第14章 後編 生徒会室は恐ろしや
二宮先輩が地獄の扉を開け放った時、僕には真っ赤な世界が見えました。いや別に比喩だから。本当に赤い液体があったわけじゃないからね。そこ要注意!
「おいっ!?これって……。」
「二宮先輩?」
目を見開いた表情を確認したときドサッと二宮先輩が崩れ落ちるように膝をつき倒れた。
えっ?まさか……。
「…………っ!?」
二宮先輩の状態を確認するより早く腕を掴まれ中へと引っ張られた。
そこには金髪に切れ目な蒼い瞳、いつもの優しげな笑顔の悠夜会長と黒縁眼鏡に黒髪の錐吾先輩が僕のことを出迎えてくれた。そして僕の腕を掴んでいるのはあいまいな表情で顔を曇らせた海斗だ。
全く持ってこの状況、嬉しくない。
「雅也君。待ちわびてたよ。さぁ僕に資料をくれるかな?」
最初に口を開いたのは、堂々と奥にある生徒会長の椅子に座る悠夜会長だ。
だけど僕は目の前にいる女性が気になった。
「えっ……待ってください。これどうしたんですか。」
「これ……とは?」
「分かりませんか。僕の目の前に寝転がっている副会長のことですよ。」
錐吾先輩の前に倒れているのは僕が苦手な副会長。どっちの副会長も僕は苦手だけど。そんなこと今は関係ない。
「錐吾君は寝ていないけど?」
「ボケないでください。姫野先輩のことですよ。もしや貴方たち……ごうkっ!」
今……何か飛んだよ!?じわりと首元に熱を感じた。
「何だって?雅也君。」
「っなんでもないですよ!?僕はつねに豪華だなって思っただけです。この部屋!」
僕の首もとにかすったのは鉛筆。なぜそれが分かったのかというと後ろにある扉にガンッと刺さっている棒が鉛筆だったから。悠夜会長……そんな物を凶器として扱えるのは貴方だけですよ。
にしても僕のテンションが以上に上がってしまった。ちっ僕のキャラ設定にビビリが加わってしまうじゃないか。海斗が視線をそらすようにうつむき、僕の隣にきた。どうしたんだ?
「俺が来たときにはこうなってた。そしてこれは誰にも言ってはいけないって恐喝されたんだよ!」
いきなりテンション高くなった!?顔をあげ僕の腕を掴む海斗は本当に恐喝されたんだと物語っている。
「そっか。僕も恐喝されたよ。二宮先輩にさ。」
「その恐喝の方が良かったよ!俺なんて死ぬかと思ったんだよ?!」
「はぁ、悠夜会長は殺さないって。」
「そんなこと思ってるのは雅也だけだよ!」
はいはい、と海斗を軽く流して僕は悠夜会長にひとまず文化祭のしおりなる資料を渡した。
もう何も関わらずに僕は生きるぞ!これも見なかったことにしておこう。今日の記憶をすべて抹消。てか僕のこの高校生活もすべて抹消しないかな……。もう怖くて仕方がない。こうやって平然とした態度で接しているが内心もう冷や汗ものだ。今は亡き二宮先輩、貴方の予想は外れです。主犯は彼でしたよ。
悠夜会長は手をさしのべ資料を受け取ると思ったらガッと僕の腕をつかんだ。
「雅也君、ご苦労様。ちなみにこの状況は。」
「つっ……誰にも言いません。見ていません。それでいいですか?」
「分かってるんだね。立派だよ。」
これ以上ないくらいの笑顔を悠夜会長はして、錐吾先輩は小さくため息をついた気がした。海斗は僕の行動に頬をひくつかせ、困惑の表情を浮かべていた。
次の日に先生から軽い連絡が入った。
副会長が一部の記憶障害で入院したことが15秒で簡潔に耳に入った。
僕の苦手な副会長。さてどっちの副会長かな。決まってるか……。
「姫野先輩か……。」