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らいとにんぐエッチ 百合編2 2/3

カランカラン

扉に設置されたベルが鳴る。

「いらっしゃいませー」

ユリ達の近くを通っていたバニーガールが、小さく一礼して通り過ぎていく。

「ここが・・・楽しい・・・ばしょ?」


証明は少し薄暗く、だが雰囲気は落ち着いている。

広い。店内はなんとも広い空間があり、その全てを最大限に活用した異世界が

そこにはあった。


床には赤いカーペットが敷かれ、丸い円形のテーブルを囲むようにして、

円形のソファーが置かれた席がいくつも点在している。


壁沿いにはU型のソファーとI型のテーブルが置かれた席が敷き詰められ。

何人ものバニースーツの乙女たちが給仕に勤しむ姿が見受けられた。

皆気持ちよさそうにして酒を楽しんでいる。

そして、入り口側と奥で違う空間が用意されているのが分かる。

入り口側半分が落ち着いて静かに飲む席だとしたら、奥の空間は立ち飲み席だ。

そこでは背の高い幅の小さなテーブルが点在しており、皆で自由に密に交流し

あい、ワイワイと騒いでいる。

その壁際にはステージが設置され、三本のポールが建てられ、その周りを

際どい水着をきた少女たちが腰をくねらせて踊っている。

それらの光景が一体となって目に飛び込んでくる様は、まさに圧巻であった。


しばしボーっと立っていることしかできないレインをユリは優しく引き戻す。

「ほら、レインさん。あこ、カウンター席が空いてるから、

あっちに座りましょう?

きっと落ち着いて楽しめますよ」

ユリはレインの手を掴むと、入り口にほど近くの角に用意されたカウンターへ

と向かっていった。


「おっ!ユリー!やっと来たのかよおせーなぁ!」

その姿を見て、手を上げて話しかける女性がいた。イベリスだ。

「ああ、イベリスさん一日ぶりですー。今日は団員の皆さんと

ご一緒なんですねぇ」

少し寄り道になってしまうが、ユリとレインはそちらへと歩み寄る。

イベリスたち紅百合団の面々は今回五人組で来店し、店内の中央付近、

円形に組まれた席を広々と使って飲んでいた。

本来なら最大10人規模で使うことを想定したテーブルである。

「その綺麗なお姉さんが、あんたが昨日言ってたアレかい?」

「え、ええ、最近知り合ってその・・・・仲良くなった、

友達のレインさんです」

「ど、どうも・・・ご紹介に預かりました、レインと申します」

多少ギクシャクとしながらだが、レインは深くお辞儀をした。

顔を上げると、ニヤニヤと笑みを浮かべながら、自分を値踏みする

ように観察してくるイベリスと目が合った。


「へえ・・・・なかなかの上玉じゃないか」

じゅるり

耳の錯覚か?周囲から舌なめずりの音が聞こえた気が?

「ならこっちも紹介させてくれよ。ユリはもう知ってるだろうけど、

まずは私、紅百合傭兵団の団長してるイベリスってんだ。よろしく~」

そういってイベリスは手を突き出して握手を求めてきた。

レインは素直にそれに応じる。

〈紅百合傭兵団、私はあまり関わったことはないけど、この街の中で大変

精力的に働いていると、風の噂によく耳にする人達だったかしら〉

「でぇ、こっちに居るのがナーガ族のヴァイス」

「どうもぉ、ヴァイスといいますぅ、よろしくお願いしますね」

上半身は人間、下半身は蛇の種族。青大将のように肌が白く、

その紅を引いた唇から、蛇特有の先端が枝別れした細長い舌が

チロチロと顔を出す。

「んでこっちが人狼族のカッチ」

「どうも!うちはカッチっス!出身は大陸北にあるガオン村出身です!

