6話:のーしすたー、のーらいふ
「おねーちゃま、ご本よんで」
「お?」
ひとしきり一時接触とかを堪能(おそらくきっとお互いに……そうだよね? そうだといいな)し、「おねえちゃまがげんきそうでよかった」「ミアの顔を見たら元氣も元氣、死にかけてても生き返っちゃう」「しんじゃだめぇー」……的なやりとりを何度かして、そんなくすぐったさも少し落ち着いた頃、ミアが私にこう言いました。
「お話きかせてほしいの」
ミアは現在八歳。日本で言えば小学二年生か三年生の時期。
身長もおそらく、一メートル十センチ前後はある。
それにしては言動が、行動が、少し幼いと思うこともある。
でもいいの、可愛いから。かわいいいず正義、おーらぃ?
「ミア様、ティナ様は今お休みになられていま」「おっけーおっけー、サーリャ、どこも悪くないのに病人扱いしない」「しかしお嬢さ」「おめでたいことなんでしょ? だったら幸せ氣分に浸らせてよ」
この日がいい思い出となるように。
そういうとサーリャはぐっと言葉に詰まった。
サーリャはこういういいセリフ風の言葉に弱いんだよね。いや冷静に考えると全然いいセリフじゃないんだけどさ。
「わかりました、ですが書斎の古い本や、重い本はダメですよ。喉が渇くといけないので、何か温かいものを用意しますね」
お体に障りますから。
はいはい、わかったわかった、過保護過保護。
そんなわけで、私の部屋の本棚から適当なご本が選ばれました。
運んできてくれたサーリャさんは、私の腕の中でわっくわっくしてるミアさんを見てほっこりした顔をしてますよ。この空間にいる人、みんな幸せそうでなにより。まぁサーリャはすぐに「お飲み物を」ということで一時退室しましたが。
「呪いの女王と、ここのつの光」
これはとても有名な童話。
人間がエルフを、魔法を、人間社会から排斥するきっかけとなった事案……四百年前、実際に起きた出来事を寓話化したお話。
「わーい」
それはそれとしてミア、くすぐったいから胸のところで後頭部を動かすのやめて。
うひゃん。
「むかしむかし、エルフの女王は人間に呪いをかけました……って、こーら」
「にゅ……んひゅ?」
動きが止まらそうな子は、こうだっ!……左手でミアのおなかぽんぽんホールド。ハイムリック法じゃないよー。片手で優しく抱いてあげてるだけだよー。
「んー!?……みゅ?……ふに。えへへ~」
なにこの可愛い生き物ー(二回目)。
「するとどうしたことでしょうか、人は夜になると、男性は狼に、女性は蛇へと変化するいきものになってしまったのです」
「へびー?」
「そうだよー。うねうねーってしてて、ニョロニョロ~って動く、こわ~い生き物なんだよー」
「ひゅ……」
これはアドリブ。ご本には書いてないよー。
「これに立ち上がったのが九星の騎士団なのです」
「わぁい」
「うんその感嘆はやめようね。なぜだかは覚えていないけど」
お話は朗々と続きます。
九星の騎士団は人々の呪いを解くため、エルフの女王とその戦士達へ、戦いを挑むことになりました。
九星の騎士団は九つの光に導かれた九人の騎士団。
いずれも勇猛無双な一騎当千の騎士ばかり。
紅玉の騎士、カイズ。この世全ての悪を斬る騎士団長。
月長石の騎士、リルクヘリム。その怪力は空間をも捻じ曲げる副団長。
珊瑚の騎士、アムン。その血を聖水に変え魔を滅ぼす聖騎士。
翠玉の騎士、オズ。体躯の何倍もの重量の斧を操る戦士。
黄蘗鋼玉の騎士、アイア。隻眼隻腕だが槍と弓を極めし東国武士。
金剛石の女騎士、ルカ。水神に祝福されし流体機動の聖女。
碧玉の騎士、エンケラウ。愛馬ユミファと共に天を翔ける闘士。
