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旅立ち~上都編・7

 荷物が、荷車から落ちないように縛り上げ、出発の準備を行った後、ライは馬車に乗り込む。ステファンは、別に、馬と天馬を移動させる集団に預けられる。次に、会えるのは、夕方ごろ。


最初の宿泊予定の村に、合流してからだ。


 初めての、王都。実は、ライは、ケンプコンスト伯領から出たことがなく、王都までの道のりは未知の世界だった。もちろん、書物や人からの聞きづてでどういうところで、どういうものがあるかは知っている。


 しかし、じかに見ることは初めてだ。何が、あるのだろう。あの、書物に書いてあったことは、どういうことなんだろう。


 期待で、胸を膨らませていた。


 イングリーデは、ライをねぎらった後、王都への旅の一団の護衛のために、所定の位置へと、レイスドゥーシェにまたがり空をかけていった。


 その顔つきは、知っているお姉さまの顔ではなく、天馬騎士団の団長の顔であった。

 

 前方の一団が動き始め、ライが乗っている馬車も動き始める。


 さあ、出発だ。


 多少の揺れを感じながら、ゆっくりと景色が移り変わるのを見ていく。気づいたときには、もう、あの慣れ親しんだ、街も小さくなっていた。

 

(お父様、お母さま、私、ライヒは、立派になってきますわ)


 心の中で、生まれ育った場所へと一時の別れを告げた。


 ***


 さて、旅の一団は特にトラブルもなく、順調に道を進んでいき、1日目の終わりに第一の中継地点、「シュマスドルフ」に到着する。


 ここは、広大な麦畑と、クラフトされた麦酒が名物の村であり、旅の安全と親睦をこめて、宴会が行われるらしい。カナンが、到着するや否やそわそわし始めていたのは、見て取れていた。


 ライは、15歳であり、飲めることはできないのだが、この国では満16歳からビールとリンゴ酒の場合のみ、食事と合わせることを条件に、飲めるのである。その他の種類のお酒は、18歳から。


ライ自身も、16歳の誕生日になれば飲もうと思っており、またライの家族は、酒豪ぞろいであった。お酒の失敗も良く聞いていたが、ここでは割愛。


 彼女は、少し遅れて到着した天馬と馬の一団と合流し、ご飯と、今日の旅路をいたわるように、ステファンの毛づくろいと羽根づくろいを行う。


 乗られたり触られたりするのは、嫌がる彼だが、こういう行為は素直に従っている。


 うっとりとしているさなか、ステファンの耳に、カサカサとする音が届く。


 彼はちらの方へ向くが、特に何もない。ただ、草がそよそよと泳いでいるだけだった。


「どうしましたの?」


(いや、気のせいだろう。ただ、遠くでほかの生き物が動いただけだ。ふん。お前は、気にせず毛づくろいを続けてればいい)


「そうであればいいんですけれど……ここら辺、もう少し行った先、盗賊団・・・が活発になっている地域があるとききますの

いつもなら、護衛の方は2部隊ぐらいで済むのですが、護衛の方が多めにいらっしゃるのはそのためですのよ」


(とうぞくだん……?)


「ええ、簡単に言えば、人の物を取る悪い集団ですわ。近くの村でも、襲撃事件が起こったばかりですの」


(ふん、気を付けることだな。キャロリといったか?あれがなくなるのは、我としても少々痛い)


「まあ、こんな時でも食い意地ですのね。その図太さ見習いたいですわ 」


遠くで、じゃんじゃんと騒がしくなっていく。宴会が始まったようだ。


(どうやら、ヒト共も騒がしくなってきたようだな

「ええ、じゃあ私は、行ってきますわね。ステファンは、ここでおとなしくしていること、わかりまして?」


(我に、命令するか。まあ、対価の一つでも持ってくるならば、考えなくはない)


「はいはい、おいしい、キャロリ持ってきますわね」


 とライは、置いてあった水の入った鉄製のバケツをステファンが飲めるようにひっかける。


 風が、頬をくすぐる。まだ、今は、そよ風だった。


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