短編集 雨ものがたり① 「雨」
雨
宇海 巴
雨降りの夜、結局カナミは僕の部屋に泊まった。
「私ね、雨が好きなの」
なんで?と聞いてほしいのだろうから、聞いた。
「みんな雨だと外に行かないでしょ?」
なるほど、なかでみんなで遊べるからとか言うんだろ。
「だから雨の日だけは街を独り占めできるじゃない。だから好きなの、雨」
これは予想外。
「外で一人でなにしたいの?」
聞くと彼女は少し困ったような顔をして
「言っちゃうと独り占めした意味がないでしょう」
と答えた。土砂降りの雨が窓に打ち付けられていた。