どうぞ、今度うちを見かけたら挨拶してほしいっス!」

そういって、狼の特徴を備えた灰色かかった尻尾を嬉しそうに

フリフリ振ってみせる。随分とテンション高い子だ。

「で、最後に紹介するのが、そこで肩寄せ合って座ってる二人。

双子のメメとムム」

先ほどまで場の空気に無反応だったのだが、イベリスに指をさされて、

ようやく二人は反応を見せた。

「どうも、双子の姉のムムです・・・一応、ニンゲン?です」

「初めまして、双子の妹のメメです!これでも立派な人間でレディーです!」

二人とも身長は130cmほどで、どうも見ても子供な外見をしていた。

二人とも肌の色や髪色や目の色は全く同じであるが、メメは耳が出る程の

短髪、だが内気なのか前髪だけは少し伸ばして、目元を隠している。

ムムは長髪、だが勝気なのが伝わってくるその目つきを堂々と晒して、

前髪を5;5の割合で分け、オデコまで出している。

「えっ、もう大人ってことですか!?」

レインはとんでもないことを聞かされたと驚きを見せると、二人の顔が同時に曇る。

「・・・ああ、私たち、十年前から全然背も伸びないし、やっぱ

そう見えますよねぇ」

「なによ!確かに私達は十歳の頃からこのままだけど、

こう見えて立派な20歳のレディーなんですけど!?」

確かに、その手には何かお酒の匂いのするカップが握られているが、

二人の姿はどう見てもジュースを手にする子供にしか見えなかった。

外見年齢から予想しようにも、どうしても10代前半ぐらいに見える。

「ご、ごめんなさい!私ったら、つい・・」

「いえ、いつもの事なんです。気にしないでください。許してあげよう。

ね?メメ」

「ふん!まあ今回だけは気にしない。許してあげるわ!それでいいわよ。

ね?ムム」


「・・・・あの、イベリスさん?今日ってイベントの日って聞きましたけど、

まさかこの二人を?」

ユリはよもやと思い、イベリスに耳打ちする。

そうしたらイベリスから耳打ちで返された。

「アホ、年齢は別としてあの二人は私の対象外さ。

それにあの二人はもうデキちまっててよ。

自分のパートナー他人に触らせるのが嫌なんだってさ」

〈ああ、そういうアレなんだ・・・・・〉

色々と察しましたというように、ユリはムムとメメ二人の様子をうかがう。

確かに、二人は常に手を握り合い、肩をぶつけて頬をこすりあい、

身長さえ普通の20代の平均ほどあれば、とても親密なカップルであると、

傍から見ても想像ができる触れ合い方をしていた。

「えっと、じゃあ私達はこれで、スミレママさんにも挨拶して来たいので」

「おお、呼び止めちまってわりいな。またな・・・

あ、レインさん」

「はい?」

「ここは『私ら』みたいなのの天国みたいな店なんだ。

今晩はたっぷり楽しんでいってくれよな」

「・・・・?はい、わかりました。ありがとうございます?」

何か不思議な含みを持たせるイベリスを背に、レインはユリに

手を引かれるがままに場所を移した。


辿り着いたのは店内の角に設けられたカウンター席だった。

棚には見本のように並べられた各種ワインや酒類の瓶が飾られ、

カウンターの中には妙齢の美女が一人と男装をした女性の

バーテンダーが1人、立っていた。

「あらぁ、いらっしゃい」

二人の姿を視認すると、すかさずにその美女が挨拶した。

「スミレママ、お久しぶりー元気してました?」

「ええおかげさまでね。それよりユリちゃーん。

ずっと来てくれなかったわねぇ。私、心配してたんだからぁ」

「んー、ごめんー。私もずーっと仕事でさー世界中飛び回ってたんだ~」

「大変ねぇ、勇者として戦うのって・・・そちらの方は?」

スミレの視線を受け、レインはピンと背を伸ばす。

「はじめまして、ユリちゃんの友人で、レインと申します」

「あらぁ、あらあらあら~そうなのぉ。ご丁寧にどうも。

私はスミレ・ビルチク。このViolet lipsのオーナーよ。

隣にいるのが店長のフレンダっていうの。

できれば今後とも御贔屓に」

スミレは楽しげに声を弾ませてそう挨拶した。

その隣りを見ると、フレンダと呼ばれた女性が丁寧に頭を下げて短い挨拶を送ってくれた。

どうやら相当に歓迎されているらしいと、レインもほんの少し嬉しくなった。

スミレはフワフワとした紫を基調としたドレスに身を包み、濃い紫の口紅を付けていた。

そして、血の気を感じさせない冷たい印象を与えるほどの白い肌をしているのに、

アジア系ともつかない漆黒の凄く暗い闇色をして、腰まで伸ばした

長い髪をしていた。

だがその表情は凄くほがらかで、どこか愛嬌がある。

フレンダは店長ということだが、バーメイド〈女版バーテンダー〉も兼ねているようで。何故か男装をしていた。

だが、豊かな胸の膨らみと口に引いた紅で、

女性的な部分を隠そうともしていない。

暇さえあればグラスを磨きながら、お客との会話を楽しんでいる。

その姿は何とも凛々しいと女性達から人気だ。

その髪色はクリーム色をしていて、肌は褐色。

どこかの国とのハーフなのか?

