それは――

俺の姿をした“未来の影”。

だが、今までの影とは違う。

瞳が空虚で、

体が薄く、

存在感が希薄。

まるで――

“未来を失った自分”。

「……これが……俺の未来……?」

「そうだ」

ルシフェルが剣を構える。

「創造主よ。

これが“お前の未来への不安の化身”だ」

影はゆっくりと顔を上げた。

「――創造主」

その声は、

俺の声なのに、

絶望で濁っていた。

「お前は未来を作れない。

お前は物語を完結できない。

お前はキャラを救えない」

影は笑う。

「だから――

俺が代わりに“終わらせてやるよ”」

________________________________________

◆ 未来の攻撃

影が腕を振り下ろす。

灰色の霧が刃となり、

空間を切り裂く。

「くっ……!」

俺は横へ飛び退いた。

次の瞬間、

地面が“消えた”。

灰色の霧が地面を飲み込み、

巨大な穴が開く。

「創造主、危険です!」

ハルカが叫ぶ。

「未来の影は、創造主の“諦め”を具現化しています!

攻撃はすべて、創造主の心を狙っています!」

ルシフェルが剣を構える。

「創造主よ。

未来への不安は、怒りや恐怖よりも強い。

そして――破壊的だ」

影が笑う。

「創造主。

お前は未来を作れない。

だから――

俺が“終わらせてやる”」

胸が刺される。

________________________________________

◆ 未来との対話

「……違う……」

俺は影を見据えた。

「俺は……

未来が怖いよ」

影の動きが止まる。

「未来を作れるか不安だ。

物語を完結できるか不安だ。

キャラを救い続けられるか不安だ。

でも――」

俺は胸に手を当てた。

「それでも、未来を作りたい!」

影の瞳が揺れる。

「……創造主……?」

「俺は未来が怖い。

でも、未来を諦めたくない。

未来を捨てたくない。

未来を――

“創りたい”!」

灰色の街が揺れる。

影の体が揺らぎ、

灰色の霧が薄くなる。

「創造主……

お前……

未来を……認めたのか……?」

「そうだ!」

俺は叫んだ。

「俺は未来が怖い!

