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第六話 略奪

 城に住み着き、一週間もすれば綺麗なものになった。


 家具や布類は新品には出来ないが、川で洗い汚れを落とし、空中に浮く事が出来るメイド達が高い場所の埃でも汚れでも落としてくれるので、瞬く間に綺麗になって行く。


 俺の寝室として用意された部屋は、この城でも綺麗な家具や布が集められてかなり綺麗だ。


 食事や風呂場は今は使わないが、いずれ使うかもしれないので清潔さは保たせている。


 というか現状は幽霊のメイドに頼む仕事がそれしかないので、永遠と掃除をさせている感じだな。


「ふむ……、数百年か……」


 しかし今、新たな悩みが出来ていた。


『オ役ニ立テズ申シ訳アリマセン』

「気にするな。仕事に戻ってくれ」


 申し訳なさそうにするメイドに、気にするなと言って仕事に戻す。


 俺は今、深刻な情報不足だった。


 アリウスからの説明じゃ足らなかったし、こうしてメイドに聞いてみたんだが、この城で戦いがあったのはもう数百年も前の話らしい。


 数百年の移り変わりは大きい。日本で言うなら、馬に乗って刀で戦っていたのが、三百年もすれば銃やミサイルだ。戦術について聞いても三百年前の白兵戦などほとんど参考にならないだろう。


 数百年前の常識を聞いても、現代には通用しない可能性が高いだろう。


 やはりこの国について詳しい生者を連れてくるしか無いか。


『陛下。軍拡ノ進歩状況デス』


 すると、今度はデュラハンの一体がやって来た。


 デュラハンは会話する事が可能で、その中のまとめ役としてこのデュラハンを抜擢した。


 名前はアルファと名乗る様に命じ、俺もそう呼んでいる。


 今は死霊を増やすための軍拡に動いて貰い、デュラハンやスケルトンで部隊を結成し、死霊となる魔獣の死体を探させていた。だが……。


「……ふむ、微妙だな」

『ハイ。ヤハリ、死体ガ辺リニ落チテイル事ガ少ナク、魔物ヲ殺シテ屍魔物(デスモンスター)ヲ量産シテモ、手ガ足リズ……』


 中々、上手くいかないものだな。


 この世界でも死体は落ちていないらしい。


 まあ当たり前か。そこらに死体が落ちているなんて、どこの世紀末だよって話だ。


「……よし、村を落とすか」

『村ヲデスカ? デスガ派手ニ動クト王国ニバレル可能性ガ……』 


 ちなみにアルファには俺の目的が、呪いを解くために王国を滅ぼす事だと知らせている。


「大丈夫だ。鳥を飛ばしてから視界を共有し、辺鄙な場所にある村を見つけた。滅多に人が行き来する事が無いみたいだし、全員殺しても問題無いだろう」

『カシコマリマシタ。デハスグニ部隊ヲ編制シ……』

「いや、デュラハンを五体だけで良い。それで十分だ」

『ハ』


 命令を受けたアルファの行動は早かった。


 自分を含み、五体のデュラハンを即時招集。


 完全武装の元、俺の前に集結させた。


 俺も馬に乗り、出発する。


 半日に渡り馬を走らせて、険しい山の上に到達する。


 これほどの高さに村があれば人の行き来が少なくなるのも必然か。


「アルファ。お前達は四方に散開し、逃げる人間を捕えろ。手荒にしても良いし、逃がすくらいなら殺して構わん」

『ハ』


 そして俺は馬から降りて、堂々と村の正面から押し入った。


 やはり辺鄙な村だけあって、造りが雑な建物が多い。


 吹けば倒れてしまいそうだ。


「な、なんだあれ……」

「スケルトン……?」


 村人が俺に気が付いて、騒めきだした。


 面倒だ。一声で済ませよう。


「死にたくなければ今すぐに我の前に並び、頭を垂れよ! さすれば命までは取らん!」


 山々に響き渡る大音量。


 村人たちは耳を塞ぎ、次の瞬間には大パニックになった。


 全く、まるで岩を持ち上げたら下に大量の虫がいた気分だ。


「こ、この! 死ねぇ!」


 村を歩いていると村人の一人が俺に向かって、鍬を振り下ろした。


 物理に弱いスケルトンだと思って攻撃して来たんだろうが……。


視界暗転(ブラックアウト)

