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第34話 全てが終わって

 そうして、『ヒュドラ』を討伐した俺はそこから二日間丸々寝ていたらしい。まあ、『ヒュドラ』相手だったし、へとへとだったからな……。


 そんなこんなで俺が目を覚ますと、ベッドのすぐ横でタオルを水で濡らして俺に掛けようとしていたミュラが大声を上げた。


「シュウが目を覚ましたわっ!」


 その声を聞いたエリシルやマフィも俺のベッドまでやってくると、ミュラを筆頭に涙目で詰め寄ってきた。


「もう目が覚めないと思ったじゃない!」

「いや、ごめんごめん……」

「火傷は大丈夫なの?」

「まあ、寝る前に回復魔法使ったからこの通り大丈夫だよ」

「良かった……本当に無理してびっくりしたんだから……」

「あはは、悪い」


 三人に迫られて苦笑いを浮かべる。普段はあまり表情を変えないミュラまで泣きそうな顔になっていることを珍しがっていると、ふとそのミュラが訝しげな声で俺から視線を外してベッドの反対側に視線を向ける。


「―ところで、」


 そして、さっきから少し違和感のあるその方向に向かって声を上げた。


「あなたはさっきからなんでシュウの隣に居るの?」


 そう言うミュラの視線を追ってみると……そこには俺の腕に抱き付いているレシアーナの姿があった。何食わぬ顔で抱き付いているレシアーナに視線を向けると、にっこり笑顔を返してきた。


「あ、別にわたしのことはお気になさらず。それよりシュウさんの心配を」

「気にするなって方が無理でしょ……」

「いつの間に……」

「この子、ずっと居るのよね……」

「そうなのか?」


 ミュラ達の言葉に俺がそう言うと、レシアーナは「いや~」と笑いながら声を返してきた。


「シュウさんのおかげでお母さ―ゲフンゲフンッ! まあ? この人のおかげでお師匠も助かりましたし? このレシアーナさんがこれくらいのことはしてあげようと思ったわけですよ! ふふん、感謝して下さい!」

「いやもう、お母さんって呼べば良いじゃん」

「ぶわっはぁ!? だ、だぁれがそんな軟弱な呼び方をするって言うんですか!? あ、あの人はもうそう言う年齢じゃないし、呼んだとしてもお婆ちゃ―あ痛っ!?」

「……悪かったわね、そんな年齢じゃなくて」

「お、お師匠!?」


 そうして、俺の言葉に慌てていたレシアーナの頭を軽く叩いたのはツィオラさんだ。いつの間にか扉が開いて師匠と一緒にツィオラさんが入って来ており、その背中からゴゴゴゴゴゴという効果音が出そうなほどに冷たい視線をレシアーナに向け、それを見たレシアーナがガクガクと震えながら声を返す。


「こ、こここれは決してお師匠のことを言っていたわけではなくてですね!?」

「……罰として、店に運ばれてきた大量の壺の移動ね。良かったわね、日頃運動不足だったでしょ? 良い運動になるじゃない」


 その顔は笑っているが迫力があり、そんなツィオラさんにレシアーナが絶望した表情で声を上げた。


「そ、そんなああああ!? しゅ、シュウさん助けて下さい! このままではわたしの華奢で可愛い手がゴリラみたいになっちゃいますよ!?」

「安心しろ、レシアーナ。ゴリラみたいな手でも可愛いよ」

「全然フォローになってないですよ!? あ、いや、でも~、可愛いって言われるのは嬉しい、えへへ―はっ!? いや、でも、駄目ですってば!?」

「忙しい奴だな」


 笑ったり怯えたり恥ずかしがったり……原作以上に明るいのはツィオラさんが生きていたからか?


 そんなレシアーナに両腕を組んで呆れた様子でため息を吐くツィオラさんだったが、やがて俺の方に視線を向けると、声を返してきた。


「……それにしても、君には助けられたわね。感謝してるわ。なんて言うか、正直、自分でもあそこで死んでたって思うし……でも、君のおかげで死にそびれちゃった。改めて、お礼を言うわ。ありがとう」

「いえ、ツィオラさん達が無事で良かったです。『ヒュドラ』を相手にして俺も死ぬんじゃないかって思いましたしね」

「そうね。君が『ヒュドラ』の炎を吐き出された時は私も肝が冷えたもの」


 そうして、ツィオラさんと話していると、師匠が声を上げた。


「そうだな。それに、まさか、自分で火傷まで治してしまうとはな……驚いたぞ」

「まあ、そこまで大きい火傷じゃなかったですから」

「しかし、火傷は火傷だ。改めて、お前には驚かされてばかりだな」


「お? よう、坊主。目ぇ覚ましたか!」

「あ、ほんとね。良かったわ」

「うん。あ、お見舞いに果物持って来たから孤児院の子達と一緒に食べて」

「バルフォードさん、ルアールさん、それにクラムさんも……」


 やがて、来客が多くなり、騒がしくなっていく。まさか、こんなことになるとは思いもしなかったな……。


 本来は鬱要素満載の『プリテスタファンタジー』……だが、エリシルやツィオラさんの死を回避したことで、少しずつ明るくなってきている。そのことを嬉しく思う中……俺にはもう一つ気になることがあった。


 それは、中盤で俺達を率いる王女のことだ。

 物語上、恐らくこのままいけば数年後に王女は国王を倒して王位継承権を得るはずだが……エリシルやツィオラさんを助けたことで実際のゲームのストーリーと若干差が出来ているこの状況、王女に何かしら影響がないとも言えないからな。それに―


「―王国が孤児院を潰しに掛かる日を詳しく知る為にも情報収集しないといけないし、城に行けば何か情報が得られるかもしれないしな」

「シュウ? 何か言った?」

「あぁ、いや、何でもない」

「……?」


 俺の言葉にマフィが首を傾げ、ミュラとエリシルも顔を合わせて首を傾げていた。

 そうと決まれば、一度接触してみるか……。

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