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らいとにんぐエッチ 百合編2 3/3

投下予定がズレてしまいましたので、このまま後編も投下いたします。

翌日

またも朝鳥の鳴き声が響き渡る頃、レインは目を覚ました。

もちろん、自分の家である。

ユリが静かに、レインの真横で寝息を立てている。

お互い服を全て脱ぎ捨てている。全裸だった。

件のイベントが終わった後、二人は止まることができず、更に睦み合うために

先日と同じくベッドに入り、激しくお互いを求めあった。

今回はレインの記憶も割とはっきりしている。

触れられてばかりではなく、自分からもユリに触れた、揉んだ、吸った、

舐めた、すすった、入れた。

〈ああああああああああああああああああ!!私ったら、勢いに任せてなんで

あんな・・・やだ、旦那のだって舐めたことないのに!〉

急激に押し寄せてくる羞恥心の嵐。頭がグチャグチャにかき回されて

ホイップされるように、色々な感情が湧きだしてくる。

嫌ではなかった。後ろめたくもなかった。嬉しかった。愛おしかった。

気持ちよかった!

{ええそりゃもうスッキリとしました!

初めてユリちゃんに襲われた時みたいな恐れなんて一切感じることなく、

滅茶滅茶気持ち良かったですよーだ!!〉

なんか、荒れていた。

〈ああ・・・子供たちや義父さん達や皆に、どう隠していけばいいのよぉ〉

その一点だけには自己嫌悪。

「んん、レインさーん・・・・大好きですぅ」

ふいにユリが寝言をいう。

暖を求めるようにユリはモゾモゾとレインの体に抱きつく。

それを愛でるようにレインは、彼女の髪を数回指で梳くのだった。



ユリは目覚めると、仲間達とのミーティングがあるからと足早に帰った。

それをレインは「またね」と送り出した。

ところが、数刻するとユリはまた帰ってきて

「今日もヒマみたいなんで、戻ってきました!

レインさん、デートしましょう!」

そうはしゃぎながら、ユリはレインに抱きついてきた。

そしてもう慣れ切ったことというようにレインに口づけをするのだった。

かくして、二人の出来立て百合カップルは昼頃に、もっと出歩く人が増える

頃合いに合わせて出かけることにした。



その日のレインの服装は、暖かな季節に合わせて薄桃色をした

オフショルダーワンピースである。

肩を大胆に露出させ、肩ひものみで服を支えている。サラッとした衣装だ。

それと手さげバッグに必要な財布や小物を詰めて手でぶら下げ、

靴は普段履きなれたもの。

そのワンピースはユリからの提供だった。

いつものレインならばそんな薄手の服装は、はしたないとして好まないのだが。

「今日は特別な日ですし、これ差し上げますから!

