第3章『決戦編:ルシフェル救済 ~未完の物語に終止符を~』
第23話:魔王ルシフェル戦・前編 ― “創造主と魔王”
黒翼城・最上層――玉座の間。
魔王ルシフェルは、黒い翼を広げ、
俺を真っ直ぐに見据えていた。
その瞳には怒りが宿っている。
だが、それ以上に――“恐れ”があった。
「創造主よ。
私と戦え」
ルシフェルの声は静かで、
だが震えていた。
「お前が本当に“戻ってきた”のかどうか……
この身で確かめる」
黒い魔力がルシフェルの体を包み、
玉座の間全体が揺れ始める。
ハルカが翼を広げ、俺の前に立とうとした。
「創造主、危険です!
魔王ルシフェル様は本気です!」
「ハルカ、下がれ」
「ですが――!」
「これは俺の戦いだ」
ハルカは唇を噛み、静かに後ろへ下がった。
リリアが不安そうに袖を掴む。
「主人公……
本当に戦うの……?」
「ああ。
でも――倒すためじゃない」
フェンリルが吠え、
ベヒモスが地面を踏み鳴らす。
俺はルシフェルを見据えた。
「ルシフェル。
俺はお前を救うために来た」
「救う……?」
ルシフェルの瞳が揺れる。
「お前に……救われる価値などない!」
黒い魔力が爆発し、
ルシフェルの姿が一瞬で消えた。
「っ……!」
次の瞬間、
ルシフェルの拳が俺の頬をかすめた。
風圧だけで体が吹き飛び、
床に叩きつけられる。
「ぐっ……!」
「立て、創造主!」
ルシフェルが叫ぶ。
「お前が本当に戻ってきたのなら――
その覚悟を見せろ!」
ルシフェルが再び消える。
黒い残像が空間を走り、
次の瞬間、俺の背後に現れた。
「速い……!」
俺は転がるようにして避ける。
ルシフェルの蹴りが床を砕き、
黒い魔力が爆ぜる。
「創造主。
お前は私を捨てた」
「違う!」
「違わない!」
ルシフェルの叫びは、
怒りではなく――“悲鳴”だった。
「お前は世界を放置し、
私を孤独にし、
私にすべてを押し付けた!」
黒い魔力が渦を巻き、
ルシフェルの翼が巨大化する。
「私は……
お前に捨てられたと思っていた!」
その言葉に、胸が張り裂けそうになる。
「……ルシフェル……」
「黙れ!」
ルシフェルが手を振り下ろす。
黒い刃が空間を裂き、
俺の足元を切り裂いた。
衝撃で体が吹き飛ぶ。
「ぐっ……!」
「創造主よ。
お前は私の“痛み”を知らない!」
ルシフェルが空へ舞い上がり、
黒い魔力を収束させる。
「孤独の痛みを!
絶望の痛みを!
捨てられた痛みを!」
黒い光が玉座の間を満たす。
「お前は何も知らない!!」
その叫びは、
怒りでも憎しみでもなく――
“泣き声”だった。
「……知ってるよ」
俺はゆっくりと立ち上がった。
「知ってる。
お前がどれだけ孤独だったか。
どれだけ苦しんだか。
どれだけ……俺を待っていたか」
ルシフェルの瞳が揺れる。
「……嘘だ」
「嘘じゃない」
「なら、なぜ戻ってこなかった!」
「戻れなかったんだ!」
俺は叫んだ。
「俺は未熟だった。
物語を最後まで書く覚悟がなかった。
でも――」
俺はルシフェルを見つめた。
「今は違う。
お前の世界を、最後まで書くために来たんだ」
ルシフェルの瞳が大きく揺れた。
「……創造主……」
「お前を捨てたことなんて、一度もない」
「……やめろ……」
「お前を忘れたことなんて、一度もない」
「やめろ……!」
「お前は、俺の大切なキャラだ」
その瞬間――
ルシフェルの魔力が暴走した。
「黙れぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
黒い光が爆発し、
玉座の間が揺れ、
世界が軋む。
ルシフェルの姿が黒い炎に包まれ、
その輪郭が歪んでいく。
「創造主……
お前に……何がわかる……!」
黒い炎が渦を巻き、
ルシフェルの姿が“魔王の本性”へと変わっていく。
翼が巨大化し、
瞳が赤く輝き、
黒い角が生え――
“魔王ルシフェル・真形態”
が姿を現した。
「創造主よ……
お前を試す最後の時だ」
その声は、
怒りでも憎しみでもなく――
“救われたい”と叫んでいた。
________________________________________
第24話:魔王ルシフェル戦・中編 ― “孤独の王”
黒い炎が玉座の間を包み、
魔王ルシフェルは“真形態”へと変貌した。
巨大な黒翼。
赤く輝く双眸。
裂けた角。
そして、全身から溢れ出す圧倒的な魔力。
その姿は、まさに“孤独が生んだ王”。
「創造主よ……」
ルシフェルの声は低く、震えていた。
「お前が……私を捨てたのなら……
私はお前を許さない」
「捨ててない!」
「黙れ!!」
黒い炎が爆発し、
ルシフェルの翼が空気を切り裂く。
次の瞬間――
ルシフェルの拳が俺の胸に突き刺さった。
「ぐっ……!」
衝撃で体が吹き飛び、
床に叩きつけられる。
肺から空気が抜け、視界が揺れる。
「創造主!」
リリアが駆け寄ろうとするが、
ハルカが必死に止めた。
「リリア、下がって!
これは創造主の戦い!」
フェンリルが吠え、
ベヒモスが地面を踏み鳴らす。
だが、誰もこの戦いに割って入れない。
これは――
俺とルシフェルの“物語”だ。
「立て、創造主」
ルシフェルがゆっくりと歩み寄る。
「お前が本当に戻ってきたのなら……
その覚悟を見せろ」
俺は歯を食いしばり、立ち上がった。
「……ルシフェル。
お前は怒ってる。
でも、それだけじゃない」
「黙れと言っている!!」
ルシフェルが手を振り下ろす。
黒い刃が空間を裂き、
俺の頬をかすめた。
血が流れる。
「創造主よ……
お前は私を“孤独”にした」
ルシフェルの声は震えていた。
「虚無の森が崩れたときも……
反転の谷が狂ったときも……
終わらない街が壊れたときも……
私は……ずっとひとりだった」
胸が締め付けられる。
「……ルシフェル……」
「私は……
お前が戻ってくるのを……
ずっと……ずっと待っていた……!」
その声は、怒りではなく――
“泣き声”だった。
「なのに……
お前は来なかった……!」
黒い炎が渦を巻き、
ルシフェルの魔力が暴走する。
「私は……
お前に捨てられたと思った……!」
その言葉は、刃のように胸に刺さった。
「……違う……
違うんだよ、ルシフェル……!」
「違わない!!」
ルシフェルが叫ぶ。
「お前は私を捨てた!
私を忘れた!