灰礬石榴石の騎士、パザス。鬼謀策謀を縦横無尽に操る参謀軍師。
猫睛石の騎士、ティア。氣を読み氣を操ったとされる武道家。
「きゃっつあいの騎士様?、おねえちゃまに名前がにてるー」
「そうだねー。こいつ時々女言葉で喋るおねぇっぽいキャラだけどねー」
「おねえちゃま?」
「ううんちがうよー、おねぇっぽいー」
「んゅゅ?」
それへ立ち塞がるは、女王が従えるエルフの魔法部隊。
副団長リルクヘリムが相対せしは無敵の結界に守られた魔術士。
いかなる剣も槍も弓も弾き返す鉄壁の守り手。
リルクヘリムはその怪力で空間を割って、この結界を崩壊させたのです。
中略。
聖女ルカが相対せしは炎の魔術士。
万の軍勢を一瞬で溶かしたとされる炎術の使い手。
ルカはその身に水の衣を纏って、襲い来る焔の乱舞をかいくぐり、これに勝利します。
中略。
武道家ティアが相対せしは風の魔術士。
万の軍勢を竜巻に飲み込ませた風術の使い手。
「万の軍勢がゴミのようだ!」
「ふゅ……」
ティアは操られた大氣の流れを全て読み、こともなげに魔術士に近づいてその美脚(朗読者註:こいつ男)を一閃。これに勝利します。
中略。
「中略が多いのは書くのが面倒……もとい、読むのが面倒なんじゃないからねー」
「んゅ?」
やがて全ての魔術士は倒れ、女王を残すのみとなりました。
しかし女王は、どこからか一匹の大蛇を呼び寄せると、こう言いました。
騎士団の長、カイズよ!
そなたの婚約者はこうして昼も夜も蛇たる存在と成り果てた!
この呪いは人の呪いとは違い、我が生ある内でなければ解けぬ!
我が憎いのであれば、その剣で我を刺すが良い!
だがそれをすればそなたの婚約者は蛇のまま永遠に地を這う存在と成り果てる!
どうする! 我を殺すか! 想い人のため人を裏切るか!
「てか、女王は、その蛇、大蛇が騎士団長の婚約者で、自分が生きてないと呪いが解けないって、どうやって信じさせたんだろう」
「ちあうのー?」
「いや物語的には違わないんだろうけど、童話のあら探し楽しいな、みたいな。きびだんごひとつで命をかけてくれる仲間はどこにいますか、的な」
「きぃだんごー?」
「いえなんでもないです。その無垢な瞳はヤメテクダサイヨゴレタココロニイタイ」
これに声をあげたのが聖女ルカでした。
私は水神の巫女、全ては移ろい、全ては変わってしまうのです。
蛇は水神の使途、水が流れるように地を這い、脱皮により自己変革を遂げる水神の愛し子。
カイズを愛し、愛される人よ。私の身体をひと呑みにするのです。
この身体を差し上げましょう。水神の巫女の身躯を、水神の使徒へと譲り渡しましょう。
貴女はこの身体に、己を取り戻すのです。
「ちなみにこの聖女、団長に横恋慕してたってのが通説」
「ティナ様、それは俗説です」
おっと、ワゴンを押してサーリャが戻ってきました。
ワゴンには様々なものが乗せられてますね。サーリャがてきぱきとそれらを操ると、お部屋へいい匂いがふんわりと揺蕩いました。
「ココア、しょうが湯、カモミールティー、お好きなものをどうぞ」
「ん、じゃあココアで。ミアもそれでいい?」
「んゅー」
ココアは、この世界だと結構お高い飲み物です。カカオ豆が南方からの輸入品なので、チョコレートもそうですがお高くなってしまうのです。
なので、これはハレの日の記念に飲むようなモノのハズですが、今日ってなんかいい日でしたっけ。私はミアをこの腕に抱いていれば、いつだっていい日ですが。えへへ。
「んー。自分がココア飲んで幸せーって思うなんて、想像もしなかったな~」
「まぁ。ティナ様はもっと高級なものに触れてもいいと思いますよ?」