普段と雰囲気を変えて行きましょう!」

というユリの強い推しに逆らえなかった。

〈くれるのは良いんだけど、何でユリちゃんは私のサイズを知ってるのよぉ〉

レインの体は大変魅惑的である。

お腹は平均的なのに、胸とお尻の両方に肉付きのよいワガママセットだ。

某有名な黒色炭酸飲料のボトルは女性のボディラインをイメージして

デザインされたという話があるが、彼女の体はそれの一部を更に横に広げている感じだ。

故に、もしもそのワンピースがユリの体に合わせたものであったなら、

レインが着れば胸で押し上げられ、お尻が強調され、本人も恐れるような

公然ワイセツ衣装と成りえていた筈である。

が、それはユリにとってさえ非常にゆったりと着られるサイズだった。

ヒザよりやや下まで隠せて、本人が気にするようなはしたない衣装とは程遠くなる。

だが、このチョイスは完全にユリの邪な思惑による選択だったのだが、

そのことにレインが気づくことはないだろう。

むしろ着てみると案外軽く、重みを感じさせないラフさにレインも感心して

忌避感が薄らいでいた。


大変だったのは、先日の睦み合いの際にユリによって肩や腕、首筋等に

付けられたキスマークをどう誤魔化すかということだ。

出発が昼頃になったのもこれが原因である。

「むしろ周りの友達に自慢したいんで、付けたまま出かけません?」

「そういう訳にはいかないわよ」

うっすら青筋を立てたレインはコツンとユリの頭を小突くのだった。

対してユリは透け感のある白ブラウスに黒のスカートを合わせていた。

ブラウスの方にはリボンや襟など所々黒い線が含まれており、スカートとの統一感がある。

靴は服と合わせるために革靴を履いていた。

それは何処となく女学生服のようにも見えるが、ユリ曰くそれを参考に

自分でコーディネートしたとのこと。

「じゃあ行きましょうか、レインさん」

ユリはその日を精いっぱい楽しもうと朗らかに微笑んだ。

そしてそれに対して相手が微笑み返してくれるのを見て、

部屋を出る直前、ユリはレインにキスをした。



外へ出ると、どこにいくにも二人は手を繋いで歩いていた。

ユリはレインに、これを機に他の様々な服装にも興味をもってもらおうと

ブティックをハシゴして、新しい服を見せて、関心を持ってもらおうとした。

何着か試着してみる。

試着室の中でこっそりキスをした。


小物などが置かれた壁際の棚を眺めている時、店員の視界から外れてると思った

ユリはまた人目を盗んでキスをした。

買い物は特にせず店を出たので気が引けそうになったのだが、

ユリの顔の広さが助かった。

「いいのよ。ユリちゃんはお得意さんだもの。また見に来てくれたら嬉しいわ」

「ご心配いりませんよレディ。お客様が見に来てくださるだけで、

我々には喜ばしいことですから」

みんな笑顔で気持ち良く見送ってくれた。

「次に出かける時は、少しずつ買ってみようかしら・・・」

そんなレインを見て、

ユリは〈こう思わせる所が店員さんたちの巧みなんだな〉と思った。


フラフラと歩いていると、カティル、ベロニカ、イツカの三人と遭遇した。

〈私が狙ってた二人を落としたの見せつけたいっての!?

このスケコマシのチ●カス野郎!〉

ユリはたっぷりと睨みつけてやった。

なんでもイツカが好きな物語が劇場で舞台化されたということで見に行く最中らしい。鼻息荒くイツカに

「マスクウォリアー、すっごい!から!みんなも見るべき!と思う!

今回の舞台、絵本第一弾から30周年、記念公演で、ついに主人公のアラン・アングリードが、何故マスクウォリアーに成って、しまったのか、誕生、秘話が描かれて・・・うんぬんかんぬん」