この辺りではあまり見かけることがない特徴を備えていた。

「ささっ、立ち話もこのへんで、どうぞお座りになってくださいませ」

「あっ、どうもありがとうございます」

〈しまった、つい二人に見とれてしまって体が固まってしまった〉

なんとも言えない気恥ずかしさを覚え、レインはわずかに顔を赤らめる。

二人はいそいそとスミレの真正面、カウンターの端の席に並んで腰を下ろした。

「まず最初の一杯はサービスにさせて頂くはね、

『ユリちゃん』赤と白だと・・・どっちが良いかしら?」

スミレがそう尋ねる。

「??????」

〈なんで私に聞かずにユリちゃんだけに?〉

と疑問に思っていると

「ええっと・・・迷いますねぇ。

あ、そうだレインさん、白はいかがですか?

スミレさんが良い白が入ったって言ってたんで、試してみません?」

「え?あ、ああ、うん。嫌いじゃないわよ?

そこまでおススメなら、白・・・かな?」

〈そうか、ユリちゃんはここの常連さんなんだから、

そういうおススメ情報にも精通しているんだ。

だったら、お任せでも悪くない選択かも〉

とレインは自分を納得させることができた。

「私は・・・ロゼでお願いします!」

短く悩む間を挟んで唐突な選択をするユリ。

それを聞いた時、スミレの瞳がキラリと光る。

「・・・・へえ~・・・ロゼなのね?」

ロゼとは、赤ワインと白ワインの中間色的なワインである。

その語源は薔薇色〈ローズ〉をしているからという説がある。

製造法としては赤ワインを作る中間過程で色づきが薄い間に皮を取り除くセニエ法

皮ごとのブドウを白ワイン作りの要領で破砕して、それをプレス機で絞る

直接圧搾法

白ワインに少量の赤ワインを足して造るブレンド法 などがある。

この世界で一番流通しているロゼとは、ブレンド法のものが多い。

が、本当に重要な問題とは実はそこではない。

「珍しいわねぇ、いつもは赤だったユリちゃんがロゼだなんて」

「ええ、まあ、そんなこともありますよ」

テーブルを挟んで向かい合う二人の間に奇妙な空気が産まれた。


今の質問「赤か白か?」というのは、実はこの店の常連客の間で共有される特別ルールが関わっていた。

赤ワイン、とはいわゆるユリやイベリス達のような「そっちのケ」のある人という意味で、

白ワインなら、「ノンケ」である。

そして今回のレインのように、常連客が初見の客と同伴だった場合、

常連客側にスミレは必ずこの質問をした。

そうして常連客が「こいつは赤」と言えば、その同伴者も

「そっちのケ」の人だから何の気兼ねもない。

だがそこで「この子白なの」といえば、ある程度の配慮が要る。

またその常連客が白という場合でも、『その同伴者はノンケだけど、

近いうちにこちら側に引き込みたい』と願っている場合もある。

そういった場合、スミレは気分次第で、その「応援をする」こともあるとか

ないとか。


怖いね


だが今回はそこで想定外だ。ロゼ。

白でも赤でもない。

あんにどちらとも言えない関係、状態だと伝えられてスミレは少しばかり困惑している。

考えられることとしたら、

「白だけどそろそろ落とせそうな予感がする距離?」

それとも

「手を出せたけど、まだこちら側と呼ぶに値するほど傾ききっていない」

ということか?


どちらにしても、スミレは大いに興味をそそられた。

これはもっと深く掘り下げなくてはと思った。

「レインさんだったかしら?

貴女、ユリちゃんと知り合ってどのぐらいになるの?」

レインの前に白色のコースターを置き、その上に白ワインを注いだ

タンブラーグラスを乗せた。

このコースターも秘密ルールの赤白を分かりやすく、他の客に知らしめるための工夫である。

「えっと、知り合って1年ぐらい、になります。

私、バザーで日雇いの仕事をしている者なんですけど、

働いている時にユリちゃんがお客として来てくれて・・・」

「へえ・・・ああ、そういえばユリちゃん良く言ってたわねえ。

よく行くお店で仲良くなったお姉さんができて喜んでたわぁ」

「へへっ、ええまあ・・・」

ユリがうっすら照れ笑いを浮かべる。

「彼女と『付き合う』と大変じゃない?

色んなお店に連れまわされたりしなかった?」

「???いえ、そんな。彼女こそ、私の都合に『付き合って』くれて。

子供達の遊び相手になってくれることが多くて助かってます」

「へえ・・こーどーもーのー?」

スミレの瞳がギロリとユリを睨みつける。

言葉にはしないが、ユリには十分その視線の意味が伝わっていた。

〈ユーリーちゃーん?私いつも言ってなかった?

