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瑠璃色の少女  作者: 綾倉 涼花
1/3

再開は喫茶店で

二人の少女の所に新しい少女が来るお話です。

「おはよー芽衣ちゃん。朝だよー起きてー。」

 ベッドで寝ている芽衣ちゃんの肩を揺らしながら起こす。

「んん……。眠い……。あと5分……。」

「だめだから!そういってずるずるといつまでも寝てるんだから!だらだらしてるとまた遅刻しちゃうよ!」

「いいじゃん……。朝ぐらいゆっくり過ごそうよ。楓も一緒に寝よう~。」

 芽衣ちゃんの肩に触れていた手をグッと引っ張られる。

「え、ちょ、そんな強く引っ張らないで!あ、あー!」

急に強く腕を引っ張られたせいでベッドに凄い勢いでダイブしてしまった。予想外の出来事で加減が出来ずに突っ込んでしまった。

「いたた……。そんな強く引っ張らないでってば。」

「そんなこと言って。楓の手は正直じゃん。」

「え?」

手から何かやわらかい感触が……。これってもしかして。

「んんっ。そんな何回も揉まないでよ、恥ずかしいから。楓ったら朝から積極的だね……。」

 引っ張られた表紙に私の手は芽衣ちゃんの胸に触れていた。

「ご、ごめん!そんな気はなかったんだよ!ごめん……。」

「私が引っ張ったんだからそんな謝らなくていいのに。別に気にしてないよ。柚と一緒に寝て過ごしたかったけど、目覚めちゃったし起きるか~。」

 横になっていた体を起こしながら目覚めていく芽衣ちゃん。

「起きて起きて。朝ご飯もできてるから。洗面所で顔洗ってきな。」

「わかった……。ふぁぁ~、眠い……。」

芽衣ちゃんは目を擦りながら洗面所まで歩いて行った。物凄く眠そうだ。芽依は朝が苦手だからな。私は朝の空気が綺麗な感じとか、外の色味とか好きなんだけどな

朝って気持ちがしゃきっとする。よし、今日も一日頑張るぞ!って気合入るんだけどな。このおかげで芽依ちゃんのお世話が出来て楽しいんだけど。

 私と芽衣ちゃんにとって今日は少し特別な日でもある。だから気合がいつもより入っている。

 そう、今日は私達の家に一人住人が増える日なのだ。






「おーい。まだかー?」

「もうすぐじゃないかな~?まあまあ、気長に待とうよ。その内来るって。」

「そりゃその内来るだろうけどさー。はぁ、グダグダ言っても変わらないだろうしな。」

「そうそう。頑張って!」

 待ち合わせ場所の喫茶店でだらだらと待つこと二十分。芽衣ちゃんは待つことに飽きていた。元々じっとしていたり黙ってたりするのが苦手なタイプだから辛いのだろう。私は二人でダラーっとしてるこの空間は嫌いじゃないなぁ。

 でも、早く着いてくれると嬉しいかな。早く再開したいし。

「あ、楓ー!久しぶり~!待たせてごめんごめん~!」

「夕陽ちゃん!久しぶり~!会いたかったよー!」

 喫茶店に入ってきた夕陽ちゃんは私を見つけると駆け寄ってきた。

「いや~ごめんごめん。ちょっと迷ってしまって思ったより時間掛かっちゃった。」

「大丈夫だよ~!」

「えっと……初めまして~!大蔵夕陽と申します~!どうぞこれからよろしく!」

 夕陽ちゃんは私の幼馴染だけど、芽衣ちゃんとは面識がない。初対面だ。

「ん。よろしくー。私の名前は小鳥遊芽衣。好きに読んでくれて構わないから。」

 夕陽ちゃんとは打って変わり芽衣ちゃんは少し素っ気ない態度だ。

「それじゃ~……どうせだから芽衣って呼ばせてもらおうかな。よろしく、芽衣!」

「よろしく。」

「私の事も夕陽でええよ~!」

「ん。はいよ。夕陽ちゃんね。」

 夕陽ちゃんと芽衣ちゃんは初めましての握手をしていた。

「二人とも仲良くしてね~!」

「ん。」

「是非是非~!」

 何事もなく二人が仲良くなってくれると嬉しいな。芽衣ちゃんは少し心の扉を開くまで時間が掛かるタイプだからなぁ……。何か切っ掛けがあればすぐに仲良くなりそうなんだけど。

