第1話: 転生と未知なる台所
目が覚めた時、俺は全く知らない場所に立っていた。
辺りを見渡すと、目の前に広がるのは異世界の風景。
草原が広がり、遠くには山脈が連なっている。まるでファンタジー小説の一場面のようだ。
「ここは……どこだ？」
自分の声に驚きつつ、俺は記憶を辿る。
そうだ、俺は交通事故に遭ったはずだ。
目の前に突っ込んできたトラック、そして激しい衝撃。
その次に目を覚ましたのがここだ。ということは、もしかして俺、転生したのか？
状況を整理しようとしたその時、不意に頭の中に声が響いた。
「ようこそ、異世界へ。あなたはこの世界で新しい人生を始めるのです」
突然の声に驚いたが、どうやら俺に話しかけているらしい。
声の主は自称『転生の案内人』らしく、俺が新たな世界で何をするかを告げる役目があるという。
「あなたには料理の才能がありますね。そこで、この世界で料理人としての新しい人生を送っていただきます」
料理人？正直、料理は嫌いじゃないし、むしろ得意な方だ。
でも、異世界で料理人ってどういうことだ？疑問が浮かぶが、案内人は続ける。
「あなたには特別な力が与えられています。魔法の力を使って、今までにない究極の料理を作り出すことができるのです」
魔法の力で料理を？なんだそれは。
しかし、ここは異世界だ。何が起こってもおかしくない。
好奇心と不安が入り混じる中、俺は案内人の指示に従って歩き出した。
しばらく歩くと、一軒の古びた家が見えてきた。
案内人によれば、ここが俺の新しい住処であり、台所も完備されているという。
扉を開けると、中は思った以上に広く、綺麗に整えられていた。
「ここが俺の新しい台所か……」
一歩踏み出すと、不思議な感覚に包まれる。
台所には見慣れない器具が並び、調味料も見たことがないものばかりだ。
しかし、どこか心地よい。この場所で料理をすることが運命付けられているような気がした。
案内人の声が再び響く。
「さあ、まずは基本的な魔法を試してみましょう。手始めに、簡単な料理を作ってみてください」
俺は言われるがままに、手をかざすと手のひらから青い光が溢れ出し、目の前に一冊の本が現れた。
『異世界料理の基礎』と題されたその本を開くと、基本的なレシピや魔法の使い方が詳細に記されている。
「なるほど、まずはスープを作ってみるか」
材料はすでに揃っているようだ。俺は本の指示に従い、魔法で野菜を切り、水を沸かし、調味料を加える。すると、たちまち香ばしい香りが漂ってきた。
「すごい……」
自分の作った料理に感動しつつ、俺はスープを一口味わった。
その瞬間、今までに味わったことのない深い味わいが広がる。
「これが、魔法の力か……」
俺の新しい人生が、今まさに始まった。
異世界で料理人として生きることに、期待と興奮が胸を高鳴らせる。
この魔法の力を使って、どんな料理が作れるのか。俺の冒険は始まったばかりだ。
次回予告: 2話 初めてのお客様と特製パン
異世界の住人たちとの出会い、そして初めてのお客様が訪れる。果たして俺は、彼らを満足させる料理を作ることができるのか？次回、異世界料理人としての初めての試練が始まる。