ノンケでも、所帯持ちに手を出したらダメよ?って〉

〈ごめんなさい・・・スミレママ。だって仕方ないんですー

お店で会う度に想いが募ってしまって、どうにもできなくてぇ〉


「失礼ですけど、ご主人はどんなお仕事を?」

「冒険者です。今は長期滞在任務を受注して、

一か月ほど・・・中世戦線に」

〈このバカ!命がけで働いてる亭主を置いて何狙ってるのよ!

家庭崩壊させるつもり!?〉

〈いえ別にそこまでは!旦那さんが返ってくるまで

お慰めできればってだけでぇ!〉

もうもどかしい!情報を小出しにさせるだけじゃ埒があかない!と、

スミレは少しばかり大胆に仕掛ける。

「レインさん。貴女、このお店がどういうお店か聞いてる?」

「え?〈考え中〉・・いえ、ただユリちゃんから、

仲間も沢山いて、楽しいお店だから、と」

「楽しいお店・・そうねぇ。間違ってないわ。

確かに、私がこのお店を作った時そういうのを目指して作ったの。

私達、女性が男性のことを気にせずに、楽しんでお酒が飲めるお店。

女同士が、安心して愛し合える場を手に入れられるお店に

したいって思ったの」

「へえ・・そうなんですかぁ・・・女同士が・・・ん????」

〈いま、なんか変なワードが聞こえた気が?〉

「あの・・・スミレさん?それはどういう・・」

レインが恐る恐る尋ねた時である。


カランカランカラン


新たな来客があった。

二人連れで、真っすぐカウンターへと向かってくる。

「こんばんはースミレさん、お久しぶりー」

「ご無沙汰ー」

その二人組を目にした時、レインは大きく目を見開いた。

「メイさんとリンドちゃん!?」

「あらーもしかしてレインさーん?貴女もこのお店のこと

知ってたのぉ?」

「正直いっがーい、てーしゅくそーに見えて、

見かけによらないってやつー?」

二人はレインと同じアパート「うの9号館」に住む住人であった。

メイは同じ階の202号室に住む3X歳で、ご主人と

八歳になる息子さんと共に暮らしている。

リンドは104号室の住人で、一人暮らしの冒険者をしている。

家族向けのアパートに引っ越せるだけあって、実入りは相当良い

らしい。性格もかなり自由人だ。

どちらもレインが朝方によく挨拶を交わす相手なのだが、今は

大変親密な空気を漂わせ、しっかりと手を握り合っている。

二人はあえてレイン達と隣りの席へと腰を据えた。

すると、早速メイは頬杖をついてレインの方を向く。

リンドは親しげにメイを背後から抱きしめ、その髪を弄び始める。

「・・・ああ、白なのね」

「なーんだーがっかりー。レインも私達と一緒かなとおもったのにー」

白、とはこの飲み物のこと?と、うっすらそのワインの色が何かを

暗示していることにレインは気づき始めた。

レインから直ぐに視線を外すと、二人はフレンダに向けてオーダーを始める。

「とりあえず、赤ワインを」

「あたしも赤でぇ!」

しばし、もどかしい空気。

メイとリンドは何に構うことなく出された赤ワインをコクコクと飲む。

「ユリさん・・・改めて聞きますけど、このお店って・・・」

気まずそうにするユリ。

彼女としては、そういうことに感づかれるのは、今晩開かれる

イベントまで隠すつもりでいた。

まさかこんなにも二人の良く知る客が来店したり、スミレに猛攻を受ける

とは思いもしていなかった。

狡猾そうに見えて、単純で単細胞なユリのオツムの限界がこれである。

「べ、べべつに、あの、他意はなかったんです。ただ、ここ

そう言う趣味のない人も来るお店なんで、レインさんと純粋に、

おお、お酒を楽しみたかったというかぁ」

こんな言い訳で誰が誤魔化されるというのか

「ああ、そうだったんですねぇ。ありがとうございます、ユリちゃん」

居たわ。純粋な天使さまいらっしゃいましたわコレ。

「ふふ、どうだかぁ・・・今日が久々のイベントの日だから連れてきた

だけでしょー?」

「下心みーえーみーえー」

そこへ一気に茶化しにくる隣の二人。

憤ったユリは、レインが自分から視線を外している僅かなスキを見て、

きつく睨みつけた。

そうとは知らず、レインの関心は隣の二人へと向いた。

「あの・・・メイさん?リンドちゃんとのご関係って?」

「ん?付き合い始めて、もう三年になるかしらぁ」

〈三年前からって、そんなに前から旦那さんやお子さんにバレないようにしながら?〉

「へへえっ、最初はあたしから近づいたんだよねぇ。

メイったら、子供が出来てから旦那がずっとレスでストレスたまってるーっていうからさ。

遊んであげたのぉ」

「あ、あそんでって、やっぱり・・・そういう、遊びですか?」

