71 JLの店chilldone(チルダン)
いつもありがとうございますm(_ _)m
ブックマーク等励みになっております。
誤字報告ありがとうございます!本当に助かっております!!
朝からクリスティーヌ達は魔導具研究所の扉の前でデニスとローウェンを待っていたのだ。
各地の黒い魔石がある場所へと行く前に、ノワズ達が作った魔導具の扱い方を教わる為に来たのだ。クリスティーヌは機械にはさほど強くなく、ここはエスイアとジュイナの出番になるだろうと感じているのである。
昨日、クリスティーヌは説教の後にスペンサーから釘を刺されていたのである。
「クリスティーヌ、きちんと魔導具の仕組みや勉強もしてくるんだぞ。授業がない分、自分で設置する魔導具が課題になるからな」
「お兄様……そう言いますが、ノワズさん達の魔導具は高性能で複雑な機械ですよ?素人のわたくしには完璧に取得するのは無理かと思いますわ。ですが善処は致します」
クリスティーヌは魔導具の扱いには慣れても、修理等は簡単なモノしかわからずノワズの発明品は高度過ぎて半分ついていけないのが現状だったのだ。寧ろ、クリスティーヌが触って二次災害が起きた事もあり半強制的に魔導具接触禁止令がでたのである。
「なぁ。デニス団長とローウェンさん、遅くないか?」
「本当ですわね」
「何かあったのかしら?」
「俺、凄く嫌な予感しかしないんだけど……」
「エスイア!不吉な事をいわないでよ。そーゆー事は少なからず当たるんだから」
エスイアとジュイナが言い合いをしている中、クリスティーヌは以前ノワズが渡してくれた魔導具修理のコツを纏めた冊子を読んでいたのだ。少しの時間でも努力を怠らない、これはツルっと滑りから過去に戻ってから学んだ事である。
一時間程待ったが、未だにデニスとローウェンが来る気配がないのだ。エスイアとクリスティーヌがお腹が空いたと言うので、魔導具研究員に声をかけてから食堂に行った三人は、食堂の光景に驚くのである。
「なんじゃこりやぁぁぁぁぁ?!」
食堂は激混みでそこらじゅうに、人人人と人の嵐、いや洪水なのだ。同じクラスの生徒が近くにいたから理由を聞いてみると、伝説のプリン『chilldone』が数量限定で食べられると言うのだ。
伝説のプリンchilldoneはJLの店で販売されており、ニズカザン帝国では超がつく程有名で大人気過ぎるが故に入手困難だと言われているスイーツなのだ。
高級食材を使っているわけでもない至って普通のプリンなのだが、食べるだけで至福の時間が味わえ不思議と頭が冴え一日幸せな気分で過ごせるというのだ。
店舗は王都に一軒のみで、貴族だから身分が高いからと贔屓一切なしの平等に店頭に並んだ順番にのみ販売される。低価格な故に庶民から貴族まで人気があるのだ。だが、いつ店頭に販売するかは不明な為に出会ったらほんの数十分間で即完売となるのである。
「あ。俺も食べたい」
「まさかとは思うけど……デニス団長らしき人物があそこに……」
ジュイナが怒りで肩を震わせながらデニスらしき人物を指したのだ。
「ったく、俺等を待たせて先にプリンかよ」
「ですわね。少し懲らしめましょうか」
「どうやって懲らしめるの?」
「それはですね……」
クリスティーヌ達は一旦食堂を後にし、魔導具研究所の待合い室へと移動したのだ。
クリスティーヌは母ジュリエッタに早便を出し早急に懲らしめる事にしたのだ。
プリンなんて何時でも食べらるのに、わたくし達を二度も放置するとは根性が良いですわ。少し痛い目を見た方がよろしいですわね。
クリスティーヌは負のオーラを纏いながら、その時を待つのである。
食堂から待合い室に来て、早2時間程が経った頃にやっとデニスとローウェンが来たのだ。