私を……必要としなかった!!」
黒い炎が爆発し、
玉座の間が揺れる。
天井の魔法陣が軋み、
世界が悲鳴を上げる。
「ルシフェル!」
俺は叫んだ。
「お前を忘れたことなんて、一度もない!」
「嘘だ!!」
「嘘じゃない!」
俺はルシフェルに向かって走り出した。
黒い炎が襲いかかる。
床が砕ける。
空間が歪む。
だが――止まらない。
「俺は未熟だった!
物語を最後まで書く覚悟がなかった!
でも――」
俺はルシフェルの胸に手を伸ばした。
「今は違う!
お前の世界を、最後まで書くために来たんだ!」
ルシフェルの瞳が揺れる。
「……創造主……」
「お前を救いたい。
お前の孤独も、痛みも、全部受け止めたい」
「……やめろ……」
「お前は、俺の大切なキャラだ」
その瞬間――
ルシフェルの魔力が暴走した。
「黙れぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
黒い炎が爆発し、
ルシフェルの姿が完全に“魔王”へと変貌する。
翼が巨大化し、
角が伸び、
瞳が赤く輝く。
「創造主よ……
お前の言葉など信じない……!」
だが――
その声は震えていた。
「信じたいのに……
信じられない……!」
ルシフェルの叫びは、
怒りでも憎しみでもなく――
“救われたい”という叫びだった。
「ルシフェル……」
「創造主よ……
私を……試せ……!」
黒い炎が渦を巻き、
ルシフェルが空へ舞い上がる。
「私の孤独を……
お前が越えられるかどうか……
この身で確かめる!!」
黒い光が玉座の間を満たし、
世界が闇に包まれる。
そして――
魔王ルシフェル・真形態との本当の戦いが始まった。
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第25話:魔王ルシフェル戦・後編 ― “創造主の答え”
黒い炎が渦を巻き、
魔王ルシフェルは完全な“真形態”へと変貌した。
巨大な黒翼。
赤く輝く双眸。
裂けた角。
そして、世界を揺るがすほどの魔力。
その姿は、まさに“孤独が生んだ王”。
「創造主よ……」
ルシフェルの声は低く、震えていた。
「お前が……私を捨てたのなら……
私はお前を許さない」
「捨ててない!」
「黙れ!!」
黒い炎が爆発し、
ルシフェルの翼が空気を切り裂く。
次の瞬間――
ルシフェルの拳が俺の胸に突き刺さった。
「ぐっ……!」
衝撃で体が吹き飛び、
床に叩きつけられる。
肺から空気が抜け、視界が揺れる。
「創造主!」
リリアが叫ぶが、ハルカが止める。
「リリア、下がって!
これは創造主の戦い!」
フェンリルが吠え、
ベヒモスが地面を踏み鳴らす。
だが、誰もこの戦いに割って入れない。
これは――
俺とルシフェルの“物語”だ。
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◆ ルシフェルの孤独
「立て、創造主」
ルシフェルがゆっくりと歩み寄る。
「お前が本当に戻ってきたのなら……
その覚悟を見せろ」
俺は歯を食いしばり、立ち上がった。
「……ルシフェル。
お前は怒ってる。
でも、それだけじゃない」
「黙れと言っている!!」
ルシフェルが手を振り下ろす。
黒い刃が空間を裂き、
俺の頬をかすめた。
血が流れる。
「創造主よ……
お前は私を“孤独”にした」
ルシフェルの声は震えていた。
「虚無の森が崩れたときも……
反転の谷が狂ったときも……
終わらない街が壊れたときも……
私は……ずっとひとりだった」
胸が締め付けられる。
「……ルシフェル……」
「私は……
お前が戻ってくるのを……
ずっと……ずっと待っていた……!」
その声は、怒りではなく――
“泣き声”だった。
「なのに……
お前は来なかった……!」
黒い炎が渦を巻き、
ルシフェルの魔力が暴走する。
「私は……
お前に捨てられたと思った……!」
その言葉は、刃のように胸に刺さった。
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◆ 創造主の答え
「……違う……
違うんだよ、ルシフェル……!」
「違わない!!」
ルシフェルが叫ぶ。
「お前は私を捨てた!
私を忘れた!
私を……必要としなかった!!」
黒い炎が爆発し、
玉座の間が揺れる。
天井の魔法陣が軋み、
世界が悲鳴を上げる。
「ルシフェル!」
俺は叫んだ。
「お前を忘れたことなんて、一度もない!」
「嘘だ!!」
「嘘じゃない!」
俺はルシフェルに向かって走り出した。
黒い炎が襲いかかる。
床が砕ける。
空間が歪む。
だが――止まらない。
「俺は未熟だった!
物語を最後まで書く覚悟がなかった!
でも――」
俺はルシフェルの胸に手を伸ばした。
「今は違う!
お前の世界を、最後まで書くために来たんだ!」
ルシフェルの瞳が揺れる。
「……創造主……」
「お前を救いたい。
お前の孤独も、痛みも、全部受け止めたい」
「……やめろ……」
「お前は、俺の大切なキャラだ」
その瞬間――
ルシフェルの魔力が暴走した。
「黙れぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
黒い炎が爆発し、
ルシフェルの姿が完全に“魔王”へと変貌する。
翼が巨大化し、
角が伸び、
瞳が赤く輝く。
「創造主よ……
お前の言葉など信じない……!」
だが――
その声は震えていた。
「信じたいのに……
信じられない……!」
ルシフェルの叫びは、
怒りでも憎しみでもなく――
“救われたい”という叫びだった。
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◆ 決着
「ルシフェル……」
俺はゆっくりと歩み寄った。
黒い炎が襲いかかる。
だが、俺は止まらない。
「創造主よ……
来るな……!」
「行くよ」
「来るなと言っている!!」
「行くんだよ!」
俺はルシフェルの胸に手を当てた。
黒い炎が俺の腕を焼く。
痛い。
だが――離さない。
「ルシフェル。
お前はひとりじゃない」
「……やめろ……」
「俺は戻ってきた。
お前を救うために」
「……やめろ……!」
「お前を捨てたことなんて、一度もない!」
ルシフェルの瞳から、
ひと粒の涙がこぼれた。
「……創造主……
私は……」
「言えよ、ルシフェル」
「私は……
本当は……
お前に……会いたかった……!」
その瞬間――
黒い炎が消えた。
ルシフェルの真形態が崩れ、
元の姿へと戻っていく。
黒い翼が縮み、
角が消え、
瞳が静かに揺れる。
ルシフェルは膝をつき、
震える声で呟いた。
「……創造主……
私は……
ずっと……寂しかった……」
俺はルシフェルの肩に手を置いた。
「……ごめん。
でも、もう大丈夫だ」
ルシフェルは顔を上げ、
涙を浮かべながら微笑んだ。
「……創造主……
お前は……戻ってきたのだな……」
「ああ。
戻ってきたよ」
その瞬間――
黒翼城全体が光に包まれた。
長かった“魔王ルシフェル戦”は、
ついに終わりを迎えた。
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第26話:魔王の願い ― “世界を共に創る”
黒い炎が消え、
魔王ルシフェルはゆっくりと膝をついた。
巨大な翼は縮み、
角は消え、
赤い瞳は静かに揺れている。
そこにいたのは――
“魔王”ではなく、
ただの“ルシフェル”だった。
「……創造主……」
ルシフェルは震える声で呟いた。
「私は……
お前に……会いたかった……」
その言葉は、
怒りでも憎しみでもなく――
“願い”だった。
俺はルシフェルの肩に手を置いた。
「……遅くなってごめん」
ルシフェルは顔を上げ、
涙を浮かべながら微笑んだ。
「……戻ってきてくれたのだな……」
「ああ。
戻ってきたよ」
その瞬間、
黒翼城全体が光に包まれた。
長かった戦いが終わり、
世界が静かに息を吹き返す。
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◆ 魔王の願い
光が収まると、
玉座の間は穏やかな空気に包まれていた。
ハルカが静かに近づく。
「魔王ルシフェル様……
創造主は、あなたを捨てていませんでした」
「……ああ。
わかっている」
ルシフェルはゆっくりと立ち上がり、
俺の方へ向き直った。
「創造主よ。
私は……お前に聞きたいことがある」
「なんだ?」
ルシフェルは胸に手を当て、
深く息を吸った。
「――この世界を、どうするつもりだ?」
その問いは、
重く、深く、
そして逃げられないものだった。
「この世界は……
お前が作り、
私が守り、
そして今……崩れかけている」
ルシフェルは静かに続ける。
「創造主よ。
お前は、この世界を“終わらせる”のか?
