75 ぶっとび令嬢
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ストックが溜まり次第、報告以外での誤字や加筆を行う予定ですが、全く溜まらないのが現状です。
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『女……二人……男……三……』
『女……魔力アル……不味ソウダ…』
『一人……男……マダ食エル……』
『狩ル……狩ル………食ウ……』
闇夜の中から数体の影がゆらゆらと出現し、耳に残る言葉を発しながら歩いている。
月の光がゆらゆらと揺れる影を照らすと、目が血走り、鋭い牙を剥き出しにし、人間の姿から鬼の姿になった鬼人達が現れたのだ。
数体の鬼人はクリスティーヌ達が野営している場所へと向かってゆらゆらと身体を揺らしながら歩いていく。
エスイアが偵察の為に赤竜を召喚し、闇夜に紛れながら空から偵察を行っているのである。ヴァームの耳がピクリと動き、エスイアも耳を傾けると静かな農村地に土を踏む音が聞こえてくるのだ。
エスイアは自身とヴァームに姿隠しをかけ、そしてクリスティーヌに渡された無臭水という物を急いでかける。
かけ終わった頃、野営地点からまだ距離がある地点に鬼火が現れたのだ。
一瞬止まり、鼻を嗅いでる仕草をしだしたのでバレたかと思ったが、クリスティーヌ達の位置を確認しているようである。
"ジャビル、700メル程前方に確認"
"了解"
"デニス団長の準備は大丈夫よね?"
"あの方は放っておいても死にはしないでしょう。魔力が少ないといってもこの中での話ですし"
"懸念はあれだけか"
"ですわね"
"敵の速度が上がってるぞ。どういう事だ?"
"あぁ……きっと腹を空かせて欲望が先走っているだけでしょうね"
ふふふ。と笑うクリスティーヌを横目にローウェンは心の中でデニス団長の無事を祈り続けるのである。
『イル……イル……イル……』
『食ウ……腹…減ル……』
『俺……先……食ウ……』
土を駆ける音がし、ジャビルが一斉に走り出し、一直線にデニスの元へ風を切るかのように猛烈な速さで駆け出したのだ。
2体のジャビルがそのまま結界にぶち当たり、感電するような電気音が響き、辺りに焦げ臭い臭いが漂う。ジャビル2体は顔の表面が判別できない程に黒焦げになり、膝から崩れ落ちたのである。
『結界……アル……』
『小賢シイ……肉ノ塊ドモメ……』
ジャビルは爪に魔力を込め、結界を何度も何度も引っ掻き出しのだ。
「おいおい……本気で大丈夫なのか?さっきより怒ってる気がするぞ?」
デニスは独り言を呟き戦闘出来る体制に入るのだ。
デニス自身、ニズカザン帝国で5本の指には入る剣の使い手であるが、ジャビルという魔獣は伝説の生き物として捉えていた為どのような動きをするのか全く予想が出来ないのである。
"結界を破ろうとしていますわ"
"破られるのを見越してデニス団長にもかけてるが早く仕留めた方が無難だな"
"ジュイナ。準備はいける?"
"いつでもいけるわよ"
ジュイナとローウェンはクリスティーヌの合図を待ち、暗闇にしゃがみ込みデニスとジャビルの様子を確認する。
デニスの外側の結界がジャビルの魔力の爪研ぎにより破壊され、我先にとデニスの元へと飛び出したのだ。
"今よ"
クリスティーヌの合図と共にジャビルの位置に魔法陣が現れジャビルの動きを止める。しかし、ジャビルは腕を動かしデニスの結界を必死に爪で引っ掻き壊そうとするのだ。
エスイアがここぞとばかりに結界で足止めしたジャビルをヴァームの業火で焼き尽くす。
『食ウ……食ウ…』
"ちっ。まだ一匹しぶとい奴が残っている"
"ジュイナとローウェンさんはデニス団長の守りを固めて"
ジュイナとローウェンはデニスの周りに更に強力な防御結界を張ろうとするが、ジャビルが急に一回り大きくなり力を増したのだ。ジャビルはそのまま結界を破り、デニスの腕に牙を立て食らいついたのである。
「くっ…こいつ……力が……あれ?痛くねーぞ?」
「デニス団長!早くジャビルを退けねーと!クリスティーヌが!!」
デニスは全身を使い、腕に牙を立てているジャビルを引き剥がし間を取ると、ジュイナ達の防御結界が強化され何層にも貼られたのだ。
ジャビルの足元に魔法陣が浮かび光が放たれる。同時に下から無数の光る槍が飛び出しジャビルを串刺しにし動きを止めると、クリスティーヌの繰り出す業火の炎が容赦なくジャビルに浴びせられたのだ。ジャビルは一瞬にして炭と化し地面へと崩れ落ちたのである。
「ギリギリ間に合ったか……。クリスティーヌ!!ちょっと位待てよ!」
「いいえ!一刻も争うところでしたわ!」
「1秒位待てただろ!!」
「無理ですわ!」
クリスティーヌとエスイアが言い合いをしてる途中に、ローウェンがポツリと呟いたのだ。
「デニス団長……凄く血が出てますが、痛くないのですか?」
「ん?あぁ!なんか知らんが痛みは感じないのだ!わっはははは!」
デニスは豪快に笑い、クリスティーヌはデニスが噛まれた事を思い出したのだ。
「あ!忘れてましたわ!デニス団長、しっかり止血して解毒しなければそちらの腕が無くなりますよ」
にこりと笑みを浮かべるクリスティーヌに皆、わからない、といった表情をするのである。
「ジャビルは獲物に噛み付くと牙から毒を出し、獲物の体内に送り込み感覚を麻痺させ痛みを感じなくさせるのですわ。麻痺の毒は放って置くと噛み口から徐々に腐って壊死するのです」
「「先に言えーーー!!!」」
クリスティーヌの言葉に皆一斉に発狂したのである。
「デニス団長!怒ると血が!血が止まらなくなります!」
「デニス団長、腕を高く上げてこちらに横になって」
皆、発狂しながらも急いでデニスの手当てに取り掛かるのだ。その間、クリスティーヌは鼻歌を歌いながらまだやり残した仕事を終える為にフェンリルを召喚し匂いによってそれを探すのである。
"娘、こっちだ"
"ありがとう、フェンリル。助かるわ"
クリスティーヌは無数の大人の頭程の卵を確認し抹消するのだ。
爆音と共に、耳を切り裂くような叫び声が幾つも聞こえてくる。目の前には燃え盛った無数の卵があったが次第に声も聞こえなくなったのだ。残ったのは、ぽっかりと空いたアナと炭と化した卵だだたのだ。
"おい!クリスティーヌ!またなんかやったのか?"
"失礼な!いつもわたくしが何かやらかしてるみたいな言い方は心外だわ!後始末の為にジャビルの卵まで燃やしたのです!"
"そー言うことは、予め言っておけーー!!"
エスイアの念話の叫んだのだ。
フェンリルが声を出し笑って、娘の友も苦労するな、と言ったのである。
勿論、クリスティーヌはぶつくさと悪くない、とずっと言っていたのである。
今日の一番の被害者は、誰に聞いてもデニス団長だろう。これから、クリスティーヌには1から1000まで事細かに話の内容を聞くべきだと確信したのだ。
「俺……クリス嬢と居たら命幾つあっても足りないきがする…」
「デニス団長!気をしっかり!団長にしか出来ません!僕には団長みたいにできません!」
「デニス団長…どんまい……」
エスイアとジュイナは手当を終え、二人の騎士を生暖かく見守るのであった。




