第43話 『魔力感知』スキル②
ツィオラさんに説教されるレシアーナに全員が苦笑いを浮かべる中、それを横目に俺は国王のことを考えていた。
――ともかく、ミュラ達も魔力を感知してるってことは、やっぱり国王はなんか俺の知ってる『プリテスタファンタジー』とは違うってことか? 【竜殺し】のスキルもいきなり身に付いたり、よく分からないことが結構あるけど……なんにせよ、少しでも強くならないと多分あの国王には勝てなさそうだ。
そうして、俺が持っていた木剣に視線を向けながら覚悟を決めて強く握り締めた時だった。
「お? やってんな」
「おはよう」
「みんな頑張ってるわね」
「バルフォードさん、ルアールさん、それにクラムさんも……どうかしたんですか?」
バルフォードさん達がやってきたことに気付いて声を上げると、三人は笑顔で俺のところまでやってくる。そして、俺の肩に手を回しながらバルフォードさんが面白そうな顔で声を掛けてきた。
「いやな、坊主達が修行してるってんで、どんなことしてんのか気になってな。あの『ヒュド―ゲフンゲフンッ! その、なんだ……魔物を倒しちまうくらいだからな」
危うく『ヒュドラ』の名前を口にしかけて咳払いするバルフォードさん。いや、やっぱこの人に隠し事させられるか心配になってきたな……ゲームでも割と口軽いし。
そんなバルフォードさんに呆れていると、同じように呆れたルアールさんとクラムさんも周囲に聞かれないように少し声のトーンを抑えながら話を続けてくる。
「ちょっと……お父さん、しっかりしてよね。周りに聞かれないようにしないといけないんだから……」
「そうそう。ほんと、すぐそうやってベラベラ喋ったちゃうんだから……」
「悪い悪い。ま、ともかく、向こうに戻ったらしばらく騎士団のごたごたでこっちには来られなくなるかもしれないからな。その前に坊主らの修行を見てやろうと思ったんだよ」
「はあ……まあ、良いですけど」
「それと……坊主らに悪いが、一応、国王のことは向こうで話させてもらって良いか?」
「向こうって、『オクトール王国』にってことですか?」
「ああ……昨日の姫さんの誕生会でベラベラと喋ってくれてたからな。とはいえ、あれだけじゃ、証拠として確定するには弱いからもう少し情報を得た上で……だが」
「良いですよ。むしろ、国王のことはどんどん話して下さい。あ、ただ、その場合は王女……アティル様は協力的だということも報告しておいてくれると助かります。もし、争うことになった場合は『オクトール王国』と協力してくれるでしょうから」
「そら俺もそうするつもりだが……しっかし、相変わらず坊主は頭が回るな。子供らしくないつーか、こういう政治的な話ができる年齢にゃ思えないが、最近の子供は成長が早いのか? それとも単に坊主が特別なのか……うちの娘が坊主くらいの時はただワガママだったんだぜ?」
「ちょっと……シュウに余計なことを吹き込まないでくれない?」
「わたし達が誤解されるでしょ?」
「じょ、冗談だって……怒るなよ……」
「ははは……」
情けなくも娘達の怒りの形相に耐えられず俺の背中に隠れるバルフォードさんに苦笑いを浮かべていると、ふとバルフォードさんは話題を変えるように近くに居た師匠に声を掛けていた。
「そ、それはそうと、お師匠さんよ。さっき坊主達となんか話してるのが聞こえたんだが、魔力がどうとか言ってたな。ありゃ何の話をしてたんだ?」
「ん? ああ……実は昨日のアティル様の誕生会で陛下とお会いした時にシュウやミュラ達が国王からただならぬ魔力を感知したらしくてな……その話をしていたところだ」
「魔力を感知? んだよ、坊主達そんなこともできんのか?」
「へぇ、すごいじゃない」
「わたし達にもできないのに……」
「いやまあ、気付いたら出来るようになってたみたいで……」
「しっかし、国王の魔力……ねえ。王族ってのは大して魔力を持ってないと思うんだが、どうなんだ?」
「俺達もそう思ってたんですけど……師匠も言ってた通り、かなり強い魔力を持っていたんですよ」
「ふーむ……ま、あの様子、なんか普通とは違うとは思ってたが……強い魔力を持ってた、か……ますます怪しいな……」
そうして、バルフォードさんと話していると、よろよろになったレシアーナを連れたツィオラさんがやってきて話に加わってきた。
「陛下の魔力は明らかに普通とは違うわ……少なくとも、私はあんな魔力を感じたことはないもの」
「『宮廷魔導師』だったあんたがそう言うんだから相当なもんってことか……ま、なんにせよ、国王や騎士団の連中の動向には気を付けておいた方が良さそうだな……それはそうと、坊主」
「その坊主っていうのやめません? 俺にはシュウっていう名前があるんですけど……」
「良いだろ、坊主は坊主なんだしな。ンなことより、『例のアレ』どうするつもりだ? 坊主の話じゃ、鍛冶屋に思い当たる節があるみたいだったが……」
「そうですね。そろそろ行こうかなと思っていたところです」
『ヒュドラ』の死体をあのままにしておいたら、そのうちバレるからな。今日はみんな揃ったし、丁度良いか。
「それじゃあ、今から行きましょう」
そんな俺の言葉に怪訝な顔で顔を合わせたのだった―。