「さ、そろそろ行く?二人共結構待ってたんと違う?」

「え……いや……。」

 私的にはもう少しゆっくり喫茶店で過ごしてもいいんだけど、芽依ちゃんはどうなんだろう。大丈夫かな。とても機嫌が良さそうには見えないしな……。かといって悪いわけでもないし……。うーん……難しい。

「大丈夫だから。少し疲れてるんだろ?冷たい飲物でも頼んで少し休憩しなよ。今休憩しても家で休憩しても変わんないんだからさ。」

 口調と表情が少し硬いものの、発してる内容は優しいものだった。ちょっと意外かも。家に帰りたくて仕方が無いかと思ってた。

「じゃ、お言葉に甘えて一杯だけ冷たい物飲ませてもらおうかな~。おおきにおおきに。店員さんアイスカフェオレ一つお願いしますー!」

 カウンターから「はーい!」と店員さんの大きな声が聞こえてくる。夕陽ちゃんの声って凄い……。通る声っていうやつなのかな?引っ張ればどこまでも伸びそうな声をしている。歌とか歌うのに向いてそう……。歌の事はよくわからないけど。

「はい、アイスカフェオレ一つお持ちしました~。」

 グラスに白から茶色にグラデーション状になったアイスカフェオレがテーブルに運ばれてくる。凄く美味しそうな色合いだ。

「あ、どうもどうもー。すんません~。」

 夕陽ちゃんはアイスカフェオレを届けに来た店員さんにペコリと頭を下げていた。

「わー、アイスカフェオレだ~!おしゃれだね~!」

「え、そうかな?喫茶店の飲み物だったら定番じゃないんかな~?よく飲むんよねー。」

 アイスカフェオレって少しオシャレな感じがするんだけどな。私がそういうのに詳しくないからかなー。

「私喫茶店に入る事すらあんまりないからなー。飲み物もほとんどお茶かなー。」

「あー、確かにお茶すきそうやねー。私もお茶は好きやけど。芽衣は何頼んではんのー?」

「わたしー?何かアーモンドラテとかいう凄くオシャレそうなもの頼んでみた。」

 芽衣ちゃんは自分の飲んでるグラスを前に出し見せびらかしていた。芽衣ちゃんが頼んだアーモンドラテは飲み物の上に生クリームかアイスクリームみたいなのが乗っていて凄く美味しそうだった。

 私の感覚では飲み物の域を超えてるような感じすらする……。デザートの一種なのでは?

