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第14章 前編 日中の活動

学園祭まで後数日ー。

教室の端っこで僕はある人物と向かい席に座っていた。

ある人物とはー茶髪に藍色の瞳、今はもう夏のためブレザーなしのワイシャツに灰色のズボン、いわいるこの高校の夏の制服。裾を何回かまくり引き締まった腕を出しているのはその腕で弓を引く海斗だ。

僕はプリントを手に取った。


「このプリントとそっちのプリント、後その紙を持って行けば……。」

「やっと終わる!?」

「ああ……。」


放課後の教室。部活動のかけ声や演奏が廊下をつたって聞こえてくる。実行委員として休み時間だけじゃ間に合わず放課後もこうして残ることにした。3日後の文化祭に向け最後の実行委員がやることは、しおり作成だけとなった。後はコレを悠夜会長に届けるだけ。


「後3日か!!あっという間だったね!!」

「何もしてないくせによく言うね……。」

「ひでー!ちゃんと手伝ったじゃん!」

「たとえば?」

「えっ!?…………。」

「ないよね。」

「ほら!一緒に居てあげたじゃん!!雅也を1人孤独にしない俺の優しさ!!」


僕はウサギか!なんか根本的に違う気がするけど。まっいっか。これで実行委員のやることはもうない。晴れて自由の身だ。海斗の言葉を無視し教室から見える部活動に目をやると体操着姿の男子が走り込みをしていた。


「あれ!?陸上部だ!陸上部って何やんのかな~。」


海斗が外をのぞき込むように窓に食いつく。陸上部かぁ。陸上部って……。


「確か……そばの出前をやるとか聞いたけど。」

「なっなんでそば屋!?」

「出前=足の速さが一番な部活らしいよ。」

「たっ単純で明快な理由だね!俺も陸上部入りたかったな~。」


実は海斗は中学時代に陸上部に所属していた。僕は外の散歩を愛する帰宅部だが海斗の部活動人生はさぞ有意義だったのだろう。


「入ればいいよ。夜間授業と両立できる自信があるならね。」

「っ冗談だよ。さぁ行こう行こう!!悠夜会長のところだよな!ってことは生徒会室~。」


話をそらすように海斗がハイテンションで廊下へ飛び出す。僕も追いかけようと廊下へ出ようとしたが何かが気にかかった。


「って海斗、このプリントなしでどこに行くつもりなのかなぁ。」


机の上にプリントが残っていることに気がついた僕はこのプリントを持ち、海斗に追いつこうと走り出した。









さて生徒会室前にたどり着いた。だけど僕と海斗は生徒会室の扉の前で一歩足を進めることが出来ないでいた。


「なぁ海斗。誰が最初に扉を開けるかジャンケンしようか。」

「えっちょっと!ここは生徒管理生として雅也が行くんじゃないの!?」

「じゃあ管理生ぼくの権利で命令するよ。海斗が行け。」

「えぇ!?職権乱用で命令形ですか!俺だって行きたくないのに……。」


生徒会室からは女性の奇声やガチャンと何かが壊れる音がしているのだ。生徒会室ってそういうことありえるのかな。とりあえず僕も海斗も危険を察知しているらしい。


「分かったよ!行けばいいんでしょ。今度俺が生徒管理生になったら見てろよ!!」


海斗の負け犬の遠吠えを聞いてる余裕は僕にない。海斗が扉をそろーりと開けているところを横目に僕は生徒管理室前から見える校庭をのぞいた。

生徒管理室では何が起きてるんだろう。副会長のハイテンションの意気が超越して壊れてしまったのかなぁ。それとも女好きの二宮先輩がついに逆恨みされる時代が来たのかもしれない。いや市川先輩が武器片手に暴れてる……ってのもあるな。


「あれ……海斗?」


誰もいない廊下。しかもさっきまでいた海斗が消えている。考えてるうちに海斗は消えてしまったようだ。もしかして逃げた?でも逃げたなら気配で分かるんだけどな。

僕は疑わしい目で扉を見つめた。もしかして一人で入った!?いやいやそこまで海斗に勇気があんのかな。


ぎゃー!!