「そういう意味じゃないんだけどねー」
ひげを作るミアの口元を拭いてあげて、さあさお話の続き続き。
「エルフの女王に呪いをかけられ、理性をなくしていた大蛇は、聖女の身体をひと呑みにしようとルカへ襲い掛かりました」
しかし、エルフの女王がこれを止めます。
あらゆる悪意の顕れに、七色に光るという女王の瞳。
それが、唐突に紅へ染まったかと思うと、大蛇はピクリとも動けなくなってしまったのです。
ええい、かくも忌々しきは人間どもかな。かくなる上は、我自身が破壊神となりてこの世界を滅ぼしてくれようぞ。
すると、聖女へ襲いかからんと、鎌をもたげたまま固まっていた大蛇の身体が、急激に膨れあがっていきます。
すわ元の姿を取り戻してくれるのかと、騎士団の誰もが期待したのも束の間、その体積は人のそれを超えてゆき、森の木々よりも大きくなっていったのです。
やがて、変容と変質が停止して、沢山の巨木が薙ぎ倒された森の中にあったのは、とても大きい、とても邪悪な、その全身を血の色で覆う、一匹の赤い竜でした。
その背には、エルフの女王がいつのまにやら騎乗していました。
「いちゅのまに!」
「主人公の心のよりどころがラスボスにのっとられる! これもある種の王道展開!」
「おーどーてんかぃ?」
あ、物語の絶対数が少ないこの世界だとそういう概念は無いのでした。
フラグという概念も、だから無いよ。あの辺は日本並に創作業界が活発にならないとね。小説投稿サイトを開設し発展させる系内政チートは、だからスキマ産業かブルーオーシャン狙いで(インターネッツの代わりをどうするか問題はさておき)できるかもしれないけど、勿論やりませんよええ。
「氣にしない氣にしない。あ、しょうが湯ももらえる?」
「はい」
飛べ竜よ! 地を這う人間どもを超越せよ!
行け竜よ! 我に逆らう人間どもを燃やし尽くすのだ!
吼えろ竜よ! 我が怒り! 我が憎しみを! 業火の迸りへと顕現せしめるのだ! この世に地獄を創出せよ!!
女王の叫びに応じて、竜が天へと咆哮すると、その口元に邪悪な光が集まっていきます。
「ごーじ●、●ーじら、ごー●ら」
「ごーじあ? おーじら? ごーいら?」
総員! 散開せよ!
騎士団長カイズの叫びに、鎌をもたげていた竜がそっ首を大地へと向けると、その口腔からは白い光が溢れんばかりに迸りて……次の瞬間、森は紅蓮の焔に飲み込まれていたのです。
「エルフの女王、ちょう森林破壊してるけど設定的にいいのか!」
「ティナ様、”ツッコミ”が絶好調なのは大変よろしいことかと思います。ですが、それではお話が進んでいきません」
「あっ、はい」
そういえば私のおしゃべりというか駄話に付き合うことの多いメイドさん……サーリャには、そういう語句、結構仕込んでありましたね。萌えとかてぇてぇとかすことかちゅきー、も通じるよきっと。なにしてんだ俺。
まぁ、やんわり言われてしまったので、ちょっとまきで行きますかね。
私はカモミールティーをいれてもらいながら、ページを繰る手を速めました。
ちなみにこの世界にも、普通のお茶は普通にあります。ただ、ここスカーシュゴード男爵領は一年を通して雨量の少ない土地柄で、お茶の栽培には適していないそうです。多少は生産しているものの、高級品はカカオ豆と同じで南方の他国、または他領からの輸入品となってしまいます。
まぁ肉体の子供舌的に、そこまでお茶が美味しいとも思わないんですけどね。
このカモミールティーも、面白い味だなーという感想です。ぐび。
「森を焼き尽くした赤竜は、女王をその背に乗せたまま空へと飛び立ちました」
「わぁ」
薙ぎ払え!