「めっちゃオシャレなもん頼んではりますやん!全然うちのアイスカフェオレよりオシャレやで楓!」


「私からしたらどっちも凄くオシャレだよー?夕陽ちゃんからみてもアーモンドラテはオシャレなの?」

「オシャレやね~!自分では頼んだ事も無いな~!いや~!芽依は目の付け所がシャープやな!」

 アーモンドラテは夕陽ちゃんから見てもオシャレな飲み物なんだ!さっき芽衣ちゃんが注文してた時は確かに驚いちゃったな~。

「シャープ……?」

 あまり聞かない言い回しに困惑の表情を浮かべる芽衣ちゃん。

「良い所に目を付けるねって事やで!」

「あぁ、なるほど。」

 芽衣ちゃんは納得?していた。

 夕陽ちゃんは凄いなー。自分のペースで話すことが出来てる。私が思ってるより芽衣ちゃんと夕陽ちゃんは相性いいのかな。

「そういえば二人は飲み物以外に頼まんで大丈夫?私がお代出すから気にせんでええよ。」

「えー?それは流石に悪いよ……。」

「じゃあ私はストロベリーパフェでも頼もうかな。夕陽の奢りで。」

 遠慮を一切せず凄く美味しそうなストロベリーパフェを注文しようとする芽衣ちゃん。

「芽衣ちゃん?!」

「あははー!全然ええよええよ!迷子になって必要以上に待たせちゃった訳やからね。それぐらいさせてーな。楓も気にせず頼み頼み。」

 夕陽ちゃんは芽衣の行動に一切驚くことなくまったく気にしてない様子だった。

「えええ……。」

 待たされたって言ってもそんなに長く待っていた訳でもないのに……。奢りなんていいのかな。


「せっかくだし楓も頼めば?さっきメニュー見て食べたそうにしてたじゃん。」

 芽衣ちゃんの発言によりさっき二人でメニューを見て「食べてみたいねー。」と言っていたことをバラされて顔が少し赤くなってくる。


「えー?!そうなんやー?!どれどれ?どれ食べたい言うてたん?」

 テーブルに肘をつき体を対面にいる私達の方へグッと近付けメニューを覗き込んでくる。


「えっとねー、ガトーショコラのチョコバナナパフェってやつだったかな。あってるよね?」

「う、うん……。」

 芽衣ちゃんは私が食べたいって言ってたメニューを指で指し夕陽ちゃんに教える。

「店員さーん!すいません、注文良いですかー?」

 私達の食べたかったものを知った夕陽ちゃんはすぐに店員さんを呼び、笑顔で注文を始めた。

「はーい、少々お待ちくださいー!」

「えっとー、ストロベリーパフェ一つとがガトーショコラのチョコバナナパフェ一つ。それとー私はどうしよっかなー。宇治抹茶づくしパフェで!」

 躊躇なくされていく注文。

「承知しましたー。少々お待ちくださいー!」

「はーい。」

 終始笑顔の夕陽ちゃん。

「夕陽ちゃん本当に良かったの?結構高かったよ?別に奢りじゃなくても私と芽衣ちゃんは大丈夫だよ?ね、芽衣ちゃん?」

 私が芽衣ちゃんの方を見ると視線を逸らす芽衣ちゃん。

「芽衣ちゃん……?」

「……。」

 そっぽを向き続ける芽衣ちゃん。

「もしかして全然お金払う気ない……?」

 そっぽを向きつつコクコクと頷く芽衣ちゃん。

「芽衣ちゃん……。」

 ちょっと怒った感じを醸し出しつつ芽衣ちゃんに話しかけてみたが一向に視線を戻してくれない。

「あははー!全然大丈夫やで。気にせんといてーな。流石に今日だけやから、ええよええよ。二人が喜んでくれるなら奢り甲斐があるってもんよ。」

 こちらの事はまったく気にせずといった感じで笑う夕陽ちゃん。

 ここは夕陽ちゃんの言葉に甘えておいた方がいいのかな。

「いやー、話が分かるね夕陽は!良かった良かった!人のお金で食べる美味いもんほど美味しものは中々ないからね!これから夕陽とは仲良くなってけそうかも!」

 夕陽ちゃんの言葉を聞いた途端、逸らしていた視線を戻し夕陽ちゃんの方を見ながら手を握り始める芽衣ちゃん。

「あははー。よろしくよろしくー。中々に愉快な人で助かったわ~。」

「ありがとね夕陽ちゃん。」

「うんうん。」

 話していると店員さんが三人分のパフェを運んできた。

「お待たせしましたー!こちらがストベリーパフェとガトーショコラのチョコバナナパフェ一つと、宇治抹茶づくしパフェになりまーす。」

 三人の目の前へとパフェが置かれていく。

「美味しそうだね?!」

 メニューに載っていた見た目と同じだ!お洒落で美味しそうでなんて凄いんだろう!

 パフェの器の下の方からラスク、生クリーム、チョコアイス、バナナ、バニラアイス、ガトーショコラがバランスよく配置されていて。パフェの上にはチョコレートの棒状の物が四本刺さっていて、その横にバナナが添えられていて、半円上のバニラアイスが乗っかっており、その上から贅沢にチョコレートソースが掛けられていた。

