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第2話 モブ、ラスボスと出会う

「―いただきます」


 そう挨拶するものの……俺達の前に置かれたのは何切れかに分けられたパンとほとんど水の状態のスープだった。これが昼飯……。


 孤児院の中には少し歳は違うものの、俺くらいの子供が十人くらい机に座って食事をとっていた。俺も含めて、全員孤児なんだよな……。


 そうして俺がここでの記憶を少し思い出していると、隣に座っていた少女が不機嫌な様子で声を向けてきた。


「何? 食べないの?」

「え? あ、いや、食べ―って、ミュライト!?」


 俺は思わずその少女の顔を見て驚き声を上げてしまう……間違いない、子供の時を見たのは初めてだけど、この『プリテスタファンタジー』のラスボス、ミュライトだ。


 そんな俺にミュライト―いや、この孤児院での俺の記憶ではミュラと呼ばれていた彼女は不機嫌そうな顔をさらに不機嫌にさせて声を返してきた。


「は? 何、いきなり?」

「あ、いや、はは……何でもないよ……」

「あっそ」


 そう言うと、ミュラはまるで興味をなくしたように自分の食事へと戻っていった。マジかよ……本当にあのミュラが居るよ……。


 そうして、俺が驚いていると、そんな俺達に気付いたエリシルが声を掛けてきた。


「ミュラ? あんまりシュウをイジメたらダメよ?」

「ううん、そんなことしないよ」

「そう? それなら良いけど、みんな仲良くしないとね」

「うん」


 って、えええええ!?

 あ、あのミュラが笑ってる!? 傍若無人で、顔色一つ変えないあのラスボスが!? お、俺は夢でも見ているのか……いや、もう、この状況自体夢みたいなもんなんだけど。


 しかし、そんな天使みたいな笑顔も一瞬。エリシルが他の女の子のご飯粒を取ってあげているのを見たミュラは、俺へとその顔を向けると、そんな笑顔はどこへやら、少しラスボス時代を連想させる冷めた顔を俺へと向けてきた。


「……あんたのせいで、エリシルに怒られたじゃない」

「あ、やっぱりミュラだな」

「はあ? 何言っているの?」

「あ、いや、ごめん、何でもない」

「変なの……」


 そう言って、ミュラは眉をひそめつつ、再び食事へと戻る。まさか、ミュラってエリシルにあんな顔するとは驚いたな。作中では笑顔とか絶対に見せなかったし……いや、俺にも見せてくれないけど。


 しかし、そんなことを考えながら俺がミュラを見ていると、ふとミュラは何か勘違いしたらしく、パンをちぎると、俺に向けて皿を差し出してきた。


「……あげる」

「へ……?」

「ご飯、足りないから見てたんでしょ? 良いよ、あげる」

「いや、別に俺は―」

「良いから」


 そう言うと、半ば強引に皿を向けてくるミュラ。そんなミュラに驚いていると、机の向こうでエリシルが笑顔で俺達を見ていた。


「あ、ありがとう……」

「……ん」


 そうして、俺の反応に満足したのか自分の食事に戻っていくミュラ。こんな優しい子がラスボスになるのか……


 ラスボスとして主人公の前に現れるのはおよそ七年後。

 そんな光景を横目に、俺は必ず彼女達を守る決意を固めたのだった―。

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