と力説された。

ユリはついていけないな、と思い直ぐに離れることにした。

レインもまた

「うちの子は上のサニーは知ってたわねぇ、興味なさそうだったけど」

だそうだ。


昼食はたまの贅沢ということで、外食だ。

レインにとっては子供達のこともあるし、家を空けることが多い主人に

悪いと思って今まで遠慮して来れなかったということで、

旦那さんと交際してた頃以来10年ぶりほどになる外食だそうだ。

ユリは値段、ボリューム、彩りも気に入っているレストラン

「パパ・ドミナーノ」という店を紹介した。

庶民的であり、なんと店内に入ると、レインと馴染のご近所さんとも遭遇。

自分達と同じぐらいの所得の人間もよく利用する店と知って、

レインはホッとしていた。

注文はユリと同じものを頼んでみる。


ランチセット

ロールパンにサラダ、カップスープと日替わりメインディッシュ。


今日の日替わりは豚バラのショウガヤキという極西料理が付いていた。

「へぇえ、さっすがドミナーノさん。研究熱心だなぁ。

このお店って、店長のドミナーノさんて人が年に数回、七日ほど閉店してまで

海外へ料理の勉強に行くんですよ。

そのせいで、いつもやってるお店じゃないんですけど、まさかあんな遠くへ

行くなんてねえ・・・・」

どうやらこのショウガヤキという料理、現在のキングスランドでは片手で

数えるぐらいしか作れる料理人がいないらしい。

宮廷料理人を除いて、庶民向けのお店としては唯一な可能性さえある。

そんな話を聞いていると贅沢過ぎて、レインは家族への罪悪感が湧きそうになる。

だが、一口食べてみるとその味付けの虜となって、ただひたすらに口福に

溺れてしまうのだった。


食べ終わりの去り際、先に化粧室へ入る。

鏡をみて口の周りや身だしなみを見ていた時、何故か一緒に入ってきたユリが、

レインに強引にキスをした。

「・・そろそろ、私の一番おススメのお店へつれて行きたいんですけど、

いいですか?」



ユリのいうおススメの店というのは、レインもよく知る店だった。

商業区内に数点あるトイズショップの一つ『べべドリーム』

レインも何度となく子供達を連れてくることがある。

木彫りの玩具やヌイグルミ、高価で手が出ないが、珍しく絵本まで

揃えているそのお店は非常に人気がある、誰もが知る所であった。

〈・・・ここがおススメって、どういうことなのかしら?〉と

レインはユリの後ろを付いて歩く。

ユリは振り向きもせず、真っすぐに店内の奥、レジの店番の前に立つ。

「こんにちはぁジェーン。お久しぶりー」

「あら、ユリじゃーん。久しぶりーどうした今日はー?」

非常に親しげに挨拶をしていた。

〈・・・・あのいつもみる店員さん、ジェーンさんていうの・・・〉

自分も常連のつもりで居たのだけど、それ以上にこの店に詳しいと

見えるユリに、レインは驚嘆する。

「うん、今日は下に用があるんだけど、開けてもらえる?」

言うと、ユリは何か奇妙なメダルを見せた。

赤色に塗られた木彫りのもので、価値があるものというよりも

何かの証明書という意味合いの物だと伝わるものだった。

「・・・人数はそちらの、お子さんを良く連れてくるご婦人との

二人でいいの?」

ちらりとレインを見る。

「うん、そだよー。最近『仲良く』なったんでー教えてあげようと

思ってー」

「仲良く、ねぇ。まあうちとしても地下のアレ売り場の商品も売れて

ほしいのが本音だから、客が増えるのは願ったりさ・・・こっちだよ」

というが、レインの目には何というか、ジェーンは地下の

その商品のことをあまり好いていないのではないか?という感じがした。

ジェーンはフックからカギを取ると立ち上がり、レジの直ぐ横、立て札も

なにも書かれてない扉の前に立った。

その鍵穴に鍵を差してクルリと回すと、ガチャリと音がした。

そしてキイイと音を立てて開くと、ただ真っすぐに地下へ向かう階段が

存在していた。

「さあ、どうぞ、お通り下さい、お客様」

そのジェーンの表情は少し気だるげで、さっさと扉を閉めてしまいたいと

いうように急かされる感じだった。

普段のレインが見ていたジェーンの姿とは天地ほど違う。

「さ、レインさんこっちですよー」

誘われるままにレインはついていく。

階段は短く、せいぜい10段ほどだった。部屋一階分ほど下った所だろうか。

そうして下りきった先の扉には「crimson lips」と書かれている。

それはまるでお店の表札のようで、上の「べべドリーム」とは違った空間で

あると感じさせられた。

カチャ

ユリが扉を開いて、二人は連れ立ってその中に入って行った。

「えっ、ここって・・・」

扉の先は予想通りというか、お店が存在していた。

一般的な女性の身長とやや同じぐらい150cmほどの高さの棚が所狭しと並び、

どの商品も取りやすいように工夫されている。

明りはやはり地下だけあって蝋燭やランプ頼りであるが、天井との境目に

一か所だけ空いた四角形の小窓があり、わずかにだが外の明かりも取り入れられている。

その窓から、沢山の外を歩く通行人達の足が見えた。

が、向こうからはわざわざこちらの店内を覗こうという者は現れないだろう。

「なんだか、可愛らしいお店・・・ね?」

レインなりに必死でお世辞をいっているのだろう。が、このお店に来る

客たちは、そんな居心地の良さや明るい雰囲気などは求めてはいない。

誰もが足早で来ると誰にも知られずに店から離れていきたがる。

そういう品物がこの店の売りなのだ。

「これって、お人形?・・よね?」

レインは試しに、その棚に並べられた品の一つを手に取る。

それらは確かに木彫りの人形のようで、長細い木の棒を削り出し、滑らかな

曲線を付けて反り返らせた形状をしている。

そこへ顔を描いた上からウルシで艶出しをしたような品々だった。

その大きさや太さにも違いがあるようで、そのパッとみ棚の左側へいくほど大きく、右へいくほど小さくなるらしい。

大きいものだと、男性の腕ほどある。

小さいものだと、女性の人差し指ぐらいの大きさがあった。

それぞれに様々な動物や色々な職業の人や、果てはお姫様、王子様なんかの姿が

描かれている。一見すると子供向けに見えなくもないが。

「これ、結構重いわねぇ。子供向けって感じじゃないし。何なのかしら?」

なんとなくレインはその棚で一番大きいサイズの人形を手に取る。

ずっしりと重く、とても子供用の玩具という様子ではない。

というと飾り物の可能性が浮上するが、しかし。

フッと気になってユリの顔を見てみる。

「あ、ああ、それは・・・ですね」

なんだか赤面していた。

瞬間、レインは直感した。

〈これってもしかして・・〉

もしかして、今までのユリの傾向を思い出す限り、

とても卑猥な物なのではないだろうか?

使い方は知らないし分からない。

だがよく分からないけどきっとエッチな人形なんだ。

そう思って、レインはそっとその人形を棚に戻して、別の列へ移動した。

別の棚には、卵のような形の石ころが売られていた。

石なのだが、やはりツヤツヤに磨かれていて、色が塗られている。

こちらも様々な絵が描かれているのがあるし。または赤や緑など単色で塗りつぶされたものも多い。

これぐらいなら、そう卑猥ではないのではないか?