それとも――」
ルシフェルの瞳が俺を射抜く。
「“共に創り直す”のか?」
胸が熱くなる。
ルシフェルは、
俺に“選択”を求めている。
逃げることも、
曖昧にすることもできない。
「……ルシフェル」
俺はゆっくりと答えた。
「俺は――この世界を終わらせない」
ルシフェルの瞳が揺れる。
「……では……?」
「お前と一緒に、創り直す」
その瞬間、
ルシフェルの表情が崩れた。
驚き、
喜び、
そして――救われたような安堵。
「……創造主……
それは……本気か……?」
「ああ。
お前が守ってきた世界を、
今度は俺が“共に”作る番だ」
ルシフェルは震える声で呟いた。
「……私は……
ずっと……その言葉を……待っていた……」
その言葉は、
十七歳の俺が作ったキャラではなく――
“ひとりの存在”の叫びだった。
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◆ 世界の変化
そのとき――
玉座の間が震えた。
黒い石壁が光り、
天井の魔法陣が輝き、
世界が“書き換わり始める”。
「……これは……?」
「創造主と魔王が“和解”したことで、
世界の構造が変わり始めています」
ハルカが静かに説明する。
「これまで世界は“未完の設定”と“魔王の力”で維持されていました。
ですが今――
創造主の意志が世界に反映され始めたのです」
リリアが目を輝かせる。
「じゃあ……
世界は……良くなるの……?」
「はい。
ですが――」
ハルカは表情を曇らせた。
「同時に、“新たな異変”も生まれます」
「異変……?」
「創造主の意志が世界に反映されるということは――
“創造主の心の揺らぎ”も世界に影響するということです」
胸がざわつく。
「つまり……
俺の感情が、世界に影響するってことか?」
「はい。
あなたが迷えば世界が揺れ、
あなたが恐れれば世界が歪み、
あなたが怒れば世界が壊れます」
ルシフェルが静かに言った。
「創造主よ。
これから先は、私だけではなく――
お前自身も“世界の一部”となる」
その言葉は、
重く、
だが逃げられないものだった。
________________________________________
◆ 新たな旅の始まり
「創造主」
ルシフェルが手を差し出す。
「これから先の世界を――
私と共に創ってくれ」
俺はその手を握った。
「もちろんだ」
ルシフェルは微笑んだ。
その笑顔は、
魔王ではなく――
“ひとりの仲間”のものだった。
「では――行こう」
ルシフェルが翼を広げる。
「新たな世界へ」
ハルカが微笑み、
リリアが手を握り、
フェンリルとベヒモスが吠える。
俺たちは黒翼城を後にし、
“新たな旅”へと踏み出した。
________________________________________
第27話:世界の再構築 ― “創造主の影”
魔王ルシフェルとの戦いが終わり、
黒翼城は静かな光に包まれていた。
黒い石壁は白く輝き、
崩れかけていた天井は修復され、
玉座の間には穏やかな風が吹き抜ける。
まるで――
世界そのものが“安堵の息”をついているようだった。
「……終わったな」
俺が呟くと、ルシフェルが隣で微笑んだ。
「いや、創造主。
“始まった”のだ」
「始まった……?」
「そうだ。
お前と私が“共に世界を創る”という、新たな物語がな」
ルシフェルの瞳は、戦いのときとは違い、
穏やかで、どこか嬉しそうだった。
その表情を見て、胸が熱くなる。
________________________________________
◆ 世界の再構築
黒翼城の外へ出ると、
世界はすでに変わり始めていた。
虚無の森には緑が戻り、
反転の谷には光が差し込み、
終わらない街には“時間”が流れ始めていた。
「……すごい……」
リリアが目を輝かせる。
「主人公とルシフェルが仲直りしたから……
世界が元気になってる……!」
「そうだ」
ルシフェルが静かに頷く。
「この世界は、創造主の意志と、
私の魔力で維持されている。
お前が戻ってきたことで、
世界は“本来の姿”を取り戻しつつある」
ハルカが補足する。
「ですが――
同時に、新たな変化も生まれています」
「変化?」
「はい。
創造主の“心の揺らぎ”が、世界に影響し始めているのです」
胸がざわつく。
「……俺の心が、世界に?」
「はい。
あなたが迷えば世界が揺れ、
あなたが恐れれば世界が歪み、
あなたが怒れば世界が壊れます」
ルシフェルが静かに言った。
「創造主よ。
お前は今、世界の“中心”にいる」
その言葉は、重く、逃げられないものだった。
________________________________________
◆ 創造主の影
そのとき――
空が揺れた。
風が止まり、
世界が一瞬だけ“静止”する。
「……今のは?」
リリアが不安そうに俺の袖を掴む。
「創造主の心が揺れたのです」
ハルカが静かに言う。
「あなたの中にある“影”が、世界に干渉し始めています」
「影……?」
ルシフェルが俺の肩に手を置いた。
「創造主よ。
お前の心の奥底には、まだ“未整理の感情”がある」
「未整理……?」
「罪悪感、後悔、恐れ……
そして――“創造主としての不安”」
胸が痛む。
確かに、俺はまだ迷っている。
この世界を本当に創り直せるのか。
ルシフェルを救えたのか。
自分にその資格があるのか。