「うん、そだよ?」

すんなりと、後ろめたさも何もないといわんばかりにリンドはそう答えた。

「あの、旦那さんからは、何も?」

「ふっ、あの亭主なら大丈夫よ。」

「二人で出かける時は必ず私が迎えに行くから、浮気とかも疑われないって

ゆーかー?」

「子供が生まれてからあの人、私への関心が薄いのよねぇ。

だから安心してこういうお店にも来られるの」

「朝帰りになっても平気だもんねー」

〈そ、そうなんだ・・・・そういう人達も、いるんだ〉

その瞬間、レインの脳内にまた昨夜のことがフラッシュバック。

〈あ・・・〉

ふいに、自分の足の間がもどかしくなる。胸の鼓動が高鳴る。

無意識に自分の唇を指でなぞってしまう。

レインはゆっくりと店内を見渡した。

ゆらゆらと揺れる蝋燭の火だけが店内を照らす。

そのため、その店内は所々に暗い影が出来て、人の顔かたちを絶妙なほどに

照らし出し、また隠す。

陰影がはっきりとして、よくよく見るとそれを利用するカップルが居るのが

見て取れた。

ソファーの上でお酒やドリンクを嗜む素振りを見せながら、ここの影に

隠れるポイントと知るや、チュッと唇を合わせ、その肩や腕を吸いあう

カップルが居た。

立ち飲みの場で、カクテルか何かを口に含んだ後、パートナーにそれを

口移しで飲ませ合う遊びに興じる姿があった。

奥のステージでは、立てられたポールの周りで舞っていた踊り子同士が

絡みだし、体をソフトに撫で合っていた。

ふいに他の客とレインの目が合う。

その客はパートナーを抱きしめながら、無言で唇を動かしていたのだが。

レインにはその口の動きが「ここは最高よ?」と言われたような気がした。

何を楽しめというのか?

その言葉の意味を考えるとまた顔がカアと熱くなる。

内股や胸がムズムズする。

急に小さくモゾモゾと蠢くレインの姿は、意図せずとも周囲の客の視線を

集めていた。

着々と放たれ始める、レインのエロスフェロモン。

それに影響されてか、メイとリンドが、お互いを見つめ合う。

だが、基本的にこのお店〈ないしょだよ〉時間以外で、

〈こどもは見ちゃダメ〉行為は禁止である。

それはキスやきわどい所へのボディタッチも含まれる。

他のテーブルと違い、このカウンターでは誤魔化しようがない。

だが、その代用プレイとして、いくつかの抜け道が存在していた。

レインの放つ呪いとも思えるソレにあてられて、たまらずメイと

リンドはそれを実行に移す。

まずメイが自分の手の平にワインを垂らす。それをリンドが

ペロペロと舐め上げる。

手の平まで綺麗に舐め終わると、交代だ。次はリンドが自分の手に、

メイが舐める。それをお互い気が済むまで繰り返す。

〈あ、ああ、ああああああああああああああああああ!!〉

心の中で絶叫するレイン。

だがこれは恐怖だとか怒りから来るものではなかった。

目が離せない、自分はつい先日まで知りもしなかった、

新世界がそこにはある。

高揚、興奮、興味、関心。

抑えようもないそれらが湧きだして、もう抑えきれないという状態で、

ジッと二人を見つめていた。

それを傍目に、スミレとフレンダは

〈この子想像以上にチョロい子ね)〈ですねぇ〉

と思った。

スミレは指先でチョイチョイと、ユリに顔をこちらに寄せるように合図した。

そしてレインには聞こえないように小さく

「よかったわねぇ、この子才能アリよ」と囁いた。

ユリは心の中でガッツポーズを決めた。


カランカランカラン

再びの来客。

「ヒック!ういいいいい・・お久しぶりでごじゃーます!みなしゃん!」

「こらこらギルd、ルーさま、酔っ払いすぎですよ、

もっと抑えてください」

「ええ?べつに良いじゃらいろお、ヘルもんじゃないし!」

「HELLも減るも困りますよぉ」

なんか妙に騒々しい客だった。またも二人組である。

が、遠目からその姿を見た時、今度はユリが面食らってしまう。

「ルーさああああああああああああああん!!!????」

目の錯覚かと思ったが間違いない。

あれはギルド長のルー・ルマ・モレーだ。

金髪エルフ。日中と変わらないペンシルスカートとスーツ姿。

だが今は大分着崩れして、顔を真っ赤にしてフラフラしているその

姿は、昼間のきっちりとした姿が微塵も残っていない。

ただの飲んだくれであった。

それを介助しているのは秘書のエルザだ。

そちらは顔が少し赤みを得ているようではあるが、いくらかシャンとしている。

「こら、大声禁止よユリちゃん」

とスミレに窘められた。

「貴女、知らなかったの?彼女、前はチョクチョクここ来てたわよ?

