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第17章 一般生徒は影に生きる


悠夜会長に青柳 ユウの身を任せてほしいと言われ、早2時間。時計の針はティータイムの時間を刺していた。といっても、昼夜が逆なのだが。

悠夜会長は、眠そうなうっすらとした目つきで僕に視線を向けた。

隣に座らせてもらって身の程を感じる。この人の隣にいると眠気が覚める。


「僕らに資格があって一般生徒にはない資格。それが僕らに流れる血なんだ。」


そういって彼は細長い指先を僕に向け、首筋をゆっくりと撫でた。

こんな状況に陥ってる後輩に錐吾先輩は興味もなくその視線の先にいるソファーに眠る青柳 ユウに白い掛け物をしていた。

あのブランケット高そうだな・・・って、だめだ!自分の身は自分で守らなくては!

悠夜会長の手つきから自分の身が案じられ、とっさに会話をしようと頭を巡らせた。



「・・・・・血、ですか。」

「そう。僕に流れる血、錐吾君に流れる血、雅也君に流れる血、殺戮生徒に流れる血。それが僕ら殺人鬼の証。」

「僕にもその血が・・・?」

「そうだよ。君の家系に至っては分家だけど。」

「分家?」

「殺人鬼の直系の血を持つものは本家。その本家が一般人と身を混じらせできた子が分家の子だ。ようはどんどん殺人鬼としての血が薄まっていくわけだから世代を追うごとに才能や力量、要領が悪くなる。そしていつしかその意識さえも消えていった。でも血だ。血だけがその意識をなくさない。いつしか同じ血を持つもの同士が惹かれ合うようになった。そして出来たのがこの学園だ。」


僕の血に流れる殺人鬼の血。それは微量のものだけど、なんて事実だ。皮肉にももとからその血が僕に力を殺人鬼としての自覚を植え付けさせるのを容易にさせていたのか。あぁ、だから飲み込めたし、恐怖を覚えるどころか楽しくて仕方なかったのか。

悠夜会長は僕の首に触れるのをやめ、退屈そうに肘をついた。

そうか、彼は僕の首を、血管を意識してさわっていたのか。


「では、B組の生徒はほとんどがそういう生徒ってことですか。」

「そういうことになるね。そういう血が濃ければ濃いほどこの学園は学力問わずに歓迎するから。君の友人もその一人だよ。彼に至っては君より血は薄いみたいだけど。そういえば、ねぇ、錐吾君家も分家だよね?」


突然、会話に混ざるよう指示された錐吾先輩は無表情にも眉を怪訝そうにして眉の間には皺ができていた。


「えぇ。しがない分家ですよ。」

「そういっても分家の中では一級の家系なのに。」

「階級なんて無意味ですよ。すべては実力です。」

「そうだね。だから君は同じ階級であっても血が濃い前生徒管理生徒を打ち破った。」

「そんな昔の話はどうでもいいんですよ。とりあえず、彼女をどうするつもりですか。」

「結論を急ぎたいなんて短気は毒だよ。彼女はその血を持たないと診断された。だからA組に所属させられた。なのに才能が芽生えた。これはどうするかわかってるだろ。」

「なるほど・・・。」


「あのっどういうことですか!?」


僕は二人の会話が読み取れず、つい大きな声をあげた。

その僕の声にうんざりとしたように二人はため息をついた。

そうとう眠いだけに、いらいらさせたのが伝わってきた。


「彼女をB組に所属させます。道化師に順を追ってちゃんと説明はしますよ。ですがこれから彼女に待ち受けるのはつらい日々でしかありません。」

「そこは彼女に任せよう。彼女の人生を決めるのは彼女自身だ。」


「そういうことか。悠夜、俺にこの生徒の命を選択する余地があるわけだな。」



はっきりとした意志を感じる声に僕を含めて二人の先輩が道化師を凝視した。

悠夜会長に至ってははじめから分かっていたみたいだけど。

なんでこう、みんなして気配をけして入ってくるのがうまいんだ!?


「青柳 ユウ。お前にその素質があるか見極めてやる。」


「いいんですかっ、悠夜会長!?」

「大丈夫だよ。彼女の命は任せてほしいって言ったろ。」


悠夜会長の怖いぐらいの笑顔に僕は何も言えなくなった。

僕らの会話は置いて道化師がユウののど元に手刀を繰り出そうとした瞬間、寝ていた彼女は予想外の行動に出た。


「・・・・・・・・・・・っ。」


眠気眼とは思えないぐらいの動き。

彼女は道化師の手刀を瞬時に交わし、僕の胸ポケットから小型ナイフを抜き出し道化師の首元にあてていた。


「人は無意識な時ほど、実力を発揮するものだね。」


満足そうな悠夜会長の笑顔。

彼女の行動に驚き、まるで始めから分かっていたように口端をあげた道化師。

そして彼女は


「・・・・・あれ!?私、何を!」


まだまだ、彼女が自分の才能を理解するまで時間がかかるそうです。



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