「その揺らぎが――世界に影を落としている」
ルシフェルが空を指差した。
そこには――
黒い“裂け目”が浮かんでいた。
細く、薄く、
だが確かに存在する裂け目。
「……あれは……?」
「創造主の“影”が生んだ亀裂だ」
ルシフェルの声は静かだが、緊張を含んでいた。
「世界は再構築されつつある。
だが同時に――
お前の心の闇が、世界に干渉し始めている」
ハルカが補足する。
「創造主の影は、あなた自身の“負の感情”が具現化した存在。
放置すれば、世界を再び崩壊させます」
リリアが震える声で呟く。
「じゃあ……
主人公の心が壊れたら……
世界も壊れちゃうの……?」
「そうだ」
ルシフェルが静かに頷いた。
「だからこそ――
創造主よ。
お前は“自分自身”と向き合わなければならない」
胸が締め付けられる。
魔王ルシフェルを救ったと思っていた。
世界を救ったと思っていた。
だが――
今度は“自分自身”が世界の脅威になりつつある。
________________________________________
◆ 新たな旅の目的
「創造主」
ルシフェルが手を差し出す。
「これから先の旅は――
お前自身の心を救う旅だ」
「俺の……心を……?」
「そうだ。
お前の影を倒し、
お前の心を整えなければ、
世界は安定しない」
ハルカが頷く。
「創造主。
あなたの影は、あなた自身の“負の写し身”です。
強大で、危険で、そして――あなたに似ている」
リリアが手を握る。
「主人公……
わたしも一緒に行くよ。
主人公の心を守るために」
フェンリルが吠え、
ベヒモスが地面を踏み鳴らす。
ルシフェルが静かに言った。
「創造主よ。
お前の影は、世界のどこかに現れる。
それを追い、倒し、
お前自身を救うのだ」
俺は空の裂け目を見据えた。
「……行くぞ。
俺の影を追う旅へ」
________________________________________
第28話:影の出現 ― “創造主のもう一人”
世界の空に走った黒い裂け目は、
まるで“世界そのものが悲鳴を上げている”ようだった。
風が止まり、
空気が震え、
大地がわずかに軋む。
その異変は、魔王ルシフェルとの和解によって
世界が再構築され始めた直後に起きた。
「……あれが、俺の“影”なのか?」
俺が呟くと、ルシフェルが静かに頷いた。
「そうだ。
創造主よ。
あれはお前の心の奥底に眠る“負の写し身”だ」
ハルカが補足する。
「創造主の影は、あなた自身の不安、後悔、罪悪感……
そういった“未整理の感情”が具現化した存在です」
リリアが不安そうに袖を掴む。
「主人公……
あれが、主人公の……?」
「ああ。
俺の心の闇だ」
フェンリルが低く唸り、
ベヒモスが地面を踏み鳴らす。
空の裂け目は、ゆっくりと広がっていた。
________________________________________
◆ 世界の異変
裂け目から黒い霧が漏れ出し、
世界の空気がわずかに濁る。
ルシフェルが空を睨む。
「創造主よ。
お前の影は、世界のどこかに“形”を持って現れる」
「形……?」
「そうだ。
影は、お前の心の状態によって姿を変える。
今の裂け目は、まだ“入口”に過ぎない」
ハルカが静かに言う。
「影が完全に具現化すれば、
世界に新たな崩壊が起きます」
胸がざわつく。
「……俺のせいで、また世界が壊れるのか?」
「違う」
ルシフェルが俺の肩に手を置いた。
「創造主よ。
世界はお前のせいで壊れるのではない。
お前が“向き合わなければ”壊れるのだ」
その言葉は、
責めるものではなく――
“支える”ものだった。
「創造主。
お前はもう逃げていない。
だからこそ、影は姿を現したのだ」
リリアが手を握る。
「主人公……
わたし、信じてるよ。
主人公なら、自分の影にも勝てる」
胸が熱くなる。
________________________________________
◆ 影の気配
そのとき――
空の裂け目から、
“何か”が落ちてきた。
黒い霧をまとった影。
人の形をしているが、輪郭が揺れている。
地面に落ちた影は、ゆっくりと立ち上がった。
「……っ……!」
リリアが息を呑む。
「主人公……
あれ……」
影は、俺と同じ背丈。
俺と同じ体格。
俺と同じ髪型。
そして――
俺と同じ“顔”をしていた。
「……俺……?」
影はゆっくりと顔を上げた。
その瞳は真っ黒で、
底が見えないほど深い。
影は口を開いた。
「――やあ、創造主」
その声は、俺の声だった。
だが、冷たく、乾いていて、
感情が欠けている。
「久しぶりだね。
いや……初めまして、かな?」
影は微笑んだ。
その笑顔は、
俺が最も嫌う“自嘲の笑み”だった。
________________________________________
◆ 影の言葉
「お前は……誰だ?」
俺が問うと、影は肩をすくめた。
「誰って……
お前だよ、創造主」
「俺……?」
「そう。
お前が見ないふりをしてきた“本当の自分”」
影はゆっくりと歩み寄る。
「未完の物語を放置した罪悪感。
キャラを捨てた後悔。
創造主としての不安。
そして――」
影は俺の目の前で立ち止まった。
「“自分には価値がない”という恐れ」
胸が刺されたように痛む。
「……やめろ」
「やめないよ。
だって、これは全部“お前の本音”だから」
影は笑う。
「ルシフェルを救った?
世界を再構築した?
