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第35話 王女との接触

 ――さすがに城なだけあって警備がすごいな……。


 そうして、俺はフードで顔まで隠して一人で城へ潜入していた。

 兵士達の様子を伺いながら壁に隠れては死角を見付けて移動していく……さながらスパイ映画か何かの気分だな。


 ――ただ、王女についての情報とか得られるかなと思ったけど、そんな都合の良い話はないか……ん? あれは―


 そんな中、ふと城の上の方で窓の扉が開いているところが見える。明らかに他とは違う雰囲気に俺は目を細めると、そこに向かって移動した。





「……?」


 城の大きなバルコニーの上に降り立つと、俺に気付いた少女の声が聞こえてきた。


「……っ!? だ、誰ですか!?」

「ククク……」


 突然、見知らぬ人間が現れ、声を上げて椅子から立ち上がる少女―間違いない、『プリテスタファンタジー』より若いが王女だ。主人公と同じ歳である彼女は俺と同じ十二歳となっており、侵入者である俺を恐れながらも王女らしい厳しい声を向けてくる。


 そんな王女に俺は笑みを浮かべるが―


 ――……やばい。


 内心、半端ないほどに焦っていた。


 ――もともと情報を得るだけのつもりだったし、完全にノープランで来ちゃったよ……しかも、このお姫様ってのちのち悪い王様倒してくれて正真正銘の王女様になるから変なことしてルート変わっても困るからなぁ。


 そうして、笑って誤魔化すしかなった俺が次に何を言おうか悩んでいた時だった。


「―私を殺しに来たのですね」

「……」


 ん? 何か今、王女様、すごいこと言ってなかった?

 そうして、驚いている俺に王女は真剣な表情で続けていく。


「……父の企みを阻止するため、私を始末しようと考えたのでしょう? ですが、無駄ですよ……今の父は乱心されている。例え私が死んだところでその手を止めることはないでしょう」

「……では、王女。あなた自身は今の王国についてどうお考えか?」


 何となくその場のノリでそう尋ねてみる。え? 王女様への話し方ってこれで合ってるよね? 不敬だって処刑されたりしない?


 そんな俺の言葉に王女は深いため息を吐きながら答える。


「……私は父の行いを許すことはできません。ここから見える景色、あなたはどう見えますか?」

「……街を一望できるとても素晴らしい場所だ」

「ええ、そうです……そして、私が見ることができる唯一の景色でもあります。父は私をここに幽閉し、自由に出ることを許していないのです……」

「幽閉……」


 確かに、『プリテスタファンタジー』ではそんな設定が語られていた。実際、物語序盤で王女の出番はなく、国王討伐の直前に出てくるのは仲間達の手を借りて幽閉していた場所から抜け出したからだ。


 つまり、今の王女は文字通りかごの中の鳥ということだ。そんな彼女がふと寂しそうにこぼしてきた。


「―夢を見るのです」

「夢?」

「ええ……笑われるかもしれませんが、夢の中では大人になった私が父と戦い、父を倒してこの国を治める……そんな夢を見るのです」

「……」


 それって、『プリテスタファンタジー』のストーリーだよな? つまり、王女様もエリシルみたいに夢でゲームの世界を見てるってことか?


 そうして、 俺が驚いて黙る中、王女は決意の強い眼差しでこう口にした。


「ですが、今の父の行いを聞いていると……夢を夢だけで終わらせるわけにはいなかいと考えています」

「……」


 まさか、この歳で父殺しの汚名を覚悟するとは思わずつい驚いて黙っていると、なぜか王女様はその沈黙を勘違いして言葉を返してきた。


「……驚かれないのですね」

「いえ、あなたはそれを成せる方であると思っておりますので」

「私に……?」


 しまった、結末を知ってるからなんとなくノリでついネタバレ的に言ってしまった。すると、そんな俺の言葉に王女はふっと笑みを浮かべた後、まるで決意を固めるように言葉を続けていく。


「……ええ、そうですね。父を殺す……そんなことが私にできるかは分かりません。ですが、この国に住む人々を助けるためなら……やらねばならないでしょうね」

「……では、あなたはいずれ父を殺し、国を統べるおつもりだ、と?」

「そのように考えています……ですが、本音を言えば怖ろしい……こういう時、夢の中のようにいつも共に戦ってくれた騎士が居てくれれば勇気が持てるんですけど……」

「騎士? それはこの国の騎士団の者ということか?」


「いえ、違います……今の騎士達は父の傀儡となり、志も持たぬ者……しかし、夢の中のあの人は違いました。仲間達を率いて私と共に戦ってくれた……実を言うと、あの夢は正夢だという確信があるのです。夢とは思えない、本当にリアルな予言のようなもの……ですから、私はその方をお待ちしているのです」

「なるほど……」


 それって、マフィと一緒に戦った時の記憶が夢になってるってことか?

 そうして、俺が驚いていると、王女は驚いた様子で声を返してくる。


「笑われないのですか? 子供の夢、幻だ、と……」

「いえ、実は私の近くにも同じように未来を夢に見る少女がおります。ゆえに、王女の言葉は真実であると考えています」

「まあ、それは本当ですか?」

「ええ。しかし、王女の夢でともに戦った騎士の名前……もしや、マフィという女性ではありませんか?」

「え? 違いますけど……」

「ん?」


 あっれ~? おかしいなぁ……てっきり、それだと思ったけど。やべ、すげぇ恥ずかしい……しかし、うーん、だとしたら他のパーティだったりするのかな?