「ぁぇ? 何も、見え――――グエッ!」


 視界を暗闇に落とし、腹を殴った。


 スケルトンは非力な魔物らしいが、俺は人間だ。


 もろに入れば吐かせるぐらい容易だ。


 それから五分もしない内に、デュラハンが村人を連れて来た。


 村の広場の様な場所に全員を並ばせる。


 総勢で……、三百人ってところか。


『陛下。抵抗ガ激シク、二十三名ヲ殺シテシマイマシタ』

「構わん。死ぬのが少し早まっただけだ」

『アリガトウゴザイマス』


 それだけ報告するとアルファは他のデュラハンと共に村人が動かない様に見張りに入った。


 すっかり静まり返った村人たち。


 誰の眼にも恐怖が浮かんでおり、俺を見る目はまさに化け物を見ている様だった。


「お、お願いします! どうか、私と娘の命だけは! どうか!」


 そんな中、一人の男が声を上げた。


 ほとんどの村人が痩せこけているのに、その男だけは丸々と太っている。


 この村で一番権力がありそうで、着ている服の素材が見るからに高級そうだ。


 村人たちから裏切り者、と声が上がる。


 まあ自分だけが助かろうとすれば、そういう反応をされるだろう。


「…………よかろう。ただし、私の質問に答える事が条件だ」

「は、はい! どんな命令にも従います!」

「よし」


 まあ、こういう自分本位な人間は扱いやすい。


 望む報酬さえ与えてやれば、言う事を聞かせられるだろう。


 それにこの世界の情報が貰えるなら人格などどうでも良かったからな。


「ならば娘と共にこちらに来い」

「お、おい! 早くしろ!」


 そして男は若い女を連れて、俺の前まで来た。


 これで情報源は確保できた。


「お前達、そこにいるのは全員殺せ」

『ハ』


 今欲しいのは労働力じゃなくて、死体だ。


 やめて、許して下さい。と悲痛な叫びが聞こえたが、俺の心にまでは響かなかった。


 全てが終わると広場には死体が転がり、真っ赤に染まっていた。


「【死霊誕(ネクロマンス)】」


 そしてすぐに死霊として復活させる。総勢で三百体のゾンビか出来上がった。逃げて殺してしまったという村人たちもゾンビとなって、その列に加わった。


「ひっ、ぁ……!」

「お、おい!」


 まだ若い女には刺激が強すぎたか。


 よろけて倒れてしまったのを、男が支えた。


 まあどうでもいいか。それよりも俺の視線は、村の外れにある十字架に目を奪われていた。


「ん? おい、お前。あそこはなんだ?」

「あ、あそこは、我々の集団墓地です。深い穴が掘ってありまして、そこに遺体を入れるのです……」

「ほう!」


 ならばあの十字架は墓石替わりか。


 近付くにつれて、死体の数が何となく分かる。


 この下には百を軽く超える白骨化した死体が埋まっている。


「【死霊誕(ネクロマンス)】」


 迷う事無く、俺は彼らを蘇らせた。


 カタカタ、と蠢く音が地面の下から響く。


「アルファ。出してやれ」

『ハ』

「ここに馬車か、荷台はあるか?」

「は、はい。馬車が一台と、リアカーが二台程……」

「よし。娘を馬車に乗せたらお前は貴重品とか書類とか、金庫の中身も全て積め」

「は、ははあっ!」


 男は否定する事をせず、黙って従った。 


 賢い判断だ。情報源が一つでいいなら、お前を殺して娘を生かして連れ帰ってもいいのだからな。


「襲撃の痕跡を消して、綺麗に掃除しておけ。終わったら食料や本などの物品を馬車に積め。終われば帰るぞ」

『『『ハ』』』


 デュラハンたちやゾンビに命令し、偽装工作を終えた俺達は城へ帰還するのだった。






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