イベント参加も初めてじゃないし」

「えっ・・・・そうだったんですか?」

その言葉はユリにはショックだった。

「おーおールーじゃねえかー。良かったらこっち来いよー!」

イベリスが大きく手を上げてルーを迎え入れた。

エルザはルーをやさしくイベリスの隣に座らせると、また立ちあがる。

「あれえ?エルザもこっち、こよーよー」

とルーは手をフラフラさせながらエルザにコッチコッチする。

「・・・申し訳ありませんが、私にも先約がありまして。

またイベントが終わり次第、お迎えにあがります」

そう言い残すと、エルザは重い荷が降ろせたという開放感からか、足取り軽く立ち飲み席の方に迎う。

「あーんエルザじゃなーい」

「お久しぶりー元気してた?」

「エルザさんが来なくてワタシィ、寂しかった~」

途端にエルザの周りに人だかりができる。その中には客だけでなく

バニースーツの給仕も交っており、その人気のほどがうかがえた。


「で、どうしたんだよ今日は?」

イベリスは自分の飲みかけたグラスをルーに手渡し、その耳にずっと唇を近づける。

「ヒソヒソ・・・・彼氏ができたから、もうここには来ないって

言ってたの、忘れてねえぞ〈ボソッ」

「ヒック・・・・別にいいらないですかー。

ワトスンくん、最近まで勇者パーティーの方の用事と魔術師協会から

回ってくる雑務で大忙しでーぜーんぜん、S●Xしてくれないしー

私も昨日までざんぎょーつづきでー・・・・もうヘトヘトでぇイライラでえ

・・・・いろいろ発散したいんれすぅ」

言いながら、ルーはシャツのボタンを外して胸元を晒し、

自分のスカートをスルスルと限界までずり上げ、股を大きく開いてみせる。

「「おー・・・」」

団の皆が声を上げる。そして一緒にゴクリと生唾を飲む。

「そーいうことなら、今日はスッキリして帰ってもらわなきゃなぁ」

いやらしい視線がルーに集中する。

この店に通う「そっちのケ」の女性たちにも色々なタイプがいると言え、

この紅百合団の面々に限っては、スケベ男性と変わらないような

性欲の権化が揃っていた。

あえて悪い言い方になるが、「女を地獄の蜘蛛の巣に引きずりこんで、

ボロ雑巾のようになるまで〈サークル活動〉するようなオニチク軍団」

と影で言われている。

そうされても堕落せずまともに社会生活が送れている実例は、

ユリとルーの二人ぐらいであった。

「あ、あの、うち今日はルーさんの下を担当させて欲しいっス!」

「おお、威勢が良いじゃねえかカッチ!よし任せた。

なら私は右もらうわ」

そう言いながら、イベリスは舐めるようにしてルーのブラに包まれた

膨らみを見つめていた。

「うふふふ、なら~私は左とお口を~」

ヴァイスの長い舌がたまらずにルーの耳を舐める。

「決まりっスね!じゃ、じゃあルーさん・・・

その、どれぐらいが良いっスか?」

鼻息を荒くして、カッチは自分の右手の内、中指と人差し指だけを開いて見せる。

「・・・・・」

無反応

ならばと、今度は薬指と合わせて三本開いてみせる。

これも無反応。

だったらと小指まで開いて四本。

えっ、これも反応なし?

