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第4章 朝礼会議

 夜通しの練習にまぶたが重い。なのにそれでもこのことが楽しくて仕方がない。


朝日が差し込み目を細める。誰もいないはずの早朝の学校に僕は生徒管理室へと廊下を歩いていた。


「眠い……。」


軽くあくびをすると目から涙が出る。生徒管理生3名は朝、日程確認と生活状況、そして夜間授業のことについて話さなければいけない。1週間もたち、慣れてきたところだ。

 でもやっぱり夜間授業との掛け持ちだから疲れて眠いんだけどなぁ……。

 

「……――――っ!!!」


僕は1瞬の気配に全神経をとぎらせ、内ポケットにある物を取り出し彼に切り付けようとするがっ!


「ふっ……下ろしてくれないかな。雅也君?」

「それを言うなら悠夜会長も手を離してください。すごく痛いんですけど……。」


金髪に切れ目な蒼い瞳。端正で整っているその顔はいつも通りのにこやかな笑顔。

僕は悠夜会長の懐へとナイフを突き出したのに彼は僕の腕をぐっと止めていた。ッ痛い……。

 悠夜会長の恐いほどの笑顔はこの状況に似合わない。彼の場合ただでさえ顔が整っているのだから女子生徒がこの笑顔を見ればクラッとくるはずだ。でも今の僕は別の意味でクラッとしそうになった。

 あぁ、すごく痛い。腕の血管がどんどん欠陥になってしまう……だなんてシャレを言ってる場合じゃない!!

悠夜会長はまだ手を腕から離してくれない。


「反射神経良くなったね。初日に比べれば上出来だよ。専門武器はナイフにしたの?」


殺戮クラスの生徒全員には武器を所持することが許されている。夜の授業で『好きな武器を選べ』と様々な武器をB組の生徒に道化師が渡したのだ。


「えぇ。小型なので持ち運び自由で良いかと思ったんです。それより一回ぐらい切らせてもらえませんかね!」


 皮肉気に言って僕は無理矢理、腕を引き取る。 

この状況が毎日続くばかりで悠夜会長は完全に気配を断ち、近づいたところでわざと解いてくる。それが本当に甘く見られてるようでムカついてくる。


「ナイフか……。それは良いかもね。小回りが効くし制服にだって隠し持てる。便利なの選んだね。」


軽く話を変えられた。単にナイフは、みんなが別の武器……弓やら槍やら強そうなのばかり持っていかれ、売れ残り商品だった。

だが、こうやって持ってると良く分かる。使い易い。今のようにすぐ対応出来るのが利点だ。



ヒュンー……。


空気を切るような音。それは学校で聞くのに相応しくない音だと無性に僕は感じる。


「やれやれ。長距離の武器はあれほど校内で使わないでくれって言ったのに……。」

「悠夜会長?」


しょうがないと言いたげに目を細める悠夜会長は僕より1歩、2歩と前に出た。

 何があるかも分かんないのに悠夜会長、大丈夫かな~。

他人事だと思ってしまう自分はやっぱり緊張感が足りない。


その瞬間―……音を鳴らしている物体の音が最大になるように速く空気をさく。

何を思ったのか悠夜会長がいきよいよく手を前に出した。


「えっ……。悠夜会長!それ……。」


そしていつのまにか、その手の中にはいつの間にか矢が握られて……って矢!?


「校内であんま使わないでほしいな。」


ため息をついて言う悠夜会長。どこからこの矢!?そう思って僕は矢が来た方を見ると澄ました顔は無表情。彼が近づきながら口を開いた。


「おはようございます。悠夜会長。雅也君」


整えられた短い黒髪に黒ブチ眼鏡、無表情に近い冷たい顔。彼の手には弓矢が握られていた。錐吾先輩の専用武器は弓矢。けっこう古典的だな。


「おはようございます。錐吾先輩!」

「おはよう。錐吾君。矢……返すよ。」


そう言った悠夜会長は矢を持ち直しとかと思うと逆に錐吾先輩に向かって


ヒュ……。


 悠夜会長が手放したと同時に音がしたかと思うと、錐吾先輩が肌へと突き刺さるギリギリのところで矢を握っていた。その目は驚きを隠せない。人が弓を使わずに矢を投げて、あれほどのスピードがでるとは思えない。眼でさえ追いつけなかった物を錐吾先輩は止めている。

 いつのまに!?というかすごすぎですよ。悠夜会長も錐吾先輩も早くて見えなかった……。


「今度からは使わないでくれ。いつ一般生徒が見ているか分からないから……。」


口調は柔らかい。しかしその眼には口答えを許さないがごとく研ぎ澄まされているのか僕は恐怖を感じた。


「……すみませんでした。」

「分かればいんだよ。さぁ今日も話し合おう。」


管理室に着き、悠夜会長はその扉を開こうと鍵を取り出す。

学校の教室(内装は部屋に近いが……。)だと言うのに鍵は悠夜会長が所有化していて好きなときに入れると聞いている。そのうち悠夜会長が学校を管理する日も近いな。あれ?でももう管理してるんだっけ?


「はっきり言って失望しましたよ。」


錐吾先輩は僕へと冷たい視線を投げかけた。いやいきなりなんですか!?


「はっ?」

「あれはあなたに向かって放った矢。いわいる力試しです。それなのに音だけを認識しても、それに対する危機感は持たない。処理はしない。まっ、悠夜会長が出てきてしまったらしょうがありませんか……。」

「……すみません。」


力試し?それは管理生としてか。分析家としての性分か。確かに僕は安心しきっていた。学園1最強とうたわれてる悠夜会長がいるなら自分に危機が訪れる事がないって。もし悠夜会長がいなかったら自分で遠距離の殺気を見破れないと思う。だめだ。それそうとうに強くならないと。それそうとうに……殺されない程度に、ちょろっと~強くならないと。

 僕は小型ナイフを軽く握った。


「それでも僕はすごいと思うよ。反射神経も初日にくらべ良くなったし武器だって雅也君に会ってると思うしね。」


 いつのまにかこの会話が聞こえていたのか悠夜会長は扉を開けながら言葉をつなげた。

悠夜会長が言うとおり自分の武器を開花させるのは自分の専門武器と好みがあうかどうかだと道化師が言っていたことを思い出す。


「そうですか。僕はどうでもいいです。」

「錐吾君……じゃあなんで弓をうったの?」

「…………。」


錐吾先輩はそっぽを向いて管理室へと足を踏み入れる。

悠夜会長も入り、僕も室へと足を踏み入れた。

いつも通りの豪華すぎる教室。白で統一されている自分たちには似合わない。

 悠夜会長は雅也へと優しい微笑みを向けた。


「ところでどう?殺した気分は……。」


いきなり何を聞くのかと思えばそんなこと。

だからこそ僕は正直に答える。


「楽しくて仕方ありません。」



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