「ユリちゃん、これは何なのか教えてもらえる?」

「ああ、これはですねぇ」

こちらはあっさりと答えてくれた。

「これはマジックアイテムで、振動石というマッサージのための品です」

〈うん、嘘は言ってない〉

「しんどう、せき?」

言葉の意味だけでは分からないとレインが首を傾げていると、

ユリがその品の一つを適当に手に取った。

桃色に塗られた振動石を掴むと、それにチューっと魔力を込める。

ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ

まるで蠅の羽音のような音を響かせてそれが震えた。

なるほど、それで振動石かと納得すると、今度はユリがそれを震わせながら自分の肩に当てる。

「こうやって魔力を流しながら当てると、肩こりに効くんですよ」

〈うん、本当に嘘は言っていない〉

ただ、それ以外の利用方法を発見した人間がいたというだけだ。

続いてユリはそれを震わせながらレインの首筋や肩に当てる。

〈あ、確かに気持ちいいかも〉

そう思いながらレインがうっとりとしそうになった時だ。

ユリの中の「スケベ猿」が目覚めた。

「・・・・レイン、さん」

ふいにユリはその振動石をレインの乳房の先端に当てる。

「んっ!?」

急に声を上げそうになる。だが反射でその口を手でふさぐ。

パッと見でこの店内には店員の姿は見当たらない。

だけどきっと近くにいたっておかしくはない。

例えば隣に会計役がいる部屋があるとか。

そう思ってハラハラしていると、ユリが更にレインに接近する。

「ちょっと・・・まって・・・まさかユリちゃん、ここで?」

レインは小さな声で尋ねる。が、ユリは一切返事をせずにレインの

腰と後頭部に手を添えて抱き寄せ、キスをした。

「んっ、ちゅっ・・・ちゅる、ん、ジュっ・・・プハ、んく」

「はふっ、ンン!・・・ちゅっ・・・ずちゅちゅ・・・はふへ・・・んあ」

ゆっくりと舌を絡める。

時折、ユリの舌がレインの唇全体を舐め回す。

そうして舌を相手の口内に刺し戻すと、積極的に相手の舌を絡めとる。

吸い上げる。離れようとしても後頭部を抑えられている。

そうやってレインの口をあますとこなく味わい尽くすとようやく

そっと唇を離すのだ。また二人の唾液が一本の橋をかけた。

続いてユリはレインのワンピースの裾をたくし上げ、その振動石をレインの

太ももの辺りに当てる。

「ああっ!」

〈ダメ…声でちゃう・・・だめえ〉

「ダメですよ、レインさん?・・・声を出したら、隣の部屋には店員さんが居るんだから」

ユリがボソリと耳打ちする。

〈!?・・やっぱりそうなのね〉

レインは片手で自分の口をがっしりと塞ぎ、背後の壁に反対の手を当ててその身が倒れないように支える。

それに構わず、ユリはその振動石を上へ上へとレインの内股をなぞりながら進んでいく。

そしてパンティの上から振動を当て始めた。

ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ

「・・・!?・・・・n!・・・・ん!!・・・」

レインの体が一瞬はねる。それを認めるとユリは素早く石を抜き取って、

倒れそうになるレインを抱きかかえるのだった。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・もう・・・こんな外でだなんて・・・・変態」

半泣きになりながら、レインは必死で怒りを訴えてくる。

だがユリはそれに構わずに。

「ごめんなさい。レインさんが可愛すぎて、つい」

ユリは軽くタッチするようなキスをするのだった。

そうしてレインを落ち着かせると、ユリは色々と濁していたことを正直に話した。

あの木彫りの人形をどう使うかという話も、しっかりとレインに伝えた。

〈や、や、やっぱりいやらしい物だったんじゃない!

・・・・でも、だったらあの人形みたいな物の小さいのは分かるけど・・・・

あんな大きいのが入る女性もいるって、こと、かしら!?〉

悶々としながら一人で百面相していたレインの顔が耳まで真っ赤に染まる。

それを眺めながら、ユリはヨシヨシとレインの髪を撫でる。

「ああ、安心してください。ね?

私、あんな大きいのをレインさんに使うつもりないですからね?」

ただ、世の中探しても、あんなトンデモサイズを使う女性は居ないと否定もしなかった。


「へっくしょん!」

「あら、風邪ですかギルド長?」

「ん・・・誰か噂してるのかしら・・」

驚嘆である。


「私としては、これと・・・」

いいながら、ユリは先ほど使われた振動石を見せる。

「あれが目当てだったんですよねぇ」

とある棚の方を指さした。

そちらへ近づくと、また新しい玩具の並んだスペースがあった。

壁際の位置にあり、壁にはフックに何か品物がぶら下がっている。

隣接した棚の方にはIの字型の何かが陳列されている。

「これ・・・は・・・・」

レインがゴクリと唾を飲み込む。

説明不要だった。あの人形っぽいものの使用方法を聞いた後、

その品の使用方法を予測するのはレインとて容易である。

棚に並んでいる物は、最初に見た人形っぽい物を二つ連結させたような形をしている。

その中間の接続部分は、何か生肉のような柔らかな謎素材で出来ているようで、

Iの字型にもUの字にも曲げられる作りだ。

また壁のフックにかけられたソレは、何か皮素材のパンツのような形をした物の

内側と外側に、その人形っぽいものが張りつけられている。

その布の両サイドには数本の細い紐が付けられていて、それを結んで固定するんだ、とユリは説明した。

〈うそ・・・なんでこんな物がこの世にあるのよ!

絶対これ、女性を堕落させる目的で魔王が生み出した超兵器か何かじゃないかしら!?〉

心の中でそう絶叫するレイン。

そこへ「どちらが良いですか?」と聞いてくるユリの手に一つずつ握られた

それらから、レインの目は離せなくなっていた。

「えっと・・・・ええと・・・・」

自然と今までの混乱が解けると、前のめりになり、集中して見比べ始める。

それを使われたら、自分はどうなる?どうされる?どこへ行く?