でも、その未来を“自分で作る”!」

影の体が崩れ始める。

「……創造主……

お前……

強くなったな……」

灰色の霧が影を包み込み、

影は消滅した。

________________________________________

◆ 第八戦の終わり

街の歪みが少しだけ収まり、

空気が軽くなる。

「創造主よ」

ルシフェルが静かに言う。

「お前は影に“八つ目の傷”をつけた。

だが――まだ倒せてはいない」

ハルカが頷く。

「影は、創造主の心の弱さが残る限り、何度でも現れます」

リリアが涙を拭きながら微笑む。

「主人公……

未来を怖がってもいいんだよ……

でも……

主人公は未来を作れるよ……

わたし、信じてる……」

フェンリルが吠え、

ベヒモスが地面を踏み鳴らす。

俺は空の裂け目を見据えた。

「……行くぞ。

影との決戦は、もうすぐだ」

________________________________________

第39話:影の領域・最終戦前夜 ― 「創造主と影」

未来の具現化が消えたあと、

黒い街は、深い静寂に沈んでいた。

さっきまで世界を揺らしていた感情の波――

怒り、恐怖、後悔、罪悪感、願い、未来への不安。

それらが一度すべて引いていったあとの、

“嵐の前の静けさ”のような空気だった。

揺れは止んでいる。

だが、終わったわけじゃない。

むしろここから先に、

この物語の最初の大きな節目が待っている――

そんな予感が、胸の奥で静かに鳴っていた。

「……影は、まだ終わっていないな」

俺が呟くと、ルシフェルがゆっくりと頷いた。

「創造主よ。

ここから先は、これまでとは“質”の違う場所だ」

「質の違う……?」

「怒り、恐怖、後悔、罪悪感、願い、未来への不安。

お前はすでに六つの感情と向き合い、それぞれに答えを出した」

ルシフェルの瞳は、静かに燃えていた。

「だが、まだ一つだけ残っている」

「……一つ?」

「“影そのもの”だ」

胸がざわつく。

________________________________________

◆ 黒い街の中心へ

俺たちは黒い街の中心へ向かって歩き出した。

これまでのように、

街が燃えたり、凍ったり、灰色に染まったりすることはない。

建物は黒いまま、

空も黒いまま、

地面も黒いまま。

ただ――

“何も起きない”ことが、逆に不気味だった。

「……静かすぎるな」

「影はもう、感情の具現化では揺さぶれないと悟ったのだろう」

ルシフェルが言う。

「だからこそ――“本体”として現れるつもりだ」

ハルカが補足する。

「これまでの戦いは、すべて“入口”でした。

ここからが、本当の意味での“創造主 vs 影”です」

リリアが袖を掴む。

「主人公……

怖い……?」

「……少しな」

正直に答えると、リリアはぎゅっと手を握り返した。

「大丈夫だよ。

主人公は、もう前みたいに逃げないから」

胸が、少しだけ軽くなる。

________________________________________

◆ 影の中心

やがて、黒い街の“中心”に辿り着いた。

そこには、何もなかった。

広場のような空間。

建物もなく、街灯もなく、看板もない。

ただ、黒い地面と黒い空が広がっているだけ。

「……ここが……」

「影の中心だ」

ルシフェルが静かに言う。

「創造主よ。

影はここで、お前を待っている」

風は吹かない。

音もない。

世界が、完全に“停止”しているようだった。

その静寂の中で――

俺の心臓の鼓動だけが、やけに大きく響いていた。

________________________________________

◆ 影の登場

そのときだった。

黒い地面から、

ゆっくりと“霧”が立ち上り始めた。

霧は渦を巻き、

形を作り、

輪郭を持ち始める。

細い腕。

長い脚。

俺と同じ体格。

俺と同じ髪型。

俺と同じ顔。

だが――

瞳だけが、完全な“黒”。

「――やあ、創造主」

影が微笑んだ。

その笑みは、

俺が一番嫌いな“自嘲の笑み”だった。

「久しぶり……と言うべきかな。

いや、ずっと一緒にいたんだけどね」

影は自分の胸を軽く叩く。

「ここに」

胸が、きゅっと痛んだ。

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◆ 影の言葉

「創造主」

影は、ゆっくりと歩み寄ってくる。

「怒り。

恐怖。

後悔。

罪悪感。

願い。

未来への不安」

影は一本一本、指を折りながら続ける。

「全部、お前の中にあったものだ。

全部、お前が“見ないふり”をしてきたものだ」

「……ああ」

「そして――

全部、俺が背負ってきたものだ」

影の声は、どこか震えていた。

「創造主。

お前はずっと逃げていた。

自分の弱さから。

自分の感情から。

自分の本音から」

影は俺の目の前で立ち止まる。

「だから――

俺が生まれた」

その言葉は、

誰よりも鋭く、

誰よりも正確に、

俺の胸を貫いた。

________________________________________

◆ 影の本音

「創造主」

影は、ふっと視線を落とした。

「勘違いしないでほしいんだけどさ」

「……何だよ」

「俺は、お前を壊したいわけじゃない」

その言葉に、思わず息を呑む。

「俺は――

お前を“守りたかった”んだよ」

「……守る……?」

「そう」

影は自分の胸に手を当てる。

「お前が傷つかないように。

お前が失敗しないように。

お前が未来を恐れなくていいように」

影の声は、静かに震えていた。

「だから俺は、世界を終わらせようとした」

胸が凍りつく。

「終わらせれば、傷つかない。

終わらせれば、失敗しない。