「では、バルフォードという男か?」

「あ、そのような方もいらっしゃいました!」

「ならば、ルアール? それともクラムか?」

「いえ、そちらの方でもありませんが……ですが、やはり夢の中で知っている名前ばかり……なぜ、あなたが夢の中の人の名前を知っていらっしゃるのですか?」

「え? あー……先ほど言った、あなたと同じように未来を夢に見るという少女から聞いたのです」

「そうだったのですね!」


 ふう、危ない危ない……なんとか誤魔化せたか。


「ということは、やはり、これはただの夢ではなく未来ということ……では、あの方とお会いするということですね!」


 そうして、目を輝かせて口にしたその名前は―俺が全く予想していなかった名前だった。


「あのお方―シュウ様に!」

「ぶっ!?」

「……? どうかされたのですか?」

「……いえ、何でも」


 そっちかーい……いや、確かに、主人公はマフィとシュウなんだけどさぁ……。

 王女の思わぬ発言に俺が咳払いで誤魔化していると、王女はバルコニーにゆっくりと歩いてきて俺の横から街を見ながら声を返してくる。


「……この国はとても素晴らしい国です」

「……ええ」

「しかし、父はそんな国を壊して都合の良いものへと変えようとしています……それは決して許されることではありません。ゆえに、私はいずれそれを止めるため……そして、あのお方に会うまで……死ぬわけにはまいりません」

「なるほど……王女、あなたの話は理解した。ならば―」


 そう言って、俺の言葉に王女様が振り返った時だった。


「あ」

「…………え?」


 王女と話していた俺はこの部屋が城の一番上にあり、風が強くなることを完全に失念していた……驚く王女の目の前で、被っていたフードが風で煽られ、なんと俺は姿を晒してまったのだ。


 やってしまった……子供とはいえ、その姿は王女が夢で見たシュウだ。実際、王女はその目を輝かせて目を潤ませており、その名前を口にしようとした。


「……」

「……」

「シュ―」

「―つまり、あなたは父とは違うということだ」

「え!? そのまま話を続けるんですか!? あ、あなたはシュウ様ではないのですか!?」

「人違いだ」


 そう言うと、気まずくなった俺は再びフードを被ってバルコニーの手すりの上に乗り、王女の方に振り返ると、驚いた王女が詰め寄るように声を掛けてくる。


「で、では、せめてお名前を……!」

「……名乗るほどの者ではない。さらば!」

「あ、お、お待ち下さい!」


 そう言って、バルコニーの手すりの上に立っていた俺は背中から城を飛び降りて姿を隠した。ただ―


「シュウ様……まさか、お会いできるなんて……これは運命です」


 ゆっくりと落下していく俺の耳に、そんな王女の言葉が風に乗って聞こえたような気がした―。





「―いや~、まいったまいった」


 翌日、城から帰った俺は孤児院の食堂にある机でダラダラしながら独り言を呟いていた。


「まさか風で正体がばれるとは……今度からマスクとか付けた方が良いかな?」


 ――ま、どうせ王女と会うのは数年後だし、きっと忘れて―


 そうして、外で孤児達が遊んでいるのを横目にあくびをしていた時だった。


「え!? ど、どうして、あなたが!?」

「ん?」


 驚いたエリシルの声が奥から聞こえ、俺は思わず声を上げる。外を見ると、何やら数人の騎士っぽい格好をした女性達が孤児院の前に集まっているようだった。


「騎士団……? また何で……しかし、女騎士団って確か……」

「シュウ! 大変よ!」

「ミュラ? どうかしたのか?」


 そうして、俺が記憶を手繰り寄せる中、ミュラが血相を変えて食堂にやってくる。すると、慌てた様子で俺の肩を掴むと、ぶんぶんと力強く動かしながら声を向けてきた。


「それはこっちの台詞よ! シュウ、一体、何をしたのよ!?」

「はあ? 何の話―」

「―あの、すいません」

「んん〜? なんか聞き覚えのある声が―」


 その時、俺は気付かなかったのはおかしかったんだ。だって―


「あぁ、やっぱり! こちらにいらしたんですね、シュウ様!」

「……マジかよ」


 その声は『プリテスタファンタジー』で主人公達とともに国王を倒すアティル・フィスタリア……エリシルや女騎士と一緒に驚く俺達の前に現れた彼女こそ、昨日出会ったこの国の王女、その人だったのだから―。

読んで頂きありがとうございます!

かなり勢いで書いたので、色々と拙い部分が多いかもしれませんが無事に1章を書き終えました……。


次回から2章が始まりますが、物語の中心である王国が孤児院を狙う話や最後に出てきた王女が出てくる話になる予定です。


もし良かったら、フォローやレビューをして下さると、モチベーションに繋がるのでよろしくお願いします……!


また、感想やコメントもありがとうございます!

全て目を通させて頂いてるので、頂けると非常に嬉しいです!


今後も応援して頂けると幸いです!

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