チュートリアルスキップしたらパパ上の大群に襲われた
目が覚めるとそこは神殿だった。どこぞのパワースポットなど比にならないほど神秘的な雰囲気の包まれている。
付近には誰もいない。王様は勿論、魔術師やエルフもだ。倒れていた地面を見ても魔法陣があるわけでもない。
「ははーん、そっちパターンね」
某素人投稿小説サイトに入り浸っている皆様には既に察しがついていることだろう。勿論、俺はわかってる。やれやれ。感のいいガキは嫌いだぜ。
しばらくすると案の定、美人な翼に身を隠した女神が現れた。やりすぎじゃないかってくらい眩い光を放って現れた。
「うおっ、まぶしっ」
こいつとクリ○ンに挟まれたら前後からの激しい光に焼かれて焼死してる。まぁ俺が反射しちゃうから女神の光もク○リンの光も効かないんですけどね。はは。
なーんて悲しい事言ってる場合じゃない。せっかく人生で一度立ち会えるかどうかって場面に立ち会ってるんだから真面目にやろう。ってここに来てる時点で人生は終わってるんだった。完。
そんなこと言ってる間に女神の発光が治まってくる。なんか悲しいな。ほわぁ~って感じで消えていくんだね。電気の寿命が尽きる時みたい。間違いなく光属性だな。神属性か?
『ファッッサアア!!』
「おおうっ!?」
すっごい勢いで女神が羽を開く。めっちゃなげえ羽。お手入れとかどうするんだろう。先の方届くのかな?てかファッッサアアって自分で言ったよ。ファッッサアアファッッサアア髪の毛ファッッサアアってうるせえよぶ○すぞ?
ああ、ていうかこれめんどくさいタイプの女神かも。大体ファーストインプレッションにツッコミどころがあるタイプはめんどくさいと相場が決まっている。
あぁ、でもそもそもまだ女神って決まったわけじゃないのか。でもまぁ女神だろう。こんだけ眩しくて羽が大きいのに下っ端天使ってことはあるまい。
『悪かったですね』
「おおう、まじか」
え?下っ端天使なの?この輝きと潤いで?潤いってなんだ。ノリで言っちゃったよ。これで下っ端なら女神様の降臨エフェクト目が潰れるわ。
ていうか心読めるんだな。
『いいですか?』
「あ、どうぞ」
『あなたは死にました』
『うん、知ってる』
『真似しないでください』
「すみません」
いけないいけない。ちゃんと聞かないと。
『あなたは死んだので次の世界に転生することになりました。あと93185回の転生を終えると晴れて卒業です』
「はへ~」
『あなたは前世であまり良くない生活をしていたのでこのままだと卒業後の進路が不安ですね』
「ほほ~」
『なので次の生では慎ましく謙虚に、人の心に寄り添って生きてくださいね』
「そのとぉりだぁ〜」
『この転生はあなたの適性を見るためでもあるんですから、ず〜っとゴロゴロしてるだけじゃ、ろくな進路をえらべませんよ。ちゃんとスキルを磨いてください』
「ひょぇ~」
めっちゃ説教されるやん……進路とか卒業て。学校かよ。普通ここは次の世界の選択とか、選べないなら選べないなりに次の世界の説明とかしてくれるとこじゃないの?そんでそれが終わったらスキルの説明と選択、そしてステータスの割り振りにキャラメイク。そういう場面でしょここは。
うーん、ストーリースキップできないかなぁ。スキル選択場面まで飛ばしたいな。
『スキップですね』
「え?」
『お望みどおりスキップしてあげますよ』
「え?」
『ストーリースキップ、世界説明スキップ、スキル選択スキップ、ステータス割り振りもスキップ、キャラメイクもスキップ』
「あはぁ~天使さん?」
『スキルも【スキップ】でいいでしょう』
「お~ほ~即死チートかハーレムスキルでお願いs」
『君の会話もスキップじゃ。もう行け』
「ヒョオオオオオオオオオオオオオオオ」
身体が雑巾絞りみたいに捻れて細い光の粒子になった。そのまままさに神速で下界へと落ちていく。急に身体が引っ張られて旋回を繰り返し、やがて夜のホテル街上空へと辿り着く。そのままホテルの一室でハッスルする男女の部屋へと舞い降りると、女の腹に引っ張られて吸い込まれた。
「あ、今受精した♡」
「ははっ、こいつぅ~!ん~マッ♡」(チュッ)
男女はさらに盛り上がる。
『ひっ』
赤い肉壁の中で暖かいバリアに包まれた俺の元へ猛進してくる白いタンパク質の大群を、俺は生涯忘れることはないだろう。
『あ、記憶封印と意識封印もスキップしちゃった……まぁ、神様には秘密にしとこう……』