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第25話 『ヒュドラ』Lv90

「Lv90って……ほとんどレベルカンストじゃないか!? しかも、『ヒュドラ』って『プリテスタファンタジー』の隠しダンジョンのラスボスだぞ!?」


 『バジリスク』とは比較にならないほど大きい『ヒュドラ』を前に、俺は思わずそう口にしてしまう。


 当然、驚いているのは俺だけじゃない……周囲の人達もその巨体に圧倒され、恐怖するように声を上げており、ツィオラさんと師匠も声を上げた。


「そんな……『ヒュドラ』がどうしてここに……!?」

「馬鹿なっ……!? こいつは遥か向こうの森に生息するモンスターのはずだ……! それが何故こんなところに居る……!?」

「森に生息してる……? 師匠、『ヒュドラ』は『ダンジョン』の奥地に生息しているんじゃないんですか?」


「『ダンジョン』だと……? いや、違う……奴はここからずっと先の森を棲み処にしているモンスターだ。知らないのか?」

「え? 森の中を棲み処にしてた……?」


 どういうことだ?

 俺が知っている『プリテスタファンタジー』だと『ヒュドラ』は隠しダンジョンの最下層に居るラスボスで、倒すと強力な装備が作れるはずだけど……。


 ――……いや、待て。ゲームの中だから考えたことがなかったけど、そもそもどうして『ヒュドラ』は隠しダンジョンに居たんだ? 師匠はさっき森の中を棲み処にしていると言っていた……だとしたら、この『ヒュドラ』は何かきっかけがあって、それで森の中からダンジョンに隠れるようになったってことじゃないか?


 隠しダンジョンには特にストーリーというストーリーはない……だが、そう考えれば辻褄が合う。しかも、よく見れば、この『ヒュドラ』には少し違いがあった。


「この『ヒュドラ』……俺の知っている『ヒュドラ』より首が一本多い……そういえば―」


 俺はふと『プリテスタファンタジー』の設定に書かれていた『ヒュドラ』の設定を思い出す。『プリテスタファンタジー』の隠しボスとして登場する『ヒュドラ』の首は四本……だが、この『ヒュドラ』の首は「ある戦いで失われた」とされているのだ。


 それがゲーム内でよりリアリティを増させる設定だったが、まさか―


 ――そうか……つまり、隠しダンジョンに『ヒュドラ』が居たのは本来はツィオラさんがここで『バジリスク』を倒した後、この『ヒュドラ』と戦って撃退したからか。多分、その時にツィオラさんが命懸けで『ヒュドラ』の首を一本破壊して、隠しダンジョンに逃げた『ヒュドラ』は、そこから外に出なくなったってことか……。


 そう考えた俺がツィオラさんの方を見ると、やはりどこか覚悟したような顔をしているのが分かる。だとしたら、ここが本当の意味でのツィオラさんの死亡フラグの分岐点ってことか……。


 そうして、俺がルアール、バルフォード、クラムが驚いた様子で声を上げていた。


「こ、これが……『ヒュドラ』……」

「おいおいおい……あんな化け物、どうするんだよ……」

「こ、こんなの相手にできるわけない……」


 絶体絶命……そんな言葉が伝播しているような空気。しかし、そんな俺達の空気を破るように別の声が聞こえてきた。


「―シュウ!」

「は? この声は―」


 その声は聞き覚えがあるなんてもんじゃない……あまりにも場違いなその声に、俺はその声の主の名前を呼ばずにはいられなかった。


「ミュラ、エリシル、マフィ! お前ら、なんでこんなところに居るんだよ!?」


 そう言って俺が視線を向けた先に居たのは、馬車に乗ってきた三人だった。

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