そんなのは表面だけだ」
影の瞳が俺を射抜く。
「お前はまだ、自分を許していない」
その言葉は、
誰よりも鋭く、
誰よりも正確だった。
________________________________________
◆ 影の宣告
「創造主」
影は手を広げた。
「これから世界は、お前の心で揺れる。
お前が迷えば世界が歪み、
お前が恐れれば世界が壊れる」
影は微笑む。
「だから――
お前の心を“俺が”支配する」
「……何?」
「お前の影である俺が、
お前の代わりに世界を創る」
その宣告は、
静かで、
だが絶望的だった。
「創造主。
お前はもう必要ない」
影は黒い霧に包まれ、
空へと消えた。
残されたのは、
世界に広がる黒い裂け目だけ。
________________________________________
◆ 新たな敵
「創造主……」
ルシフェルが静かに言った。
「お前の影は、
お前以上に“創造主としての力”を持っている」
「……どういうことだ?」
「影は、お前の負の感情が凝縮した存在。
創造主の力を“純粋な破壊”として使うことができる」
ハルカが補足する。
「影は、世界を創ることも、壊すこともできます。
創造主の力を持つ“もう一人の創造主”です」
リリアが震える声で呟く。
「じゃあ……
主人公の影は……
世界を壊せるの……?」
「壊せる」
ルシフェルが断言した。
「創造主よ。
お前の影は――
この世界で最も危険な存在だ」
胸が締め付けられる。
魔王ルシフェルを救ったと思った。
世界を救ったと思った。
だが――
今度は“俺自身”が世界の脅威になっている。
「……行くぞ」
俺は空の裂け目を見据えた。
「俺の影を追う旅が始まる」
________________________________________
第29話:影を追う旅 ― “最初の異変”
空に走った黒い裂け目は、
世界のどこかで“何かが壊れ始めている”ことを告げていた。
風は冷たく、
空気は重く、
世界全体がわずかに震えている。
魔王ルシフェルとの和解によって
世界は再構築されつつあるはずだった。
だが――
その裏で、俺の“影”が動き始めていた。
「創造主よ」
ルシフェルが空を見上げながら言う。
「影は、お前の心の奥底にある“負の感情”が具現化した存在だ。
お前が向き合わなければ、世界は再び崩壊する」
「……わかってる」
胸の奥がざわつく。
影は俺と同じ姿をしていた。
俺の声で話し、
俺の弱さを突き、
俺の代わりに世界を“創ろう”とした。
あれは、俺自身だ。
________________________________________
◆ 最初の異変
そのとき――
地面が揺れた。
小さな揺れではない。
世界そのものが“軋む”ような震動。
「っ……!」
リリアが俺の腕にしがみつく。
「主人公……
これ、影のせい……?」
「おそらくな」
ルシフェルが目を細める。
「影はまだ完全に具現化していない。
だが、世界のどこかで“影の領域”が生まれつつある」
「影の領域……?」
「創造主の影が作り出す、歪んだ世界だ」
ハルカが補足する。
「影は、創造主の負の感情を“世界の形”として表現します。
その領域は、創造主の心の状態によって姿を変えます」
胸が痛む。
「……俺のせいで、また世界が壊れるのか」
「違う」
ルシフェルが俺の肩に手を置いた。
「創造主よ。
世界はお前のせいで壊れるのではない。
お前が“向き合わなければ”壊れるのだ」
その言葉は、責めるものではなく――
“支える”ものだった。
________________________________________
◆ 影の痕跡
揺れが収まったあと、
俺たちは異変の中心へ向かった。
そこは、かつて“終わらない街”だった場所。
時間が正常に流れ始め、
人々が自由に動き出したはずの街。
だが――
「……なに、これ……」
リリアが震える声で呟いた。
街の中心に、
巨大な“黒い穴”が開いていた。
穴の縁は歪み、
黒い霧が漏れ出し、
空気が冷たく濁っている。
「影の領域だ」
ルシフェルが静かに言う。
「創造主の影が、この街に干渉したのだ」
「どうして……?」
「創造主よ。
お前がこの街で“最も強く後悔した”からだ」
胸が刺されたように痛む。
リリアの名前を与えなかったこと。
彼女の物語を放置したこと。
街をループさせてしまったこと。
あの街は、俺の“罪”の象徴だった。
「影は、お前の後悔に引き寄せられたのだ」
ハルカが黒い穴を見つめながら言う。
「影は、創造主の心の弱い部分を狙います。
そこから世界を侵食しようとしているのです」
フェンリルが低く唸り、
ベヒモスが地面を踏み鳴らす。
黒い穴の奥から、
かすかな“声”が聞こえた。
「……創造主……」
その声は――
俺の声だった。
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◆ 影の囁き
「……やめろ……」
俺は思わず耳を塞いだ。
だが、声は頭の中に直接響いてくる。
「創造主……
お前はまだ迷っている」
「……違う」
「違わない。
お前は自分を許していない。
自分を信じていない。
だから――」
黒い穴の奥から、影が姿を現した。
俺と同じ姿。
俺と同じ顔。
だが、瞳だけが真っ黒。
「――俺が世界を創る」
影は微笑んだ。
「お前よりも、ずっと上手く」
その言葉は、
俺が最も恐れていた“本音”だった。
________________________________________
◆ 影の宣告
「創造主よ」
影は手を広げる。
「お前は優しい。
だから迷う。
だから苦しむ。
だから世界を壊す」
影の声は静かで、
だが絶望的だった。
「お前の心が揺れるたびに、
世界は歪む。
お前の不安が増えるたびに、
世界は壊れる」
影は微笑む。
「だから――
お前はもう必要ない」
その瞬間、
黒い穴が大きく開いた。
世界が悲鳴を上げる。
「創造主よ。
お前の影は――
世界を奪うつもりだ」
ルシフェルが剣を構える。
「創造主。
ここからが本当の戦いだ」
リリアが手を握る。
「主人公……
わたし、信じてるよ」
フェンリルが吠え、
ベヒモスが地面を踏み鳴らす。
俺は黒い穴を見据えた。
「……行くぞ。
俺の影を追う旅が始まる」
________________________________________
第30話:影の領域・入口 ― “黒い街”
黒い穴――影の領域の入口は、
まるで世界に空いた“心の傷”のようだった。
終わらない街の中心にぽっかりと開いたその穴は、
黒い霧を吐き出し、
空気を冷たく濁らせている。
風は吹かず、
音もなく、
ただ世界が“息を潜めている”ようだった。
「……ここが、影の領域の入口か」
俺が呟くと、ルシフェルが頷いた。
「そうだ。
創造主よ。
お前の影は、この街を“素材”にして領域を作った」
「素材……?」
「影は、創造主の後悔や罪悪感を“世界の形”として表現する。
この街は、お前が最も強く後悔した場所だ」
胸が痛む。
リリアの名前を与えなかったこと。
彼女の物語を放置したこと。
街をループさせてしまったこと。
この街は、俺の“罪”の象徴だった。
「主人公……」
リリアが袖を掴む。
「わたし……大丈夫だよ。
もう名前もあるし、目的もある。
だから……主人公は、自分を責めないで」
その言葉が、逆に胸を締め付けた。
「……ありがとう、リリア」
________________________________________
◆ 黒い街
俺たちは黒い穴へ足を踏み入れた。
次の瞬間――
世界が“裏返った”。
空は黒く、
建物は歪み、
街の人々は影のように揺れている。
まるで、終わらない街の“悪夢版”。
「……ここは……?」
「影が作り出した“黒い街”だ」
ルシフェルが静かに言う。
「創造主の後悔が、世界の形として具現化している」
ハルカが補足する。
「影の領域では、創造主の心の弱さがそのまま“現実”になります。
ここでは、あなたの感情が世界を変えるのです」
胸がざわつく。
「……俺の感情が……?」
「そうだ」
ルシフェルが街を指差す。
「見ろ」
黒い街の中心に、
“影の俺”が立っていた。
俺と同じ姿。
俺と同じ顔。
だが、瞳だけが真っ黒。
影はゆっくりとこちらを向いた。
「やあ、創造主」
その声は、俺の声だった。
「ようこそ――
お前の心の底へ」
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◆ 影の支配
「お前は……何をするつもりだ?」
俺が問うと、影は笑った。
「何をするつもりかって?