どれだけ

〈気持ち良くされてしまうの?〉

また先日と同じ、またはそれ以上の快楽をユリに教えられるのだろう。

たぶん、直感的にそんな予感が頭の中に浮かぶ。

だがもう、そこから逃げることはできそうにない。

レインは確信していた。

だからさっきの石も抗えなかった。そして今も。

「じゃあ・・・・こっちで」

選ばれた方の物や他の買い物を店指定のトレーに乗せ、ユリとレインは来た方と

反対の扉から部屋を出た。

出ると、そこには上の階と似たようなレジがあり、一人の少女が店番をしていた。

「ん・・・?ああ、お客が来ていたのか。気づくのが遅れてすまないね。

んー、どうぞ」

少女は昼寝でもしていたか、目元をこすって背伸びをしてみせる。

黒の生地に赤と白の線を基調としたゴシック&ロリータなドレスに身を包み。

闇のような漆黒の髪を伸ばし、ツインテールに纏めている。

その肌はセラミックスのドールのように真っ白な色をしていて、目の色は赤みを帯びている。

そのドレスの丈が少し長いのか、手が袖の中に隠れてしまっている。

外見的に歳の頃は12、3歳と思われるその少女に、ユリは近づいていく。

「おはよう、ツバキちゃん。今日もお昼寝?」

「うむ・・・今日のお客は君らだけだよ、ユリ」

「そか」

「あの、ユリちゃん?その子がその、ここここ、この商品を、

取り扱っている店の番をしてる、の?」

震える声でレインは尋ねる。まさに犯罪臭が凄いというやつだ。

「うん、そだよー。あ、でも勘違いしないでくださいねレインさん。

こちらにいるツバキちゃん。こう見えて90歳なんだそうですよ」

「・・・えっ?」

〈いま なんて ?)

「ふふん」

頭に大量の?マークを浮かべて固まるレインを他所に、ツバキはズィと胸を張ってみせる。

「ご紹介にあずかりましたツバキ・シンジョウだ。

ここcrimson lipsの店長を任されている。

種族は吸血人〈ヴァンピル〉でね。それで老化が常人よりも数倍遅いんだ」

「ヴァンピル、ですか・・・」

〈ああなるほど道理で〉

驚いたり慌てたり固まったりと、ややせわしなかったレインであったが、

その種族名を聞いて納得する。

ヴァンピルとは、吸血種の中で他種族との共存を選んだ者、

またはその子孫をいう。

この世界の造語だ。

これが狂暴で他種族を食い物としか見てない個体であったら、

吸血鬼〈ヴァンパイア〉となる。

ヴァンピルはとても個体数が少ない。

長寿であるが、子供にその特性が伝えられるのも稀である。

大抵の産まれ子はパートナーの種族を受け継いで生まれてくることが多い。

ヴァンピル同士で結婚でもしない限り、ヴァンピルは産まれないとさえ言われているほどだ。

子孫を残す方法は他種族と同じ「性行為」による受精である。

血を吸われたら吸血人に、という常識はこの世界にはなかった。

ツバキも『吸血はあくまで栄養補給の一環てだけでね。通常のご飯の方が美味しいと思う』と自身で言っていた。

故に多くのヴァンピルは生涯に血を吸う回数も少なく、あけっぴろげに告白でもされない限り、人々に己の種族が知られることもない。

誰も自分の周りにヴァンピルが住んでいるとは思っても居ないことが多いのだ。

「ツバキちゃんはね、とってもフレンドリーなんで、さんとか様とか付けられるとすっごい怒るんですよー」

「そりゃね。まだ若いのに、年上扱いされるみたいでムカムカするじゃないか」

90も過ぎた婆さんが何か言ってる

「あとあと、昨日お連れした、Violet lipsあったじゃないですかー。

あそこのオーナーのスミレママとツバキちゃん、姉妹なんですよ?」

「えー!?それってツバキさ・・ちゃん、が、スミレさんの妹さんてことですか!?」

確かに、髪色や肌色、顔立ちと特徴に類似点が多い。店名にlipsと付けるのも、

何か姉妹特有のルールめいた物を感じる。

だが、レインの言葉に対してツバキは袖に隠れた人差し指を左右に振りながら、

それを否定した。

「チッチッチ、何でかなー皆が同じように聞いてくるのだがね。

その逆だよレインちゃん。私が姉、あっちが妹!

あのスミレの奴、私よりも40歳も年下の子供のくせに、私よりも早くに結婚したり、会う度に発育が良い乳を揺らして見せたり、店の儲けがうちの店よりも何倍

凄いーとか自慢してきて。本当に憎らしいんだがね」

〈てことは、あのスミレさんが今50歳だったってことー!?〉

脳裏に、艶やかで上品な中にいやらしさを醸し出すあの女性が思い浮かぶ。

あのスミレさんが、レインの母よりも年上なのであった。

レインの母、ストームは現在4X歳である。

「えっと、それじゃあ上の階で働いていたジェーンさんはツバキさんの・・・」

たしか以前、ジェーンさんはべべドリーム店長の娘さんと聞いたことがあった。

「・・・ああ、実の娘さ。七人産んだ娘の中で末っ子でね。上の娘たちと違って

まだまだオシメの取れないひよっこでねぇ。だからうちで手習いをさせてるのさ」

「七人ですかー?・・・お、多くないです?」

ついぽろりと漏らしてしまった。

「んー確かに他の同族と比べたらそうだねぇ。

大抵のヴァンピルは子孫繁栄にあまり興味がなくて、生涯かけて一人産めば十分て考えの者も少なくない」

「その点、ツバキちゃんはすっごく旦那さんと仲良しさんだよねー?

知ってます?ツバキちゃんは、この街に長く住んでる細工職人だったんですよ?

このお店に並んでいる品々〈人はそれらをマダムフレンズと呼ぶ〉は全て彼女の

作品なんですよ?」

「ふっふーん!世のご婦人たちの癒しになればと思ってね。

こうして夜なべして作ってるのさ。

あ、でも商品のモデルは聞かないでほしい、な・・・・はずかしい〈ボソッ」

ツバキはそのやわらかほっぺをほんのりと赤らめた。

「まーたまたーそんなこと言ってー。

旦那さんのを参考して作ってるって、前に飲み会の時に聞きましたよ?

