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第十六話 王都滅亡編 終章 王都壁門攻防戦

「開戦だ」


 俺の一言が、開戦の火蓋を切った。


『第一陣前進!』


 全軍司令官アルファの指揮のもと、第一陣のゾンビ兵が突撃して行った。

敵も壁の上から弓矢を放ってくるが、こちらはアンデットだ。頭に命中しない限りは死なないし、手足に当たった程度なら立ち上がり、再び歩みを進めるぞ。


「「「ファイアボール!」」」


 壁の上からいくつもの火球がゾンビ達に降り注いだ。


 炎に弱いゾンビはどんどんと炎上し、そして倒れて行った。


 あれは面倒だな。というか鬱陶しい。


 壁門を破らずとも、ゾンビが積み重なって山になればゾンビは次々に王都に侵入して行くだろう。


 そう考えていたのに、ゾンビ溜まりが出来る前に焼かれてしまえばどうにもならない。


 だがな、弓を使うのは人間だけじゃないんだよ。


『弓兵、矢ヲ放テ!』


 隠れる様に控えていたスケルトン軍が前に出た。


 今まで滅ぼして来た都市で奪って来た弓だ。矢の本数もたんまりある。矢の雨を浴びせてやれ。


 そう思っていた直後、赤い閃光が戦場に輝いた。


「【深紅爆炎獄(クリムゾンフレア)】!」


 深紅の輝きを放つ爆発が、王都西壁側の戦場で炸裂し、スケルトンの弓兵をまとめて吹き飛ばした。


『ナッ、ンダトッ!?』


 大袈裟にアルファが驚く。


 その横で、用意していた椅子に雫と共に座り、ベータが淹れる紅茶を味わっていた俺も感嘆の声を漏らす程だ。


「へえ。凄い威力の魔法だな」

「多分、北山君の魔法だよ。前に見た時よりも何倍も威力は増してるけどね」


 一か月近く一緒に訓練をしていた雫が言うのだから、間違いないだろう。


 それにしても随分と大規模な魔法だ。確かにスケルトンは耐久性が無いとは言え、一万近くは持っていかれたぞ。


 だがあれだけの魔法だ。連発は出来まい。


召喚(サモン)! フレイムアナコンダ・アイアンアリゲーター・ブリザードウルフ!」


 それと同時に王都東壁側の戦場に巨大な生物が現れた。


 体長二十mを超えて深紅の鱗を持つ、体調二十mを超える蛇。


 鋭い牙と爪が鈍い輝きを放つ銀色の鰐。


 真っ白な毛並みを持ち、周囲を凍て付かせる狼。


 一体一体のレベルは50を超えているだろう。それほど激しい猛威をアンデットに振るっていた。


「おお、危ない」

「召喚された魔物は佐藤君で、正面は平口君かな?」


 そして一瞬で俺の眉間目掛けて矢が飛んで来た。


 寸前で雫が華奢な手で止めてくれた。


「姿が見えないのは沢村と工藤だけか……」

「あっ、杏子ちゃんは私が斬ったよ」


 止めた矢をぽいっと放り捨てた雫が、何気なく告げた。


「まじで?」

「うん。死体が欲しいなら、一応屋敷に置いてあるけど……」

「仮にもクラスメイトだからな。眠らせてやるよ」


 それだけ告げるとそっか、と雫は戦場に目線を追いやり、口を閉じた。


「大丈夫か?」

「うん。比べ物にならないけど、私も琥珀君と同じ業を背負うよ」


 今すぐに抱き締めてやりたくなった。


 体温を感じたい。その唇の柔らかさが知りたい。


 それにはまず、身体を取り戻さないとな。


「アルファ。リッチに経験を積ませる時間は終わった。さっさと終わらせるぞ」


 椅子から立ち上がり、指示を受けたアルファが動き出す。


 俺は指先を城壁の上にいる敵軍の弓隊に向けた。雫に助力を願い出て、微妙な位置調整をする。

それから指先に魔力を集めると、徐々に10mmにも満たない小さな黒い弾丸として形を現した。


「【黒弾遠射(ロングブラックバレット)】」


 瞬間、音も無く黒い弾丸は放たれた。


「……命中」

「だろうな。壁の上が騒がしい」


 よく目を凝らせば、動揺している事が手に取る様に把握出来た。


 あれでは将校が討ち取られたと宣伝している様なものだ。


「【死霊誕(ネクロマンス)】! …………ん?」


 死霊誕が発動しない?


 いや、弾かれたのか?


 王都内部の墓にスケルトンを発生させようと思ったんだが、どうやら神聖属性の結界が張られているらしい。


 やれやれ、流石に王都だ。一筋縄じゃ行かなそうだ。


『準備完了シマシタ』


 アルファは部隊の編制を終え、俺の前に集結した。


 総勢百体によるデュラハンの騎馬隊だ。


 突破力は相当だ。


「よし、付いて来い! 遅れていたら置いて行くぞ!」

『『『ハッ』』』


 死馬に跨ると、一緒になって雫まで乗って来た。


「っ、行くのか?」

「うん。私も決着の場に立たないと」


 いつになく鋭い眼付きだ。これは止められないな。


「しっかり掴まれよ」


 背中に抱き着く雫の手を支え、死馬(デスホース)を走らせる。


 俺が初めて殺した馬で、ずっと乗っている馬だ。


 今じゃこいつ以外の背中に乗るのが嫌なくらい信頼している。


 そのまま走っていると正面に展開していた軍が、まるでモーゼの十戒の様に人波が割れた。


 次に立ち塞がるのは分厚い壁門だ。


「私が斬ろうか?」

「いや、正面突破だ。ぶち破れ!」

『ブルルゥ!』


 死馬も雄叫びで応える。


 顎を引いて完全に衝突する態勢だ。


 そのままマックスピードのままに壁門と激突し、死馬は見事に打ち破った。


「よくやった、お前は今日から『ヨシヒロ』だ!」


 あれだけ厚そうな門を前にして、一切怯む事無く突撃して行ったコイツにはぴったりの名前だ。


 心無しか死馬――――ヨシヒロも嬉しそうに唸り声を上げた。




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