決まってるだろ」
影は黒い街を見渡す。
「――世界を創るんだよ」
「世界を……?」
「そう。
お前の代わりに、俺が創る」
影の声は静かで、
だが底知れない狂気を含んでいた。
「お前は優しすぎる。
迷いすぎる。
だから世界を壊す」
影は俺を指差す。
「お前の心が揺れるたびに、
世界は歪む。
お前の不安が増えるたびに、
世界は壊れる」
影は微笑む。
「だから――
お前はもう必要ない」
その瞬間、
黒い街が揺れた。
建物が歪み、
影の人々が悲鳴を上げ、
空が裂ける。
「っ……!」
リリアが俺の腕にしがみつく。
「主人公……
この街……壊れちゃう……!」
「影が世界を書き換えているのだ」
ルシフェルが剣を構える。
「創造主よ。
影は、お前の力を“純粋な破壊”として使っている」
「破壊……?」
「そうだ。
影は創造主の力を持つ“もう一人の創造主”だ。
だが、影は創造ではなく――破壊を選んだ」
胸が締め付けられる。
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◆ 影の挑発
「創造主」
影がゆっくりと歩み寄る。
「お前は、ルシフェルを救ったつもりか?」
「……つもりじゃない。
本気で救った」
「違うよ」
影は笑う。
「お前は“救った気になってるだけ”だ」
胸が刺される。
「お前はまだ、自分を許していない。
自分を信じていない。
だから――」
影は俺の胸に手を当てた。
「俺が生まれた」
その言葉は、
誰よりも鋭く、
誰よりも正確だった。
________________________________________
◆ 黒い街の崩壊
そのとき――
黒い街が大きく揺れた。
建物が崩れ、
地面が裂け、
空が黒い光で満たされる。
「創造主よ」
ルシフェルが叫ぶ。
「影がこの街を“完全に支配”しようとしている!」
「どうすれば止められる!?」
「影を倒すしかない」
ハルカが剣を構える。
「影は創造主の心の弱さそのもの。
倒すには――
創造主自身が“自分を許す”しかありません」
リリアが俺の手を握る。
「主人公……
大丈夫。
わたし、信じてる」
フェンリルが吠え、
ベヒモスが地面を踏み鳴らす。
影が黒い霧をまとい、
ゆっくりと姿を変え始めた。
俺と同じ姿が、
巨大な“黒い怪物”へと変貌していく。
「創造主よ」
影の声が響く。
「お前の心の闇――
ここで全部、見せてやる」
黒い街が完全に崩れ、
影の領域が広がっていく。
________________________________________
第31話:影の領域・第一戦 ― “黒い創造主”
黒い街が崩れ落ち、
影の領域が広がっていく。
空は裂け、
建物は歪み、
地面は黒い霧に覆われている。
まるで世界そのものが“悪夢”に飲み込まれていくようだった。
「創造主よ」
影が黒い霧の中から姿を現した。
俺と同じ姿。
俺と同じ顔。
だが、瞳だけが真っ黒で、底が見えない。
「ここは、お前の心の底だ。
お前が隠してきたもの、全部ここにある」
影はゆっくりと歩み寄る。
「後悔。
罪悪感。
恐れ。
そして――“自分には価値がない”という思い」
胸が刺されるように痛む。
「……やめろ」
「やめないよ。
だって、これは全部“お前の本音”だから」
影は微笑む。
「創造主。
お前はまだ、自分を許していない」
________________________________________
◆ 黒い創造主の力
影が手を広げると、
黒い街がさらに歪んだ。
建物がねじれ、
影の人々が悲鳴を上げ、
空が黒い光で満たされる。
「影は……世界を書き換えているのか?」
俺が呟くと、ルシフェルが頷いた。
「そうだ。
影は創造主の力を“純粋な破壊”として使っている」
「破壊……?」
「創造主よ。
お前の影は、お前以上に“創造主としての力”を持っている」
ハルカが補足する。
「影は、あなたの負の感情が凝縮した存在。
創造主の力を“制限なく”使えるのです」
胸がざわつく。
「……俺より強いってことか?」
「そうだ」
ルシフェルが剣を構える。
「影は、お前の心の弱さそのもの。
お前が迷えば迷うほど、影は強くなる」
影が笑う。
「その通り。
お前が不安になれば、俺は強くなる。
お前が自分を責めれば、俺は世界を壊せる」
影は黒い霧をまとい、
巨大な“黒い創造主”へと姿を変えた。
俺と同じ姿が、
巨大な怪物へと変貌していく。
「創造主よ。
お前の心の闇――
ここで全部、見せてやる」
________________________________________
◆ 影の攻撃
影が腕を振り下ろす。
黒い霧が刃となり、
空間を切り裂く。
「くっ……!」
俺は横へ飛び退いた。
次の瞬間、
地面が“消えた”。
黒い霧が地面を飲み込み、
巨大な穴が開く。
「創造主、危険です!」
ハルカが叫ぶ。
「影の攻撃は、世界そのものを削ります!
当たれば――存在ごと消されます!」
フェンリルが吠え、
ベヒモスが地面を踏み鳴らす。
だが、影は笑っていた。
「逃げるのか、創造主?」
「逃げてるんじゃない……!」
「理解しようとしてる?