お口とお手手と赤ちゃんのお部屋の全てを使って測って作ってるから、完璧に模写できてるーって言ってましたよね?」

「そ、それを言わないでくれよユリちゃーん!」

ツバキは顔を真っ赤にして手をバタつかせた。

〈あら?じゃああの腕みたいに太いのや指のように細い物は・・・いったい?〉

むろん、それらも全てツバキの作品であるが、ご主人のどの部位をモデルとしているのか、どうやって測定したかは企業秘密であるという。

「上の階にあるべべドリームが旦那さんのお店で、その二つの収入を合わせて、

夫婦で切り盛りして生計を立てているんですって」


「フッフーン!つまりこの建物は全て、私とマイダーリンの愛の詰まった

らぁぶ・きゃっそー〈キャッスル〉ってことだよぉ君ぃ。

上の娘たちは皆一人立ちしてしまったけど、この家にいた時は皆で力を合わせて

それはそれは賑やかだったもんさー。

あ、今も賑やかだけど、昔は六人多かった分、余計にってことだよ?」

「は、はあ・・・〈汗」

「それなのにジェーンたら、年頃になったと思ったら『こんな卑猥で邪な道具を

作って売るママさいてー!』だって。

寂しいよねぇ、悲しいよねえ、あの親不孝者の末っ子ちゃん。

この母がどれだけ苦労して産んであげたと思ってるんだか。

これもうちの家業なんだから受け止めなって言っても反抗的でさ・・

はあ、もう十年、口を聞いてないねぇ」

ツバキは視線を地面に落とすと、黄昏てしまう。

その表情に暗い影が落ちる。

〈それでだったのね〉

レインは先ほどの階段を下りる前に見せた、ジェーンの露骨な態度が

気になっていた。

家業とはいえ、やはり理解を求めるのは難しいのだろう。

少ししんみりとした雰囲気になってしまった。

だがそこへ、すかさずユリのフォローが入る。

「と、ところで最近の景気はどうですぅ?

以前は~収入が旦那さんが8で自分が2って嘆いてましたよねぇ?」

このバカ。フォローのつもりで地雷を踏みぬくので気が抜けない。

鋭くえぐっていくスタイルだ。

「・・ブー〈ほっぺを膨らませてむくれる〉おかしいよねぇ、

昨日はかなりのお客がダーっと来てくれたというのにね。

今日『は』からっきしだよ」

やれやれと言いたげに、ツバキは両腕を開いて、両手首を上下に躍らせて見せた。

昨日ということは、スミレのイベントが関係しての来店が多かったのではないだろうか。

つまりはそういうプレイ用に買いにきたのだろうと容易に想像がつく。

だが、本当にそう決めつけて良いのだろうか?

「因みに、どういった商品が売れたんです?」

「んー、そりゃあれだねぇ。キャンディー系かな」

「まじです?」

玩具系以外売れないだろうと思ってからの甘味系?

確かにここのキャンディーはべべドリーム、crimson lipsの双方で売られている

売れ筋である。

このご時世、果物以外の甘味は未だ貴重であり、砂糖?ハチミツ?

何それ美味しいの?食べたことないよ?という庶民は非常に多い。

だがそれでも、そんな甘味たる飴類を安価で提供しているのがこの夫婦が営む

二店である。安価な理由は簡単だ。

一部の錬金術師たちが秘匿するという幻の「人工甘味料」の製法を彼女らは知っているのだ。

それを用いれば高価な砂糖やハチミツ類を使用するよりもグっと安く作れる、

とツバキが話していた。

『やっぱり、美味しいものは皆で分けあってナンボだよね。

うちのキャンディーを食べて喜んでくれるだけでも良いけど。

それを目的のお客様が他の玩具類にも目を向けてくれれば御の字さ』とのこと。

そして極めつけに、このお店の飴類は二種類存在する。

その人工甘味料を固めた「キャンディー」と、糖の量を減らして塩でかさ増ししている「塩飴」だ。

当然、塩飴は更に安価で並べられている。

このチョイスが意外とお客から好まれているらしい。

「君たち知らないのかい?お客の一人に聞いたんだけど、なんか今流行ってるんだってさ。

キャンディーを使った遊びー」

「へえ」

「ど、どどどど、どんな遊びだったんですか?」

何故かレインが前のめりになっている。

「んーとね。私も昨夜旦那と試したんだけど・・・・ゴソゴソ」

ツバキは商品の飴玉を一つを手に取ると、包み紙から取り出したそれを自分の舌の上に乗せた。

「レロ・・レロ・・ほうやって舐めながやね?

相手のひほほ〈人と〉とひた〈舌〉とくひひる〈唇〉を使って、ほのまま

うはいあう〈奪い合う〉んだ。チュッ・・コロコロ・・・奪うのを邪魔ひちゃらめらよ?