だったら最後はと、親指まで立てて五本の指を真っすぐ揃えて見せる。

「・・・・んー・・・」

今度は少しだけ反応があった。

しかし何かが足りないらしい。

ルーはカッチの手を掴んで、立てていた指を握らせてグーの形を作らせる。

「こぉれぇ、こんぐらいじゃないとぉ、ワトスンくんの代わりは、

つとまいまひぇん・・・」

言いながら、ルーはカッチの握りこぶしをペロリと舐め上げたのだ。

「お、おおお」

イベリスは小さく声を上げる。が、明らかに歓声とは真逆のそれであった。

「お前の彼氏って・・・すげー、ん、だな」

酔っ払いすぎて色々と思考が低下しているルーであるが、何だか今

彼のことを褒められたような気がして、気分が高々となった。


このような会話や交流が徐々に店内全体に広がっているのが見られる。

それぞれのパートナーの傍に寄り添うと、片方が指を開いて見せて、

相手の反応を見るのだ。

「ねえ・・・エルザは今日、何本ほしい?このぐらい?」

言って、その女性は二本の指を立てて見せる。

「んー・・・どうせなら、このぐらい欲しいですね」

エルザは自分の手を見せる。三本の指を立てるのだが、大きく外側に

反らした親指で、何かを転がすような動きを見せた。

「んふふふ、分かったわ」

エルザのパートナーと思わしき女性は、ニコニコと笑顔を浮かべると、

エルザを正面から抱きしめるのだった。


「ねえねえ、今日はこのぐらい試してみない?」

「やめてよ、そこまで広がらないっての」


「ねえ~、この前は、このぐらいだったけど、大丈夫だった?今日は減らす?」

「馬鹿ね・・・気にしないでよ、アンタはアンタの好きにしな」


「今日はせっかくこうして集まれたんだしぃ、三人で試してみない?」

「うわーそれちょっとひくぜー。私、そんな経験ねえし・・・やばくね?」

「大丈夫じゃね?私が一本、コイツが一本にすればさ、あんたもきっと楽しいってー」

「だよだよー」

「ま、まあ、二本ぐらいなら・・・私でも・・だけどよぉ」


少しずつそのような会話が広がり始める。


その様子を見て、スミレは一つの判断を下す。

フレンダの方を向いて、一度だけコクンと頭を揺らす。

それを見届けると、フレンダは数本のスナッファーを手に、

カウンターを離れていく。

スミレはカウンターの中で、店内の端から端まで届くようにハンドベルをリンリンと鳴らす。

「ハイハイ、お客様方。オーナーのスミレ・ビルチクでございます。

本日はご来店頂きまして真にありがとうございました。

そろそろ今日予定していたイベント「お酒を抜いて帰りましょう。

ちょっとお休みタイム」を開きたいと思います」

キャーキャーと小さく歓声が沸いた。パチパチと拍手も聞こえてくる。

「え・・・?え?」

レインは分からないとキョロキョロとする。

するとスミレは、彼女の方を一瞥するとゆっくりと説明を始めた。

「この企画は五年前から開催されました。

皆さんはこのお店で、心行くまでお酒を嗜んで、お楽しみ頂いたことと

思いますが、酒気が残ったままの帰路は大変危険です。

そこで、只今から小時間消灯し、皆さんお休みになって頂き、お酒を抜いて、

スッキリ〈意味深〉として帰って頂こうと、こういう催しでございます」

フレンダはテキパキと、まず入り口の表札を「open」から「イベント開催中

途中参加不可」の看板に付け替える。

それからカギを閉め、給仕をしていたバニーガール達にスナッファー

〈蝋燭消し〉を一本ずつ手渡す。

彼女らは手早く分担して、店内を照らしていた照明の蝋燭を一本一本

消していくのだ。

その間、客たちの側にも動きがあった。

できるだけ自分のパートナーを見失わないように、ピッタリと引っ付き合う。

そして瞬く間に、灯っている明かりはカウンターに付いた一本だけとなった。

バニー達も担当範囲を消し終わると、素早くフレンダの元へ道具を返し、

暗い店内を駆けて、パートナーの元へ向かう。

ソファーに座る客がパートナーの娘もいれば、同じ従業員同士でくっついた

娘もいた。

全てを回収し終えたフレンダがまたカウンターに入っていくと、

最後の蝋燭を消そうと構えるスミレの隣に、ピッタリと寄り添うのだった。

「それでは、皆様。ゆっくりとお休みくださいませ」

最後の蝋燭をスミレが消す。店内が完全に闇に飲まれて何も見えなくなる。

「ンチュ・・んあ・・・」

「・・レロォ、んっ・・・チュルル」

途端に店内から様々な音が響き始めた。

何か布がこすれる音、バサリと何かが軽い物が落ちる音、

ゴト、と硬いものが落ちる音。

「アハハ、すっごーいもう濡れ濡れじゃーん」

「バカ、いきなり指入れてんじゃないわよぉ!」


「すっごぉい・・・おねえさんのおっぱい、重いんですねぇ。

