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第7章 殺戮試験前は辛い

あなたは知っていますか?

ー僕は知りすぎて困っています



まだまだ続きそうな特訓。一般の殺戮生徒達は気配がないためもう帰ったんだろうな。

ただいま夜の授業真っ最中の居残り中。闇しかないこの世界で月さえでないとは僕に味方してくれる者は誰もいない。静かな校庭には炎の灯火さえ感じられないよ。


「実力試験は明日だぞ。それで勝てると思っているのか?管理生。一切りでいい。貴様が俺に対して一回でも傷さえ負わせればいいんだ。ただそれだけのことも貴様は出来ないのか?錐吾や悠夜の時はもっと早く出来ていたぞ!」


道化師の視線がよけい鋭くなる。特訓を開始してから3時間。体はボロボロだ。道化師は素手で隙を見ては技を繰り出す。さっきは脇腹に蹴りを避けきらずどうどうと真っ正面の思いを受け取ったところだ。

僕は重たい身体を起こしながら道化師に怒りの思いをぶつける。


「僕はあの2人のように出来た人間ではないんです。」

「管理生である限り、そのようなことをいっていいと思っているのか!」


疲れたよ。眠いよ………パトラっ。

道化師が僕の顔めがけて腕を振りおろ…‥ってやばい!!

僕はとっさに避け膝をついた。


「雑念……何を考えてる?」

「休みませんか?」

「ふざけるな!まったくどうしてこんな簡単な授業も出来ないんだ。俺を切ればいい!どこでも一筋の傷さえ付けられればいいんだぞ。そんなことも出来ないのか?」

「分かってますよ。そこまで言うのならそろそろ切られてくれませんかっ。」


ナイフを握り直し道化師へとナイフを振り下ろすがあっさり避けられる。

まだだ……まだ。足りない。それは速さか?力か?戦略か?

何回も何回も斬り込もうとするがやっぱり避けられてしまう。もう一度振り下ろすが!


「またか……。クッ!」


ガシッー手首をつかまれ体ごと地面へと投げ出される。


クラッ


身体が倒れる。弱い自分。この姿勢が一番ふさわしいかもな。


「なぜこんなにできが悪い。今年の生徒はレベルが低いのか。落胆させる。」

「きっと内申に手違いがあったんですよ。」

「それにその揚々とした態度も気にくわない。そこまで体が重傷なのに危機感を感じないのか?」

「どうでしょうね?僕はもとからこういう性格なんです。」

「……ッフン。黙っていればいいものを。弱い者が減らず口をたたく。」

「悠夜会長に頭が上がらない道化師には言われたくないです。」

「なんだとっ!?」


あっ怒った。でもここまできたらヤケだ。僕は本当に精神的に正しい行為が出来ないような気がするな……もとからか!というよりここにいる生徒はそういう奴ばっかか!!


僕は真っ正面から道化師と向かい合った。


「悠夜会長に生徒管理を全て一任。そのせいで悠夜会長は部活も出来ないんでしょう。生徒会長もやっているため時間もない。かわいそうです!」

「ふっ何を言い出すかと思えば……。それは当たり前のことだろう。悠夜の器量なら出来ることだ。」

「その当たり前ってなんなんですか。彼は神だと言われる。それは当たり前なんですか。」

「分からないのか?天賦の才能。悠夜は一般の者とは違う。あいつはいつか、裏の世界を牛耳る存在だ!」

「裏の世界……。」

「裏の世界では機関の統括で抹消する者、悪人を管理する者、この世界の均衡を崩す者と内通する者など様々な分野で分かれている。それら裏の全てを管理するトップの管理者に悠夜はなるのだ!そして乱れたこの世界を正す存在だ。」


そんな世界があるだなんて、まるでゲーム。そう僕はこのゲームを楽しんでる。想像できない気づかない。思いもしない現実を知らない。いったいどれほどの否定が存在しているのだろう?


「夢は大きいって大切ですよね。」

「ふっ何を言っている?だからこそ今のうちに媚びている者が多いんだろう。その世界では階級が決まっているからな。そこが表とは違う。中世の貴族階級にどこか似ているな。」


縛られるのか……僕はどうなるのだろう。


「僕も媚びていた方がいいですか?」

「自分の将来が安住でいたいならな。だいぶ一緒にいて分かってると思うが、あいつは反抗する者には痛めつけるタイプだからな。」


そうだった。恐い人、いや神の存在だってことに。

でもまだ見極めていない。悠夜会長にはまだ何かある気がしてならない。


「そうですよね。ではそろそろ道化師。」

「なんだ?やる気になったか?」

「賭です。道化師……。」

「こい!」


道化師が構える。右手に握っていたナイフを道化師に向かい投げる。それに対し専用武器を投げたことに驚きつつも避ける道化師。

僕の持ってる武器が一本だと知る道化師にとって僕の行為は負けを意味するが。










ザッー!









刃物の音。道化師の頬からは赤い液体が流れている。それを手ですくい赤い液体を確かめる道化師。


「フッフフフ、ハハッハハッハハハッッッハハアハハ!!!」


笑い続ける道化師に対し、投げたナイフをとり2つのナイフを見て安堵する。道化師……もしかして僕のように精神的に壊れたんじゃ……って思うほどのおおげさな笑い方。恐いです。

僕がしたこと。それは一本のナイフを至近距離で手放すことにより道化師の気を緩めさせ(なにぶん、僕が一本しかナイフを持っていないと思っている)僕がもう一つのナイフで切った……と。


「これで今日の特訓は終わりですよね……。僕は明日の実力試験のため帰りますよ。」



寮に帰るため足を踏み出す。うん。疲れた!膝はガクガクでやっとの事で歩けるぐらいだぞ。


「そのナイフ……どこで手に入れたんだ?確か貴様は一つしかないはずだが?」


笑いをこらえつつ僕の肩を持った。もしかして寮に送ってくれるのかな?道化師の肩を借りるしかないため体重をよりかからせる。


「それは悠夜会長からです。生徒管理室にあったナイフなんですが必要ないから持って行くように言われたんです。」

「そうか悠夜がか。きっと分かっていたんだろうな。明日のじー。」


その続きを僕は覚えていない。ただまぶたが重く全身から力が抜けた気がした。

明日と言うよりもう今日の夜に行われるだろう実力試験。僕はとりあえず動物的本能に従い現実逃避した。



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