第1章 後編 入学式は嵐と化す
学校について早々、軽く同じクラスの顔ぶれを確認するまもなく入学式があるからと体育館に向かって今に至る。
海斗とは同じクラスだが、名字順の出席番号のため結構遠くなってしまったが。
『生徒会長挨拶 悠夜会長お願いします。』
体育館にアナウンスの声が響く。入学式で生徒会長が挨拶するのか。
生徒会長らしき人物が舞台へと上がろうとした瞬間……体育館は嵐とかした。実際に荒らしが入ったとかそんなノリじゃない。それ以上のノリだ!
「「「「キャ〜!!悠夜会長!!」」」」
女子達の悲鳴というより歓喜の声は、まるでコンサート会場だ。
当の本人、悠夜会長はいかにも優秀そうな顔立ちであり、端正で整っている。金髪に切れ目な蒼い瞳。180センチはありそうな長身は身のこなしがゆるやかで、気品あふれる雰囲気。
僕にそっちの気はないが女子だったら1目見て惚れてしまいそうだ。
「みなさん。おはようございます。」
悠夜会長の優しそうな笑顔と凜とした第1声。なんだ?あの人が話しただけで周りが嘘みたいに静まりかえった。
「この度この刹陸学園にご入学いただき大変うれしく思います。この学園では、文武両道をモットーに日々生活し価値ある学園生活を送っていただきたいと思います。それ故に落ち着きのある行動と忍耐力をもち、この刹陸学園きっての好成績を収めてほしく思います。そして充実した学園生活を送ってほしいです。」
ありきたりな文面、言い方。なのにどうしてここまで惹きつけられるのだろうか。
挨拶が終わった会長はお辞儀をし、舞台から降りていくのだが、また女子の黄色い声がよりいっそう響く。さっきまでは2、3年の女子だけだったがプラスされて1年の女子まで混ざってそうだ。かくいう僕の隣にいる女子もかなり興奮している。
なんだか嵐、嵐の前の静けさ、嵐で最初から最後まで嵐だったような……。僕は会長だけは敵に回さないようにしよう、と心の底で誓った。
「それでは生徒管理生選抜においては学園側が決めさせていただきましたのでこの度、発表させていただきます。名前を呼ばれた生徒は舞台の上に上がりなさい。」
渋い声のアナウンスに眉をひそめる。気づけばこの声に周りが我に返ったように静かになった。変なところできっちりしてるな。
管理生?生徒を管理する生徒ってことか。
「3年では前年度に引き続き悠夜君にお願いしたいと思います。」
生徒会長か。確かに生徒管理するには模範的な人物がやらなくちゃいけないもんな……。
「2年では錐吾君。そして1年は雅也君。」
…………………僕!!!!あまりの真実にびくっとしてしまった。
いやいや!同名の誰かだってことを願うよ。
しかし、そんな期待とは裏腹に男の先生らしき人が不機嫌そうにやってきた。
「おい、雅也!早く行け!」
「……………はい。」
期待だなんて無意味か。
渋々、ステージ近くに移動すると、そこにはさっきまで嵐を吹き起こした悠夜会長と僕より頭一つ分大きい黒髪で黒ぶち眼鏡をしている男子生徒、錐吾先輩かな。冷静そうな雰囲気はどこか冷たいオーラを放っている。
「それじゃ3人ともステージへ。」
先生から言われステージに上がる。3年、2年、1年の順のため僕は最後だ。
悠夜会長が校長の目の前に立った。
「悠夜君は1年から管理生をやっていましたね。今年度もよろしくお願いしますね。」
1年からってことは3年までやり続けるのか?
それより悠夜会長の名前が呼ばれた瞬間の体育館の騒音は素晴らしい物だ。
「錐吾君は初めてですね。がんばってください」
別に1年から引き継いでやるって訳じゃないのか……安心した。にしても錐吾先輩の番になると辺りが一気に静かになるんだな。これが人気の差ってやつなのか!?
「雅也君は期待の星ですからね。みんなをひっぱってください。」
渡されたバッジは3センチぐらいで、キメ細かい装飾が施されている。
これが管理生の証か。初めて見る宝飾に魅入っていると、肩を強く押された。
「早く下りてください。」
う…あー……。
錐吾先輩が冷たい目で僕を見ていた。
「……すみません。」
先輩って恐いものだと中学時代から覚悟していたことだが錐吾先輩は別格だ。170センチはありそうな身長が見下ろす視線は光る蛇の目だ。舞台から降り、席に戻ろうとしたところで肩を捕まれた。
なんだ?
「雅也君。今から生徒会室においで……。」
振り返ると悠夜会長がニッコリ綺麗な顔で笑っていた。
もしかして!早くも下級生イジメですか!?
生徒管理生は学年委員長みたいなものです。
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