旅立ち~上都編・13
彼女らは疾走する。
幸い、白い羽根が点々と落ちている。そして、ライが持つ白い羽根に残る魔力から、気配を感じ取る。
幸い、向かっていく先に似たような魔力の気配を感じる。走っていくごとに、その気配はどんどん濃くなっている。
彼の方へと近づいていそうだ。
ライは、ステファンの魔力の気配が残っていることに少し安心する。一緒に帰ったら、原因によってはちょっと叱り、それでおいしいものをいっぱい食べさせようと、思っていた。
ごうごうと風が鳴る。アロドュケレーの乗り心地は、彼女らしい包み込むような安定した乗り心地。これも彼女とラナ隊長の訓練のおかげであろう。
それでもなお、ライとしては、あの危なっかしげで、すぐに振り落としそうで、でもすごく頼りがいのあるあの背中に乗りたかった。
(お願い……無事でいて!!)
空に小さな影が見える。走っていくごとにその影は大きくなり、白い翼も見え、影自体も一頭と、なぜか顔に結び付けられている縄が垂れ下がり、その先に二人がぶら下がっていた。
いた!
そして、ライは大きく息を吸い込み、叫ぶ。
「ステファン!!! 見つけましたわよ!! さあ、戻りますわよ!! 私の夢は、あなた無しではありえませんわー!!!!!」
「あら、大胆な告白ね」
(これは……さすがに、どうでもいいと思っていた今の私も……妬けてしまいますね……)
そして、アロドュケレーはスピードを上げる。ラストスパートといったところ。生まれ変わった後でも、彼女の差し足は健在だった。
そして、天高く飛ぶ天馬は大きくいななく。
(なら、娘! そこまで言うなら、我の方まで飛んで来い!!)
「はい! ドュケレーさん、ごめんくださいまし!」
ライは飛ぶ準備をする。
(ええ。かなり無茶をおっしゃっていますが……いいでしょう。私の体を使ってください……)
「何? なにをするつもりなの?!」
アロドュケレーは、かの天馬のもとへと迫る。ほぼ真下へと迫っていく。
馬場としては草原を走駆する。要は、競馬場の芝とそこまで変わらない。
そして、ライは狙いを定める。
大きく、ライはアロドュケレーから跳躍した。それはどこからか吹いた風に乗り、人間では到底あり得ぬ高さまで飛んだ。
ステファンに括り付けられている縄にぶら下がっている二人の盗賊は叫ぶ。
「姉御!!」
「なんだいなんだい、この人間離れしたお嬢様は?!」
(ふん、来たか)
放物線を描いて跳躍したライが下降し始めた瞬間、ステファンは大きく翼を操り、彼の背中で彼女をキャッチした。
「ステファン!!」
(娘のその度胸に免じてな。このまま逃げてやろうかと思ったが、気が変わった。戻るぞ、娘)
「なんか、無視されている気がしますぜ!」
「いや、ここはすでに指定された場所さね! このまま、お嬢様と一緒に人質にしゃれ込もうじゃないか」
とたん、天馬が舞う地上の真下に、どこからか統制の取れていない荒くれ者どもが集まって来る。
(娘。括り付けられている縄を外せるか?)
「ええ、任されて!」
顔にかかった縄を、するすると慣れた手つきで外していく。
「ええい。他の縄はないのかい?!」
「これしか持ってきておりませんぜー!」
真下の荒くれどもは、後ろに背負った弓を構え始める。
(娘よ!)
「はい!」
と、外した。
「うわああああああああああ」
「おちるぅぅぅうぅぅぅうぅうぅぅぅう」
縄に捕まっていた男女の盗賊と思われる二人が、重力に逆らわず落ちていく。
そして、真下から矢も放たれる。
「羽ばたいて、風を起こしてはじけますか?」
(今、考えていたところだ!)
矢に対して、ステファンは大きく羽ばたき、風を起こす。
迫ってくる矢を風ではじき返す。
「私たちを、忘れてもらっては困るわ!」
(助太刀……いたします)
と、ラナ隊長は巨大な剣を振るい、弓矢を放った盗賊たちへと飛び込み、蹴散らしていく。
「ラナ隊長! ドュケレーさん!」
(ドュケレー……だと……はて、あれは……)
と、ステファンは彼女へと視線を向けた。
(!!!!!)
彼は、この地でも彼女にくぎ付けとなった。