エルフの女王がそう叫ぶと、竜はそっ首を騎士団長カイズへと向けます。
ですが、竜は悲しそうな目をするだけで、カイズへのドラゴンブレスは……放たれることがなかったのです。
どうしたバケモノ! それでもこの世で最も凶悪な一族の末席か!!(少しアドリブ)
竜は、エルフの女王を乗せたまま、天高く昇りだします。
くっ!
エルフの女王は竜の背から降りようとしますが、竜はその手で女王の身体を掴み、握って、放そうとしません。
やめよ! 我の死は人どもの根絶より前にあってはならぬのだ!
女王の叫びに耳を傾けるものはなく、竜は天へと高く高く、昇っていきます。
それは雲を抜け山を超え、やがて月のように小さく、星のように小さくなっていきました。
恋人の名を呼ぶ……騎士団長カイズの、悲痛な叫びを置き去りにして。
やがて竜とエルフの女王は天界へと達し、エルフの女王は竜の手に握られたまま、永遠に赤い血を流す星へと変貌してしまいました。
赤い竜はそれを、今も天界で見張り続けているのです。
「このふたつの赤い星が、黒羊座の傍らに光る双子星なのです……めでたし、めでたし。おしまい」
「えー!?」
「めでたいよな?」
「だんちょうさま、かわいそう……」
「あ、そこ?」
この童話は、最初にも言ったと思うけど、人間がエルフを、魔法を、人間社会から排斥するきっかけとなった事案を寓話化した話です。まぁ三国志演義みたいなもん?
ゆえに、エルフと人間との戦争は実際にあったことらしいし、九星の騎士団も実在したそうです。登場人物も、同名の人物が史実にちゃんと存在している。
いるけどー。
ただ、聖女ルカは、史実だと聖人ルカで男性だったりする。
透明感のある女性のような美形だったらしく、髪を長く伸ばし、髭は全くと言っていいほどなく、またどこかの毘沙門天な軍神様のように、定期的に神殿へ篭っては神に祈祷を捧げていたらしい。生涯不犯だったともいう。
また史実でも、エルフの女王との戦いのさなか、ルカがなんらかの形で騎士団長カイズを庇い、身を呈して守ったことは事実らしく、史実の聖人ルカは、その傷が元で決戦の数ヶ月後? 数年後? に他界したそうだ。
この辺りから、実は女性であったのではないかという疑惑は非常に強く残っていて、この『ご本』はその説を採用した童話なのだろうねー。
若くして亡くなった上に女性にされちゃったかー。
親近感わくね。
「だんちょうさま、このぁとしんじゃぅんゅあーね……」
そう、史実では、騎士団長カイズもまた、この戦いのすぐ後に他界してしまっている。
ちなみに。
女史も言っていた通り、この世界には竜が、ドラゴンが本当に存在する。
この目で見たわけではないので、実際の姿がどんなものかはわからない。
わからないけど、素材として竜の鱗というものは流通していて、それは見たことがある。
なんとなれば、それは貴族令嬢にも非常に身近で……つまりはドレスや下着の形状補正の素材として、よく使われるモノだからだ。ワイヤー代わりといったところかな?
