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条約戦艦「常陸」型

 先日仕事のついでに寄った古本屋で店主と親しくなり、彼秘蔵の正体不明の古書「世界別並列軍艦事典」を見せてもらうことができた。その中で面白そうな艦を見つけたので、個人の研究と称して概要をノートに書き記しておく。 

 ……本来探してた本なんだったっけ。

常陸型戦艦(マル継計画高速戦艦A‐120案改)

基準排水量:35,000t(公称秘匿)

満載排水量:43,200t(公試、推定)

全長:237m 垂線長:224.5m 全幅:32m 喫水:8.8m

機関:艦本式高中低圧タービン4基/4軸 出力152,000hp ボイラー:ロ号艦本式罐

最大速力:31kt+ 巡航能力:6,000浬/16kt

乗員:1,435名

兵装:94式50口径35.6cm三連装砲 4基12門

   1式50口径12.7cm連装高角砲 8基16門

   戊式56口径40mm四連装機銃 8基32門(後付)

   96式61口径25mm連装機銃 12基24門ほか(のちに各艦増備)

   95式爆雷 10個

搭載機:零式水上偵察機 2機 射出機:呉式2号5型(第三砲塔上)

電子兵装(1943以降):21号対空見張 13号対空見張 32号水上射撃 22号水上見張 E27逆探 ほか

装甲:舷側最大305mm(10’) 主砲前盾356mm 司令塔356mm 甲板最大152mm ほか


同型艦 1番艦「常陸」1939年12月竣工(横須賀海軍工廠)

    2番艦「播磨」1940年5月竣工(神戸川崎造船所)

    3番艦「出雲」1940年2月竣工(呉海軍工廠)※2代目

    4番艦「敷島」1940年7月竣工(三菱重工長崎造船所)※2代目


 ロンドン海軍軍縮条約下で建造された日本皇国海軍新鋭戦艦。「基準排水量35,000t」「主砲口径14インチ以下」「保有トン数」の条件を満たすよう要求された。

 さて、この船が建造されるまでにはちょっとした紆余曲折があった(そらそうよ)。

 この船の建造目的は主に3つほどある。第一に、漸減邀撃作戦における主力艦決戦への参加。とはいっても仮想敵アメリカの主力、コロラド級には多分勝てないので、同じ14インチ砲クラス(のはず)の条約型(のちのノースカロライナ級)を相手にするつもり。第二に、同じく漸減邀撃作戦時における「水雷戦の火力支援」。それはこれまで重巡洋艦の役割であったのだが、件の条約で保有数上限が設定されてしまい、数的にやや優勢な相手方の中口径火力には押し負けてしまう心配があった。じゃあその役割もこいつにやらせちゃえ、という算段なのだろう。カタログスペックで高速力を発揮できることになっているのは、重巡洋艦に匹敵する速度を求めたから…ではない。「別の場所から遠距離支援砲撃を送った後、迅速に主力戦艦群に合流できるように」である。つまり軍部はこいつに二重の働きをさせるつもりだったらしい。後から考えると、前段作戦で砲弾はある程度消費されているはずなのに、そのまま艦隊決戦に参加させて大丈夫だったんだろうか。大丈夫じゃなかったんだろうなぁ。

 そして第三の目的、「旧式化した金剛型戦艦の置き換え」…と言いたいところで、「待った」がかかった。曰く、新造艦はコストがかかる、金剛型はまだ使える、改修工事を行って彼女らに同じ仕事をさせれば良いじゃないか…。

 この議論は一年弱にわたって続いた。結果、金剛型の火力(36cm8門)では心もとない、相手の新型戦艦に対抗できない、ぼろい、等、要は「軍縮期間中に仕掛けられたら不味いでっせ」という意見が尊重され、「金剛代艦」の4隻の建造が決定された。

 スペックを見てみよう。速力に関しては、先述したとおりである。強いて付け加えるなら、あくまで「移動」が目的なので、高速時の操舵性はあまりよくないらしい。また船体サイズ故、戦艦にしては航続距離が短い。