終わらせれば、未来を恐れなくていい」

影は、俺を真っ直ぐに見つめる。

「創造主。

俺は……お前を守りたかったんだ」

________________________________________

◆ 創造主の答え

「……影」

俺は、影から目を逸らさずに言った。

「お前は……

俺の弱さから生まれたんじゃない」

影の瞳が、わずかに揺れる。

「お前は、俺の“優しさ”から生まれたんだ」

「……優しさ……?」

「ああ」

俺は自分の胸に手を当てた。

「俺は、自分を守りたかった。

傷つきたくなかった。

逃げたかった。

でも――

それはただの弱さじゃない」

言葉を選びながら、ゆっくりと続ける。

「それは“自分を守ろうとする優しさ”だ。

お前は、その優しさが形になった存在なんだ」

影の体が、かすかに震えた。

「創造主……

お前……

俺を……」

「否定しない」

俺は一歩、前に出た。

「お前は俺だ。

俺の弱さであり、

俺の優しさであり、

俺の本音だ」

影の瞳から、

ひと粒の涙がこぼれ落ちた。

________________________________________

◆ 最終戦前夜

「……創造主」

影は、涙を拭おうともせずに言った。

「俺は……

お前に“消される”のが怖い」

「消さない」

即答だった。

影が、驚いたように顔を上げる。

「……え……?」

「お前は俺の一部だ。

消すんじゃない。

“受け入れる”んだ」

影の体が、はっきりと震え始める。

「創造主……

お前……

強くなったな……」

影は、ゆっくりと後ろへ下がった。

黒い霧が、再びその体を包み込んでいく。

「創造主」

霧の中から、影の声が響く。

「次で、決着をつけよう」

黒い霧の中で、影の輪郭が変わっていく。

「俺とお前。

どちらが“本当の創造主”なのか」

霧が渦を巻き、

空へと伸びていく。

「それを決める戦いが、次だ」

影の気配が、完全に消えた。

黒い街は、再び静寂に沈む。

________________________________________

◆ 決戦の準備

「創造主よ」

ルシフェルが、静かに口を開いた。

「ここから先は、もう引き返せない」

ハルカが剣を握り直す。

「影は、創造主のすべてを使って現れます。

これまでのどの戦いよりも、激しく、深いものになります」

リリアが、俺の手をぎゅっと握る。

「主人公……

わたし、ずっとそばにいるから……」

フェンリルが低く唸り、

ベヒモスが地面を踏み鳴らす。

俺は黒い空を見上げた。

ここまで来るのに、

ずいぶん時間がかかった気がする。

逃げて、

迷って、

立ち止まって、

それでも少しずつ前に進んできた。

そのすべてが――

この“最終戦前夜”に繋がっている。

「……行こう」

静かに、しかし確かな声で言った。

「影との決着をつける。

俺と“俺自身”の物語を、ここで一度、終わらせる」

ルシフェルが頷く。

「創造主よ。

次が――お前の選ぶ答えだ」

________________________________________

第40話:影の領域・最終戦 ― 「創造主 vs 影」

黒い街の中心に、

影は静かに立っていた。

黒い翼。

赤い瞳。

俺と同じ顔。

だが、その存在感は、

これまでのどの具現化とも違っていた。

影はもう“感情の化身”ではない。

怒りでも、恐怖でも、後悔でも、罪悪感でも、願いでも、未来への不安でもない。

――影そのもの。

俺の弱さであり、

俺の優しさであり、

俺の本音であり、

そして、俺が最も恐れてきた“もう一人の自分”。

「来たね、創造主」

影が微笑む。

その笑みは、

俺が最も嫌っていた“自嘲の笑み”だった。

「ここまでよく来たよ。

怒りも、恐怖も、後悔も、罪悪感も、願いも、未来への不安も――

全部、乗り越えてきた」

影は胸に手を当てる。

「でも最後に残るのは、いつだって“自分自身”だ」

胸がざわつく。

________________________________________

◆ 影の一撃

「創造主。

俺はお前だ。

だから――お前の弱さも、全部知ってる」

影が黒い炎をまとい、

空間を切り裂くように突進してきた。

「っ……!」

俺は横へ飛び退く。

次の瞬間、

地面が“消えた”。

黒い炎が地面を飲み込み、

巨大な穴が開く。

「創造主、危険です!」

ハルカが叫ぶ。

「影の攻撃は、創造主の“自己否定”を具現化しています!」

ルシフェルが剣を構える。

「迷えば迷うほど、影は強くなるぞ!」

影が笑う。

「創造主。

お前は弱い。

臆病だ。

未熟だ。

だから――俺が必要なんだよ」

胸が刺される。

________________________________________

◆ 影の本音

「創造主」

影は静かに言う。

「俺はお前を壊したいわけじゃない。

お前を守りたいんだ」

「……守る?」

「そうだよ」

影は自分の胸に手を当てる。

「お前が傷つかないように。

お前が失敗しないように。

お前が未来を恐れなくていいように」

影の声は震えていた。

「だから俺は、世界を終わらせようとした。

終わらせれば、傷つかないから」

胸が痛い。

________________________________________

◆ 創造主の答え

「……影」

俺は影を見つめた。

「お前は俺の弱さから生まれたんじゃない」

影の瞳が揺れる。

「お前は俺の“優しさ”から生まれたんだ」

「……優しさ……?」

「ああ」

俺は胸に手を当てた。

「俺は自分を守りたかった。

傷つきたくなかった。

逃げたかった。

でも――それは弱さじゃない」

影が息を呑む。