私やミアが住んでいる、サーリャが住み込みをしているこのお屋敷の宝物庫にも、何枚かは納まっている。色は様々だけど、それは個体差の違いらしく、単一で二色以上のドラゴン、つまりツートンカラーや三毛猫のドラゴンはほとんど存在しないんだとか。
竜の鱗はでかい。
鱗ひとつが、直径にすれば数十センチから一メートルほどはある。
竜の鱗は硬い。
大人がやっと持てるような斧の刃を、何度も何度も叩きつけて漸く切れるほど。
でも弾性があって、靭性も剛性も高い。
そんなもので全身を守るモンスターが、この世界には実在している……らしい。
そして史実でも、エルフの女王は決戦の最後に、特大の赤竜を騎士団に放ったとされている。
騎士団長カイズも聖人ルカも、更にいうと童話版では影の薄いことが多い副団長リルクヘリム、闘士エンケラウも、その時の傷がもとで数年後に亡くなってしまったとされる。
「まぁね。このご本には、その後どうなったかは書いてないけどね」
「かゎぃそう……」
……というか。
それどころか。
黄蘗鋼玉の騎士、東国武士のアイアはあらゆる栄光を捨て、祖国を求めて旅立ち、珊瑚の騎士アムンと翠玉の騎士オズは、決戦後の消息が不明となっている。
灰礬石榴石の騎士パザスに至っては、なんらかの罪で、どこかの島へと流刑されてしまったらしい。
猫睛石の騎士、おねぇキャラで武道家の(ただ、このキャラも物語の中ではたまに女性化される)ティアだけは、決戦後に身体を壊しながらも、それなりに長生きしたらしいが、生涯独身で子を成さず(性癖の問題だったのか、壊した身体の部位が問題だったのかはわかっていない)、その晩年は寂しいものだったという。
史実における決戦後の九星の騎士団は、まるでエルフの女王の呪いでも受けたかのように、皆が不運で不遇の運命を辿る。そういう風に伝えられている。
「まぁ、それでもさ、九星の騎士団は目的を果たしたんだから。可哀相でも可哀想じゃないよ」
確かに、その相は、その貌は、哀しいモノといえるのだろうが……かといってそれを私が、前世では何もなせない人生を送った俺ごときが哀れみ、想うなんてのは傲慢ってモノだろう。彼らは英雄、私は凡才。凡才は英雄を仰ぎ見るが常さ。下に見て同情するなど僭越の極み。
だから童話で読むなら、その終わりは、めでたしめでたしでいいのさ。
私はサーリャのいれてくれたカモミールティーをすすり、ふぅとひとつ、息を吐く。
「でも……んゅ」
そうしてまた抱き寄せる。
小さくてあったかい身体を、抱きしめる。
「おねーちゃんさー。この人生で、何をなすのかなー?」
「んゅ?」
「まぁ多分子供とかなすんだろうけどさー、そういう風に状況とか、この身体とかが、準備万端になってきちゃっているんだけどさー」
どうなんだろうね?
俺だよ?
前世は男で、育児とか全く縁の無かった俺だよ?
痛いの嫌いだし、もう味わいたくないし、なんで生き物って、生きる物なのにその誕生に死の危険が付きまとうのーって、哲学的な(?)思索(?)をしちゃう俺だぜ?
どうなんよソレは。本当にさ。
「ティナ様は……ご不安なのですか?」
サーリャが、私を安心させるかのように、微笑を浮かべながら問う。
「わかんない。先のことは何も考えたくなくて、今はミアを抱きしめていたい」
「おねえちゃま……」
「ミアとだったら結婚したいなー。本氣だよ?」
「んゅ……」
ほおずりほおずり。やわわー。
「ふふっ、いいですよ。どちらにせよ今はお身体をいたわるべき時ですから……ミア様、私からもお願いします。今日だけはどうか一日、ティナお嬢様の抱き枕になってあげてください」
「んゅー」
「あ、おトイレに行きたくなったらハッキリとそうおっしゃってくださいね。ティナお嬢様は、甘えだすと長いですから」
「余計なこと言わないー」
なんかいい感じで。
そんな感じで、今日はなんかこう、とても幸せな感じに一日を過ごせるかなー……って夢を、ミアを抱きしめながら、ミアの温度を感じながら、ミアの匂いにまどろみながら……見ていた時。
「……お嬢様、申し訳ありません、ご当主様がお呼びです」
サーリャの悔しそうな声が、安らぎの終わりを告げた。
……まぁ言い換えると、マイシスターとのふれあいを邪魔されたぜチックショー……ってそれだけのことなんですけどね。
うん。
しくしく。