72 ノワズ印の魔導具
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デニス達のせいで貴重な時間を無駄にしたクリスティーヌ達は、チルダンの苺プリンをしっかりと食し至福の気分を味わいながら魔導具研究所の中へ入ったのだ。
「失礼致します。こんにちは。1年C組です。魔導具の操作説明を伺いに来ました」
こういうきっちりとした場所では、きちとするエスイアの変わり身にクリスティーヌはある意味尊敬するのである。挨拶は当たり前の事なのだが、クリスティーヌは嫌な事は顔に出てしまう癖がありよくクラスの仲間達に注意されるのだ。
仲間達に言われた事は真摯に受け止め、できるだけ改善しようとする根は真面目なのだが、少しズレているので何かとやらかしてしまい残念なのである。
「あ!クリスさん!エスイアくんにジュイナさんまで!僕達の魔導具役に立ってくれてますか?」
嬉しそうな顔をしながら、瓶底眼鏡仲間のノワズはこちらに駆け寄ってきたのだ。
ノワズは珍しく、目が隠れる程の金と茶が入り混じった前髪をゴムで留めているのである。
「ノワズ、額を見せても大丈夫なのか?」
心配したエスイアはノワズに声をかけたのだ。
「大丈夫です。ここの研究所の方々はこんな傷気にもとめてませんよ。C組で作業してるのと同じ感覚なんで居心地が良いですよ」
ノワズの額から目にかけて、斜めに焼けただれたような傷があるのだ。何故その傷があるのかは誰も知らないし、誰も聞かないのである。その傷を隠す為にいつも目元まで隠れるまで前髪を伸ばし瓶底眼鏡をかけているのだ。
C組で前髪を上げるきっかけとなったのは、他でもないクリスティーヌなのだ。ある日、クリスティーヌがノワズの傷を見て言ったのである。
「誰にやられたの?私の魔力で解除できないかしら?」
クリスティーヌはそう言うと、おもむろにノワズの前髪を上げさせ魔力をありったけ込めて傷を無くそうとしたのだ。少しだけ薄くなったのだが、根本から消さないといけないらしく今のクリスティーヌにはできなかったのである。
その様子を見ていたクラスの一人が、ノワズは前髪あげとけ。そっちのが良い、と言い出しC組では前髪を上げるようになったのだ。
「説明行きますよ」
ノワズはニカッと笑いながら眼鏡を押し上げ、早速魔導具の取り扱い説明をするのだった。
1つは、国境の砦に埋め込まれていた魔石を探知する物を改良した物で、探知の範囲を広くし個数が少なくても効率よく探知できるようにした魔導具だ。
2つ目は、楕円の目玉みたいな形をしている魔導具である。これは、今まで出来なかった遠視が出来るようになる物だというのだ。硝子の部分から映像が見れるらしく、魔力で遠隔出来るように魔石を回路に組み込ませて作った物だ。以前、ジュイナが蜘蛛に設置させた映像を記憶する物の応用だという。
ノワズから、2つの魔導具を受け取り設置のコツと動かなかった場合の修理の仕方をじっくりと教わったのだ。中を開けると配線と魔石が複雑に組み込まれており、クリスティーヌは頭が痛くなり放り出そうとしたのである。だが、折角ノワズ達のチームが発明し製作までしたというからきっちり、メモを取って頭に叩きこんだのである。
その様子を見たエスイアとジュイナは明日は嵐だな、と囁きあっていたのだ。
デニスとローウェンは、ノワズの説明についていけず早々とリタイアしており研究所内のソファーでまったりと寛いでいたのだ。
勿論、そんなデニス達をクリスティーヌは見逃さず筈もなく一緒に説明を受け教えてもらい覚えさせるのである。
クリスティーヌ達のスパルタ方式教育により、デニスとローウェンは使い方や簡単な修理を覚えたのだ。
"この方達は脳みそまで筋肉なのかしら?ローウェンさんはマリエルのお兄様だからもう少し期待をしていたのに残念ですわ"
"まぁ、人には得意不得意があるから仕方ないさ"
"クリスさんも魔導具の中身は苦手でしょ?"