「それは“自分を守ろうとする優しさ”だ。

お前は、その優しさが形になった存在なんだ」

影の体が揺らぐ。

________________________________________

◆ 決着の瞬間

「創造主」

影は震える声で言った。

「俺は……

お前に消されるのが怖い」

「消さない」

即答だった。

影が驚いたように顔を上げる。

「……え……?」

「お前は俺の一部だ。

消すんじゃない。

“受け入れる”んだ」

影の体が震える。

「創造主……

お前……

強くなったな……」

影はゆっくりと歩み寄る。

「創造主。

俺は……

お前と一つになりたい」

胸が熱くなる。

「……ああ。

一緒に行こう、影」

影が微笑む。

「ありがとう……創造主」

その瞬間――

影の体が光に包まれた。

黒い霧が白く変わり、

影の輪郭が溶けていく。

「創造主……

これからは……

お前と一緒に……」

影は俺の胸に吸い込まれるように消えた。

世界が光に包まれた。

________________________________________

◆ 決戦の余韻

光が収まると、

黒い街は消えていた。

代わりに――

白い空間が広がっていた。

静かで、

穏やかで、

温かい空間。

胸に手を当てる。

そこには、

確かに“影の温もり”があった。

影は消えたわけじゃない。

倒したわけでもない。

――影は、俺の中に戻った。

俺の弱さも、

俺の優しさも、

俺の本音も、

全部ひっくるめて。

これが、俺の影。

そして、俺自身。

________________________________________

第41話:影の領域・統合 ― 「創造主の帰還」

________________________________________

影が俺の胸へと溶け込んでいった瞬間、

世界は白い光に包まれた。

黒い街も、影の領域も、

あの重苦しい空気もすべて消え去り、

ただ静かで温かい光だけが広がっている。

その光の中で、

俺はゆっくりと目を開けた。

「……ここは……?」

白い空間。

白い地面。

白い風。

何もないのに、

どこか懐かしい。

胸の奥に、

影の温もりが確かに残っていた。

「創造主よ」

ルシフェルの声が聞こえた。

振り返ると、

ルシフェル、ハルカ、リリア、フェンリル、ベヒモス――

みんながそこにいた。

「お前は影を倒したのではない。

“統合”したのだ」

ルシフェルが静かに言う。

「これで、お前は一つの答えに辿り着いた」

「答え……」

胸に手を当てる。

怒りも、恐怖も、後悔も、罪悪感も、願いも、未来への不安も――

全部、俺の中にある。

でも、もう怖くない。

それらは俺の一部であり、

俺を形作る大切な欠片だから。

________________________________________

◆ 世界の再起動

白い空間が揺れた。

光が収束し、

世界が形を取り戻し始める。

空が青く染まり、

大地が緑に広がり、

風が吹き抜ける。

「……世界が……」

「再び動き始めているのです」

ハルカが静かに言う。

「影との統合により、創造主の心が安定しました。

それに伴い、世界も安定し始めています」

リリアが目を輝かせる。

「主人公……

世界が……元に戻っていく……!」

フェンリルが吠え、

ベヒモスが地面を踏み鳴らす。

ルシフェルが空を見上げる。

「創造主よ。

これが“お前の世界”だ」

胸が熱くなる。

________________________________________

◆ 創造主の力

「創造主」

ルシフェルが俺の前に立つ。

「影との統合により、お前は新たな力を得た」

「新たな力……?」

「そうだ。

“自分を受け入れる力”だ」

ルシフェルは手を広げる。

「これまでお前は、

自分の感情を恐れ、

自分の弱さを否定し、

自分の本音を押し殺していた」

「……ああ」

「だが今は違う。

お前は自分を受け入れた。

弱さも、優しさも、怒りも、恐怖も、願いも、未来への不安も」

ルシフェルは微笑む。

「だから――

お前は“創造主としての形”を得たのだ」

胸が震える。

「……俺は……

本当に……?」

「そうだ」

ルシフェルは断言した。

「お前はもう、逃げない。

お前はもう、迷わない。

お前はもう、恐れない」

リリアが手を握る。

「主人公……

わたし、ずっと信じてたよ……」

ハルカが頷く。

「創造主。

あなたはもう、影に負けません」

フェンリルが吠え、

ベヒモスが地面を踏み鳴らす。

________________________________________

◆ 影の声

そのとき――

胸の奥から、微かな声がした。

『……創造主……』

「影……?」

『お前が進むなら、俺も一緒に行く。

もう、お前を止めたりしない。

お前の中で……ただ、見ている』

その声は、

どこか穏やかで、優しかった。

「……ありがとう」

俺は胸に手を当てた。

________________________________________

◆空は青く、

風は優しく、

世界は再び動き始めている。

影との戦いは終わった。

逃げ続けていた自分と向き合い、

弱さも優しさも受け入れ、

影と一つになった。

ここまで来るのに、

ずいぶん時間がかかった気がする。

でも――

ようやく辿り着いた。

俺と影の物語は、

ひとつの終わりを迎えた。

だが、世界はまだ続いていく。

そして俺もまた、

この世界で歩き続ける。

________________________________________


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