辛くないですかぁ?」

「んっふ、まあ、確かに肩に来るわねぇ。男どもの汚い視線も凄くて

んっ、そう、だからそうやって支えてくれると・・いい」

「ちゅっ、先っぽも凄く立ってますねぇ。しゃぶりがいがあって・・

ちゅううううう」

「ああああああん!」


「んぎゃ!てめえら、一度に何本入れやがる!!」

「ティヒヒヒ!ごめんねえ?つるっと三本も入っちゃったー」

「私もぉ、結構入れちゃったー。アンタ凄いねぇ?今までの最高記録何本?」

「ばっか!だからそんな何本も入れたことなんて・・んっいでででで!!」

「おんやおやおや~?痛がってるのに濡れ濡れじゃーん!やばくない?」

「くちゅくちゅ音させてるー超やば~」


「ああ、んんっ、そこ、もっとぉ」

「んちゅっ、何よメイ、もうグッチョリじゃない・・・そんなに我慢、

チュッ、できなかったんだ?」

そんな音たちが耳に入り、レインは動揺する。自分の直ぐ近くから聞こえてくる。

〈これはメイさんとリンドちゃん?・・・あと、ええええええ・・・・〉

「はあ、はあ、ちゅっ、ちゅっ、レロォ・・・・ムム、凄い美味しいよぉ」

「んっ、んっ、じゅる、じゅる、ジューっ!プハッ、メメだって、

凄く美味しいわ。もっとちょうだい」


バサバサバサ〈何か幾重もの布の塊をめくりあげる音〉

「ああ、スミレ様、チュッ・・・とっても良い匂いです・・・ジュルッ」

「んっ、そうよ、もっと・・もっと舐めて・・・ああ、

早く脱がせてぇ、直接が、良い!」

正面からも声が。レインの正面にはカウンターしかない。

まさか、あの二人が?


「ああん、そこっ・・・もっとぉ」

「へへっ、久しぶりだと・・・ちゅっ・・興奮するね」


「んほおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

「ひ、ひえええ・・凄いっス、本当に全部飲み込まれたっスよ!

ひえっ、手首まで!!」

四方八方から艶声が響く。

〈ああ、やっぱりイベントってこういう催しものだったのね。

うん、予想はしてた。けどまさか!〉

ここまで唐突に開催されるとは思いもしなかった。

レインは逃げる間もなく、閉じ込められた。

〈こんな時、ユリちゃんはどうしているのかしら?〉

イベントが始まっているが、ユリからのアクションがない。

〈もしかして他の女の子のとこに行っちゃったの?〉

唐突に特別な寂しさが、不安がこみ上げ始めた時である。

突然、レインの手が何者かに握られる。握ってきたのは、

ユリが座っていた席の方かららしい。

そうして更にレインの体はその何者かに抱き寄せられた。

〈あ、この感触・・・・知ってる〉

その手は乱暴に動く。ガムシャラにレインの衣服を脱がそうと

体のあちこちに触れられる。

偶然触れられて手が、ペティコードの結び目を探り当て、

しゅるりと解いてしまう。

続いてその手は腰辺りを探り、ステイズを脱がしにかかる。

紐が緩んでストマッカーがポトリと落ちた。

首に巻いていたネックチーフがファサッと地面落ちる。

後には腰に巻いたポケットと一番下に着ていたシフトドレスが顔を出す。

「はぁ・・・はぁ・・」

妙に荒い息を吐いて、やっぱりこの人はユリちゃんなんだ。と伝わってくる。

レインはむしろ安心を覚えた。

薄いシフトドレスの上から、ユリはレインのお乳を揉み始める。

そうしながら鼻先でレインの唇を探り始めて、それを見つけた時、すかさず

そこにキスをした。深く、舌を絡める。

「ん・・・レロロ、ンブ、ずりゅりゅ、ジュっ」

レインはたまらず、自らで服を脱ぎ始めた。

腰のポケット紐が地面に落ちる、首の後ろで止めていた紐を解くと、

シフトドレスが肩を抜けて腰の辺りまでズルりと脱げるのだった。

「はあ・・・はあ・・・・レインさん、チュッ、レインさん、はあ・・・・

チュプっ、愛してます・・チュッ」

暗くても、ユリが既に大分素肌を露わにしていることを知ったユリは、

首筋から順に下へ下へとキスをしていく。

鎖骨、乳首、腹、ヘソ・・・そして

ユリはいったんレインを立ち上がらせ、パンティも含めた全てを脱がしきった。

「ちゅっ・・・レインさん、そこ、ちゅっ、テーブルに手をついて下さい。

で・・・お尻、突き出してもらえますか?」

言われるがままに、レインはその言葉に従う。

ユリの手がレインのお尻に触れる。そして両手でお尻をかき分け、

大きく開かせる。

それから間もなく、何か濡れた物が足の内側に触れる感触が襲うのだった。

夜の闇はますます深まる。宴はまだ始まったばかりであった。

申し訳ありません。投稿予約の設定間違ってました。

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