 芽衣ちゃんのおかげでこんなに美味しそうなパフェが食べられるのは、めちゃくちゃ良かったかも……。

 いやいや、一番感謝しなくちゃいけないのは夕陽ちゃんだ。お金を出してくれる張本人なんだから。

 うわ~……本当に凄いな……。食べる前からパフェに圧巻されている……。

「これは確かに凄いかも……。パフェなんて初めて頼んだけど、よく頼んでいる人たちの気持ちが少し分かった気がする……。」

 芽衣ちゃんが頼んだイチゴパフェは見た目こそシンプルな作りに見えるものの、美しさはピカ一だった。

 いちごのゼリーとクレームブリュレ、ホイップクリーム、カラメルソース、いちご、いちごアイスがグラスの半分より少し上まで配置されていて、その上にはなんと贅沢に丸々のイチゴと生クリームが円錐形になるように並べられており一番上にはチョコレートが刺さっていた。

 私のチョコパフェからはパワーの様な物を感じたけど、芽衣ちゃんが頼んだイチゴパフェからは芸術性のようなものが感じられた。

 パフェ恐るべし……。

「美味しそうやな~!」

 夕陽ちゃんの宇治抹茶づくしパフェは名前の通り抹茶づくしって見てわかる様な感じになっていた。

 抹茶アイス、抹茶プリン、バニラアイス、抹茶カステラ、白玉、抹茶クッキー、宇治抹茶生チョコレートが下からバランスよく積み重ねられており、上部には半円状のバニラアイスと抹茶アイスが乗っておりその上から抹茶パウダーの様な物が掛かっていて、横に抹茶オレオのようなものが添えられていた。

 正直凄いの一言しか言葉が出てこなかった。三種三様に美しさがありそれぞれの特徴が抜きんでていた。

 この抹茶パフェには豪華絢爛という言葉がピッタリだった。名前の通り抹茶を使い尽くした!って伝わってくる。抹茶好きの人にはたまらないんだろうな。


「あ、忘れてた忘れてた……。頂きます!」

 食べる前にちゃんと手を合わせ挨拶をする。

「頂きまーす。」

「頂きます!」

 私の後から二人も手を合わし挨拶を終わらし、スプーンを手に取りパフェへと手を伸ばす。

 まずは一口運び込む。

「美味しー!これ凄く美味しいよ?!美味しい……。うぅ……美味しい……。」

 衝撃的な美味しさに何故か涙が少し溢れてきた。

「な!これ凄く美味しいよな!こんな食べ物が世の中にあるなんてなー!っていうか何で楓は泣いてんの……?」

 美味しいパフェに感動しつつも、泣いてる私を芽衣は不思議な目で見てくる。

「美味しすぎてびっくりしちゃった……。凄く美味しいよ芽衣ちゃん……。」

「そうかそうか。まぁ、滅多に食わないからな!落ち着いて食えよ!」

 私の頭をポンポンと撫でてから、自分のパフェを食べる事に戻る芽衣ちゃん。

「あははー!楓は相変わらず面白いなー!そんなリアクションしてくれたら奢り甲斐があるわー!中々嬉しいでー!」

 私の事を見ながら大きな声で大喜びする夕陽ちゃん。

「すごく幸せ……。美味しい……。」

 パクパクと口へパフェを運んでいく。

「あ!」

 思いだしたように大きな声を出す。

「どしたん?」

 私の奇声に驚き、二人の動きは止まり視線が私の方へと向いてくる。

「ねえねえ!せっかくこんなに美味しいのにさ、滅多に食べないじゃん?!だから皆のパフェ一口ずつ食べ合いっこしないかな?!お願い!」

 こんな機会がまたあるか分からないと思った私は二人に頭を下げお願いをする。私のパフェもうっとりするほど美味しいけど、二人のパフェも凄く美味しそうだった。凄く食べてみたかった。一口でもいいから……。