クリスティーヌはジュイナに痛い所をつかれ、口を真一文字にし怖くない睨みをジュイナに向けるのである。
大方、教えてもらった所でクリスティーヌ達はお礼して魔導具の研究所を後にし王宮へ向かったのだ。
何やら、アレクシスがお呼びと言うから行くしかないのである。どれだけ面倒だと思っても、第二王子の命であらば拒否はできないのが現状なのだ。
王宮へつくと、そこにはアレクシスとフランが待っていた。
「皆、すまない。こちらへ来てくれ」
アレクシスはクリスティーヌ達が王宮へ着くなり直ぐに、別の塔にある一室へと案内したのだ。
「急ですまないが、至急これを見てほしいんだ」
クリスティーヌは辺りをきょろきょろと不審な行動をしながら皆の後ろを追っていた為に、急に止まったデニスの背中に顔を激突し、瓶底眼鏡を落とし鼻を真っ赤にしたのである。
「先程からクリスは何をしてるんだ?」
アレクシスが不審者を見る目でこちらを見ていたのだ。
「アレク。1つ聞いても良いかしら。ジェシカは何処にいらっしゃるの?」
「ん?ジェシカ?ジェシカは居ないと思うんだが……」
「この物陰とか……?そこの柱かしら?」
クリスティーヌはアレクシスの言葉を聞くが、まだ辺りを確認し不審な行動をしているのである。見かねたエスイアがアレクシスに耳打ちをしたのだ。
「あー…アレクシス王子、これには深い訳があるようでないのですが…ちょっとしたトラウマになっているみたいですね」
「どう言うことだ?」
エスイアとジュイナは、アレクシス絡みで入学初日からジェシカやその取り巻きから、ほぼ毎日のように嫌がらせを受けている事を説明したのだ。クリスティーヌはやられる度に、いちいちコダックの元まで魔法使用許可を取りに行かなくてはならず、ジェシカと関わると面倒事が起こるので出来る限り関わりたくないと思っているのだ。
そして、アレクシスと関わる=ジェシカが必ず来ると思っているので、色んな意味で困っていると伝えたのだ。
「いや…わかってるんですよ。クリスティーヌも周りの皆も王子が悪い訳ではない事を……ただ……余りにも殆どタイミング悪く来るもんだから……半分狙ってるのかと思う位に……ねぇ?」
「もしかして、これがフランが言ってた事か……」
「何言われたかわかんないですが……クリスティーヌ絡みは口外しない方が良いかと……それにジェシカ嬢と婚約の話がでてるみたいだし?」
エスイアがジュイナにクリスティーヌを落ち着かせるように目配せをするのだ。
"クリスティーヌのネジが外れてる!早く落ち着かせろ"
"わかってるわ!私一人でやらせるなんて!暴走して破壊とかまたコダック先生に言われるわ。それにあんまり王子を苛めたら駄目よ"
エスイアとジュイナは器用に念話をしながら、方や王子と話をし、方やクリスティーヌを宥めているのである。
「ん???んーーー??なんだ?それは?そんな話一言も聞いてないぞ?」
「あ、そうなんですね。まぁ、王子も大変でしょーけど、相手はクリスティーヌですよ?面倒事が大嫌いな割に厄介事に巻きこまれる不思議な面倒臭い令嬢です。はっきりしないと、隣国の王子にとられちゃいますよ?」
「な!なっ!何故その情報を君が!」
口角を上げにっこりとするエスイアに、アレクシスが驚き過ぎて言葉が出なくなってしまったのだ。
「まぁ、ジェシカ嬢が収まるまで頑張ってくださーい。マメな男じゃないとクリスティーヌににげられますよー」
「ちょ、君はエスイアだったか?」
「はい。エスイア・スクワランです」
アレクシスは我にかえり、スクワランの者か、と更に驚くのだった。