そしてまた新たな奇声が聞こえた。しかもその奇声は海斗の叫び声に似ている。


「いやいや、幻聴だよね。それにプリントは海斗が……そうだ、僕が持ってたんだ。」


うーん。どうしようかな……。絶対に入っちゃだめだ!と身体が拒絶反応起こしているんだよな。悪い……海斗。お前の勇気ある行動は忘れない!




「あれ?雅也じゃん。どうしたんだ?生徒会室になんか用があるのか?」



僕の前に現れたのは短い金髪に紫がかった瞳。さわやか系の笑顔を引き連れる3年の先輩ー二宮先輩が不思議そうにキョトンとしていた。僕は悠夜会長と唯一渡り合える人物ということで二宮先輩のことを重要視している。それにしてもいつもと違って女の先輩方がいない。


「僕は資料を届けに来たんですけど……。二宮先輩は何故ここに?」


そして何故いつもの彼女達が居ないのか。

僕の疑問を表情から読み取ったのか、二宮先輩はあぁ、と笑い僕の持つプリントを手にとった。


「あいつらは今、俺の寮室にいるよ。俺は姫ちゃんに至急、生徒会室くるように呼ばれたから来たんだけど……。」

「あのテンションが高い副会長ですか。」

「もしかして姫ちゃんが苦手か?雅也。」

「……別にそういうわけじゃないですけど海斗が2人いる感じがして。」

「なるほどね。だけどああいうのがいるからこそお前らは救われてるんじゃないのか?」

「えっ?」


そしてまた海斗の声に似ている奇声が聞こえた。しかも雅也~という情けない叫びとセットで。先輩を伺えば、ピクッと頬を緩め苦笑いになった。

うーん。今プリントは二宮先輩が持ってるし、このチャンスは逃せない。


「二宮先輩、それを悠夜会長にお願いします!」


僕は決死の覚悟で逃げようとしたが、二宮先輩がガシッと僕の右腕を掴んだ。


「ちょい待てぃ。雅也……海斗は親友だろ。親友をおいていくのか?」

「すみませんが……親友という名はアイスのように溶けきって見えなくなりました!」

「親友のあり方は確かに目には見えないものだけどさっ。悠夜会長に渡すんだろ?」

「そうですけどっ何か?」


僕と二宮先輩の間ではギリギリと廊下の地鳴りが聞こえるほどの争いが起きている。両者一歩も退かない。

二宮先輩の持つアメジストの瞳がキリッと僕を見据えた。


「俺が思うに悠夜はここにいない。」

「えっ?僕はだまされません。一人で入ってください。」

「悠夜がいるならこんな事態にはならない。いたとしたら悠夜がこの事態の主犯だぞ?」

「…………っ!」


そうだ。確かに悠夜会長がいたらこんな風に僕は生徒会室前で立ち往生などしない。もし悠夜会長が主犯ならBクラス生徒を集めて下級生イジメだよ!?笑顔で無理難題を押しつける悠夜会長を想像してしまい僕はあまりの恐ろしさに身をふるわせた。


「……分かりました。僕は逃げません。プリントを返してください。」

「おっ、分かったよ。ほら。」

「ありがとうございます。ではっ!」


離してくれていた手でまた腕を掴まれた。


「おいっ逃げるなよ!?」

「だから腕を放してください。逃げるんじゃないんです。生徒管理室に行くんですっ!ここには悠夜会長がいないんでしょう?ならここにいる理由がありませんから。」

「ここまで来たら一緒に行くしかないだろ。それにここで帰ったら悠夜に言いつけるぞ。先輩の話も聞けない反抗的な後輩だってな?」

「きょっ恐喝ですか!?酷いですよ……。二宮先輩。」

「そんな目で俺を見るな。ほら行くぞ。」


最終的に僕は腕を捕まれたまま生徒会へと入ることになってしまった。

二宮先輩、実はビビリかもしれないと思った瞬間だった。










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