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第41話 ミュラの不安

「……生きた心地がしなかった」


 そうして、アティル様の誕生会を終えて孤児院に帰ってきた俺はベッドにダイブしながらそうこぼす。いや、何あれ? あれが一面のボスって、どう見てもラスボスの風格だったんだけど……この世界どうなってるの?


 ――確かに、本来なら隠しボスのはずの『ヒュドラ』が地上に出て来たり、ゲームとは違うことは起こってるけど……それはツィオラさんが撃退して隠しダンジョンに逃げたってことで片付けられる。でも、国王のあの様子……明らかにおかしい。それに、あの『ヒュドラ』ですらレベルとステータスが見れたのに、国王のは一切見えなかった……仮にこのままゲーム通りに国王と戦ったとして、俺達で勝てるのか?


 そんなことを思い、ベッドの上で横になっていた時だった。突然、扉の向こうからコンコンと控えめな音が響くと同時に聞き慣れた声が聞こえてきたのだ。


「……シュウ? 起きてる?」

「ミュラ……?」


 それがミュラのものだと気付いた俺は扉を開くと、そこにはどこか不安そうな表情で立つミュラが居た。


「……今ちょっと話せる?」

「ああ、良いけど……」


 ミュラがこんな顔をするなんて珍しいな。

 そんなことを思いながらミュラを部屋の中に入れると、ベッドの上に座ったはミュラが俯いてしまっていた。やっぱり、なんかあったんだろうか?


「……」

「どうかしたのか?」

「うん……」


 俺の言葉にもどこか歯切れ悪く返事をするミュラに俺が首を傾げていると、ミュラは意を決したように声を返してきた。


「その……変なこと言うかもしれないけど……笑わずに聞いてくれる?」

「ん? 別に笑わないよ」

「ありがと……今日会った王様だけど、なんか少し変な感じがしたの」

「変な感じ?」

「うん……最初見た時は感じなかったけど……なんていうか、すごく怖いっていうか……なんて言って良いか分からないけど……魔力っていうのかな? それがすごかったっていうか……ごめん、なんて言ったら良いか分からないけど……」


 なるほど……ミュラは国王の魔力を感じ取れるようになって、その魔力量に怯えてるってことか。確かに、あんな黒いオーラみたいなのを発してたし、魔力は桁違いだろうしな。


「すごい怖いっていうか……それで、シュウはどうだったのかな、って思って……」

「俺も国王に似たようなものを感じてたよ」

「シュウも?」

「ああ。なんていうか、黒いオーラみたいなのも見えたし」

「黒いオーラみたいなの……? ごめん、わたしは見えなかったけど……」


 ミュラにはあの黒いオーラは見えなかったのか。となると、ミュラの場合はあくまでも魔力を何となく感じ取れるってくらいなのかもしれないな。


 しかしまあ、これであの国王が普通とは違うレベルの相手だってことが分かった。


「……でも、あんな人がわたし達の孤児院を壊そうと考えてるんだ、って思ったら怖くて……勝てるのかな、って……それで不安になって」


 そうして、ミュラがその手を強く握り締めるのを横目に俺は笑みを浮かべると、そんなミュラを安心させるように声を返した。


「大丈夫だって」

「え?」

「必ず俺が助けてみせる。ミュラも孤児院も」

「シュウ……うん」


 俺の言葉にミュラの表情が徐々に明るくなっていく中、俺は窓から見える城に視線を向ける。


 ――これから先、あの国王とも戦わないといけないんだ……もっと強くならないと。


 そう思い、俺は強く手を握り締めたのだった―。

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