 主砲には新設計の94式50口径砲が採用された。数字から見てわかるとおり、設計終了は割とギリギリである。このクラスは全体的に綱渡り状態の中建造されたといっていい。なお、この主砲についても「従来の45口径砲(金剛型の再利用)でいいだろ」という声が上がった。予算や開発スケジュール、従来の艦との統一性の面でこの案は非の打ちどころがなく、一時はこちらが本採用のはこびとなりかけた。また四連装三基案、そもそも三連装砲塔三基で我慢する案もあった分にはあった。しかし設計主任と軍上層部には譲れない何かがあったらしく、結局新型砲が「強行採用」された。

 装甲はこのクラスには標準的な厚さである。傾斜装甲を導入して、「見かけの厚さ」を増大しているが、これは大部分が建造中止となった八八艦隊計画で見送られていたものを復活採用したものらしい。

 さて、そんな36cm主砲を3連装砲塔で4基も装備し、装甲も別段手を抜いたわけではないという艦容で、よく軍縮の「基準排水量35,000t以下」を達成できたな、と設計技術者の優秀さをたたえる声が、そろそろ出てきてもいい頃だと思う(でてこい)。それについてだが、

        う     そ

 欺瞞工作である。実際の所、どうしても2,500tほどオーバーしてしまったらしいが、本当のこのクラスの排水量は重要機密である。私鶴舞も知らない。上述した公試排水量はあくまで筆者の当て推量である。設計技師曰はく、「どうせ他の国もちょこちょこ誤魔化してるだろし、ばれなきゃ平気」だそうで。 

 もちろん軍縮違反を最小限にするための努力はした。まず日本海軍でははじめて「両用砲」を採用し、平射専用の副砲を廃止。またスペース省略のため航空機用カタパルトを三番砲塔上に配置した。そのほかできるだけヴァイタル・パートを短縮、装甲重量節約にも努めた。あと当然のように兵員居住環境が割を食った。新型戦艦に配属され豪華な内装を楽しみにしていた兵員はさぞがっかりしたことだろう。

 ここで問題が生じる。まず開発予定の両用砲「1式12.7cm連装高角砲」だが、名作兵器の「89式12.7cm連装高角砲」の後継機にふさわしいものを、と設計陣が気負い過ぎた結果、前作の倍以上(一基あたり約50t)というへヴィー級の兵器となり、しかも開発が遅れたため、同型艦4隻のうち就役時に装備していた艦はなかった。性能自体は優秀だったので最終的に問題なく搭載されたが、あと1週間完成が遅かったら89式の方を載せる予定だったという(こちらは水平射程と命中率が不満足)。また航空機運用も扱いづらさばかりが目立ち、現場からの評価は散々であった(居住性が低いのもついでに非難された)。

 とはいえ主砲などの機構に問題点は少なく、安定性も意外な事に悪くはなかったので、一応使える兵器として認識されてはいるようである。

 私鶴舞は一介の造船士官なので彼女らの戦歴につてはあまり審らかに語ることはできない。ただ当初想定していたような漸減要撃作戦はあまり起こらず、速力を活かしてもっぱら機動部隊の護衛にあたっていた。長砲身、中口径の主砲は最大射高と速射性が高く、またのちに簡便な高射算定値共有システムを装備したことによって、よく敵航空機から味方を護ったとのこと。

 最期に艦名だが、1~3番艦は「風土記」の残存している三か国から摂られた。遠く奈良時代から残り続けた記録のある国なのだから、それだけしぶとく活躍してくれるだろう、という海軍大臣の発案であった。そして4番艦は日本の雅名であり、日露戦争時代の主力艦であった「敷島」の名を頂いた。「敷島」の名付け親はその後建造予定の戦艦に「ある名前」を付けようと思い立ち、この艦をその布石と位置付けた、と、後世ではもっぱら語られている。





 初めまして、夕月というものです。今回初めての投稿という事で、習作としてこのような妄想の垂れ流しを行いました。

 察しのいい方はお気づきだと思われますが、この戦艦「常陸」は内田弘樹先生の「瞬激の巨龍」に登場の「条約型戦艦大和」を下敷きにしています。完全なるオリジナルではなく、ただの劣化パクリです。私の想像力の至らなさをお許しください。

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