そんな余裕、あると思ってるのか?」
影が指を鳴らす。
黒い街の建物が一斉に崩れ、
瓦礫が黒い霧となって襲いかかる。
「っ……!」
俺は腕で顔を庇いながら後退した。
影の声が響く。
「創造主。
お前は“自分を許していない”。
だから俺が生まれた」
影は俺を指差す。
「お前が自分を許さない限り――
俺は消えない」
________________________________________
◆ 心の弱点
「創造主よ」
ルシフェルが俺の前に立つ。
「影は、お前の心の弱さそのもの。
倒すには――
お前自身が“自分を許す”しかない」
「自分を……許す……?」
「そうだ。
お前が自分を許せば、影は弱くなる。
お前が自分を認めれば、影は消える」
ハルカが頷く。
「創造主。
あなたはずっと、自分を責め続けてきました。
未完の物語、放置したキャラ、世界の崩壊……
すべて自分のせいだと」
リリアが手を握る。
「主人公……
もう、自分を責めないで」
胸が熱くなる。
だが――影は笑った。
「甘いな」
影が黒い霧をまとい、
再び巨大な刃を振り下ろす。
「創造主。
お前は自分を許せない。
だから――俺は強い」
黒い刃が地面を切り裂き、
世界が揺れる。
「お前は弱い。
お前は臆病だ。
お前は創造主に向いていない」
影の言葉は、
俺が最も恐れていた“本音”だった。
________________________________________
◆ 反撃の一歩
「……違う」
俺は影を見据えた。
「俺は弱い。
臆病だ。
未熟だ。
でも――」
影の動きが止まる。
「それでも、俺は戻ってきた。
ルシフェルを救うために。
世界を創り直すために。
そして――」
俺は拳を握った。
「自分自身と向き合うために!」
影の瞳が揺れる。
「……創造主……?」
「俺は逃げない。
お前からも、
自分の弱さからも、
もう逃げない!」
その瞬間――
黒い街の揺れが止まった。
影が一歩後退する。
「……お前……
自分を認め始めたのか……?」
「そうだ」
俺は影を見据えた。
「俺は弱い。
でも、それを認めることから始める」
影の体がわずかに揺らぐ。
黒い霧が薄くなる。
「創造主よ……
お前が自分を認めれば――
俺は……」
影は震える声で呟いた。
「……消える……?」
________________________________________
◆ 第一戦の終わり
影は黒い霧に包まれ、
ゆっくりと後退していく。
「創造主……
今日はここまでだ」
影は微笑んだ。
「だが――
お前が完全に自分を許すまで、
俺は何度でも現れる」
黒い霧が影を包み込み、
影は空へと消えた。
残されたのは、
崩れかけた黒い街だけ。
「創造主よ」
ルシフェルが静かに言う。
「お前は、影に“傷”をつけた。
だが――まだ倒せてはいない」
ハルカが頷く。
「影は、創造主の心の弱さが残る限り、何度でも現れます」
リリアが手を握る。
「主人公……
大丈夫。
わたし、ずっとそばにいるから」
フェンリルが吠え、
ベヒモスが地面を踏み鳴らす。
俺は空の裂け目を見据えた。
「……行くぞ。
影を追う旅は、まだ始まったばかりだ」
________________________________________
第32話:影の領域・第二戦 ― “歪んだリリア”
黒い街の崩壊が止まり、
影が霧となって消えたあと――
世界は一瞬だけ静寂に包まれた。
だが、その静けさは“終わり”ではなく、
“次の悪夢の始まり”だった。
「……影は逃げたのか?」
俺が呟くと、ルシフェルが首を振った。
「違う。
影は“次の形”を準備している」
「次の形……?」
「影は創造主の心の弱さを利用する。
お前が最も揺らぐ“存在”を狙うはずだ」
胸がざわつく。
俺が最も揺らぐ存在――
それは、ルシフェルか?
ハルカか?
それとも――
「主人公……?」
リリアが不安そうに袖を掴む。
その瞬間、
空気が凍りついた。
________________________________________
◆ 黒い霧の中から
黒い霧が街の中心に集まり、
ゆっくりと“人の形”を作り始める。
細い腕。
小さな肩。
長い髪。
そして――
見覚えのあるシルエット。
「……リリア……?」
リリアが震える声で呟いた。
「え……?
わたし……?」
霧が晴れ、
そこに現れたのは――
リリアと同じ姿をした“影”だった。
だが、瞳は真っ黒で、
笑顔は歪み、
声は冷たかった。
「――こんにちは、主人公」
影リリアは微笑んだ。
「わたしのこと、ちゃんと見てくれてる?」
その声は、
本物のリリアよりも甘く、
だが底に冷たい刃を含んでいた。
「……影……!」
ハルカが剣を構える。
「創造主の影が、リリアの姿を……!」
「やめて……!」
本物のリリアが叫ぶ。
「わたしを……使わないで……!」
影リリアは首を傾げた。
「使う?
違うよ、リリア」
影リリアは本物のリリアの頬に触れた。
「あなたは“主人公の弱点”なんだよ」
________________________________________
◆ 影リリアの言葉
「主人公」
影リリアは俺の方へ歩いてくる。
「あなたは、わたしを救ったつもりでいるよね?」
「……つもりじゃない。
本気で救った」
「本気で?」
影リリアは笑う。
「じゃあ、どうして“名前を与えなかった”の?」
胸が刺される。
「どうして“物語を放置した”の?」
影リリアは一歩近づく。
「どうして“わたしを忘れた”の?」
「……違う……!」
「違わないよ」
影リリアは俺の胸に手を当てた。
「あなたは、わたしを“捨てた”んだよ」
その言葉は、
俺が最も恐れていた“本音”だった。
________________________________________
◆ リリアの叫び
「やめて!!」
本物のリリアが影リリアを突き飛ばした。
「主人公は……わたしを捨ててなんかない!!
主人公は……わたしを救ってくれた!!」
影リリアはゆっくりと立ち上がる。
「救った?
本当に?」
影リリアはリリアの顔を覗き込む。
「あなたは、主人公に“名前を与えられなかった”ことを
今でも気にしてるよね?」
「……っ……!」
「あなたは、主人公に“必要とされていない”と思ってるよね?」
「違う……!」
「違わないよ。
あなたはずっと不安だった。
主人公に捨てられるんじゃないかって」
リリアの瞳に涙が浮かぶ。
「……やめて……
やめてよ……!」
影リリアは微笑む。
「リリア。
あなたの不安は、主人公の不安。
だから――」
影リリアは俺を指差した。
「主人公の影である“わたし”が生まれた」
________________________________________
◆ 影リリアの攻撃
影リリアが手を広げる。
黒い霧が渦を巻き、
街の建物が歪み、
影の人々が悲鳴を上げる。
「主人公。
あなたは優しい。
だから迷う。
だから苦しむ。
だから世界を壊す」
影リリアの声は甘く、
だが残酷だった。
「だから――
わたしがあなたを壊すね?」
黒い霧が刃となり、
俺に向かって飛んでくる。
「くっ……!」
俺は横へ飛び退いた。
霧の刃が地面を切り裂き、
黒い穴が開く。
「創造主、危険です!」
ハルカが叫ぶ。
「影リリアは、創造主の“リリアへの不安”を具現化しています!