あふまへも、うはいあうのか、はのしい〈楽しい〉んらって・・・・」

「おお・・」

「ごくり」

幼げな少女の如き顔で、たまに口を空けながらその飴玉を舐めすすり、

しゃぶり上げるその姿は大変にけしからんものだった。

「じゃ、じゃじゃあ、これとこれの他に、その飴玉も小袋一つ分貰えます?」

あせあせとしながらも、ユリはレジ机の上に品々を並べる。

振動石を二つ、レインに選ばせたマダムフレンズ一つ、そして小袋飴玉〈5個入り〉だ。

「まいどー、いやあ、いつも御贔屓にして頂いて助かるよぉ。最近はほんと・・・ん?」

会計を進める最中、ツバキの手が止まる。

「・・・これは」

ツバキの目にとまったのは、一つの振動石だった。

「すんすんすん」

ツバキはその振動石の臭いを嗅いだ。それも何か毒気のある気体を嗅ぎ分ける時のような、短く浅い嗅ぎ方だ。

それを見て、レインの背筋が凍る。

そうだ、あの振動石はさっき

「・・・ユリちゃん、これさっき使ったね?」

そう、レインのアソコに押し当てられたやつだ。

バレた!そう感づかれたことを知るや今度はレインの顔面全てから火が噴き出しそうな恥ずかしさが襲う。

だが

「うん、そうだよーごめんねツバキちゃん。こちらのレインさんに

ツバキちゃんの作るマダムフレンズの良さを知ってほしくってさー」

ユリは、あくまでも明るく開けっぴろげに堂々としていた。

「ちょっとユリちゃーん!」

素っ頓狂に叫ぶレイン。ところが

ドン!

「エライ!」

「へ?」

ツバキは机を力強く叩きながら立ち上がり、そう叫んだ。

「君らは偉いねえ。いやー前々から居るんだよ。私らが見張ってないと思って

商品棚で隠れて試しちゃうマナー違反さんがね。

んで、そのまま棚にそっと戻しちゃう無礼者も居てね。

そういうのを見つける度に、『説得』して買い取らせてきたんだけど。

そういう点では君らは偉いよ!きちんとこうやってお買い上げしてくれて。

ほんと助かるぅ!アーハハハハハ!!」

良いのか?本当にそれで良いのか?

買うからといって、その前に使って良いのかという点が激しく疑問なのだが。

ただレインはそのツバキの豪快な笑い声と姿勢が、見た目の幼さに反して年老いた老婆を思わせ。

彼女にとってはこの街の全てのご婦人が、年若い幼子に見えているのだ、と理解することは難しくなかった。

そしてそんなことをかなり以前から理解しているからこそのユリの態度なのだと、レインは理解した。

「じゃあ、ツバキちゃん。またねー」

ユリは紙袋を抱えて片手でツバキに手を振り、レインは深々と一礼して、その店を出ていくのだった。

来た時と違う階段を上がり、違う扉から建物から出る。

そこはお店の裏手口へと繋がっていた。

「じゃあ早速、私の泊ってる宿屋に来ませんか?

そこで、『コレ』試してみましょうね?」

ユリはウキウキとしながら、レインにそう耳打ちするのだった。

レインはポッと赤面するのだが、無言でコクリと頷いた。


一方、こちらは店内。

がちゃり、とツバキの座るレジの間に入室する男性がいた。

「________」

歳は50になる男性だった。顔には小じわが目立つが、ほっそりとしていて、

表情は穏やかで、若かりし頃には女泣かせな美丈夫だったことが想像できる。

そんな見た目をしているが、彼こそツバキと30年間も連れ添ってきた旦那さまである。

「ああ、ダーリン。どうしたんだい?」

「________」

彼が使っているのは、この世界にはない異世界の独自言語だった。

彼はその昔、別名「神々のいない世界」の「二ホン」という国からこちらの世界に

転移してきた異邦人だったのだ。

元々はツバキの召喚術によってこの世界に転移させられ、様々なゴタゴタに巻き込まれつつ、ずっと二人で手を取り合って生きてきた。

それから四苦八苦しながら働いてこの店を持ち、家庭を築いて現在に至る。

この世界の公用語も習得しているのでお客様との日常会話もできるのだが、

故郷のことを忘れられず、懐かしむように、二人っきりの時にはこちらの慣れ親しんだ異世界語を使う。

「へえ、クッキーかい?気が利くねえ。

満月堂の菓子はどれもハズレがないけど、あそこのクッキーは格別だねえ。

特に薄くスライスしたナッツが入っているのが良い」

「___________________」

「覚えててくれたんだねぇ、嬉しいな。

上でお茶の用意がしてあるって?

いいねえ。直ぐに行・・・」

言いかけて、ツバキはふっと何か思いついた。

「____________?」

「あの、だね・・・『カズキ』」

ふいにツバキは、普段の呼び方を変えて、あえて結婚する前の呼び方で

夫を呼んだ。

新庄 和樹。

それがこの男性の正しい名前である。

一度も浮気なんかしたこともないし、妻のツバキ以外に目をくれたこともない。

真面目な男性である。

「_______?・・・・・!!???」

ツバキは立ち上がると、夫の前へと歩み寄り、その目の前で、スカートをたくし上げて見せた。

スカートの端をその唇で咥えて固定し、その足先から付け根までが晒された。

実はツバキは は い て な か っ た 。

故に潤って、テカテカときらめく水を滴らせる付け根や毛が丸出しとなった。

「おえふぁい えひなひ はな?(お願いできないかな?)

