旅立ち~上都編・1
「あのぉ…」
時は、士官学校の入学証を受け取る前にさかのぼる。
ライは、牧場の備品の注文受け取りの付き添いに、牧場近くの商業地区に来ていた。注文した備品を馬車に積む作業の手伝いに来ていた。しかし、想定していたよりもお店の品物の届くのが遅くなっており、その間商業地区を見回ってて良いというお達しがでて、現在に至る。
ライの目の前のそこには…。
「うぁぁぁぁぁぁぁああああ、ぐごー」
木箱に頭から突っ込んでいる女性?の姿があった。
多少のお酒の匂いがする。昼間っから飲んでいるのか、それとも昨晩からずっとこの状況なのか定かではない。
「だ、大丈夫ですの? お怪我とか、よろしくて?」
と、ライは木箱に突っ込んでいる人を引っ張り出す。
「ん……?ああ……? ああ、いらっしゃ~い、何か御用~? むにゃむにゃ」
という言葉を吐きつつ、そこらへんの瓶を抱きかかえ、寝っ転がる女性。言葉じりと、いろいろなポケットからして、もしかしたら商人か、それに類する職業のものなのかもしれない。
それと同時に、燃えるような明るい髪色をした三つ編みのポニーテールも印象的だ。
「あの、起きてくださいまし……!? ここは、お店ではありませんのよっ! 」
「ん……?ああ~?」
と、眠い眼をこすり、ライへと顔を向ける。その眼もきれいなルビー色。しかし、からっとした笑顔だが、まるで隠すかように深紅の眼を細める。
「ええっと……、誰?……お客さん? 」
「いえ、お客さんではないのは申し訳ないのですけれど、あなたが木箱に、突っ込まれていらしたので気になって……」
「……、え、そんなことに……?てか、頭が痛いぐわんぐわんする……」
「ならこれを。水筒がありますのでこちらをお飲みくださる……? 」
「ありがとう、んぐんぐんぐ……」と、豪快に飲み干す。
「多少は、楽になった……」
「よかったですわね、じゃ、わたしはこれで」
「まって! 」
そのライはその燃える髪色の女性につかまれる。
「商人たるもの、恵んでもらうだけで、こちらからも提供しないとは、名が廃る!というわけで、助けてもらったお礼にうちのお店でお返しするよ~」
「えっと……」
商人にしては思ったよりも握る力が強い。ライも、断ることもできず、まだ時間もありそうなのでついていくことにした。
「じゃあ、行こう~!……あっ! 」
「どうしましたの?」
「護衛用の斧、酒場に忘れた……連れてって~」




