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第24話 新たな死亡フラグ

 そして、バルフォードと協力した俺は残り二匹の『バジリスク』に向かって走って行くと、先陣を切ったバルフォードが『バジリスク』に向かって思い切り振り大剣を振るいながら声を上げた。


「おらぁっ!」


 だが、『バジリスク』は素早い動きでそれを避けると、バルフォードに向かって毒を吐こうと口を開いてきてしまい、バルフォードが慌てた様子で声を上げていた。


「やべっ……!」

「避けてっ!」

「ファイヤーボール!」

「うおっ!?」


 そんなバルフォードをルアールが弓で、クラムが魔法で援護すると、バルフォードは急いで体を横に避け、『バジリスク』に攻撃が命中する。しかし―


「シャアアアア!」

「ちっ……! やっぱ、こんくらいじゃ駄目か……!」


 皮膚の表面が少し焼け焦げているものの、致命傷とは言えず、さらに怒り狂った『バジリスク』が舌を出しながら突撃してくるのを見ながらバルフォードが声を上げる。


 しかし、『バジリスク』はそんなバルフォードから目を逸らすと、標的を自分の皮膚を焦がしたルアール達の方へと変えたらしい。その目でギョロッと二人を捉えると、物凄い速さで二人に向かって突撃していってしまったのだ。


「キシャアアアアアアッ!」

「ちょ……!? こ、こっちに来る!」

「え、ど、どうすれば……!?」

「おい、てめぇ! 人ん家の子供に何しようとしてんだっ!? お前ら、早く逃げろ!」


 急いでバルフォードが『バジリスク』を追うが、その速度に追い付けずに声を上げる。そして、そんなバルフォードの声にルアールがクラムの手を引いて『バジリスク』に背を向け、逃げようとするが―


「駄目! 間に合わない!」

「っ……!」


 そうして、ルアールとクラムが恐怖から目を閉じてしまうが……俺はそんな二人が目を閉じたのを横目に一気に『バジリスク』へと迫った。


「―駄目だろ、もう一人居るのを忘れちゃ」

「キシャア!?」


 俺の言葉に『バジリスク』が気付くが―次の瞬間、俺は他の『バジリスク』同様に一刀両断してしまう。そして、さっと着地すると息を整え、声を上げた。


「よし、これであと一匹」

「……嘘」

「す、すごい……」

「はは……おいおい、マジかよ……」


 『バジリスク』を倒した俺を見たルアールとクラムは腰が抜けたように脱力しながらそう言うと、バルフォードも空笑いを浮かべて疲れたように声を上げる。娘達が無事だったことに安堵したんだろうな。


 そんな三人に視線を向けた俺だが、ふともう一匹の『バジリスク』が見当たらないことに気付き、声を上げた。


「ん? あれ? そういえば、最後の『バジリスク』は?」

「あん? そういや、さっきから見かけなくなったな……」

「逃げてくれた……とかなら良いんだけど……」

「そ、そうなのかな……」


 俺の言葉に、バルフォード達も周囲に視線を向けるが、やはり見当たらないようで声を上げる。本当に逃げたのか?


 ―ガササッ!


「ん……?」


 そうして、俺がバルフォード達と視線を彷徨わせていると、草をかき分けるような音が聞こえ、視線をそっちに向ける。すると、そこはツィオラさん達が待機していた場所で、ツィオラさんの背中にある茂みから『バジリスク』が飛び出てきたのだ。


「ツィオラさん!」

「え……?」


 俺はツィオラさんの名前を呼んですぐにそこまで一気に走って行くと、剣を思い切り振りかぶった。


「はあああっ!」


 そして、一息に切ると、『バジリスク』は今度こそ完全に討伐し終えた。


「危なかった……こいつ、いつの間にツィオラさんのところまで回り込んでたんだ……」

「あ、ありがと……まさか、居るとは思わなかったからびっくりしたわ……」

「はい。最後の最後でとんでもない奇襲を掛けて来ましたね……」


「すげぇな、坊主……大活躍じゃねぇか」

「本当よ……普通、『バジリスク』って一匹でもチームで戦って倒す相手なのに……」

「ほとんど一人で倒しちゃうなんて……」

「たまたまですよ」

「たまたまって……」


 驚いた様子で歩いてきたバルフォード達にそう答えると、ルアールが困惑した表情で声を返していた。まあ、子供がこんなことしたら驚くよな。


 ――でも、なんかおかしくないか?


 そうして、全員が安堵する中、俺は『一つの疑問』を抱いていた。


 ――ツィオラさんのレベルは俺よりも高いし、いくら数が多いからってLv15のバジリスクの攻撃を受けたくらいじゃ死ぬことなんてあり得ないような気がするんだよな……まあ、ここはゲームとは違うからおかしくはないのか?


 というか、そもそも『ダンジョン』に生息しているはずの『バジリスク』がどうして地上に居るんだって話だよな……。


 疑問に抱いた俺が考え込んでいると、それに気付いた師匠が声を掛けてきた。


「……ん? シュウ、どうかしたか?」

「あ、いや、なんて言うか、『バジリスク』がどうしてここに居たんだろうっていうのが気になって……本来、『バジリスク』って『ダンジョン』の中に居るはずですよね?」

「ああ……お前の言う通り、『バジリスク』は日の当たる場所を好まず、本来なら『ダンジョン』の奥地に生息しているはずだ。だというのに、なぜかこの個体達は違っている……そこはわたし疑問に思っていた」

「そうなんですよね……なんて言うか、それがすごい不自然でまだ何かあるんじゃないかって気がしてしょうがないんですよ……」

「……? 何か思い当たる節でもあるのか?」

「あぁ、いや、ただの勘です」


 そう言って、師匠に空笑いを返すが……俺は胸騒ぎが止まらなかった。

 例えて言うなら、この胸騒ぎはエリシルに危険が迫っていた時に感じていたものによく似ている。まるで、まだツィオラさんの死亡フラグが消えてないかのような……。


 そうして、俺が疑問に抱いていると、目の前にステータス画面が表示された。


 ――さっき『バジリスク』を倒したからレベルアップしたのか―って、ん? 『』の表記が変だな……。


 いつものようにミュラ達なら『女帝』、師匠なら『剣聖』と表示されている場所にはなぜか俺は『』と空白で表示されているのだが……なぜか、その表記がバグったように表記されていた。


 ――まあ、もともと空白だったし、気にしてもしょうがないか。


 そうして、俺がステータス画面を閉じようとした時だった。


 ―ドドドドッ!


「なんだ……?」


 突然、地鳴りのような音が響き、地面が揺れて思わず俺がそうこぼすと、ツィオラさん、レシアーナ、そして師匠を中心に他の人達も驚いて声を上げていた。


「何これ……? 地震……?」

「あわわ……!」

「どんどん大きくなっているようだが……」

「なんか嫌な予感が……」


 その音は徐々に大きくなっていき、それにつれて俺の胸騒ぎはどんどん大きくなっていく。そして、あり得ないほどの地鳴りが響いた次の瞬間―その胸騒ぎは現実となってしまった。


「グオオオオオオッ!」


 突如、俺達の目の前に現れた複数の首を持ったモンスターが現れ、俺は思わず声を上げてしまった。


「ちょっと待てよ……なんで―なんでこんなところに『ヒュドラ』が居るんだよっ!?」


 恐らく、俺はこの世界に転生して一番驚いたかもしれない。

 そうして、俺が言葉を失うようにそう口にしたのも無理はなかった。何故なら、俺が表示している自分のステータス画面のすぐ横……そこにはこう書かれていたからだ。


 『ヒュドラ』Lv90―と。

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