攻撃はすべて、創造主の心を狙っています!」
ルシフェルが剣を構える。
「創造主よ。
影は、お前の心の弱点を突いてくる。
この戦いは――精神の戦いだ」
________________________________________
◆ 反撃の一歩
「主人公……!」
本物のリリアが俺の手を握る。
「わたし……主人公の足を引っ張ってる……?」
「違う!」
俺はリリアの手を強く握り返した。
「リリアは俺の弱点じゃない。
俺の“仲間”だ」
影リリアの瞳が揺れる。
「……仲間……?」
「そうだ。
リリアは俺を支えてくれる存在だ。
お前が言うような“弱点”じゃない!」
影リリアの体が揺らぐ。
黒い霧が薄くなる。
「……主人公……
あなた……」
「俺はリリアを信じてる。
だから――」
俺は影リリアを見据えた。
「お前には負けない!」
影リリアは震える声で呟いた。
「……創造主……
あなた……
自分を……信じ始めたの……?」
黒い霧が影リリアを包み込み、
影は後退していく。
「今日は……ここまで……」
影リリアは微笑んだ。
「でも――
あなたの不安が消えるまで、
わたしは何度でも現れるよ」
黒い霧が影リリアを飲み込み、
影は消えた。
________________________________________
◆ 第二戦の終わり
黒い街の揺れが止まり、
世界が静かになる。
「創造主よ」
ルシフェルが静かに言う。
「お前は影に“二つ目の傷”をつけた。
だが――まだ倒せてはいない」
ハルカが頷く。
「影は、創造主の心の弱さが残る限り、何度でも現れます」
リリアが涙を拭きながら微笑む。
「主人公……
ありがとう……
わたしを信じてくれて……」
フェンリルが吠え、
ベヒモスが地面を踏み鳴らす。
俺は空の裂け目を見据えた。
「……行くぞ。
影を追う旅は、まだ続く」
________________________________________
第33話:影の領域・第三戦 ― “創造主の罪の街”
影リリアが消えたあと、
黒い街は静かに揺れ続けていた。
建物は歪み、
空は黒く濁り、
地面は黒い霧に覆われている。
まるで世界そのものが“主人公の心の奥底”を映しているようだった。
「……ここは、どこなんだ?」
俺が呟くと、ルシフェルが静かに答えた。
「創造主よ。
ここは――“創造主の罪の街”だ」
「罪の……街……?」
「そうだ。
お前が最も強く後悔し、
最も強く目を背けてきた場所」
胸がざわつく。
この街には、
俺が放置したキャラたちがいた。
未完の設定が散らばっていた。
そして――
“終わらない街”という最悪のバグを生んだ場所でもある。
「創造主よ」
ハルカが静かに言う。
「影は、あなたの“罪悪感”を利用しています。
この街は、あなたの心の傷そのものです」
リリアが袖を掴む。
「主人公……
ここ、すごく……苦しい場所だよね……」
「ああ……」
胸が締め付けられる。
________________________________________
◆ 街の中心へ
俺たちは街の中心へ向かって歩き始めた。
だが、歩くたびに景色が歪む。
右に進んだはずが左に戻り、
前に進んだはずが後ろに戻る。
「……迷路みたいだな」
「違う」
ルシフェルが首を振る。
「これは“創造主の迷い”だ」
「迷い……?」
「お前が自分を許せない限り、
この街は永遠に歪み続ける」
ハルカが補足する。
「影は、創造主の“迷い”を利用して空間をねじ曲げています。
この街では、あなたの心がそのまま現実になります」
胸が痛む。
「……俺のせいで、また世界が……」
「違う」
リリアが俺の手を握る。
「主人公のせいじゃないよ。
主人公が向き合おうとしてるから、影が暴れてるんだよ」
その言葉に、胸が少しだけ軽くなる。
________________________________________
◆ 影の囁き
そのとき――
街のスピーカーから、
“俺の声”が流れた。
「――創造主。
まだ迷ってるね」
影の声だ。
「自分を許せない。
自分を信じられない。
自分には価値がないと思ってる」
胸が刺される。
「だから、この街は歪む。
お前の心が歪んでいるからだ」
影の声は続く。
「創造主。
お前は“自分の罪”から逃げている」
「逃げてない!」
俺は叫んだ。
「俺は向き合ってる!
影とも、自分の弱さとも!」
「向き合ってる?
本当に?」
影の声は笑った。
「じゃあ――
この街の“住人”と向き合える?」
「住人……?」
その瞬間、
黒い霧の中から“人影”が現れた。
________________________________________
◆ 罪の住人たち
人影はゆっくりと姿を現す。
男。
女。
子供。
老人。
だが、全員の顔は“ぼやけている”。
「……こいつらは……?」
「創造主よ」
ルシフェルが静かに言う。
「彼らは――
お前が“名前を与えなかったキャラ”たちだ」
胸が締め付けられる。
「名前がない。
設定もない。
役割もない。
ただ存在するだけのキャラたち」
ハルカが続ける。
「彼らは、創造主に“忘れられた存在”です」
リリアが震える声で呟く。
「主人公……
この人たち……
ずっと……待ってたんだよ……?」
人影たちは、
ゆっくりと俺に手を伸ばす。
「……ア……」
「……ナマエ……」
「……ホシイ……」
「……ワタシヲ……ミテ……」
その声は、
悲しみと怒りと絶望が混ざったような響きだった。
「……ごめん……」
思わず呟く。
「ごめん……
俺は……お前たちを……」
「捨てたんだよ」
影の声が街中に響く。
「創造主。
お前は彼らを捨てた。
忘れた。
放置した」
人影たちが俺に近づく。
「……ア……」
「……ナマエ……」
「……ホシイ……」
「……ワタシヲ……ミテ……」
胸が張り裂けそうになる。
________________________________________
◆ 影の罠
「創造主よ」
影の声が甘く響く。
「彼らを救いたいか?」
「……救いたい」
「なら――
お前が“自分を許せ”」
「……!」
「お前が自分を許せば、
彼らは救われる。
だが――」
影の声が冷たくなる。
「お前が自分を許せない限り、
彼らは永遠に“名前のない存在”だ」
人影たちが俺に手を伸ばす。
「……ア……」
「……ナマエ……」
「……ホシイ……」
胸が痛い。
苦しい。
逃げたい。
だが――
「主人公!」
リリアが俺の手を握る。
「主人公は……
わたしに名前をくれたよ!」
ルシフェルが言う。
「創造主よ。
お前は“変わった”。
だからこそ、影は焦っている」
ハルカが剣を構える。
「創造主。
あなたはもう逃げていません。
だから――向き合ってください」
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◆ 創造主の答え
俺は深く息を吸い、
人影たちを見つめた。
「……ごめん」
人影たちが動きを止める。
「俺はお前たちを放置した。
名前も与えず、
役割も与えず、
存在を忘れていた」
胸が痛い。
だが、言葉は止まらない。
「でも――
今は違う」
人影たちが俺を見る。
「俺は戻ってきた。
お前たちを救うために。
お前たちに名前を与えるために。
お前たちの物語を作るために!」
その瞬間――
黒い街が揺れた。
人影たちの輪郭が少しだけ“はっきり”する。
影の声が震える。
「……創造主……
お前……
自分を……許し始めたのか……?」
「そうだ」
俺は影に向かって叫んだ。
「俺は逃げない!
お前からも、
自分の罪からも、
もう逃げない!」
黒い霧が影を包み込み、
影は後退していく。
「……今日は……ここまでだ……」
影は悔しそうに呟いた。
「だが――
創造主。
お前の“本当の罪”は、まだ別にある」
黒い霧が影を飲み込み、
影は消えた。
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◆ 第三戦の終わり
街の歪みが少しだけ収まり、
空気が軽くなる。
「創造主よ」
ルシフェルが静かに言う。
「お前は影に“三つ目の傷”をつけた。
だが――まだ倒せてはいない」
ハルカが頷く。
「影は、創造主の心の弱さが残る限り、何度でも現れます」
リリアが涙を拭きながら微笑む。
「主人公……
ありがとう……
わたしも……この人たちも……救ってくれて……」
フェンリルが吠え、
ベヒモスが地面を踏み鳴らす。
俺は空の裂け目を見据えた。
「……行くぞ。
影を追う旅は、まだ続く」
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