「私は別にいいよー。二人のパフェも凄く美味しそうだし。」

「ええよええよー!」

 心の中でガッツポーズをする。

「ありがとー!!嬉しい!二人とも好き!」

「あははー!」

「大袈裟すぎ……。」

 笑う夕陽ちゃんと引く芽衣ちゃん。

「ほな、はい。楓、あーん。」

「ええ……。」

 芽衣ちゃんはスプーンでパフェを一すくいして私に食べさそうとしてくる。

「食べへんの?」

「食べる……。」

 関節キスにならないかな……。少しドキドキした。

「口開けてー。はい、あーん!」

「あーん。美味しい!凄く美味しいよ夕陽ちゃん!」

 食べさせて貰うのは少し恥ずかしかったけど、抹茶パフェもめちゃくちゃ美味しかった。

「それは良かった良かった!」

 私が美味しかった事を伝えると満足気に微笑んでくれる。

 夕陽ちゃんが喜んでくれて私も心の中に喜びが沸いてくる。

「次は芽衣やな!はい、あーん!」

 笑顔でパフェを一口芽衣ちゃんに食べさせようとする。

「ん。あーん。」

 躊躇なく食べさせて貰う芽衣ちゃん。

 芽衣ちゃんは恥ずかしかったりしないのかな……。全然戸惑いとか感じなかった。私が変に意識しすぎなのかも。

「芽衣はどう?美味しい?」

 快い感じにニコニコした表情で芽衣ちゃんに聞く夕陽ちゃん。

「んー。」

 真剣な表情をしながらモグモグと口を動かしながらパフェを味わっている。


「これは美味しいな!抹茶って普段食べないからどんな感じかなって思ってたけど、これは美味い!抹茶アイスとクッキーみたいなのが凄く合うなこれ!」

 細めていた目をパッと開き、嬉しそうに顔を輝かせ息を弾ませている。


「あははー!良かった良かった!そんなに喜んでくれるならもう一口ずつあげよかー?」

 夕陽ちゃんは満面の笑みを浮かべながら聞いてくる。


「え?いいのかー?!」

 目をキラキラとさせて体を前のめりにする芽衣ちゃん。

「うん。ええよええよ!」

「あーん。」

 ニコニコしながら口を開けて食べさせてくれるのを待機している。

 芽衣ちゃんがこんな態度を取るのって珍しいな……。私との時はよくある光景ではあるけど、初対面の人にここまで心を開いているのは意外だなぁ……。二人が仲良くなってくれるのは凄く嬉しい事ではあるけど、全力で喜べない自分がいるのを感じて少し嫌な気持ちになる。


