79 魔石と魔物
"さて、先制攻撃準備でぶっ放しますわよ"
"味方だけはふっ飛ばすなよ"
"えぇ。きっと大丈夫ですわ"
"クリスさんの多分は全く信用できませんね……"
エスイアとジュイナは不安を残しながらも戦闘準備に入ったのである。
ニズカザン側の国境砦前には、魔法剣士を含む騎士団員とシャルゼの召喚した土魔人、クリスティーヌが召喚したフェンリル、空にはエスイアの赤竜、ジュイナの不死鳥、竜騎士数名、ゴーレム等の魔獣が配備されたのだ。
黒い影を纏った集団が目視確認されると、シャルゼが一番に動く。シャルゼは地面に手を置き、ルドルフに命じるのだ。黒い集団の真下に地面を真っ二つに割り落ちた者をエスイアのヴァームで始末し、他の者が浄化魔法で影を消し去るのだ。そして、死体をそのまま地面へと埋めたのである。
相手もそのままやられている訳ではないのだ。加速し間合いを詰めると直ぐに腕から黒い触手の様なもので数体の魔獣や騎士達を薙ぎ払いっていくのである。
ジュイナはフェニックスを操り、空から消える事のない炎で影を纏った魔物達を囲い魔法で浄化し全て焼きはらっていくのだった。
クリスティーヌはというと、瓶底メガネを落とし気を取られている間に戦闘が始まってしまい出遅れてしまったのである。
ある意味ここぞと言う時にやってくれるのが、クリスティーヌである。期待を裏切らないのだ。
"おい! クリスティーヌ! サボるな! "
"サボってませんわ! メガネが落ちたのよ! "
"んな、いらねーーメガネ外しとけ"
"いいえ。これはわたくしのポリシーですから"
"クリスさん、そんなポリシーなんて今はいりません! メガネ取って早く‼ "
クリスティーヌは令嬢にあるまじき舌打ちをし、皆さん酷いわ、と言いながら魔力を手に込め黒い影を纏った魔物達の真上と真下に魔法陣を展開させたのだ。それに合わせシャルゼが魔法陣から出れないようにルドルフに防壁を作るよう指示する。
「来るぞ‼ 取り敢えず結界からどけーー‼ 」
デニスが大声で味方に叫ぶ。
味方の騎士や魔獣、衛兵達はデニスの声に反応し一時魔法陣の外へと撤退するのだ。
その間周りから結界の周りに防御結界を張るのである。
クリスティーヌは味方が魔法陣から出た事を確認し、空中に指で紋様を描き、胸の前に手を上下に平行にし魔力を込めると上下の魔法陣から電流を発したのだ。
電流は閉じ込められた魔法陣で放電を繰り返しており、魔物達は焼け焦げて煙を出したりしている。魔物達が動かなくなるとクリスティーヌは上下の手の幅を徐々に狭めていくのだ。
クリスティーヌの手と連動するかのように魔法陣は白く光り電流を流すのを止め、上下の魔法陣の幅を徐々に狭めていくのである。
「これは凄いですね。クリス嬢はどれだけ魔力を使えるのでしょうね……」
「俺も知らん。モルテリリーの時よりも強くなっているのは確かだな」
ローウェンとデニスは次の攻撃の為に剣を構え目の前の光景を注意深く見ているのだ。
魔法陣が重なると化物達は地面へと倒れ、黒い魔石だけ浮かび上がると発光し炭のような色になると全て地面へと落ちたのである。
「半分は殲滅完了ですわね」
「まだまだ後ろから来るぜ? 」
「では容赦なくなぎ倒しましょうか」
クリスティーヌはまた空中に紋様を描き、紋様の中から剣を取り出すのだ。
その様子を見ていたデニスとローウェン、魔法剣士達は驚きの余りに一瞬動きを止めてしまったのである。
「え……え……えーーーーーー?! 」
ローウェンの叫びにより、動きを止めていた者達は我に返り前から襲ってくる魔物なのか人か分からないものの相手をするのだ。
"クリスさん、そのような事も出来るのですね。今度、是非教えて下さい"
"これが全て終わったらまた、グラッサ家で訓練ですわね"
ジュイナとクリスティーヌは戦場にも関わらず、呑気な約束をするのである。
クリスティーヌが紋様から出したのは聖なる剣とよばれ、魔力が強く術式が難しい為に使える者も少ないのだ。魔法剣士がよく使う魔法なのだが、クリスティーヌの聖なる剣は普通の術式とは異なり、時の魔女直伝なので威力も強大な上に術式が桁違いに難しいのである。
"ん? クリスティーヌ。剣使えったっけ? "
"いいえ。切るだけなら誰にでも使えましてよ"
クリスティーヌは、ふふふ、と笑みを浮かべながら、フェンリルに乗り片っ端から黒い魔石の力を吸い取った元は人間の魔物の首を次々と斬り落としていくのだ。エスイアは空から苦笑いを浮かべ、流石だな、と呟いた。
「相変わらず、クリス嬢は派手にやるな。おい、お前達! 学生にばかり良いとこ取りされるな! 行くぞ! 」
デニスの一声により、騎士団員達は一斉に雄叫びを上げ黒い魔石の魔物を斬りつけていくのである。