ひゅうに むはむは しへ おひふかなひふは(急にムラムラして、落ち着かないんだ)」

「______ゴクリ」

パタン

部屋からでるつもりが、夫はそれを諦めてしまう。

妻の傍へ寄り添うと、カチャカチャとズボンの留め具を外して脱ぎ去り、その小さなツバキの体を抱きしめるのだった。

「・・・あんっ」

触れられて、甘い声を漏らす。

だがツバキは知らなかった。上の階ではたまにはと、末娘のジェーンが三人分の

茶の用意をして待っていたことを。

なんとなくだが、母から受け継いだヴァンピルとしての感知能力が、両親が

『幸せ家族計画』を始めてしまって、数刻は戻らないことをジェーンは察知した。

「・・チッ」

憎々しげに舌打ちするジェーン。

親子の溝が埋まるのは、今しばらく先の話なのだった。




「さ、入ってくださーい」

「えっ?・・え、ええ・・・」

レインはユリの部屋へとズズイと通された。

レインは少し戸惑った。入る直前のことだが、ユリのパーティーメンバーだというロックと鉢合わせしてしまい、

ユリは一瞬、顔を曇らせたからだ。

それを気にしてレインの動きが鈍ってしまったのだが、ユリはせかせかとレインを中に引き入れ、ビタンと大きな音を立てて扉を閉めた。

レインはキョロキョロと室内を見回す。

凄い、これが本当に宿屋のクウォリティだと言うのか?

広い。一部屋なのにレインの自宅がスッポリと治まってしまうような広さだ。

地面に敷かれたカーペットも上質そうだし、ベッドもダブルベッドのように広く、

室内には個別にシャワールームとトイレ完備。

食事以外は全てこの室内だけで完結するように整理されている。

これが今を輝く勇者パーティーの宿泊施設。

最初、初めてユリが勇者メンバーであると聞かされた時は面を食らったものだが、それでもあまりに突飛で、ピンと来なかった。

が、今日のことで十分に思い知らされた。

恐らく、普段の自分ではけして味わえないようなサービスや待遇を受けられる、

このユリという女は、まさしく自分と別格な位にあるのだと、まざまざと

思い知らされた。

今更ながら、レインは気おくれし始めてしまう。委縮してしまいそうなざわつきを覚え始める横で、ユリは今日購入した品々をベッドの上にぶちまけた。

「ほらほら、レインさん!こっちきて一緒に見ましょうよ!」

ユリは片手でオイデオイデした。

それに釣られてレインはベッドに近づく。そして遠慮がちにオドオドとしながらも、ゆっくり慎重に腰を下ろした。

〈うわあ、お布団まで柔らかい〉

自分の家のベッドとの違いに、また心揺さぶられるレイン。

すっとベッドの上に並べられたそれらを眺める。

品々と言っても、今回買ったものといえばツバキから買った『マダムフレンド』

数点だけなのだが。

ドキドキドキ

使い方を聞いてから見るそれらは印象が大分変わっていた。

レインは無言で、振動石の一つを手に取った。

試しにちょっとだけ魔力を流す。

ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ

ちょっとだけのつもりでも、音高く、大きく震えだす。

「・・・・・」

脳内では、これを体に当てられた時の記憶が反芻〈はんすう〉される。

そう、悪い記憶ではない。むしろ気持ち良かった快感の記憶として残されている。

それを震わせてしばしボーッとしだしたレインを見て、ユリはズィっと距離を詰める。

「ほらほら、レインさん。早速コレ、試してみましょうよ!」

ユリの手にあったのは、例の遊びに使う用の飴玉だった。

「あむっ」

ユリはその飴玉を口の中に放り込む。

そしてそっと傍らのレインに手を伸ばすとその顔を掴み、その唇に吸い付くのだった。

「あん・・・ちゅっ、ちゅむ・・・ちゅぷ」

「んっ、ちゅ、ちゅるるる・・・・んむ・・・」

そしてどちらかが提案するでもなく、舌と唇を激しく動かして奪いあいを始めた。

けして口内の飴を取られまいと防ぐことはせず、あくまで奪い合う。

取られたら取り返し、取り返したら取られる。

それをお互い繰り返し、ゆっくりと溶けていく飴の甘みと二人の舌と肌の感触に

浸って酔いしれつつ、二人は倒れ込むようにして、ベッドへと身を投げたのだった。


二人の行為はそれから夜明けまで続いた。

本当ならこの日の夕方には子供達を迎えにいく予定だったのだが、

結局それは後日の朝方へとずれてしまった。

その言い訳を考えるために、レインは大層苦労したそうだ。

投降の予告までしておきながら、失敗してズレてしまい、申し訳ございませんでした。

本来であれば今週の水曜日に中編、本日に後編の予定だったのですが、できなかったので一日で連続投下の運びとなりました。

次回からはまた本編に戻ります。

書き溜め分がないので、また気長にお待ち頂けたらと思います。どうぞこれからもよろしくお願いいたします。 BY 金属パーツ

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