「あはは。気いはやいなー。ちょっと待ってなー。」

 夕陽ちゃんは急ぎながらも器用に、スプーンの中に小さいパフェの様な物を作っていく。


「はい。お待ちどーさん。ほいっと。」

「んー!美味しい!夕陽は天才かー?!」

「あはははは。褒めても何にもでーへんよ!」

「いやー本当に美味しいよ。ありがとありがと。」

「それはどういたしましてやな!」


 微笑ましいやり取りをする二人。


「ほら、楓にもあげるで!口開けーや!」

 もう一度スプーンの上に小さいパフェを作り私の口へと持ってくる。


「あーん。」

「素直素直!美味しい?」

 にんまりとした笑顔で聞いてくる。

「美味しいよ!すっごく美味しい!」

 全力で美味しかったことを伝える。

「あははー!良かった!」

 満足気な夕陽ちゃん。


「次は私のストロベリーパフェ食べさせてあげるよー!」

 芽衣ちゃんは夕陽ちゃんみたいにパフェの具を少しずつ取るわけではなく、ダイレクトにスプーン大匙一口分をすくい上げた。

「はい!夕陽!口開けてー!」

 芽衣ちゃんがスプーンを向けた先は夕陽ちゃんだった。

 夕陽ちゃんが最初にパフェを食べさせてあげてたから、普通の事なのかもしれない。

 でも、私はその当たり前かもしれない光景に少し複雑な感情を覚えた。

 二人が仲良くなってくれるのは勿論嬉しい。

 それでも、この光景を見ていると、今まで芽衣ちゃんの一番は私だったのにって自分の居場所がを奪われたような気持ちになってくる。

 妹や弟が生まれたばかりの上の子じゃないんだから……。

 芽衣ちゃんの行動にそれほど深い理由は多分ないだろう。

 いや、だからなのかな。その行動が自然に行われていることに対して寂しい気持ちを感じているのかな。

 考えすぎかな。二人とも私の大事で大好きな友達なんだから。一番とか二番とかないよね。


「あーん。」

「良い子良い子!上手に食べれたなー!」

「何でそんな子供扱いなん……?」

「夕陽もこんな感じだったぞー?」

「せやったっけ……?あはは。もう忘れてもうたわ。」


「おいおい、そんな寂しそうな顔するなよ。勿論楓にも食べさせてやるから!はいよっ!」

 そんなに寂しそうな表情をしてたのかな。ネガティブな事は考えないようにしなくちゃ。

「あーん!」

 精一杯の元気を振り絞り笑顔で食べさせてもらう。

「楓ーどうだー?私のストロベリーパフェは美味しいかー?!美味しいよな?!」

「いや、圧すごっ!?そんなん言われたら美味しくない時に応えづらいやろ!」

「だってさー、美味しくない訳ないと思うんだよな!」


「えへへ。勿論美味しいよ!抹茶のとも、私のチョコのやつとも全然違う感じで美味しい!イチゴ感が凄いよ!」

「だよなー?!いやー、パフェって凄いんだなー!見た目も派手なんだけど、味もそれ相応っていうかさ!見た目も味もすげーんだよ!こりゃ美味しいな!」

 私の方にいつも通りに笑顔を見せてくれる芽衣ちゃんを見て心が落ち着く。

 芽衣ちゃんは何も変わってない。いつも通りなんだ。私が小さい事を気にしすぎてただけかな。

 心を切り替えようとする。


「ねー!これはまた食べにきたくなる美味しさだよ!私と芽衣ちゃんは食べた事なかったけど、夕陽ちゃんは食べたことあったのー?」

「うん。あったよー。普段からそんなに食べてたわけではないけどね。外食に連れて行ってもらった時とか、何かあった時ぐらいかなー?」

「そうなんだなー。羨ましい限りだな!なあなあ、楓のパフェも食べさせてくれよ!」

「いいよ!ちょっと待ってね!」

 夕陽ちゃんを見習ってバランスよく色々な部分をスプーンですくっていく。最後に上手にバナナを上にのせてっと。

「はい。芽衣ちゃん、あーん。」

「あーん!」

 私がスプーンを芽衣ちゃんの口に近づけようとすると向こうから勢いよく飛びついてきた。

「ちょっと危ないよ?!そんな急がなくても食べれるんだから。もー、芽衣ちゃんは仕方ないなー。」

「ごめんごめん。つい美味しそうだったからさ!んん……?」

 勢いよく飛びついてきた拍子に付いてしまった生クリームを拭いてあげる。

「子供じゃないんだから。はいっ、拭けたよ。」

「いや~面目ない面目ない。」

 ニコっと笑いながら両手を合わせて軽く謝ってくる。

「二人とも仲良くてええな!二人は付き合い長いん?」

「んー?付き合いか?まぁ長いんじゃないか?」

「そうだねー。結構長めだと思うよ。はいっ、夕陽ちゃんも私のパフェ上げる~!」

「あはは。ありがと~!んんー!これは美味しいな!ここの喫茶店は当たりみたいやな!どれも美味しいで!」

 夕陽ちゃんの中でここの喫茶店の評価は爆上がりみたいだった。


「なー!」

「歴だけで言うと二人とも同じぐらいなのかな?ちょうど一緒に居た時期がずれてるんだよねー。でも、また会えて本当に良かったよ~!」

「あはは。ありがとありがと。私も楓と会えて嬉しいで!夕陽も良い人そうで良かったわー!」

「私も家に新しい人が来るって聞いてたからさー、どんな奴かと思ってたけど良い奴みたいだな!まぁ、楓の知り合いだからわるい人でない事は薄々分かってたけどな。」

「それは私も思ってたで~!類は友を呼ぶっていうやつ?」

「それな!」

 二人は波長が合うみたいで息が合っていた。

 友達と友達が合う時って少し緊張するよね。もし上手く行かなかったらどうしようとかって。二人共大事な友達だから本当に良かった。

「二人が仲良くできそうで本当に良かったよ~!」

「せやな!」

「まあね。」

 二人とも私の方を見ながら人懐っこい笑顔を見せてくれる。


私はパフェを食べた事がないので美味しいパフェを一度食べてみたいです。

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