「いやーすまんすまん。ちょっと野暮用で遅れた」
「デニス団長、ここはきちんと本当の事言ったほうがいいですよ!」
ローウェンは慌てて小声でデニスに忠告したのだ。勿論、デニスはchilldoneの為に食堂で並んでいて約束の時間をすっぽかしたとは言えないのだ。
ローウェン達の声はクリスティーヌ達の耳にしっかりと入っており、腹立しい気持ちを抑えるのである。
「いえいえ。お気になさらず。私達もほんの三時間ほど待ちまして、今お茶をしていたところですの」
フフフと笑うクリスティーヌは笑顔を完璧なまでに顔に貼り付け微笑むのだった。
デニスは机を挟みクリスティーヌ達の真正面に立つと驚き過ぎて固まってしまったのである。
エスイアの手には、入手困難な苺のchilldoneがあり美味しそうに食べているのだ。
更に机の上には、これまた入手困難である一口ケーキのスノファがあるのだ。
「おま……お前たち!なぜこんなに!」
デニスは驚き過ぎて言葉が出なくなってしまい、そこにジュイナやエスイアが、あー美味しい、と言葉を並べるのである。
「俺にも…少し…」
デニスがスノファに手を伸ばそうとした時、クリスティーヌが素早く伸びる扇で手の甲を打ったのだ。勢いもつき良い音が応接室に響き、クリスティーヌは口を開いたのである。手を打たれたデニスは手の甲を抑え悶絶しているが誰も心配はしないのだ。
「これは、私達の物です。何処かの誰かさんが待ち時間を超えて職務放棄し、食堂でプリンの大行列に並ばれている間、可哀想な初級生を慰める為にわたくしの母が差し入れしてくださった物です。勝手に触らないでくださいませ」
怒りのオーラを纏ったクリスティーヌに怖じ気づいたデニスとローウェンは二人してなにやら小声で話をしだしたのだ。
「だから言ったじゃないですか。クリス嬢には嘘や誤魔化しは通用しませんって。コダックさんを見ればわかるでしょう!毎日疲れ果てた顔をしながら宮殿に報告に来てますよ!」
「相手は初級生だし何もする事ないだろ?」
「団長失礼ですよ!エルノーワ家を敵に回してまで僕はプリンなんていらないですよ!」
ローウェンはエルノーワ家を余程敵に回したくないのか、デニスの命令に背くと言うのだ。
「しかしだな…こんな量の苺のチルダンのプリンとスノファはどうしたんだ?」
デニスは恐る恐るクリスティーヌに聞いたのだ。
「どうにもこうにもございません。言う必要がございまして?」
「お前。まさか!権力を盾にジュリーの店を脅したのか?!」
「はぁぁぁぁぁ???誰が、たかがプリンの為に脅すのです?やはり、あほぅなお方が考える事は稚拙でございますねぇぇぇぇ??」
クリスティーヌのこめかみにはくっきりと青筋が立ち、魔力がだだ漏れになり今にもデニスを仕留める勢いである。
エスイアとジュイナがまぁまぁ、と宥めるふりをしてちゃっかりと巻き添えは御免とばかりに防御魔法を何重にもかけていた事は秘密なのだ。
「だっておかしいだろ?この量……」
「全く?学園に入る前までは家に普通にありましたから」
「え…?え……??」
「デニス団長、JLの店は母ジュリエッタの店ですわ。チルダンのプリンはエルノーワ家のシェフ、chilldoneが作ったからそう呼ばれているだけです。これでよろしくて?」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
デニスとローウェンの絶叫が暫く木霊し、クリスティーヌ達は耳を塞ぎながら、本当に埋めようか?と物騒な言葉を並べ念話で話を進めていたのだった。
勿論、デニスはこれ位で許される訳もなくしばらくクリスティーヌ達に気が済むまでこき使われるのである。




